45.マジか~
気分投稿です!
「あれ、見てよ……アストレア家の姫様よ」
「可愛らしいお姿ですね。とても美しい」
などと言った声が会場全体に飛び散る。母は笑顔に会釈していたが周りの視線が気になって俺はどうも不機嫌そうな感じに見ていた。
そうしたらある人物がこちらに近付いて来るではないか!その人物は万勉な笑みで駆け寄ってくる。
「お初御目に掛かります。貴女殿があのソフィア姫でごさいますでしょうか?大変麗しゅうございます」
「え……ええ」
御丁寧に挨拶をしてきた彼は俺に向けて頭を下げている。どう考えても彼も貴族だよね?
「あ、申し遅れました。私はヴィンセントと申します」
「……御丁寧にどうも。私はソフィア・アストレアです。よろしくヴィンセントさん。ん……?」
相手が名前を名乗ってきたので此方も名乗ることにした。そして握手した瞬間、一瞬だけ違和感を感じた。
「どうしましたか?何か問題でも?」
「いえ、何でもありませんわ。それより……ヴィンセントさん、貴方ってお強いんですね?」
俺は誰も聞こえない小声で彼の耳元に呟く。
「何故、そう思ったのですか?」
「手を握った時、貴方は私に強く握り返しましたよね?あれってどういう意味ですか?」
ヴィンセントはとぼけたように言葉を返してくる。そう、この人と握手した瞬間、俺の手を強く握ってきた。
今も痕が出来るほど握られたところが赤くなっている。
だから俺は不思議と思った。
「はは、単に挨拶程度ですよ。と言っても君には俺の正体を知られているんだろう?」
何を言っているんだ?この人は。この人、ヴィンセントさんの正体?
全く話が合っていない。
「え、えーと……それはどういう?」
「しらを切るつもりですか。まあ、私には好都合です。せいぜいパーティーを楽しんでくださいね」
そうしてヴィンセントは去っていった。何だったんだろうかと眺めていたが切り替えよう。
今回、このパーティーで俺はある計画を実行するつもりなんだ。
その前にアセイラル姫殿下様には御挨拶しとかないと。
実は俺、アルフはアセイラル姫には一度面識がある。確か初めて出会ったのは俺が宮廷魔導騎士団に所属していた時になる。
その頃、まあ、今みたいに全然明るくなかった自分は王国の宮廷に足を運ばせたことがあってその時に出会ったのは当時4歳だったアセイラル姫だった。
多分、それっきりで彼女のアルフの事はご存知無いだろう。出来れば生前にもう一度お会いしたかったが。
しかし、辺りを見回しても王国の護衛の人などが一人も見当たらない。
「まだ到着していないのかな?」
そう呟き会場を歩いていたが不意と立ち止まる。
会場の端に置かれていた謎の機械。恐る恐る拾って見るとどう見てもトランシーバーだった。
トランシーバーって確か通信用のものだよな?どうしてこんなところに落ちていたんだろう。
「まもなく四大貴族開催による舞踏会を始めたいと思います。皆様は会場のステージ前までお集まりくださいませ──」
丁度放送が流れたためこの件は一旦保留にすることにした。
そして五分も経たないまま参加者一同は集まっていた。
「それでは四大貴族による今年の淑子を祝い舞踏会を開催いたします。乾杯は後程で……」
そう司会者が告げた後、私たちはアセイラル姫殿下が到着するのを待つことになった。
その間、その場にいた人たちは皆、他の方たちと集まり会話していた。
母もイヴァンのところにいったのだろう。じゃあガレスは何処に?
