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幼馴染みに起こしてもらうのは基本

「悠一、朝よ。起きなさい」


 夢うつつで微睡まどろむ意識の中、突然かけられた声と共に布団が勢いよくめくられた。


「あと5時間……」


「バカなこと言ってると遅刻するわよ」


 寝起きが悪いところを無理やり起こされようとも、襲い来る睡魔に勝てる訳ではない。

 俺は再び布団に包まろうと毛布を手繰り寄せる。


「しゃきっとしなさい。ほら、いい天気よ」


 しかし毛布は没収され、カーテンも開かれて朝陽が室内に射し込んだ。

 眩しさに余計まぶたを閉じながら抗議の声を上げる。


「朝だから起きなきゃならないってのが間違ってる。動物には夜行性のものだっているんだから、活動時間は生物ごとに定めるべきだ」


「学生は朝起きて学校に行くのが正しい活動時間よね。そんなくだらないことを言えるくらい頭が回るなら、さっさと起き上がって身支度を整えなさい」


「はい……」


 返す言葉も無い。

 俺は諦めて布団からい出た後、ふぁとあくびを1つしてパジャマのボタンに手をかけた。


「……あの、部屋から出てもらえると嬉しいんですけど?」


「言われなくてもあんたの半裸になんて興味無いわ。あたし今日は日直だから早く行くわね。それじゃ」


 そう言ってさっさと部屋を後にした彼女は、階段を軽やかに降りて玄関から出ていった。

 まったく、あいつが毎朝起こしに来るようになったから、睡眠時間が短くなってしまった。

 などと文句を浮かべながらも、けして嫌な気持ちは混ざっていない。

 それが俺と彼女、真里との距離感だ。

 さて、時間はまだ7:00を過ぎた辺りだ。ギリギリだが、2度寝しても遅刻する時間ではない。

 このまま素直に起きてもいいのだが、睡魔に身を任せるのもいい。

 どうしようか。




 このまま


☆起きる    54%

 2度寝する   46%




 起きよう。


 せっかく真里が起こしに来てくれたのに、ここで2度寝をしてしまっては好意に対する裏切りとなってしまう。気持ちを無下にしないためにも、パジャマを脱いで身支度を整えた。


******


 早起きしたおかげで登校時間も他の生徒より早い。春の少し涼しげな風を浴びながら、1人で学校へと向かった。

 校門を抜けて生徒用玄関で上履きに履き替える。階段を上がって職員室前を通りかかった時、カラリと音を立てて扉が開かれた。


「あら、ちゃんと起きたのね」


 職員室から現れたのは、大量の紙束を抱くように持っている真里だ。俺に気が付いて見開かれた瞳は蒼く輝き、桜色に艶めく唇がわずかな驚きを声にした。

 抱えている紙束が胸元に当てられているのはわざとなのだろうか。形のいい胸が紙面に押されて形を変え、その柔らかさを想像させる。


「起こしてくれたんだから、そのまま起きるさ」


「これからも心がけなさい。あんたが前に2度寝して遅刻した時のことは、今でも怒ってるんだからね」


「悪うございましたよって。そんじゃ罪滅ぼしに善行でもしますかね。プリントを半分よこせ」


 日直当番の仕事を手伝うと意思表示して俺が手を差し出すと、真里はふふんと笑って笑顔を見せた。肩甲骨辺りまで伸びるセミロングの髪がふわりと揺れ、爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。


「ありがとね」


 俺達は同じ重さの紙束を持ち、2年B組の教室を目指した。

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