08 初送信!
「神田さんの息子さん大きいね。」
「体ばっかりでかくなって、中身はまだまだ子供ですよ。」
「大介君だっけ?身長どのくらい?」
「187センチです。」
「187…。最近の子の成長はすごいな。」
入口付近にいたこのおじさんに親父のとこまで案内してもらったのだ。そのおじさんにお礼を済ませ、携帯電話のコーナーに向かうと、
「大介!通信会社はK社の携帯な。ここのが比較的初期費用抑えられるから。」
「分かった。」
親父は慰謝料代わりにあの家と土地の権利を母親に譲った。後の支払いは看護主任をやってる母親の給料でも払っていけるだろう。あとは俺の養育費だが、それは俺が大学卒業するまで続くそうだ。
携帯各社の機能なんて分からない。だからデザインを重視して、あとは音楽を聴くのに特化したメーカーのを選んだ。その後の手続きは、カウンターの中の若いお姉さんがやってくれた。
そして晴れて15歳にして携帯デビューを果たしたのだ。そして親父と一緒に出口を目指した。
「なぁ、大介。」
「うん。」
「カウンターのお姉さんどうだった?」
「カウンター?さっき手続きしてくれたお姉さん?」
「あぁ。」
「いや、特に不手際はなかったけど…?」
「そうじゃない。」
「じゃ、何?」
「いや、あー、う〜ん、実はあの子のお腹の中にお前の、弟か妹がいるんだ。」
「えっ?」
「振り向くな!」
そんな事言われても見たくてたまらなかった。いや茶髪でイマドキの子だった。そんなことより、
「あの人いくつ?」
「ん…、22歳だ…。」
「22歳?あっ、えーと、親父って確か今年42歳だったよね。」
「ん…、そうだな…。」
「親父、その年の差は犯罪だよ。」
「そう言うなよ。」
「ちゃんと紹介してくれればよかったのに。」
「そうか。いや…、彼女も…、お前から父親取ったから遠慮が多少あるみたいでな…、」
「俺と親父の関係は変わらないよ。」
「ありがとう。大介にそう言ってもらえると助かるよ。」
「産まれたら見に行っていいか聞いておいてよ。」
「分かった。お母さんには余計な事言うなよ。」
「母さんお腹の子の事知らないの?」
「いや、お腹の子の事は知ってる。そうじゃなくてお前が彼女と会った事や、兄弟見に行く約束したとか…、」
「分かった。それは言わないよ。」
「お母さんの事頼んだぞ。」
「この間から何回同じ事頼むんだよ。」
「いや…、そうだな。高校行っても勉強頑張るんだぞ。」
「分かってるって!」
俺はそう言って親父と赤外線で番号とアドレス交換した。でも、そのやり方を知らない俺はただ見てるだけ…。そして俺は親父の職場をあとにした。
そして近くのファーストフードで取説見ながら自分で色々いじってみた。バイト先の見竹さんも登録出来た。続いて見竹さんにメールしようとアドレスを呼び出すと、親父と見竹さんの他に“慶子”と登録してあるアドレスがある。なんだ?気持ち悪い。
見竹さんへのメールを一旦止め、登録してある慶子なる人物の情報を見てみようとすると、誰からか分からないがメールを受信したのだ。
親父からか…?と思いつつ受信ボックスを開くと慶子なる人物からで、内容を読んでいくと、どうやら親父の新しい奥さんだという事が分かった。さっき受付しながら登録したのだろう。しかもメールの最後に“今度二人で会って下さい。”と書いてあった。
なんか腹黒い子だったら嫌だなと思いつつ、なんとか返信を送ってみた。そうして見竹さんにするはずだった俺の初メールは、親父の新しい奥さんの慶子さんと終わってしまったのだ。