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剣聖を継ぐ者

 とある森の中。外界から隔絶されたその場所に不釣り合いな人工物。時たま鉄を打つような甲高い音が響く。そこに訪れる者は一様の目的を持つ。

 果たして訪れる者を待つものとは…。


「…おや?、いつの間に入ったのでしょうね。」

 朝この店の主人が2階から1階に降りてくると1人の少年が倒れていた。燃えるような短い赤い髪、上下揃いの茶色の服を着ている。一際目につくのはその右手に刻まれた紋章。それは少年がある一族に連なる者であることを示していた。


「うむ、取り敢えず運びますか。サクラ!、彼をベッドに運んでおいてください。」

 主人が部屋の奥に向かって声をかける。すると1人の少女がやってくる。

 桃色の髪をサイドテールにした可愛らしい少女だった。


「はい、御主人様。此方の方は…」

 サクラと呼ばれたその少女は倒れている少年にちらりと目線をやると主人に尋ねるような目線を向ける。


「えぇ、その資格を持つ方です。今回はどの様な武器をお求めでしょうね。」








「う…ん、」

 少年が目を覚ます。意識を失っているときは閉じられていた瞳。左は黒、右は髪と同じ燃えるような紅…オッドアイである。その組み合わせのオッドアイも彼の素性を表す。


「あら、目が覚めたのですね。少しお待ち下さい、ご主人様をお呼びいたします。」

 少年が目を覚ましたことに気付いたサクラが座っていた椅子から立ち上がり部屋を去る。ずっと少年の様子を見ていたのか机の上に重ねられた本が時間の経過を物語る。


「うっ、ここは…、、俺はついたのか…?。」

 辺りを見渡す少年。最後の記憶と今の状況を擦り合わせているようだった。


「目が覚めたようですね。ようこそ我が工房へ。私は貴方を歓迎しますよ。」

 部屋に入って来た店主が上体を起こしている少年に向かって言う。


「…あんた、あんたが噂の鍛冶屋か。俺は…」


「剣聖の一族ですね。その腕、髪、そして目を見ればわかります。」


「目…?。そんな俺はまだ…!。」

 主人の話を聞いた途端少年が跳ね起きる。そして慌てて何かを探す。


「鏡ならここにありますよ。」

 その行動を予測していたかのように店主が懐から手鏡を出す。それをひったくるように掴む少年。


「…そんな、…目が染まってる。親父…あんたは…死んだのか?。」

 手鏡を覗き込んだ少年は自らの目の色に絶望の表情を浮かべる。


「御主人様こちらをどうぞ。」

 サクラが主人に紙の束を手渡す。


「うむ、『剣聖は遥か昔に国を救った英雄。その座は代々受け継がれ先代の死をもって継承とする。特徴は赤い髪と右手の紋様。更に当代は右眼が赤き瞳に変容する。』成る程貴方は既に剣聖を継承しているようですね。」

 主人がサクラから渡されたのは剣聖に関しての記述だった。そこに書かれている内容、そして少年の取り乱しかた。当然一つの結論に帰結する。


「…俺はあんたの言った通り剣聖の一族だ。俺の親父が当代の剣聖。だがな、殺されたみたいだ。」


「心当たりがあるのでしょう?。」


「あぁ、間違いなく…『銃聖』の仕業だ。あいつらは剣聖を快く思っていなかった。次々と門下生がやられていった。そこで俺の独断で…力を与えてくれるって噂の鍛冶屋に来たんだが…遅かったか。親父が負けたなら我が門下に勝ち目はない。剣聖は途絶える。」


「くくくっ、遅いということはないかもしれませんよ。」


「私は力を与えたことなどありません。望みを叶える術を与えるだけです。」


「さぁ、貴方の胸の内にある望みを…語りなさい。」


「俺は…殺したい。親父や門下を殺した銃聖を殺したい。…だけど…決闘で殺したい。剣聖が劣らないことを証明したい。」


「だけど…俺では無理だ。俺なんか親父にも遠く及ばない。」


「その願い聞き届けた。」


「うおっ、⁉︎。何を…」

 突然店主の口調が変わり切りつけられる。しかし流石は剣聖の一族。紙一重で回避する。


「流石の目ですね。全てを見切ると言われるだけはある。だけど…」


「拙い。私のような鍛治師にすら引けをとる。」


「…くはっ。…」

 店主の手にあった剣が消える。そして次の瞬間上から降り注いだ剣は少年に突き刺さる。それは深々と突き刺さり心の臓に達する。


「その痛みの中で願え。心の叫びを聞かせろ。」


(…俺に強さを。…いや、時間を!。剣聖は絶対に負けない。俺が…)


「証明する‼︎。」

 心臓を貫かれた痛みに耐えながら叫ぶ少年。


「…これが貴方の武器です。」


「銘は『その時までサヨウナラ』。貴方が剣聖として成熟するまで切られた相手を次元の狭間に幽閉する。」


「…成熟するまで。」


「はい、相手は貴方の父親を殺した状態のままになります。つまり、」


「貴方が勝てる保証はどこにもありません。しかしこれは貴方の望んだこと。」


「さぁ、私に長い長い物語を見せてください。」






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