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14 相談相手

 入学前の俺の携帯電話のメモリーは、両親と陽子と見竹さんに店長、それと親父の新しい奥さんの慶子さんの6件だけだった。

 それがタカに教えたばっかりに、有紀姉を始め男バスメンバーからの勧誘メールが度々入ってくるのだ。伊藤先輩と堀北中出身の大島と加藤からもくる。不本意だが、誰からのメールか分かるようにこのメンバーも登録する事にしたのだ。

 あとのクラスメイト数人とも交換している。その赤外線で情報交換する度に、横に座ってる渡辺さんも交換したそうにしてるのだ。でも向こうから言ってこない限り、俺の携帯に渡辺さんの電話番号が登録される事はないだろう。


「よーし、お前らもたもたするな!」


「はーい…。」


 4月の体育の授業は短距離のトラック競技だった。100メートル走と110メートルハードル、それに走り幅跳びの記録を計るというのだ。

 ウチのクラスは隣の7組との合同での体育なので、タカも一緒に授業を受けてる。


「大介!俺と勝負しようぜ!」


「長距離だと勝てる気しないけど、短距離じゃ、負けねぇよ。」


「よし!だったら一つでも俺が勝ったら、バスケ部入れよな!」


「なんでそうなるんだよ?こっちが勝ったら、なんかメリットあるわけ?」


「う〜ん…、名誉…!?」


「そんな勝負乗れないね。メリット一つない賭けに乗る奴なんていないよ。」


「負けるのが怖いんだろ?」


「タカ…、今のお前って、小学生並だぞ…。」


「うっ…、」


 中学時代の3年間、3つの競技で同じ年の陸上部よりいい記録を出し続けた俺は、学年トップのポテンシャルの持ち主だった。だからタカに負ける気など全くなかった。


「だったら、ウチの加藤が大介に勝つ!」


 加藤か…。体格的には俺と変わらないが、俊敏性はどうなんだろう?ジャンプ力だけはとにかくあるのは間違いないけど。


「俺なら遅いぞ。」


 横にいた加藤があっさり言ってしまった。タカが残念そうな顔をしたのは言うまでもない。

 女子の体育はハンドボールみたいで、トラックの方じゃなく、狭い方のグラウンドでゲーム形式でやっていた。中でも目立つのが、あの背の高いモデル系の女の子だ。

 渡辺さん情報によると、1年生で唯一1軍に抜擢され、それどころかレギュラーメンバーに選ばれたらしいのだ。全日本の選考合宿に参加するくらいなんだから、そのくらい当たり前だろうけど…。


「大介。何見てんだ?」


「ん…?」


「女の尻か?」


「お前と一緒にすんなよ!」


「見てねーし!」


「そうだ!タカって彼女いるのか?」


「なっ、なんだよ突然!?」


「何びっくりしてんだよ?世間話だよ。世間話。」


「突然そんなの聞かれたらびっくりするだろうが!」


「タカさー、お前を男と見込んで、あとで相談あるんだけど、時間作ってくれない?」


「ん?えっ?まさかお前、好きな子でも出来た?」


「違うよ。後で話す。」


「分かった…。」


 的違いで残念そうだったが“男と見込んで”ってフレーズが効いたみたいで、なんだか誇らしげだ。

 勝手にアドレスを教えた事を怒ろうとか、そうゆう事ではなく、棚上げのままのあの問題について、一役買ってくれないかの相談だった。

 この日は俺のバイトが休みで、男子バスケ部が体育館を使えない自主練の日なので、放課後タカにはウチに来てもらった。


「で、なんだ相談って?」


「タカは好きな奴とかいないの?」


「まさか!?大介って、そっち系だったの?」


「そっち系?」


「いや…、男が好きって奴?つまり俺が狙われてる…?」


 ブッ!俺は飲みかけたコーヒーを口から少し噴いてしまった。


「馬鹿か!?そうじゃねぇよ!腹割って話せない奴に、相談するのが嫌だっただけ…。だからちょっと試しただけだよ。」


「たっ、試すなよ!」


「悪かった。で、いるの?いないの?」


 こんな感じで言われたら、いくらタカでも言うだろう。


「大介はどうなんだよ?」


「だから、それを相談するためにタカの腹積もりを聞いてるんだろ?」


「うっ…。」


 口が軽いこいつからは、質草を取っておくに限る。さぁ、タカ言ってしまえ!

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