43.まさかの困難?
新章『アセイラル舞踏会編』開幕!
あれから学院を去ってからの私は一度実家のアストレア家に帰還した。
行く宛も無く一番最適な場所だと思ったんだろう。戻ってからは逆に大変だった。今後、冒険者になるかどうかの問題も残っているが父や母には学院を中退した事に眼を大きく開けて驚いていたそうだ。
それは当然である。私のような才能のある人間(両親は知ってる)が中退、嫌、実質は退学と言えば良いか。
退学させられたと言うことだけで不満もあるだろう。力こそ身体能力、頭脳が優れている私が魔法の才能が無く退学させられたと少し改変して両親達に説明した。
母も父も相当驚かれていた。あの学院は魔法が全てが崇拝する学院だとこの時初めて知ったそうだと。
これで良い。真実を言う所々に嘘も混ぜ合わせる。そうしたことで違和感なくこの問題は家族間で解決された。
こうして冒険者になる一週間前、四大貴族達が集まるパーティーに俺は参加するのであった。
────アストレア家、ソフィアの部屋。
心地好くベッドで寝ているこの女性。それが俺、ソフィア・アストレア。
今夜開催されるパーティーに緊張した面持ちを持ちながら就寝していた。
「やめてくださいよぉ~もう」
寝言を言っていた。それだけ心地よいのだろう。
「起きてください!お嬢様───」
心地よく寝ていた私の部屋に突撃するかのように扉を開けたメイドリアーナ。
ベッドで寝ている私のところに急いでやって来る。
「起きてください!もう朝ですよ?ティア様がお呼びになっていますよ。」
耳元で叫びだしたリアーナ。一言だけ言うととてもうるさい。
折角寝ていた私は起きる選択しか無かった。
理由はティア──お母様が呼んでいるらしい。
遅れたら何されるかわからないので仕方なくね。
「わかったよ~起きますって」
「おはようございますお嬢様。」
にこやかと挨拶してきた。
切り替えが早すぎないか?嫌、それがメイドか.....
何処か納得した。
「お母様が呼んでるってもしかしてあれの事?」
「ええ、お嬢様が思っている通りのことですよ。さぁ早く行きましょう。」
早くリビングに行くように言われる。一応あれの事というのは舞踏会の予定の確認のことだ。
結構大変になりそうとは聞いている。
私はちゃんとした服装に着替えリビングにいる母の元に向かった。
「失礼致します。ただいままえられました──ソフィアです。」
扉を開けた丁寧な挨拶をする。これは貴族として常識だそうだ。
中には家族以前はリアーナの三人であったが今は二人も増えた。
「ソフィア、待ってました。さぁそこにお座りなさい。」
「失礼します。」
丁寧にお辞儀をして椅子に座る。
座り一旦落ち着かせるとある人物が私の方を見てくる。
確か───あの子達は。
小さな子ども二人が興味津々に見ている。
「貴女が驚くのは無理はありません。私たちも早めに報告しとくべきでした。」
母は申し訳無さそうな顔をしていた。そんな顔はしないで欲しい。
あの子達はティアの子どもである。男の子と女の子で双子であるんだとか。
そして実質私はその子達の姉になるらしい。
「お名前は何て言うのですか?」
気になったので問いかけてみた。そうした途端双子は母の背中に隠れた。
「こらこら駄目でしょ!二人ともちゃんと挨拶しなさい。」
母はやれやれとした感じ二人を前に出そうとする。
ビクられても仕方はないか。
「わたし、レイナ……」
「ボクはクオンです。」
物静かそうに二人は自己紹介をした。レイナという女の子は私やティアと違って黒髪だった。
ガレス似なんだろう。
それに変わってクオンという男の子は銀髪と黒髪が所々混ざりあったグレー色だった。
顔は双子なのでどちらとも似ている。
「初めまして、ソフィアです。君たちには実感は無いかもだけど私は君たちの姉に当たるから宜しくね。」
警戒させないように優しく微笑んだ。子ども相手の世話などは結構慣れているし得意。
怯えさせない方が馴染みも早くなると思っての行動だ。
「おねえちゃん?わたしのおねえちゃんなのー?」
「ボクのおねえちゃん……」
