10 クラス
俺とタカは下駄箱のあるガラスのドアに張り出されたクラス表で自分の名前を探していた。
新入生の男女比は前年と変わらず1対3らしい。男子80人に対し女子が240人もいるのだ。男子の立場は弱そうだな…。
「1組から4組までは女子だけのクラスだな。」
「そうみたいだな。おっ、タカは7組か。やっぱり出席番号1番だぞ。」
「だな。」
他のクラスをアイウエオ順で見ても、浅野より前の男子がいないという事は、タカの3年間出席番号1番が決定したということだ。
「おい、大介…、お前の名前無いぞ…。」
「あるだろ。」
「どこ?無いじゃん!女子クラスの方に1人でいるとか?」
「あー、タカに言うの忘れてたんだけど、」
「何?どした?」
「いや、どうもしねぇけど、先月親が離婚して母方の旧姓に先月から変わったから。」
「はぁ?マジ?」
「うん。」
「そっか…、知らなかったよ…。」
「別にお前が落ち込む事じゃねぇだろ?」
「それもそうだけど…、で、大介は何組になったんだ?」
「8。」
「8組か。え〜と、大介、大介…、おっ大島と同じクラスか…、あった!若宮大介!若宮になったんだ?」
「神田改め若宮だ。よろしくな。」
「おう。」
「ところで大島って?」
「堀北中のガードだった奴だよ。」
「あ〜ぁ、あのやたら早くて上手い奴か?」
「そう。あとセンターの加藤覚えてる?」
「名前まで覚えてないけど、顔見れば分かると思うよ。」
「あいつがいるから大介は新入生で2番目のデカさだな。」
そんな情報はどうでもいいけど…。あいつは加藤って名前だったんだ…。
「加藤は俺と同じクラスだな。」
「ふ〜ん。ところでタカ、」
「何?」
「男子バスケの新入生は何人練習来てたんだ?」
「あれ?大介入る気になった?」
「違うけど。で、何人?」
「なんだよ…、来たのは3人だけだよ。それがどうした?」
「堀北の2人とタカだけ?」
「いや、俺以外に3人。」
「もう一人は?」
「小船中学ってとこの片山って奴。」
「小船中…?聞いた事ないな…、そいつ上手いの?」
「普通かな…。」
タカが普通というくらいだから、タカよりは下手なんだろう…。
「先輩は?何人いた?」
「おーっ、やっぱり入る気になったんじゃない?」
「別にそんなんじゃ…、」
そこに1年の担任が職員室から出てきて、教室に向かうところらしく、声をかけてきた。
「おー、お前ら!早く教室に入れ!クラス分からないのか?」
「すぐ行きます。」
よく見ると、昨日対応してくれた綿貫先生だった。
「大介、今日練習1時からなんだけど顔出せよ。」
「バイトだからパス。」
「そっか…、伊藤先輩が大介呼んでこいって、うるさくてさ…。今度一回顔出してよ!俺の顔立てると思って頼むよ!」
「伊藤先輩ね…。」
「そう。あと1コ上の前島先輩と谷津先輩。」
「前島か…、ウチの中学のOBばっかじゃん。」
「地元だから、いてもおかしくないよね…。」
確かにそうだが、前島の名前を聞いて尚更行きたくなくなった…。前島には空手道場に通ってた頃、特に小学校低学年の時に随分やられたもんだ。まぁ、そのお陰で上達したので感謝しているが…。それと2年前の…、
「考えとくよ…。」
「頼んだ。」
そう言って俺達は隣り合わせの教室へと別れていったのだ。