5話 ようやく俺の番
いつもありがとうございます。
少し早いですが投稿します。よろしくお願いいたします。
微妙になった空気。
ミーナも怒りが治まらないのか、無言のまま。
アミスは隠すことなく、勇者を睨み付けている。
さて、どうしたものか。
その時、パンっという音がし、みんながハッとして音の方を見る。
メリッサが両手を叩いたポーズのまま、にこりと笑っていた。
「さ、自己紹介を続けましょう。」
何事も無かったように促した。
「次は……、ユウヤさんにはトリを飾って貰うことにして、リトさんにお願いしましょうか、次にアミスさんで。」
そう言ってこちらを見た。
アミスを後に回したのは冷静じゃないから?
というか俺が冷静なのがばれてる?
メリッサ、どこまでばれてるの、怖い、いやマジで。
と考えていると、メリッサが目で先を促した。
「……おほん、俺はリト。そこにいるミーナの幼馴染でアミスの兄だ。」
一呼吸おく。
「ジョブは木彫り職人だ。なので、戦いでは役には立たないと思うがみんなの邪魔だけはしないようにがんばるつもりだ。」
そう言ってみんなを見渡した。
「ふん。」
勇者の方に顔を向けたとき、顔を逸らされたが。
その時、小さく声がかかる。
「あの……。」
声の方を見ると、リアが小さく手を上げていた。
「あ、はい、えっと、リア……さん。」
「リアでいいですよ。年も変わりませんし、貴族というわけでもないですから。」
「そうか、じゃあ、リアで。俺もリトでいいよ。」
チッと、某勇者の小さく舌打ちが聞こえる。
「あ、ちなみに私もメリッサでいいですよ。」
「あ、あぁ。」
そう、あいまいな返事しておく。
……ごめん、メリッサももう呼び捨てでした、心の中で。
「あの、それで。」
リアが続ける。
あぁ、そうだった。何か聞きたいことがあるみたいだ。
「その、アミスさんの剣はリトが作ったんですよね? あとミーナのこん棒も……。」
「ああ、木彫り職人なんで木を削るのは得意なんだ。とはいえ、普段は武器なんか作らないんだけどな。」
「そうですか……。」
じっとこちらを見つめるリア。
まさか、さっきの続きか? それ以上は深く聞かないでくれ。
「リア気になることでも?」
そこにメリッサが追い討ちをかけてきた。
だって最後にこっちを見て笑みを浮かべたもん。
「あ、あの、木を削るとき何かされましたか?」
「え?」
直球できた!
思わず声が出た。
「いえ、そのリトのジョブは普通の木彫り職人なのかな、なんて。」
ほう、と頷くメリッサがこちらを見る顔はすごい楽しそうだ。
どう答えるか様子見といったところか。
ミーナもアミスもこちらを興味深々で見ている。
ラキも気になることがあるのかこちらをじっと見ていた。
頼りの勇者はというとまったく興味なさげに、いや、アミスの方をじっと見ていた。
おい!
仕方ない。
「いやいやとくに何も。あれらはミーナとアミスのジョブが分かった時に、無事を祈って彫り、プレゼントしたものなんだ。」
あはは、祈りが通じたのかな、などととぼける。
「……。」
ジーっと見てくるリアさん。
ちっとも信じてませんね。
メリッサに至っては、やれやれとと顔を横に振り、あからさまにダメだという顔をした。
俺は最後の救いを求めミーナとアミスを見る。
二人は目を輝かせていた。
「兄さん……。」
「リト……。ありがとう。あなたのこの思いのおかげで、私これまで無事でいられたのよ。」
そう言ってミーナは俺に詰め寄ると俺の手に両手を重ねてきた。
「そうなんですね。お二人ともリトさんに思われているんですね。」
メリッサが仕方ないなあといった顔を見せて話しかけてきた。
いや、そんな顔を見せられても恩とは思わないから。
リアも納得はしてなさそうだがそれ以上追及はしてこなかった。
とりあえずこの場は流すことにしたようだ。
明日も投稿できると思います。