11話 賢者
何故かアミスとの結婚は解消された、というか、なかったことにされた。ミーナとの関係をはっきりさせてから、とのことだ。
ミーナと一緒に家に説明に来た村長と神父様のひきつった顔が印象的だった。
「こういう時に権力って大切ね。勇者パーティーに入っていて良かったわ。」
幼馴染はそんなことを言っていた。何をしたんだか……。つい数分前までマイ嫁であったアミスはというと、始終ブスッとしていた。
ただ、ミーナがアミスの耳元で何か話した後、アミスは驚いた顔をした後、ニヤリと笑うと。
「はあ、ミナ姉は仕方ないですね。」
そう言って、自分の部屋に帰っていった。それから、ミーナと俺は色々と話をした。
ミーナが久しぶりに自分の家に帰ったあと、庭で空を見上げる。辺りはすっかり暗くなり、月明かりだけが辺りを照らす。
「はぁ、今日は疲れた。」
そう言いながら、月を見上げる。
「良い月ですね。」
突然声をかけられ、驚いて振り返る。
「えっと、貴女は?」
そこには白銀の長い髪をした綺麗な女性がそばに立っていた。たしか、勇者一行の一人だったはず。
「私はメリッサ。賢者をやっています。」
賢者、これまたレア職だ。
「えと、その賢者様が俺に何か用ですか?」
彼女はうっすらと笑みを浮かべと、そのすべてを見通すような目で俺を見てきた。
「用と言うわけではないのですが……。私は勇者様について人材発掘を行っているのですよ、その一環で出会った目ぼしい人には声をかけるようにしているのです。」
「人材発掘……。」
そんなこともやっているのかと、彼女の仄かに茶色の光を帯びた目を見ながら思う。
ん? いやいや目ぼしい人って俺が?
ふと彼女の眼を見る。
……茶色の眼?魔眼? あの色は確か……。
スキルが発現してから魔眼に関して調べた記憶をたどり、思いだして俺はビクッとする。
茶色は鑑定!?
スキルを見られた?
「うふふ、そんなに脅えなくてもなにもしませんよ。」
「鑑定の魔眼……。」
「魔眼についてよくご存じなんですね。」
「いえ、昔、興味があって……。お伽噺にもでてくるので。」
「うふふ、そうですね。」
そう言って、近づいてくる彼女。息を感じるほどに顔を近づけた彼女はへたに身動きできない俺の顔に手を沿えると、俺のの眼を覗き込む。
「遠くからだと黒目だけれど、近くで見ると少し水色がかってるんですね。角度を変えると黄や赤や青にも見える、……きれいな眼。」
俺、もしかしてピンチ?
「うふふ、魅了されそうな綺麗な眼ですね。……うぅ、持ち帰って解剖したいよー。」
ボソッと出た言葉を聞いた俺は、ばっと手を払うと離れて距離を取る。
たぶん顔がひきつってる思う。
「うふふ、冗談ですよ。明日、ミーナさんから提案があると思います、それを受けてもらえれば……、ですが。うふふ。」
返事も聞かずに彼女はその場を去って行った。
ミーナの提案ってなに? ……いや、もう今日はほんとうに疲れた。