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19 初顔合わせ

「1年8組若宮大介入ります。」


「おっ、大介待ってたよ。」


「失礼します。先輩ご無沙汰してます。」


「そんなとこいないで中入れよ。」


「はい。」


 部室を見渡すと伊藤先輩と谷津先輩と前島の糞野郎がいた。他にも知らない顔が何人かいる。1年もいるみたいだ。


「お前ん家、親離婚したんだって?」


「はい。ですからバイトして家計の負担減らさないといけないんで…、」


「聞いてる。バイト優先だろ?」


「はい。」


「それでいいよ。」


「すみません。」


「ただし、公式戦だけはちゃんと来てくれよな?」


「はい。それはもちろん。」


「今日から参加するんだろ?」


「はい。よろしくお願いします。」


「おう。ロッカーは空いてるとこ使ってくれ。」


「はい。」


「一応紹介しとくと、3年が俺と大迫。」


「よろしくな。」


 大迫さんは温和な感じの人だ。


「よろしくお願いします。」


「2年は…、前島と谷津は知ってるよな。」


「はい。」


「あとは幽霊部員みたいので、試合の時とか、気の向いた時にしか練習に来ない高橋ってのがいるんだけど…、おい前島!」


「はい。」


「今日、高橋出るって言ってたか?」


「いや、聞いてないです。でも多分バイトじゃないですか?」


「そうか…。1年は…、浅野!」


「はい。」


「1年とマネージャーはお前があとで教えておけ。」


「分かりました。」


「なんか質問あるか?」


「2,3年生は全部で5人ですか?」


「そうだ。試合になったら退場出来ないから、3月まで大変だったよ。」


 酷いチーム状況だな…、


「そうですか…。」


「あとは無いか?」


「質問じゃないんですが、いいですか?」


「おっ、なんだ?」


「実はマネージャーの福島と付き合ってます。」


「何?」


 回りにいた人間は、一瞬何が起きたか分からない感じで、時が止まった様に静かになった…。着替えの手を止めた奴さえいる。


「本当か?」


「はい。一応報告です。」


「みんな聞いたか?カップル1号な!」


「マジかよ…。」


「どうした前島?」


「えっ?いや、なんでもないです。」


「そうか。じゃ、とっとと着替えて体育館行くぞ!」


「はい。」


 前島はガチでがっかりしてた。それにしても先輩方は、中学卒業後そんなに身長が伸びてないのか、俺より10センチ以上低かった。これじゃ、やっぱり弱いよな…。




 体育館に向かうと、中からダム…、ダム…、とボールの弾む音が聞こえる。


「マネージャーが先来てるの?」


「いや、違うと思うよ。」


「じゃ、誰?さっき言ってた高橋先輩とか?」


「それも無いな…。」


 それ以上聞くのを止めた。行ってみれば分かることだ。

 そしてそれが顧問の綿貫さんだと分かった。


「おー、お前ら遅いぞ!」


「バスパンなんか履いてどうしたんですか?」


「ん?俺も一緒に体動かそうと思って。」


「マジすか?先生いくつすか?」


「馬鹿にするな!まだ29歳だ。まだお前らに負けないくらいには動けるぞ!」


「ケガだけはしないで下さいね。」


「だな。」


「先生上手いすか?」


「ん〜、高校時代は上手いと思ってたよ。」


「『高校時代は』って、微妙な言い方ですね?」


「大学で鼻へし折られたよ。体力も自信あったけど、上には上がいるってね。」


「そうなんだ…。」


「加藤もデカイけど、やっぱり若宮もデカイな。」


「先生、コイツ準決で俺らに負けたくせに、最後の大会、得点王だったんですよ。」


「ほぉ〜っ。1試合少なくて得点王はすごいな。」


「その試合でマークしてたのが加藤なんですけど、若宮一人に40点以上やられたんですよ。」


「そうだっけ?」


「嫌な事思い出させるなよ。」


 横でバッシュを履いてた加藤が暗くなってた。


「若宮のワンマンチームだったのか?」


「いや、もう一人。外から入れる奴がいたんですけど…、えーと…、あっ、あそこでマネージャーと話してる奴です。」


「浅野か?」


「奴のスリーは凄いすよ。かなり遠目からでも打ってきますし、それにモーションが早い。」


「それは何度か練習見てるから知ってる。でもお前達が勝ったんだろ?」


「まぁ、ウチは若宮のとこと違って選手層厚くて、みんな平均的に点取れてましたし、俺のポジション以外は身長上回ってましたから。」


「ミスマッチか。」


「はい。」


 俺やタカはあまり身長差は気にせずプレーしてたが、他のポジションは辛そうだった。

 いつしかマネージャーも全員揃ったみたいで、その中に有紀姉や陽子もいる。


 練習は、軽いランニング、ストレッチ、パス練、ランニングシュート、スリーメン、3対3と過ぎていった。その頃女子の顧問とあのスーパー女子高生がやってきた。なにやら綿貫さんと話してる。そのあと伊藤先輩も呼ばれた。


「おー、集合。」


 伊藤先輩の掛け声に、3対3を止め先生達のいるとこへと集まった。


「5対5のゲームな。で、この子も参加する事になったから。」


 男子の練習に参加?確かにバスケの上達の近道は、自分より上手な奴らと練習することだ。特に自分より上手い奴と1対1をすること…。

 おそらく負けるであろうが、そこから何かを感じて学んでいく事が大事だ。始めはその人のプレーを真似するだけでもいいのだ。


「自己紹介してもらっていい?」


「はい。1年の松本です。ポジションはセンターです。よろしくお願いします。」


「はい。よろしく。」


「内田先生。チームの振り分けは背の順で構わないですか?」


「任せる。そのかわり優先的にゲームに出してくれ。」


「分かりました。綿貫先生はどうします?」


「俺は審判でもするよ。」


「はい。よし。じゃ、背の順で並んで。」


 背の順で並ぶと、加藤が1番でかく、次いで俺、その次が松本さんで、続いて大迫・タカ…、最後が大島だった。

 チーム分けは背の高い順で蛇行しながら並び、1・4・5・8・9・12番目が同じチームになり、残りのメンバーが2番目に背の高い俺と同じチームとなった。俺のいるチームのメンバーは、伊藤先輩の他は全員1年で片山・桜井・中西、そして松本さんだ。

 どうも見た目ウチのチームが劣る気がする。まずはお互いのチームで1番小さい大島と桜井が休んでゲームがスタートするようだ。

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