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1話 はじまり

連載版です。第一章は短編とほとんど同じですので読みとばしても問題ありません。

誤字報告ありがとうございます。いつも助かっております。

「……思い出した!」


12才のある朝、寝ていた俺は激しい頭の痛みとともに目を覚ますと、ベッドから体を起こすとそう口にした。


痛みと主に思い出したのは前世の記憶。

自分が、この世界とはまったく異なる科学が発展した世界の日本と言う国でサラリーマンをしていたことを思い出したのだった。


とはいえ、なんで転生したのかとか、前世の名前や家族などは思い出せない。ただ、転生したということはおそらく死んだのだろう。


これが異世界転生ってやつか……、と前世でよく読んでいたラノベと呼ばれるジャンルの小説を思い浮かべる


まさか、自分がこんな体験をするとは……。事実は小説より奇なり、とはよく言ったものだ。


窓から見えるのはこれまで十年ばかり見てきたいつもの畑や森といった田舎の風景なのに、前世の記憶がよみがえったせいかひどく新鮮な感じがした。


……そう言えば、女神様には会わなかったなと、そんなことを思うのだった。


◇◇◇


この世界では、12才までにスキルに目覚め、15才で神様からジョブを授かる。

このスキルやジョブには聖剣使いや勇者といったいわゆるファンタジーな物語に出てくるようなものから、鍛冶師や農民といった一般的なものまでいろいろある。


ジョブは教会で職業選定の儀で授かるらしく、農民から突然、剣聖や賢者といったジョブを持つものが出たりするので、この時期には村も騒がしくなる。貴重なジョブを授かったものはそのまま貴族の養子になったりするらしく、一発逆転が狙えるのだ。


一方、スキルは頭痛とともに突然頭の中に浮かび、特殊なスキルを使わなければ自分にしか分からないのが特徴だった。

ただ、噂では他人のスキルがわかる鑑定というスキルを持つものが国に一人以上はいて、重要な役職に就いているらしい……。


◇◇◇


ここで、この世界において子供のころから何度も聞かされる有名な御伽噺を一つしよう。


遥か昔にこの大陸の大半を支配する大変栄えた国があった。あるとき、その国の高位の貴族の長男が10才のとき、眼の色が黒から真っ赤に変わった。

まだスキルについてよく研究されていなかった時代、眼の色はそのまま魔眼と呼ばれる貴重なスキルの目覚めと言われていた。

その子の両親は貴重なスキルに目覚めたと、ひどく喜んだそうだが、なんの魔眼か子どもに聞いてもはっきりとは教えてもらえなかった。


月日が経つと共に、それまで気弱だったその子は徐々に横柄な態度に変わっていき、周りには盲目的に付き従う女性達が増えはじめた。


その中には同年代はもちろんのこと、重要な役職に付く大人や彼氏や夫がいたものもいたそうだ。

彼は付き従うもの達に貢がせた金銀や財宝を湯水のように使ってきらびやかな生活をし、付き従わないものや気に入らないものは、盲目的に従う女性達を使って次々に排除していった。


付き従う者たちの中にはいつしか王族に血のつながる者たちも交じり始めた。

そのうちにその影響力は国にも及ぶようになり、その影響力をもって国の財政に関わる重要な役職につくと、国の財産を食いつぶしはじめ、やがて国は貧しくなり寂れていった。


ある時、その国の様子に違和感を持った隣国から遣ってきた鑑定のスキルをもつ使者が彼を見たとき、魅了の魔眼持ちであることを知る。原因を把握した使者は自国に知らせると、隣国の王はその危険性を認識し即座に討伐隊を編成し攻めいった。


討伐隊と操られたもの達との戦いは苛烈を極め、多くの犠牲を出したが遂には彼を討つことに成功した。


すると、生き残っていた女性たちにかかっていた魅了は解け、自分の愛すべき人や両親を自分の手で貶め、あるいは殺めた彼女たちは酷く心を痛め、また、操られていたことを世間には許してもらえず、中にはその痛みや仕打ちに堪えきれずに自殺したものもいた。


そして、その国では失われた人材は戻ることなく、隣国に吸収され滅びていった。


それからというもの、魔眼、とくに眼の色が変化する魔眼は傾国のスキルの可能性ありと注意され、発生が把握されると隣国に知らせられ捕縛あるいは討伐されるようになったのだとか。


これが、この世界で堕落王の魔眼として語られるスキルに関する教訓であり、


つまり、この世界では魅了といった人の心を惑わす魔眼はひどく嫌われており、見つかると良くて捕まり監禁、最悪殺されるかもしれないと言うことなのだ。


何が言いたいかというと、前世の記憶と共に頭に浮かんだ俺のスキルは


魔眼 : 魅了 暗示 幻惑 千里


……悪名高い人心を惑わす魔眼のオンパレード。唯一人に話せそうな千里の方が場違いな感じだ。


これはばれるともう人生の詰みだな、何がなんでも隠しとおさないと。

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