17.新たな始まり①
待たせてごめんね。ようやく学院編突入。
これから俺たちが住む場所はクレイグと父が手配してくれたようなので大丈夫だと知った。現在、国境を越えアルカディア公国内に存在する中心都市王都に立派なお城が見えるぐらいまで来ている。これから西に進み隣のガルシア都に入国する予定である。馬車に乗って出発してから二日程掛かった。その間、色々と大変な事があったけど何とも旅らしくて楽しかったとも言える。
「ねぇ見えてきたよ!」
隣に座るアリアが何かに指を指して言ってくる。それは先程も言ったお城の事だ。それに今日は空中にドラゴンが飛び回っている。そうか。今日はあの日なのか。
どんな日なのか。それは毎年この時期に開催されるレースが行われているのだ。ドラゴンに乗り速さを競い会う伝統的な事だと聞く。
「お嬢、あれが毎年行われる竜乱戦だ。今の王都はお祭りをしている。ちょっと覗いてみるか?」
あれに気になっていた俺に気付いたのかクレイグはそんな提案をしてくれる。まだまだ時間は余っており暇潰しに最適かもしれない。俺はその提案に了承した。もちろんアリアも同意だった。
予定を少し変更して本来行くはずのガルシア都ではなく王都方面に馬車を移動させる。クレイグの聞いた限りだと竜乱戦は学生も参加しているらしくその学生は俺たちが入学するあの学院だ。学院生でドラゴンを乗りこなす事が出来るのは少し意外と思ったが普通の事らしい。
それから考えている間に王都入口付近に到着する。ここからは馬車を中に入れないので門番している兵士たちに預ける。普通は王都に入国するのは困難であるが今回に限ってはクレイグが居るためすんなり入ることが可能であった。
門をくぐり前に歩きだす。色んな人達がいて賑やかで歓声も広がる。そんな事よりも前に進みづらい。下手をすれば迷子にでもなりそうな人混み。
「ちょっと通りづらいね。」
「そうだね。」
俺達はまだ八、九歳の年齢。身長も低く周りは皆大きい。大人だった時とはそういかないのを痛感させられる。
「お嬢、迷子にならないようにな。」
「おま.....私が迷子になるわけないでしょ。」
思わずお前と言いそうになるが落ち着かせる。俺が迷子になるわけがない。
「良かったら俺が手を繋いでやろうか。」
微笑みながら手を出してくる。ここは手を繋がないのが普通であるがこの時の俺は気分が可笑しかったため手を繋ぐ。今の状態はまるで親子見たいな状態だ。クレイグも冗談で言ったのに予想もしていなかった行動をとったため動揺している。この時、俺はこう言う。
「私だって恥ずかしいのだから付き合ってもらいますよね?」
頬を赤らめて少々意地悪ぽく、身長的だと上目遣いに言うことになる。
「あの~お嬢。先程までの威勢は何処に?」
「ねぇほら見てあれ!」
突然大声で指を指し俺に何かを見せてくる。それは一位の人がゴール近くに接近していた。その後ろに二位が追い上げようとしている光景。観客は盛り上がり声援が更に増していく。
「ドラゴンか.....。」
俺はその時レースの見せ場など気にせず別の事を考える。竜を見るとあの時の事を思い出してしまう。だから極力ドラゴンを見ないようにしていた。でも一瞬、目に映り頭が痛くなる。更には吐き気や心臓がドクドクと鼓動が速くなる。
「.......」
「大丈夫?」
「え?」
声のする方に視線を移すと心配そうな表情をしているアリアが。
「何か顔色が悪いけど。ちょっと何処かで休む?」
「ううん、大丈夫だよ。それよりあれを。」
俺の心配をしないようにと後、レースの見せ場を見逃さないようにと無理に大丈夫と言う。本当はキツいけどね。
「おーと、今回も一位を獲得するのはダン選手か。それとも──」
ダンと呼ばれた選手はとても手慣れた手つきで竜を乗りこなしている。無駄のない動き、日々特訓しているように感じる。その後ろにはお追い上げている選手が一人いた。
「さーて現在二位のアリサ選手。最年少で竜使いの異名は伊達ではない!去年も惜しくも二位。今回こそは一位を狙えるか?楽しみです。」
実況者の説明は分かりやすかった。つまり一位二位争いが始まっているのだ。観客の声援が多くなったのもそれによるものだろう。
「やはり凄いな。最年少の竜使いアリサ選手は。」
「クレイグは知ってるの?」
「まあ俺も噂ぐらいは。確か現在は十六歳。五歳の時に竜を乗りこなす快挙を達成した若き獣使い。お嬢が入学する学院の先輩に当たる人だ。」
獣使いとはまたすごい人物が出てきた。この世界ではビーストテイマーは百人居るか居ないかで希少だという。ビーストテイマーは基本戦争に使われ竜などの獣に乗り戦う。でも最近では戦争に使うのではなくレースが主流になった。これも理想大陸だからこそ出来ることだ。
「あの人美しくて格好いい。」
確かにアリアの意見に同意だ。彼女はとても綺麗だ。レース用の服装に着替えており良く見えないが美しいのがわかる。ブルー色の髪が風になびいている。
「アリサ選手が追い上げています!このままだとダン選手は五連勝の快挙がここで散ってしまうのか?」
実況の通りアリサ選手は徐々に加速し始めている。時属性の魔法を使用し加速している。その速さは肉眼で捕らえるのは正直キツいぐらいに。そのままダン選手を抜いてゴールインした。
観客の声援も響き竜乱戦は終了を迎えた。その後、俺達はまだ時間があるので王都で買い物をしていた。アリアに付き合わされ雑貨、服、武器など様々見ていた。現在俺は.....。
「可愛いよソフィアちゃん!やっぱりこう言うのが似合うよ。」
「は、はあ~。」
鏡に写っていた俺の姿は普段は着なさそうなフリフリのキュンキュンのワンピースを着用しており月形の髪飾りをつけていた。クレイグは「いいんじゃないか?」と今の衣装を買って貰った。別に要らないです。後、アリアに頼まれてそのままの状態である。
『嫌だな~これ。』
女の子の服装は慣れているものの極力可愛い系は着用しないようにしていたのにこの有り様。泣いてもいいんだよ俺。もういいや、神よ、これは私に早く完璧な女の子になれと言うんですね。わかりましたよ!
