44.ある朝の日
気分的に投稿しました!
日差しのいい朝。日の出の輝きは美しい。
アストレア家の外で散歩している女性がいた。
「朝、早く目が覚めたからこうして久しぶりの故郷を散歩しているけど.....」
その女性は私だ。すっかり心の中でも私という一人称を使っているがたまに俺も使っている。
結構この体にも慣れてきた実感もあるし一応女性なので女らしくは徹底している。
不信に思われても困るからね。
「うーん~!やっぱり外の空気は気持ちいいなぁ~」
グッと背伸びをして外の空気を浴びる。現在、散歩中ではあるがガーデンの中で彷徨いていた。
蝶々やその他植物が生き生きと生活してる場所は美しい。
「ん?この匂いは……ラベンダーの香り? 彼方の方から匂うな」
急に鼻から良い香りが漂ってきた。この香りは昔も嗅いだことがあった。
それはそれはとても懐かしい……あの頃。
確かクロエに出逢った時だったかな?クロエというのは最愛の……妹みたいな子。
出会いは最悪みたいなものだったけどお互い花の香りに釣られて出会したことを今になって嬉しく笑った。
香りのする方向まで歩く。
そして草の迷路から通り過ぎた後、驚く。
「……これは」
その光景は綺麗だった。紫色の花が風で優しく揺れ、香りも大いに漂う。
そう、ここはラベンダー畑だった。
どうしてこんなにラベンダーが?って思うが先ず、視線が向いたのはラベンダーではなく人であった。
「人……?どうしてこんな場所に」
その人は遠くから見てもわかる格好いい男性であった。歳は私より歳上?かな。
しゃがんで花の手入れをしているようだが眠っている?
その男は目をつぶって微動だしなかった。ましてやその体制で維持していた。
「大丈夫かな?」
とにかく心配になってきた。本当に寝てるんじゃないだろうかという考えもあるがそうでは無さそうだし、まして声をかけるのも……
私は声をかけずらかった。
迷いというかそれより関わりたくない気持ちもあった。
だとしてもあのままにしておくのも以下仕方無い。そのため勇気を振り絞って声を掛けた。
「あのー? 大丈夫ですか?」
耳元の近くまで行き囁いた。
「──え?僕は何を……ってもうこんな時間じゃないか! 急がなくては」
そうした瞬間、男は目を覚ましては急に立ち上がり端末を開き時間を確認した。
それと同時に突然立ち上がった彼に驚き足のバランスを崩し尻餅ついてしまった。
痛いのは痛いのだがそれにより男は私の存在に気付く。
「あわわ~イタッ」
「おっと!ごめん。大丈夫ぶかい君?」
直ぐ様手を差し伸べてきた男は優しい笑顔で申し訳無くしていた。
お尻に痛覚が感じてとっても痛い。
「あ、ありがとう」
お言葉に甘えてその手を掴み私を起こしてくれた。何か私、情けないね。
男性を間近に見ると凄く整っているイケメンだった。髪はプラチナブロンドの髪に鼻はすっと高い。そしてあの目付き、二重まぶたが優しさの秘訣でもあるかのように良い。
服装を見て貴族の人かなとは思った。
「お言葉ですが貴女は誰なんでしょうか? 僕に何か用でも?」
「ひゃ!えええっと、あんなところで何をしてたのかなー?って思いまして」
むっちゃ動揺してしまってる!
男は逆に問い掛けてきた。疑問そうに私の顔を見ているがそれもそうだよな。
私だって貴方は誰?とか聞きたかった。丁度は良かったと思い一深呼吸し落ち着かせる。
「私はこの近くに御屋敷があるんですが暇でしたので散歩してました。貴方はこのガーデンには何用で?」
「そうなんだ。えーと僕はね、花の手入れをしていたんだ」
沢山咲いている花を見つめながらにこやかな彼。その眼差しは花がとても大好きそうで心一杯に愛情があるようなそんな感じ。
何となく私も共感した。
花は美しいしそれに争いを忘れ去ることができる唯一の希望。
私と彼はお互い口を開かず風で靡く花の輝きを観る。
余程集中しているのか沈黙が続く。
「あ!そう言えば貴方、急ぎがあるって言ってなかった?」
急に頭の中でモヤモヤしていたことがあったため思い返していたところ、彼は急がないとと言っていた。
それで大丈夫かなー?と一応声を掛けた。
「……そうだった!えーと、時間は──まだ間に合う」
「それは良かったです」
私の助言で思い出したかのように再び端末を開ける。ホッと息を吐きまだ時間があると落ち着いた彼。
その影響か私まで冷や冷やしたが安心したためか同じく息を吐いた。
「教えてくれてありがとう。それと──また何処かで会えたらいいね」
「れ、礼なんて此方こそ尻餅ついた私を起こしてくれて感謝してます。そうですね、また会えたら運命的──ですね」
そう言葉を残し彼は物凄い速さで走っていった。地味に手を振って来るけど前見て走らないと危ないよ。
「おっと!」
ほら、危ないって言った矢先に壁に当たりそうになった彼。本当面白不思議な人だったな。
多分貴族であるはずだが、貴族らしさがあの男には感じなかった。それよりか何処か抜けているといかなんというか。
「そろそろ、私も帰りますか──ん?着信音?」
御屋敷に帰ろうとした瞬間、ミニバックの中に入れていた端末が鳴った。
誰からだろう?
