20.弱者と強者
今回は少しキツいですよ。
教室内はざわざわと騒がしい。このクラスのメンバーはこれから一緒に魔法を学んでいく戦友でありライバルとなる。それは大いに良いことだ。
他者と比べて自分はどれだけの力を持っているのかわからされるのがこの学院のシステムだろう。
とは言っても俺の場合は......魔法試験でEランク判定をくらい絶賛、ボッチ中です。
何度も言うがこれは俺の望んだこと。気にしては───訂正、周りの視線が気にし過ぎてます。それよりも。
『先程の気配は何だったんだろう?明らかに俺を見ていた!?』
あの気配は昔懐かしい人と似た気配。それ以外は良くわからなかった。
「おい、あれ。」
「嘘だろ!あの人は。」
「あの御方は.....」
皆の楽しそうな空気が一変し不穏な空気になる。俺も視線をそちらに向けると一人の男性が扉前に突っ立ってた。その男はスーツを着ておりながらだらしないきっちりとしてはいなかった。
格好良く髪型を整えた黒髪の青年。その姿に見覚えがあった。
「元王都騎士団所属暗殺部隊。グレン・アルジェントさん!」
「おいおい。ここでは先生か教官と呼べ。」
グレンと呼ばれた男は教壇の前に立つ。何であいつが居るのか。それはここの教師という事だと解釈した。
生徒は各自の席に一斉に座りだした。この状況を見て理解したのだろうな。
「改めて俺はこの初級科一年A組の担当魔術講師となったグレン・アルジェントだ!これから六年間ビシバシ鍛えてやるから宜しく。」
丁寧に自己紹介。それと付け加えよう。グレン・アルジェントという人間は暗殺者だ。それも飛びっきりの。性格は頼りがいの.....ある人だ。
そして現最狂戦士の一人でもある。そんな彼が何故、このセイクリッド魔法学院の魔術講師として働いているのは知らん。以上が俺の付け加えた紹介だ。
「センセー1つ質問宜しいでしょうか。」
ある女子生徒が手を挙げる。
「どうした?君はえーと。」
「マリー・クルシュアンです。えっと....魔法適性ってありますよね。適性以外の属性を使用することは出来るのでしょうか?」
適性のことについて質問したようだ。まあ確かに適性以外の属性を使用できるのかそれはこの歳の若い人には少々わかりづらいと思う。
「その事か。適性以外の属性は使用することは可能だ。だが、適性以外は威力が下がる。何故だと思う。それはその人の身体に合っていない。まあ安心しろ。五大属性は練習すれば誰だって使いこなす事ができる。」
何故、このような説明をしているのかというと魔術師、魔導師の大半は多くの属性を使うセカンドフォルダーやフォースフォルダー等、多種多様の属性を使いこなさないとなれない。
俺たち魔法師の卵は基本、適性された属性しか最大限に活かせない。その為に魔法を学ぶための学院がある。
中に他の属性を使えないまま終えることがある。世の中には才能や凡人という言葉があるだろう。
この世界の魔法は極めて理不尽に組み込まれているシステムだ。
「じゃあ私はこれから練習場すれば他の属性の魔法も使えこなせるようになるんですね!」
疑問を聞けて喜びながら着席する。あの娘はどんな適性だったのだろうか。あの喜びだと変な属性が出たに違いない。
たまに使えない属性が存在する。それが五大属性でも特殊系統でもない未確認の属性。まだ研究で解明されていないため非公認だそう。
知ってる者も極僅かという。当然俺は魔法について詳しいから知ってる。
「まあ取り敢えず今日は基本的な流れとこの魔法学院のルールとシステムを説明する。後は君たちの自己紹介を頼む。」
基本的な流れは魔法基礎を習い実戦、発動の速さ、武器と合わせての実践科目。
魔力上昇等の訓練もあり聴いていくなかでどれも大変な作業。初級科では初級魔法を学ぶことになるらしく三、四年は中級。五、六年で上級と難易度が高くなる。
「説明は以上だ。それでは自己紹介をしてもらう。前の席から順に頼む。」
席的に最後になる俺。逆にそれって面倒なのかそれとも順番が来るまでもう少しあるので助かったのか。まあ普通に名前言って終えよう。
自己紹介が始まり徐々に進んでいく。
「俺の名前はリュート・グレイダー。宜しくお願いします!」
眼鏡君が自信満々に自己紹介していた。眼鏡をクイッと上げていたりしていた。
「私の名前はフェリス・クラレント。宜しく。」
次席の女性フェリス。彼女は冷静感が漂いクールビューティーな女性のように感じ取れた。
次はアリアの番。おどおどしながら席を立ち上がる。その表情と姿が正しくグッド!ですよ。
「わ、私はアリア。アリア・ステファニーでしゅ....」
あっ噛んだ。真っ赤に頬を赤らめるアリア。手で顔を覆い隠している。男子たちはその仕草が可愛らしく「うぉー!」と叫びが。
アリア、君はまた男子受けを獲得した&クラスのアイドルに昇格確定間違いなし!