と探し回っていたところ──
「あ、ようやく見つけた。何してるんだろう? あんなところで?」
会場の窓際、テラスに居たガレスを見つけてその場に行こうとした。
しかし、途中で足をピタッと止めた。そう、あの場に居たのはガレスだけではなくもう一人、人影が居たのだ。
それを見て益々と気になり隠れながら覗く。
「横にいる人……誰?」
小声で彼等に聞こえない程度で呟いた。
横に居たのは金髪ロングにカールが掛かった女性、特徴で言うと可愛らしく大人ぽい。
ドレス姿が良く似合っておりガレスと並ぶと様になっている。
「……あのガレスが笑ってる?」
遠くから見てもはっきりと見えた。ガレスは女性に向かってにこやかな笑みを見せていたのだ。
それと楽しそうに御互いが笑い合っていた。
私は会話を聞き取るためもっと近付くことにした。
「はは、お前も大変だな~。そんでアイツは元気にしてるか?」
「元気にしてると思いますよ。貴方に会いたそうにしていたし」
黙々と二人の会話を耳に入れる。アイツって誰?それに仲良さそうだな。
「それでそれで、おにい……」
「ちょっと待った……居るんだろ?出てきな、ソフィア」
「!」
急に女性の言葉を遮ったと思えばガレスはどうにても私の居る方向に目掛けて視線を向けていた。そして、どう見ても私に対して発言したと思われる。
「バレていましたか……お父様には敵いませんね」
「はは、俺を誰だと思っているんだ?蒼の騎士団の元団長様だぞ」
お父様はドヤッた顔をして俺にアピールしてきた。
うぜぇーと思ったけどお父様らしい。
と思っていたら金髪の女性が嬉しそうな笑みで近づいてくる。
「はじめましてー!あなたがソフィアちゃん? うわぁ~可愛いよ♪ねぇ?おにいちゃん」
「何だよ? 俺のソフィアは渡さないからな!」
「えー!良いでしょ? 一回でいいからぎゅーと抱きしめて良いでしょ? ねえねえ?」
お父様の着ているスーツの袖を引っ張って駄々をこねる彼女。困った様子に呆れた表情をしていたガレスは一溜め息をする。
「仕方無い。妹の頼みに答えない兄は居ないさ」
「ありがとう、おにいちゃん!あ、紹介するの忘れたね。わたしはガウェイン・エルドレット。気軽にガウちゃんって呼んでね」
このくだりの間の唐突な自己紹介!しかもガレスの妹でしたーというかお前に妹が居たこと初耳なんだけど。
それに……
「ガウちゃん?」
その途端、俺はじっとガレスの方を見た。
「ガウちゃんはコイツの愛称だ。まあ、俺が付けた愛称だけどな!」
やっぱりかぁー!
予想していたが当たっていた。まあ、ガウェインとか男ぽい名前だしそれは仕方無いか。
「ねぇねぇ~おにいちゃん、もう抱きついて良いよね」
「ああ、ご自由に」
ってそういう場合じゃなかった。ガウェインは俺に近付こうとしてくる。しかもその表情はこれから襲おうとする顔だ。
て言うかガレス助けてよ。
あーヤバい……
一歩一歩下がる俺。
「あのーすみません」
突然、声を掛けられる俺たち。ガレスやガウェイン、そして俺もその声の方向を向く。
そこに立っていたのはスーツを着た青年だった。
「おにいちゃん?この人誰ー?」
「ガウェイン、止しなさい。と、これは失敬。もしかして貴方はサージェスト家のソーマ・サージェストかな?」
サージェスト?はて、何処かで聞いたことがあるような?
プラチナブロンド髪の青年は少し笑いながら笑顔を向けていた。
「良くご存知で……ええ、僕はソーマ・サージェスト。御会いできて光栄です、ガレス様」
「お!俺の名前を知っているのか。結構、目立たないとは思っていたが」
「いいえ、ガレス様は僕の家柄では有名な御方ですから。それに……」
そして急に彼は言葉を止めると俺の方へと視線を向けて微笑む。
え、何?俺の事を見た?
「そちらにいらっしゃるのはソフィア姫ですよね?また……お会いでして光栄です」
青年ソーマの発した言葉に少し記憶を思い返していた。この人と一度あったことがあるような素振りだったので。
そう言えばこの髪にあの綺麗な瞳。そしてスッと整った鼻、あの笑顔と言えばどっかで会った覚えがある。
確か……あの時に出会った花を手入れしていた彼!?
