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ドコルタ!  作者: カレーライスと福神漬
5/9

パム!

正式せいしきバンド名は Sapodilla <サポディラ>と発音はつおんするの。

とっても有望ゆうぼう

将来しょうらいBIGになる。間違まちがいない!」

 企画きかく会議かいぎのときの社長と同じような目をした。するどい目。


 定刻ていこくどおり、ライブハウスへ入場する。

 

 もちろんオールスタンディング。

 のり子のみちびきで、良い場所ばしょ確保かくほできた。

 が・・どうにも・・場違ばちがいな印象いんしょうをぬぐいきれない(がん)()

 へんあせがでてくる。


 ライブはしずかにはじまった。

 一挙いっきょにグルーヴを仕掛しかけてくるスタイルは苦手にがてなので、たすかった。

 Sapodillaは通常つうじょうのバンド編成へんせいに、キーボードをくわえた五人。 

 楽曲がっきょくわるくない。

 抵抗ていこうなく、スッとみみにはいってくる。

 がりも自然しぜんで、かせるきょくでは、

 オーディエンスもボディアクションを停止ていしさせ、しずかにみみかたむけていた。

 のり子はらし、Sapodillaの宇宙うちゅう遊泳ゆうえいしている。

 クリエイティビティにかんして、

 一家言(いっかげん)ある(がん)()にとって、

 まァまァ以上 ━ 最高には ちょいとばかり遠いバンド、という位置いちづけ。

 将来性しょうらいせい未知数みちすう・・という感想かんそうを持った。

なか・・

脳髄のうずい直撃ちょくげきするようなワンダーは、めったにないものさ」

 評価ひょうかをくだした(がん)()は、

 時計に目をやり、帰りの時間を気にしはじめる。


 ∴ そのときである ∴

 ∴ ボーカルのはっした ∴

 ∴ 「『パム!』いきます!」という声 ∴

 ∴ 呼応こおうするように大歓声だいかんせいこった ∴


 曲が始まったとたん、ライブ会場は、異様いよう変化へんかげた。

 のり子はレザー・コートをいきおいよくてた。

 ひろげ、ホコリをはら(がん)()


『パム!』とは得体えたいのしれない 媚薬びやくのような きょくだった。

 基本きほんは 「ん・チャッ♪ん・チャッ♪」 レゲエのリズム。

 それが、ゴムのようにびたりちじんだりする。

 一定いっていのリズムパターンや転調てんちょうといった概念がいねんを あざわらっていた。

 変幻へんげん 自在じざいなリズムに、呪術的じゅじゅつてきなメロディーを融合ゆうごうさせ、

 絶妙ぜつみょうなバランス感覚かんかくでボーカルがからみつく。

 類似るいじするきょくは・・思い出せない。

 このサンプリングの時代じだいにあって、オリジナリティーをゆうしていた。


『パム!』は(がん)()脳髄のうずい直撃ちょくげきした!


 きょくから、エロティックなマジックが、がる。

 オーディエンスの軟体なんたい 動物どうぶつさながら、クネクネおどりは・・

 ・・まるで召喚しょうかん 儀式ぎしきのようであった。

 におうようにセクシャル。エクスタシーの波動はどう放射ほうしゃしていた。

 ネットリあせをかいたのり子は、ちょっとした忘我ぼうが境地きょうち

 おどりながら、りかかるように、身体をあずけてきた。

 彼女かのじょこし(がん)()

 体温たいおんこころよい。

 のり子に感応かんのうするように、

 いつしか(がん)()も曲に合わせて、身体をらしていた。

 変則へんそく 二人ににん 羽織ばおり(もしくは)横並よこならびのチーク。

 くびすじに、ネバついたあせが、にじんでくる。

 冷静れいせい意識いしきはうすれ、陶酔感とうすいかんへと変性へんせい

 常識じょうしきよろい重力じゅうりょくうしなってゆく。

 ミュージックhighへようこそ。


「ひさしぶりに、たかぶった!

ポップミュージックの可能性かのうせいは、まだのこされていたわけだ。れいうよ!」

 ライブ会場かいじょうをあとにした(がん)()のテンションはたかかった。

「どういたしましてじゃ。少しはおやくてたみたいね」

 コートを着こんだのり子は、キラキラした眼差まなざしを向けてくる。

「このままかえるのはしいな。

余韻よいんさかなに、おさけでもどう?夜空よぞらほしもキレイだし」


 彼女の言葉にリアクト。

 天空てんくうあお(がん)()

 濃紺のうこんそら星々(ほしぼし)は、異常いじょうなまでにクリアにかがやいていた。

 目のおくおくがキーンとする。

 美観びかん琴線きんせんまされていく。

 いきいきは、ノーマルから別領域べつりょういきへシフト。

 せつなく ━ 心地ここちよい ━ 二律にりつ背反はいはん呼吸こきゅうへと変化へんかげた。


 またたいているほしひとつがふいにながれた。

 つづいて、べつほしながれだす。

 連鎖れんさ連鎖れんさ流星群りゅうせいぐんとなってりそそぎ、

 (がん)()の中へ、なだれんだ。

 体内たいない通過つうかするほしのシャワー。

 ほとばし快感かいかん

 しろ快楽かいらく

 立ちつくしたまま、全身ぜんしん律動りつどうさせ、驚愕きょうがく表情ひょうじょうかべる。

 (がん)()脳内のうない 活動かつどう開始かいしされた。

 まれ出たイメージは、

 賦活ふかつし、

 育成いくせいされ、

 鮮明せんめい立体化りったいかしていった。


 ○食べられる(AB)ガム ━ 『プラマナ』。

 ○原子げんし心母しんぼ

 ○草をむ牛。

 ⚾消える魔球=大リーグボール2号の謎。

 ○ピンクサロンのblow-job。

 ○新食感しんしょっかんのガムというミッション。

 ○Sapodilla作曲 ━ 『パム!』━ の斬新ざんしんなリズム。

 ○新しいしょく感覚かんかく探求たんきゅう

 ○その他・・・その他・・・


 言葉ことばとイメージは、目的もくてき意識いしきねっせられ、溶融ようゆうしていった。

 さまじい速度そくど撹拌かくはんされ、意味いみぞううしなっていく。

 異物いぶつ蒸発じょうはつさせては、ふたたじりう。

 精製せいせいのための不足ふそく要素ようそ莫大ばくだいなエネルギーを駆使くしし、

 脳内のうない 深奥しんおうよりみちびれた。

 オリジナルなDNAが徐々(じょじょ)設計せっけいされ、いのちまれてゆく。

 あらたな生命せいめい宿やどした灼熱しゃくねつ液体えきたいは、丁寧ていねいかたながまれていった。

 あとは・・冷却れいきゃくつだけ。

 

 (がん)()正気しょうきかえり、こちらの世界せかいへ、もどってきた。

 わずかな時間で、数年分すうねんぶんを、生きたみたいだった。


 言葉ことばうしなったのり子は、ボーぜんと、目の前の出来事できごと見守みまもっていた。

 まばたきすらわすれて。



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