7話 勇者様
よろしくお願いいたします。
「さて、最後にユウヤさんお願いします。」
そう言ってメリッサが自己紹介をするよう促す。
すっかり仕切り役だ。
……勇者はアミスの方を見て自己紹介を始めた。
まぁ、分かってたけどね。
「俺はユウヤ・タケウチ。異世界から転移の魔法で呼び出された勇者だ。」
「えっ、姓があるってことは貴族様なんですか?」
アミスが驚いた後、心配そうにミーナやメリッサの方を見た。
この時代、貴族といえば権力は絶対。
先ほどまでの態度は、下手すれば家族もろとも不敬ということで殺される場合もある。
ユウヤは仰々しく頷く。
「まぁそんなものだ。」
こいつ、当たり前のように嘘をつきやがった。
いやいや、貴族じゃないだろう。
「もう、ユウヤ、嘘をついちゃダメよ。アミス、大丈夫。ユウヤの世界はみんな姓があるんだって。」
「へ?そうなの?」
そう言うとあからさまにホッとした後、ユウヤを睨みつけた。
「あはは、アミスちゃん、冗談冗談だよ。怒らないで。でも、むっとした顔もかわいいよ。」
ユウヤは気にした様子もない。
うーん、手慣れてる気がする。精神的にまだ幼いアミスじゃ叶わないな……。
「……あの、異世界ってどんなところなんですか?」
俺はアミスから気を逸らせるために質問してみる。
「なんだ、お前も気になるのか?」
勇者は馬鹿にした顔ながらも律儀に返答する。
「あっ、私もちゃんと聞いたことなかったわね。」
俺の意図を理解したのかどうかは分からないが、そう言ってミーナも乗ってきた。
「なんだミーナも気になるのか。」
仕方ないなといった様子で話し出した。
「まぁこことは全然違うな。魔法もないし、」
「え?魔法がないんですか?」
アミスが驚いた顔をする。
ミーナやリアも同様の顔をしていた。
一方、ラキやメリッサは知っていたようで驚いた様子はない。
いや、ラキは分からないが、召喚した陣営に近ければ知っていてもおかしくない。
ふとメリッサを見ると、何かを探るようにこちらをジーっと見ていた。
俺は一瞬どうしたのだろうと思ったが、慌てて驚いた顔をする。
「え?」
白々しかったか?
ちらっとメリッサを見るとまだジーっと見ていた。
ヤバい、転生していることはばれてはないと思うけど怪しまれたかも。
「うんうん、驚くだろう。」
そう言って満足そうに頷いた後、彼はすこし懐かしそうな顔をした。
こうやってみると普通の青年なんだよなぁ。
まぁ俺にとっては藪蛇だったかもしれないが。
「なんならもっと詳しく教えてあげようか? もちろん二人っきりで。」
そう言って誘うように手を差し出すユウヤ。
「くっ、結構です。」
先ほどと同じようにアミスは手を払った。
うーんなかなか懲りないな、彼。
「(やっぱりかからないな。ミーナも同じだった。二人に共通するのは……。)」
真剣なまなざしで何かをぼそりと呟く。
勇者はなぜかアミスの剣をじっと見ていた。
もしかして、木の剣、欲しいの?
明日も投稿できると思います。