そう、感じながら端末の画面に視線を向けた。
「ん……ガレスかよ。娘に電話かけるとかどういう神経しているのやら──」
ガレス、お父様からの通信だった。やれやれと仕方無い表情をしながら通話に出た。
何の話なんだろう?
「はい、もしもしお父様?何のご用……」
『やっと繋がった、ソフィア!今──何処にいるんだ?』
私の声を遮るように大声で叫ぶガレスの声で耳が痛くなった。
うるさ過ぎるだろ!もっとは音量を考えてくれても……
耳栓するように手で押さえていた。
「うるさいです……もっとは音量のボリュームを考えて発言してください」
『ソフィアが俺のソフィアが反抗期!ああ──!』
ジト目で電話越しのガレスの声を聴いていたが更に悪化した。遂には反抗期とか叫んで来て正直うざかった。
話の趣旨が変わってないか?
「お父様、それで何か御用で御電話お掛けになられたんですよね? それで話とは何……」
話の切り替えすべく通話してきた理由を説いた。それを聞いたお父様は何か思い出したように落ち着いた。
『ああ……良く聞いてくれ、今回の四大貴族の舞踏会は前年嫌、それよりも違う……』
「違うって具体的に──」
学院に入っていた三年間、その舞踏会には参加していない。その為か久しぶりに緊張をしていたが今年は去年と違う?
『今年はアウロラ王国次期皇女殿下様も参加することになっている。その名は──』
アウロラ王国──それはここより北側の大地に位置する帝国に並ぶ大国家である。
その古い歴史と伝統を大事にしてきている王国とアルカディア公国は歪み合う仲でありながらも交友関係は続いている。そんな国だ。
『──アセイラル・ロッサ・フェルシオ……』
──アストレア家本家長官会議場
長机にそれぞれ席に座っている者がざっと十名ほどいた。見るからにお偉い人だらけの空間。
その中の禿げ頭のおじさんが口を開いてこう言った。
「これはどういうことですかな!アストレア──」
その声は如何にも怒鳴っていた。そして誰もがその発言に耳を掲げていた。
「ほらほら、おじ様。そう、怒らないの」
その怒鳴りを抑えようとミント色の髪を編み込みポニーテールしているお姉さん。
それに続けてぞろぞろと発言しようと始める一同。
「あは♪おじさんももう少し落ち着こうね~」
「そうだ……アストレアに怒ったとしても現状は何も変わらん」
青年の男性に同じくビッチそうな女性もお姉さんと同じく忠誠に入った。
「ユーゼリットにエスカリア、アルバレスにはわかるまいだろう。我が貴族の天敵たる、第三皇女殿下アセイラル・ロッサ・フェルシアをお招きするあのアストレアはどうかしてるわい!」
指を奥の席で陣とっている人物に指し文句たらふく言った。三人ともはやれやれとした態度で呆れていた。
「それ、だけか?」
「はぁ?」
意味のわからないような態度をする爺。
「聞き分けの悪い輩だな。だから──お前の言いたいことはそれだけかって言ってるだろうが!」
本気で怒った奥に座っているその人物は机に向かってパンチした。一見それは自分に不利があるというか物に八つ当たりしているかのように見える。
がしかし、その拳は長机からすり抜けた。正確にはゲートらしきものが展開されていた。
「そんなに怒らなくてもおぉぉぉー!」
その拳はいつの間にか爺の顎に目掛けて当たっていた。天井に頭が突き刺さった爺はぶら下がり気絶していた。
「おっかねー」
「ほら、だから言ったのに~」
「そもそも四大貴族の統括者のアストレア家に歯向かう時点でアウトだわ~そうだろ? ユリウス・アストレア」
ある男は親しくユリウスの肩を叩いた。それにはユリウスは気にせずホコリ付いた手を払っていた。
「当然の如くだ。貴様らは我の配下に過ぎん。お前もそろそろ俺に馴れ馴れしくせず従え──ヴァイス・フェルノート」
「はいはい、わかりました。従いますよ、何があっても我はあなた方のベルセルクですから」
ユリウス曰く、この白いコートを羽織っている男性、コートの後ろには紋様が描かれていた。