二人ともお姉ちゃんと聞き一層笑顔になり喜ぶ。この人は自分のお姉ちゃんなんだという概念が出来先程とは見違えたほどにベッタリとくっついてきた。
「あらあら、もうなついたの?ふふ、早いわね~。」
「多分この子達は双子だから実感がなくて私みたいなお姉ちゃんという存在が欲しかったんでしょう。」
「嬉しいわ~。正直心配だったのよね。」
一安心したかのように一息つく母。余程心配はしてたんだろうな。
「ソフィアおねえちゃん?遊ぼー!」
「ボクと遊んでよ。ねぇ良いでしょ?」
「元気があるねぇ。でもこれから私も忙しいの。また今度遊んであげるから今は我慢して。」
遊んでと服の袖を二人係で引っ張られる。
申し訳無さそうな顔で私は遊ぶという事を断った。今から忙しいのは本当に仕方ない事なんだ。
「お姉ちゃんが困っているから──リアーナ。二人を部屋の外に連れてって頂戴。これから大事な話なので。」
「かしこまりました。はいはい、私が遊んであげるから此方においで」
リアーナの誘導で双子達は部屋の外へと行った。そしてようやくこの場は私と母だけの空間となった。
「それでお母様、お話とは何でしょう?」
話を始めるべく問い掛けた。
「ソフィア、貴女には心苦しい話なんだけどね。もし──もし良かったら婚約を受けてみない?」
「は───?」
その途端静止した。静止画のように静止したといえばいい。
母の言葉に固まってしまった。
(婚約ってあの婚約だよね?)
「ごめんなさい。突然で驚かせてしまったみたいわね。」
「あ、嫌、大丈夫ですがあの一つ聞いてもいいですか?」
「ええ、どうぞ?」
「お母様は何故私にそのようなことを?」
話の趣旨がわからなく放浪している私。何が起こってんだこれ?
ようやくしたところで母は口を開き
「先日、サージェスト家から連絡が来てね……あなた方の娘さんと許嫁関係を結びたいと問い掛けてきたの。」
「はぁ~それは何となくわかっていました。でもお母様はそのお話をお受けになったのですか?」
無断で話が進められていること。恐れていた私は恐る恐る聞いてみた。
「──ごめんなさい!お受けになっちゃった♪」
「はあぁー?」
母のその態度は当然のごとく悪ふざけだった。悪ふざけ程それは本当の事なんだろう。
どうしてくれるんだよ!と頭を抱えてしまう。
「もしかすると今回開かれる舞踏会もこのために?」
一応気になったので聞いた。もしそれとこれとが繋がっていたことだとしたら最悪。
頭の中には完全に最悪といった文字で一杯だった。
「うん───そうなるわ。」
「やっぱり。」
肩の力が抜ける。それほど落ち込んだ様子になってしまった。
婚約って勘弁して欲しい。
「お母様は私に何とかして婚約を無かったことにして欲しいと言いたいんですね。」
「良くわかったわね♪正解よ。流石私の娘だわ~」
テンションの高い母。嫌、ティア。
俺は盛大に怒っている。母としてではなくティアとしてに怒っていた。
昔から何時も無責任で勝手で自分ではなにもしない彼女はとにかく世話が焼ける奴だった。
仕方無いな。面倒だけど無かったことにするために頑張るか。
少しガックリとして部屋に戻ることにした。
部屋から戻って直ぐ様ベッドにダイブする。本当に無事に冒険者になれるのだろうか?
面倒事がようやく終わってすぐにこれだ。
不幸にも大概だろう。面倒事は勘弁してくれ。
そして急に疲れたのか目を閉じて寝てしまった。
『焔は○○───絶望からのどん底。アナタはこれからも......』
謎の声が聴こえる。以前よりはくっきりとして聞き取れた。絶望からのどん底というのはアルフとしての事をいっているのだろう。
もう忘れたこと。
今更気にしたって関係はないんだ。
しかし、それが運命なら───受け入れるしか無いのかも知れない。
これからどのような人生が待っていたとしてもそれは運命。
なら、それを受け入れ......
言葉がここで途切れる。そしてこの事は記憶に無い。記憶されないと言った方がいい。
新たな幕開けは始まろうとしていた。
読んでくれてありがとうございます!
ブクマ登録よかったらしてください!
今回は少々短めです




