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16 有紀姉の噂

「いらっしゃいませ!」


 駅前という事で、このコーヒー屋はそこそこ繁盛してる。仕事中は中々雑談をする暇がないのだ。それでもたまには間が開く事もある。


「見竹さん、聞いていいですか?」


「何?」


「この間言ってた、店長がちょっかい出してるって、どの娘ですか?」


「そんなの聞いてどうするの?」


「いや、別に聞いてみたかっただけです。」


「知らなくてもいいんじゃない?」


「もしかして複数いるんですか?」


「まぁね。」


「マジすか?」


 見竹さんが頷いてる。


「神田君…、じゃなかった若宮君、無駄口叩いてる暇あったらダスターでテーブル拭いてきて!」


「はい…。」


「あとダストボックスの中も見て、一杯だったら新しいのと変えてきてね。」


「はい…。」


 ていうか、教えてくれてもいいじゃん…、別に店長本人がいるわけでもあるまいし…。ん…、まさか今いるバイトの中にその相手がいるとか…?今いるのは新田さんと…冴子さん…。

 もし冴子さんに手を出したら、店長でも半殺しにしないとダメだな…。

 そこに自動ドアが開いたので『いらっしゃいませ。』と声をかけたら、俺の知ってる顔だ。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、俺を見つけて近寄ってきた。


「大介!話って何?」


「明日言うって言ったろ?」


「メールでね。でも気になるじゃん?」


「今、バイト中だから。」


「何時に終わるの?」


「10時。」


「まだ3時間以上あるじゃん!しかもそんな遅くまで待ってらんないし。」


「終わったら電話するよ。」


「ん〜、別に明日学校でもいいけど。」


 そんな不特定多数がいる場所じゃ無理だ。それに、ならべく二人の状況がいい…。


「あ〜冴子先輩〜。」


「あっ、おい。」


 しまった。二人は男子バスケのマネージャーの先輩後輩の仲だった。

 何やら『久しぶりです〜。』的なやり取りをしている。その二人の中に入る事も出来ず、俺はダストボックスのビニール袋の交換を急いで仕上げた。

 そして、ゴミ袋を店の裏の所定の場所に置き、店内に戻ると有紀姉は帰ったらしく、すでに見当たらなかった。


「さっきの子、彼女?」


「ちっ、違いますよ。」


「あらそうなの?でも『大介』って下の名前で呼んでたよ。」


「昔近所に住んでて、ガキの頃よく遊んだんですよ。」


「ふ〜ん。」


「もしよかったら見竹さんも『大介』って呼んでもらっても構わないですよ。」


「私の立場で出来るわけないでしょ!?」


「そうですか…。」


 見竹さんは意外と堅い人なのか?




 冴子さんとシフトが同じ日は、決まって一緒に帰るのが習慣になりつつある。大学生の冴子さんの服装はカジュアルな感じで可愛くまとまってる。金がなくて、私服の少ない今の俺は学生服姿だ。


「ねぇ大介君。」


 いつの間にか、俺の呼び名は苗字から名前へと変わったのだ。おそらく陽子が自宅で冴子さんと話す時に『大介』と呼んでいて、それが耳慣れしたのだろう。


「なんでしょ?」


「有紀ちゃんと仲いいみたいね?」


「えっ?まぁ、幼なじみみたいものですから。」


「そうなの?」


「いやだな…、なんすか?」


「いや、あの娘、色目使うの上手いらしいから。」


「色目?」


「ウチらの中では小悪魔的存在だったのよ。」


「小悪魔ですか?」


「私の友達が、あの子に彼氏取られたって言ってたし、他の子なんかは取られてなくても一回あの子と寝たとか、色々噂になっててさ…。」


「マジで?」


「取ったって言い分は、ちょっと違うか…、結局アプローチしてくのは男の方だもんね…。」


「…。」


「でも私の友達は『あの子に彼氏取られた』って確実に言ってた。あとは『またあの娘じゃない?』みたいな噂話だし…、」


 有紀姉がそんな尻軽女みたいに言われてるのは、なんか嫌だった。それは本当なんだろうか…?


「大介君。」


「はい。」


「陽子泣かせるような事しないでね。」


「もちろんです。」


 泣かせるようなことはしないつもりだ。だから有紀姉にも余計な事を喋らないように、口止めするつもりでメールしておいたのだ。それにしても有紀姉がそんな風に言われてるなんて、大丈夫なのかな…?

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