21 ゲーム2
3分の休憩のあと2本目のゲームが始まる。
1本目は俺らのチームのセンター戦が機能し、相手はタカのスリーポイントシュート頼りの単調な攻めだった。速攻は両チーム共そんなに機能せずに終わっている。両チーム共上手く潰しあってるのだ。。
大迫さんは松本さんに遠慮もあったのかもしれないが、期待してたよりも戦力としては厳しいものがある。谷津さんも前島も予想通りのプレイヤーだ。
加藤に関しては、少し鍛えなきゃダメだ。コイツは体が固いのもあるが、自分の身体能力を活かし切れてない。ただ俺もそうだったが、普段の練習相手に事欠くのだ。中々中学に加藤クラスの体格の奴はいないだろう。だから練習では本気を出せず遠慮する傾向にあるのだ。だから伸び悩む。
その点、俺は地元のクラブチームに小さい時から顔を出していたせいか、練習相手に事欠くというのはなかった。小学の頃からデカかったが、その頃クラブチームに混ぜてもらえば、まだまだ小さい方から数えた方が早かった。そのためクラブチームではガードやフォワード、小学校のミニバスではセンターといった具合だ。だから今のような中も外もこなすハイブリッドなプレースタイルになったのだ。
あとタカは相変わらずシュート確率がいい。片山のディフェンスが甘いのもあるが、5本打って1本外しただけだ。
1本目は勝てたが、2本目のゲームでは、俺がこのチームで1番敵に回したくない奴が入ってくる。こいつがチームにいいリズムを与えるのは間違いない。フリーの奴を絶対見逃さないし、隙あらば自らカットインして切り込んでくる。こっちチームの桜井が未知数だけに不安だ…。
そこで名前の知らないマネージャーが『1分前です!』と体育館にいるみんなに聞こえるように、知らせてくれる。
「ウチのチーム集まって!」
伊藤先輩だ。別に作戦なんか無いだろうに…。
「大介お前外やれ!」
「えっ?」
「なんだ不服か?」
「いえ…。」
「スリーポイントも狙っていいぞ。」
「はい。」
何故伊藤先輩が俺に優しく、俺のプレースタイルを知っているか…、それは先輩も地元のクラブチームで練習してたからだ。
そもそも先輩のお父さんが仲間を集めて作ったチームで、そのお父さんがミニバスのコーチをしてた。それでクラブの練習に誘ってもらったのだ。
「片山は中でやってみな。」
「えっ…、はい。」
「あと桜井は前島のマークな。俺が大島に付くから。」
おー、なんか的確な指示だ。さすが部長だけある。
「あと松本さんは、1本目と同じ感じで頑張って。」
「はい。」
ちょうど指示が終わったとこで、マネージャーが『時間です。』と言ってきた。
おーし2本目もやってやろうじゃないの!
2本目はウチらがエンドからスタートとなった。伊藤先輩が上手く大島をマークしてるが、それでも何本かやられてる。
今回の俺はアウトサイドでのプレーなので比較的楽だ。加藤のディフェンスはリングの近くならガツガツ当たり負けしないし、リバウンドも強いので機能するが、外のディフェンスはザルもいいとこだった。スリーポイントも4本中2本決めた。さすがにタカのようにはいかない。
松本さんは1本目同様大迫さんを圧倒してた。そして意外に、ローポストでプレイしてる片山も、中学時代やっていたポジションだからか、いい感じで頑張ってる。
問題は桜井だ。そこそこでしかない。まぁ、ウチは女子部みたいな強豪チームじゃないから、練習も緩いし3年間辞めずに続けてくれるだろう。
2本目は同点で終わった。また3分の休憩である。10分ゲームを4セットやるそうだ。
「おい、大介。」
「はい。」
「次俺が休みだから、お前が考えろよ。」
「はい?先輩が休んだらダメですよ。ウチら機能しなくなります。」
「だから、次は順番で俺が休みなの。大介がゲームキャプテンだから、よく考えろ!」
「そんな…。」
考えろって言ったって…。まさか俺が大島のマークに付くわけにもいかないし…。それより責めだよな…、誰がボール回す?運ぶ?中西?桜井?ダメだ…、ここはみんなに相談か?でも誰に?
そんな俺を見兼ねたのかチームの一人が声をかけてきた。
「次が一番大変だね。」
「そうなんだよ。」
って、松本さん!?
「苗字聞いていい?」
「えっ、あぁ…、若宮。」
「若宮ね。若宮君はどこを潰したい?」
「ガードの大島。」
「次は?」
「シューターのタカかセンターの加藤。いや加藤だな。」
「ふ〜ん。私はガードのマークはした事無いから加藤君に付こうか?」
「いや、いくら松本さんでも加藤は…、ちょっと待って?加藤押さえられる自信あるの?」
「自信はないし、多分無理だけど、マッチアップはしてみたい。」
なんだこの強気な発言?試しにやってみるか…?
「分かった。」
2人で話してると、休憩中なのに、他の3人も集まってきた。
「次のディフェンスのマークなんだけど、加藤に松本さん。」
「はい。」
松本さんは強気だな…。
「で、大迫さんに片山君。」
「おう。」
「で、タカに…、浅野に中西君。」
「うん。」
「浅野にはピッタリ目のフェイス・トゥ・フェイスでマークして。」
「オッケーやってみる。」
「谷津先輩に桜井君。」
「分かった。」
「谷津先輩はロングレンジは無いから、離し気味で付いて、カットインだけ注意して。」
「OK。」
「で、俺が大島。」
これでよかったのか…?
「攻めは?」
「松本さんと片山君のローポストで始めよう。あとはマークがズレたら、俺が中に入るから。あと運ぶのは中西君が中心に桜井君とお願いします。」
「分かった。」
ダメなら俺が運べばいい。
「時間でーす。」
あれっ?1分前って言った?聞き逃しただけか?
「よし行こう!」