「うんうん。」
「どしたのソフィアちゃん?頷いて。」
一人心の中でこの姿に納得したのであった。
その後はようやく王都を出て再び馬車に乗り目的地に出発する。森を抜ければようやく到着するらしい。
「もうすぐか.....。」
どんな所なのか知りたい反面緊張もする。森を抜け見えてきたのはデカイ大都市。雰囲気的に王都とは変わらないが街の人たちは皆が学生で大人が少々。本当に学生の街だった。門をくぐり中まで入るが色んな人達が俺らを見てくる。それだけ俺達は浮いているのかな?と思いながら住む家まで到着した。
「ここが君たちの住む場所だ。」
その家はシンプルな構造のシックな家だった。何人かは住めるぐらいの大きさで正直スゲーと思いました。クレイグに聞いたところアストレア家の人が手配してくれた家だそうです。
中に入ると物は設備は整っていますがあまり物が置かれていない。それもそう。今日まで誰も住んでいなかった新居。何かアストレア家って凄いなと再び感心した。
周囲を見渡すとざっと四部屋の個人ルームがあり俺とアリアでここに住むのも少し広すぎないかと思った。しかし。
「あ、そうそう。この家は後、二人入居する予定だ。」
ようやく納得した。だから四部屋あったわけね。それより誰が入居するのか気になるが部屋の整理を始めることにする。
俺の部屋は一番端の部屋。これは俺が独自て決めた。アリアは真ん中の部屋。クレイグとは一旦お別れし部屋に物を置き始める。
俺は比較的物を多く置かないためシンプル系だ。実家みたいに可愛い系はゴメンだ。
そんな事をしていたらとっくに日が暮れた。
「そういえば夕食何にしよう?」
全く飯の事が頭に無かった。先程気付いたばかりである。一様言えば俺は料理が出来るタイプで......はないか。中央のキッチンに移動し冷蔵庫の中身を見る。食材はきちんと揃っていた。
『ちゃっかりしているな~。』
「へぇ~。ここが私の住む場所!?ひっろーい!」
玄関の扉が開き誰が入ってきた。それは女の子。外見的に年上なのでしょうか?服装も際どく何て言うか現代語でギャル?ビッチ?全然わからないが一様声をかけてみることにした。
「あのぉ~。どちら様ですか?」
「へ.....わたし?」
「貴女以外に誰が居るんですか。」
何なんだろうこの人。マイペース過ぎない?
「ごめんごめん。それで.....君誰?」
マイペースな女の子は言葉を返してきた。何この人嫌い。君こそ誰なんですかって言いたい。俺の苛立っていた半分の笑顔で誤魔化した。
「ええと、私はソフィア。ソフィア・アストレアです。貴女は?」
諦めたので俺から軽く自己紹介をした。そうしたら相手もようやく理解したのか自己紹介を始めた。
「私の名前はアイラ・アイスベルン。それよりさっきアストレアって.....君ってアストレア家の?」
「まあ貴女の思ってる通りそうですけど。」
シーンとした空気が続く。この場から逃げたいよん。
「マジで?」
「うん。マジ。」
「うわぁ。本当に本当にアストレア家のお姫ちゃんじゃん!」
急に彼女、アイラは俺の方に突撃してくる。それを華麗に避ける。
「あぶね。」
俺が回避したことで彼女は後ろの壁にぶつかり倒れる。おいおい、新居にヒビが入るし壊さないで欲しい。
「何々!?さっきの音。って何してるの。アイラちゃん。」
「痛た。うん?......アリアちゃんじゃん。超久しぶり。」
何事かと思い部屋から出てきたアリアは驚いた様子でこのアイラって娘を見ていた。もしかしてこの二人は知り合い?何が何やら頭が混がらう。
その時、またまた玄関の扉が開く。
「うん?これは何の騒ぎかなぁ~?」
『また新しい人が来たー!』
俺はやれやれと頭を抑えてため息をついた。
読んでくれてありがとうございます。