それはベルセルク=エクストラの一員である証──でもあった。
「そうそう、お前さんところの妹さんの娘が学院を退学したって話聞いたけど、詳しく教えてくれねーか?」
再びヴァイスはユリウスの肩を組み馴れ馴れしく攻めた。それにはユリウスは気にせず無視し、今回の話をまとめる。
「我らは貴族だ。今回の舞踏会──皇女殿下様に楽しく振る舞うよう意識して欲しい……善からぬことは慎むようお願いします」
長い会議はこれにて終了した。
──アストレア家本家中央区入口ゲート前
現在、私はお母様、お父様、リアーナとご一緒に動力車に乗っていた。そろそろ到着と言うところで車をゲート前に止める。
時刻も夕方から夜になる頃合い。
窓から覗くと人が沢山溢れていた。
「久しぶりだから緊張する~」
「お嬢様、ファイトです!可愛いんですから」
リアーナには緊張する私を側で癒してくれた。それだけでもありがたかった。
彼女を見つめながら心の中でありがとー!って呟く。
そろそろ車から外に出てアストレア家本家の御屋敷を見つめる。広さは例えると学院と同じくらいの広さ、そして色んな広場などと用意されており中には訓練所、作戦会議室、パーティー会場等々あると言われている。
生前、ここに訪れたのは五回程度だったような覚えもある。
「あ、ソフィア様だ!」
「ソフィア様!? ああ、なんて麗しいのかしら」
「あの長くて綺麗な銀髪、綺麗なフォームが整っていらっしゃるわぁー」
凄く注目を浴びていた。だろうなとは前々から考えていた。私の美貌は母親似であるため美人には変わらないのだが、これも結構大変なんだよな。
ドレス姿も慣れないし化粧も少しぐらいしていて恥ずかしさは大いにあった。
他の貴族の御方には会釈しながら入口に入る。中には本家の執事、メイド等がいた。そして真ん中には……
「ようこそお出でくださいました。お久しぶりですなティアお嬢……」
「え?もしかしてイヴァン先輩!? お久しぶりです~」
出迎えてくれた男は中年とは思えないほどの容姿だった。金髪のチャラそうな髪にサングラスも着用していた。特に驚くのは肉体美で恐ろしいほどに整っているところ。
そして、そんな彼を見た母の反応は懐かしそうな目でみる幼い感じの素顔だった。
って……イヴァンじゃないか! と今更気付く。
「此方がソフィアお嬢様ですか?ティアお嬢に似て可愛いですな」
「イヴァン先輩に会わせるのは初めてだったわね。此方が娘のソフィアです。」
母は私に彼と話す機会を伺い私の顔を見てはウィンクで合図してきた。
「……初めまして、お初お目にかかります。わたくしはソフィア・アストレアと申します。貴方が雷帝イヴァンですよね?」
「おっ?ワシのこと知ってるのか? それは嬉しい限りじゃな」
彼はお高い感じに笑い出した。
知ってるとも……雷帝イヴァン、あの白いコートを羽織って裏側に紋様が書かれている正装こそ最狂戦士《ベルセルク=エクストラ》の証であることを意味する彼とはあの御方に忠誠を誓いあった同士だ。
「大体の方はもう会場に集まっている。開始は十八時だからお早めにな」
「ご丁寧にありがとうございます。行きましょう、お母様」
「そうですわね……先輩、まだ後でゆっくりと」
母と俺はイヴァンに別れを告げ、会場の扉まで行った。久しぶりの再開(間接的)に嬉しかった。
それより気になったのは母は勿論、イヴァンも昔と全然変わってなくね?
今更気付く俺は少々戸惑っていた。あれから何十年も経っているはずだ。
変わらないのって可笑しい!
「どうしたのソフィア? ぼーとして扉なんか見詰めちゃって」
「いえ……少し緊張してます」
この扉を開けば大勢の人達が居るはずだ。その多くはアストレア家の親戚や親族、または貴族らが集まっている。
ドキッと少し汗が出て唾を呑み込んだ。
「緊張しなくても良いのよ。皆、優しいからね」
「はい、わかりましたお母様」
そうしてお母様は扉を開ける。もうどうにでもなれ!という気持ちで入る。
その瞬間から多くの者は此方へと一点集中してきた。