「どうしましたか?」
「い、いえ……な、何でもありませんわ。それよりここでは恥ずかしいので別の所に移動しませんか?」
ガレスとその妹ガウェインが居たためちょっと離れて会話したいと思い声を掛ける。
「良いですよ。僕も君と二人きりで話したかったので」
それを聞きソーマも了承してくれた。
「ごめんなさいお父様。この方と少しお話しに行きますのでこれにて失礼致します」
「ああ、わかった。だか、何か問題でもあったら俺に言いに行くんだぞ」
ガレスは少し不満そうな顔をしていた。それだけ私が他の男と二人きりになるのが嫌なのか。
完全に親バカになりやがって。
二人とは別れて誰も居ない場所へと移動する。ようやく二人きりで会話できる場所を見つけてほっと一息ついた時、ソーマから声を掛けようとしていた。
「御美しいです。そのドレスや髪型。その笑顔も」
「あ、ありがとうございます。ソーマさん、あの後、大丈夫でしたか?」
随分と急いでいたそうだったからあの後、間に合ったのかどうか伺ってみた。
「ええ、お陰様で間に合いましたよ。それより貴女がアストレア家のソフィア姫だとは思いませんでしたよ」
「そうなんですか。私もまさか貴方がサージェスト家……私の婚約者であるソーマさんだとは驚きです」
二人はお互い見詰め合いながら照れたように喋る。って何だろう……この胸の高鳴りは?
私ったら可笑しいのかな?
「どうしましたか?お顔が真っ赤ですが……」
「あ……いえ、何でもありませんわ!」
突然、俺の顔と彼の顔が至近距離に近付く。それを見てようやく気付いたのか俺は咄嗟に距離を離す。
「あ、すみません。驚かしてしまいましたか?」
「いえ、私こそごめんなさい……」
どうしてか御互いが遠慮しているような気も見えた。ただ、俺と言ったこの人は悪くない人何だろうなぁとかとっても好い人なんだろうなーとは思っている。
しかし、彼の俺も見て嬉しがる笑顔が何処か申し訳なさそうにと心の中で謝っていた。
そうだ……この人は私の婚約者になるかもしれない人。だけど私はそれを壊そうとしている。
ここで俺は一つ支障来してしまったのだ。御相手の婚約者となる彼がまさかの好い人過ぎたってことに。
どう彼に断ったら良いのかという課題が一つ増えてしまった。
「ごめんね。僕も親に君の事を薦められて婚約するかどうかって困っているんだよね」
え?今さっき何て?
唐突にソーマから意外な言葉が飛んできた。これって親同士が偶然と偶然が重なって成立できた約束事。
つまりは彼も俺と同様の立場に居るということだった。
「だからさっきから君が悩んでいる事ってそれの事だろう?無理しなくて良いよ。僕も君は魅力的な女性だけど出会って間もない、それに君は僕よりも遥かに年下だ。それに僕は実は好きな人が居るんだ……」
「……へ?」
長々とソーマが語っていた事を聞いていたら最後の発言により思わず惚けた間抜け面をした何処かのお馬鹿さん見たいに裏声が出てしまった。
「だから何だ……君にはそれだけを伝えたかったんだ」
「え……そ、そうなんだー」
何だろう……遠回しでこの人に振られたような感じがするんだけど。
何?俺ってそんなにモテない顔していますかねー?
その時、俺の頭の中にあった無数の考えていた事が何もかも無駄になったとも言えるように真っ白に消え去ってしまった。
というか内心怒りも表れていたとも言えよう。
「それではソフィア姫。僕はこれで失礼します」
ソーマは俺に向かって一礼しパーティー会場へと戻っていった。その後ろ姿を見ながら小さく手を振っていた。
「マジか~何か複雑な感じだなー。でもこれで良かったとは思える」
まさかの彼方からの婚約解消宣言。それは嬉しいんだけど……嬉しいんだけど……
「俺、馬鹿みてーだな」
ぼそりと荒い感じに言葉を吐いて一人パーティー会場に戻らず外へ出ようと歩き始めた。
読んでくれてありがとうございます!
リアルの忙しさにより気分投稿していますのでどうかご了承下さい。
でも、なるべく頑張ろうとは思ってますので宜しくお願いします♪