俺も心の中で男としての精神が少し残っているためテンションが上がっていた。
自己紹介もそろそろ終盤になり三人終えたら俺の番が来る。その前に───この主席のイケメンの紹介が待ち構えている。
「僕はエドワード・フラッグス。皆、これから宜しく。」
ハキハキと発音もそこそこ良い。顔も格好よく大半の女性陣はメロメロ状態になるだろうね。笑顔でキラッと。男性陣からはブーイングの声も多々。
そしてようやく俺の出番がやって来る。何話そうか?皆が注目してくる。普通そこは誰も興味ないんじゃ無いの。
取り敢えず名前だけ。ミドルバレは何れ来るのだからここいら暴露しよう。
「私の名前はソフィア・アストレア。こう見えてアストレア家の人です。まあ....宜しく。」
頑張って自己紹介をやり遂げた。俺はもう....寝る。顔を伏せて寝る体制に入る。こういう時はこれが一番だな。その後の事は寝ていて良くわからない。
これにて今日一日の学院生活が終了し各自解散となる。家に帰宅する者、、学院の施設を見学する者、街中で遊びに行く者それぞれの行動時間が開始される。
俺も体を起こし帰宅の準備に取り掛かる。鞄の中には大した物は入れていないがティアから貰った御守りを首にかざす。
サファイア色の魔法石でずっと大事にしていたものを俺に授けてくれた。決して無くしたり離したりしないように決めている大事なものだ。
アリアと一緒に帰ろうとしたが彼女は居なかった。多分、クラスの人たちに連れていかれたんだろう。まあ良しとしょう。
トイレにでも行ってこよう。
鞄を持ちトイレに直行した。場所は何と無く把握していたからさほど心配にはならなかった。
「おっ。やはり鏡あった!」
洗面台に大きな鏡が置かれている。トイレに着た理由は用を足す為ではなくこれ。
鞄から取り出したもの。薄ピンク色のリップ。このような物をどうするかって?唇に塗るに決まってんじゃん。アリアにもっと女の子らしくと言われたのでここから始めようかと街の店で買った。
『ふんふん~。』
鼻歌を歌いながら塗る。唇に馴染ませて完成する。これだけで印象は少しだけ変わる。それを昨日初めて知った。何と無く女性の気持ちがわかって来たかも。
鏡に写っているのはまだ小さいけど成長すれば絶対に可愛くなるであろう容姿。第二の人生を楽しく歩んでいた俺だった。
トイレから出た途端、ある生徒に肩をぶつける。俺は何とか体勢を立て直すが相手は地面に倒れる。
やっちまった。どうしょう。
悩んでも状況は変わらないので手を差しのべるが。
「いたぁ~もうだれ。ってEランクの娘じゃんか!」
その人は俺を見て顔付きが変わる。鋭く苛立っている様子。面倒な事になる前に謝っとくべきか?謝る態勢を瞬時に取る。
「あの、ごめんなさい。悪気は無くて。」
直ぐ様立ち去ろうとするが手を捕まれて止められる。
「何、堂々と逃げてんの。Eランの癖に!ほら~ここ怪我しちゃったしどうしてくれるのよ!」
絡まれてしまった。捕まれてる手も離してくれない。
ああ....何でこうなるんかねぇ。
少しムカついたので睨み付ける。相手もそれに察してますます態度を変えてくる。
「はぁ?何か文句でもあんの?Eラン風情が調子乗らないでよ!」
大声で叫ぶ怒りきった女。それにより近くに居たものが反応し注目される。
「おいおい?何か揉めてるぜ。」
「そう言えばあの銀髪の娘。新入生でEランク判定を受けたらしいな。」
「それほんとー?」
「それでいてアストレア家の御息女らしい。」
もう上級生にも噂が広まってるのかよ。本当に何なの?この学院は。
その前にこの場を何とかやり過ごさなければならない。能力を使用しょうかと思ったが学院のルール上ではむやみに魔法を使用しては駄目とか言ってたことを思い出す。
身体能力を上げるくらいはしとこうとこっそりと力を全身に通す。
「どうしたのよ。何か言い返したそうな顔をして。それに貴方の顔が綺麗すぎてムカつく。」
最後のは関係なくね。ただの嫉妬かよ。
「弱者はね。弱者なりに大人しく才能のある私たちに従いなさい。」
「先輩も言っちゃ悪いですけど見た感じ弱いですよね。」
鑑定スキルを使用して見た情報をそのまま教える。この女性はDランクで魔法も強くない。一番関心したのは料理スキルってところかな。見た目と違って女子力高いのは良いことだ。
俺の発言でぶちギレたこの女性は俺の体を強く押した。地面に倒れ背中に少し痛みが生じた。俺が倒れた後、この女性の友達が揉め合いをやめさせてくれたお陰ですんなりと退いてくれた。最後に睨み帰って行ったが。
『背中痛い。』
痛みを耐えながら立ち上がろうとした瞬間、二人の人物に声を掛けられる。
読んでくれてありがとうございます。ブックマークが上がったり下がったりと不安定ですが登録宜しく。
皆さんはGWとっても満喫してますか?
(次回、作者の休日を少しだけ教えます。)




