17 確認の電話
「もしもし有紀姉?」
「大介遅いよ!待ちくたびれたよ〜。」
「悪い…。」
「で、話って?」
「あのさ、冴子さんの妹の陽子の話なんだけどさ。」
「陽子ちゃん?陽子ちゃんがどうしたの?」
「実は今、俺と付き合ってるんだ。」
「…。」
「もしもし?有紀姉聞いてる?」
「あー、聞こえてるよ。そうなんだ。陽子ちゃん可愛いもんね。」
「でさ、俺達の事言ってないよね?その…、なんて言うか…、昔…、エッチしたとか…体の関係があったなんて…、」
「バッ、バカ!言うわけないでしょ?いくら同じ部活のマネージャーっていっても、まだそんな事言いあえるほど、打ち解け合ってなわよ!」
「よかった…、って打ち解け合ったら言うのかよ!?」
「言わないって!いちいち揚げ足とらないでよ!」
「わっ、悪い…。」
「でも、そんな事心配してたんだ?」
「そりゃ…、付き合い始めたばかりだし、余計な心配かけたくないしさ。」
「男だねぇ…。」
「それと、ちょっと事情があってまだ付き合ってる事公表してないから、しばらく黙っててくれないかな?」
「…。」
「有紀姉?聞いてる?」
「黙ってて欲しかったら、バスケ部入りなよ。」
「脅すなよ。俺の知ってる有紀姉は、俺が入部しなくても裏切るような奴じゃないだろ?」
「…。」
「有紀姉?」
「分かったわよ。」
「そう。よかった。そうだ有紀姉は今彼氏いるの?」
「…。」
「おーい?有紀姉?」
「あっ…、あのさ…、そのうち大介も耳にするかもしれないから先に言っておくけど、私って『魔性の女』って言われてて…、」
魔性の女?小悪魔じゃなかったのか?でもそんなに変わらないか…?
「なんていうか…、」
「俺は誰かに何か聞いても有紀姉を信じるよ。」
「大介…。」
「言わなくていいよ…、たとえ、有紀姉が不倫してようが、二股三股してようが、援交してようが、俺は有紀姉の味方だから。」
「なっ…?」
ん…?言い返さない…。普通なら、ここは否定するよな…、って事はどれかは当たってるって事?まさか“味方”って言葉に感動してるとか…?
「ありがとう大介。でもバスケ部には入りなよ。」
「だから、入らないって!」
「いいの〜?そのうち陽子ちゃん、誰かにやられちゃうかもよ〜。」
「えっ!?何それ?誰かに言い寄られてるとか?」
「はっきりは分からないけど、あの様子だと、相当気にいってるね?」
「1年?」
「前島。」
「まえっ!?」
前島の野郎…。
「陽子ちゃんって可愛いから、前島じゃなくても声かかりそうだけどね。」
「他にもいるの?」
「どうだろ?」
「…。」
「大介が入部して守ってあげなよ。」
「陽子辞めさせる。確か今月一杯は仮入部期間だよね?」
「本人が辞めないって言ったら?」
「その時は…、」
「別れるのは選択肢にないんでしょ?なら入部だね。」
「…。」
「みんな待ってるよ〜、大介が入ってくるの。」
「…。」
「大介?」
「陽子に聞いて、辞めないって言ったら、バイト先に相談してみるよ。」
「そうこなくちゃ!」
くそー。前島の野郎だけには指一本触れさせねぇ!
それで電話は切ったのだが、結局有紀姉に彼氏がいるのかいないのかを聞きそびれてしまった…。