06 強引な俺
それからお姉さんの冴子さんの事をとか色々と話をした。だけど肝心の本人の話になると言いたくないようで口ごもるのだ。
「そうゆう神田君はどうなの?好きな子いなかったの?」
「俺?そうだな…、可愛いなとか、綺麗だなってのは思う事もあったけど、きっかけがなくてね。」
「ダメだよ〜。男なんだから積極的に声かけなきゃ!浅野君と神田君は人気あったんだから!」
「そうなの?」
「うん…。」
「ちなみに福島はどっちかといえば、どっちだったの?」
さっき“中学の時、好きな奴いた?”って質問した時には答なかったから、今度は違う角度から聞いてみた。
「えっ?」
「だから俺とタカだったらどっち派だったの?俺派?タカ派?」
「私は…、」
タカ派か…?もしそうだったらガッカリだな…。逆にどっちもイヤ!ってバッサリいかれたりして…。
「和代は神田君が好きみたいよ。彼女募集中なら和代と付き合ってみれば?」
和代って直江か?もしそうならパスだな…。
「福島の事を聞いてるんだよ。タカ派?」
チラッと福島の方を見ると、どうもそんな感じだった。
「そっか…。」
「違うの…、」
ん?
「和代とね…、和代と誰が好き?みたいな話をしたことがあって、私も始めは、神田君ってバスケ上手いしカッコイイな〜って思ってたの。でも…、和代に『神田君の事好きだから取らないでね!』みたいな感じで言われて、つい私は『浅野君の方がタイプかな…、』って、口から勝手に出ちゃってて…。」
勝手にって…、
「で、回りもなんだかそんな感じで見始めて、気付いたらそうなのかな〜って、自分でも思い始めて…。」
恋は勘違いからってパターンか…?
「結局、本当に好きかどうか分からないんだけどね…。」
「告白してみれば?福島なら大概の奴がOKすると思うよ。俺が保証する。」
「そんな…。そんなこと言ったら神田君の方が大概の子がOKするよ。」
「だったら、俺と付き合ってよ。」
「え…、」
ダメか…?それとも迷ってくれてる?
しばらく沈黙があって苦しかった。
「タカが良かったら、俺からタカに言ってやるよ。福島がお前の事好きらしいぞ!って。」
「やっ、止めてよ!そんな事しないでよね!もしそれでフラれでもしたら、マネージャーやりづらくなっちゃうじゃん!」
少し分かった事がある。少なくとも福島はタカの事が気になるみたいだ。それとも…、それともちゃんと告ってみるか?
「分かったよ。」
「神田君は?和代の事はダメ?」
「ちょっと待って!さっきから言ってる和代って誰?」
「和代は和代よ!直江和代!下の名前知らなかったの?」
やっぱり直江か…、
「彼女には全く興味ないからな…。」
「えっ?」
「あっ、ゴメン。直江は女として意識した事ないからさ…。」
「そっか…。」
これでタカからも福島からも、今後この話が出ることはないだろう。
そこに夜勤明けなのか母親が帰ってきたらしい。
「大介いる〜?」
っていうかワザと大きい声出しているに違いない。玄関に女の子のブーツがあって、部屋にいるのは明確なのだ。
「悪い。紅茶でも飲んでちょっと待ってて。」
「うん。」
そう言って一階に行くと、
「何?何?新しい彼女?」
「ちげーよ。」
「だったら…、」
「恋の相談ってやつだよ。」
「ふ〜ん。まぁ、相談してたらいつの間にか恋に落ちてたってパターンもあるから、頑張りなさいよ。」
「はぁ…?そっちは?夜勤明けだったの?」
「ん?まぁね。」
俺は知っていた。親父の浮気が離婚原因だったが、母親の方も随分昔から医者と遊んでる事を…。でも親父は一切知らないだろう。男って奴は自分の奥さんや彼女が、浮気なんかしてないと思い込んでしまう質らしい。
「ちょっとデートしてくるから臨時の小遣い支給してよ。」
「彼女じゃないんでしょ?」
「だって夜勤明けなら、これから寝るんだろ?うるさくしたら悪いから俺らが外で…、」
「ん…?まさかその娘襲うつもりだったの?」
「何言ってるの?」
「ちゃんと避妊するんだよ!」
「あー?だから、彼女じゃないんだから襲わないって!」
「ふ〜ん、彼女だったら襲うんだ?ちょっと待ってな。」
「おーい!揚げ足取るなよな…。」
そう言って母親は自分のベッドルームに行くと何か持って出てきた。小遣いくれるのかか?一万円札か五千円札か…?と、右手で受け取った感触はお札ではなく、なんだかビニールっぽい感じ…?何だろ?と思って見てみると、なっ、なんと!コンドームだった。
「エッチするのに相手の合意がなかったら、しちゃダメだからね。」
ウチの母親はどっかズレてる…、それとも俺がズレてるのか…?
「じゃ、私は出かけるから。」
「どこに?」
「仕事仲間と買物。じゃ、戸締まりお願いね。」
「分かってる!」
戸締まり!?泊まりか?って、男か?
母親が出掛けたので部屋に戻ると、福島が俺の机の上にあった少しエッチな本に見入っていた。っていうか、普通それは見ないだろ!そして俺はそっと福島の後ろに立ったのだ。
「その本あげようか?」
「ワッ!」
びっくりして本を閉じてこっちに振り向いた。目が合う。俺は福島に少し顔を寄せ、
「女の子でもそうゆう本に興味あるんだ?」
「そっ、そんなわけないじゃん!」
なにやら動揺しまくりで、額から汗が噴き出しそうな勢いだ。なんだか見つめ合ってるみたいだったので、思いっ切り顔を近付けてみた。こっちもドキドキだが、相手もドキドキしてるはずだ。
「神田…君…?」
チュッ…。勢いに任せてキスしてしまった。フレンチなキス…。不安げな顔をして俺を見ている。そして少し顔を離した。
「俺と付き合おうよ?」
「…。」
「一応、真剣に言ってるんだけど?」
「…。」
「前から福島の事いいなって思ってたし…、」
「嘘…?」
「マジ。」
「でも…、和代に何て言ったらいいか…?」
「それって彼女になるのはOKって事?」
「いや…、だから…。」
「よし!付き合いだした報告をどうやって直江にするか一緒に考えよう!」
「……うん。」
アレ…?これってOK…だよな?やっぱり男には強引にいくとこも必要か?
「神田君…、」
「何?」
「さっきのファーストキスだったんだ…、」
「えっ?あー、そう。そうだったんだ…。そりゃ、あれだよ…、ファーストキスってもんは突然なものなんだよ。」
「何それ?」
「俺じゃ不満だった?」
「えっ…?いや…、そんな事ないけど…、」
「何なら初エッチもしとく?」
「…。」
どうやら福島にはまだ早いみたいだ。
「ジョークだよ。」
「神田君なら…いいよ…。」
「無理するなって!」
「無理してない…、エッチしたら彼女になった実感沸くかもしれないし…。」
そんな理由で初エッチするってどうなの?だけど、俺は15歳の健康な男なわけで、結局俺は彼女の処女を頂いてしまった。
彼女は俺と恋人になった事を、実感出来たのだろうか…?