16.旅立ちの時
ようやく学園に入学する間近である。そんな中、そろそろ旅に出る準備を始めていた。
部屋にある自分の荷物を纏めたり整理したりともうこの家には当分帰ってこないだろう。一時のお別れ見たいにじっと部屋を見つめる。
部屋は前より少しがら空きになっており置かれているのは精々机や小物、ベッドなど。
私、ソフィアは一週間後旅立つ。もちろん一人ではない。ところで何処に旅たつのかは察しの通り学院に入学するため。
俺がこれから通うのは国立セイクリッド魔法学院───そこは国有優際の魔法を学ぶ育成機関でもあり魔術師、魔導師を目指すものは誰もがここに入学、卒業しなければ正式に認められない。中には否認の魔術師がいるがそれはこの際関係ないので置いておく。
別に魔術師を目指そうとは思っておらず冒険者になる前の暇潰しみたいなもの。
何故、魔法も使える俺が学院にわざわざ通うって?それはね。今、私の隣の人の為だからかな。
「ん?」
隣にいる人、アリアはキョトンとした表情で見てくる。
「嫌、何でもないよ。ただちょっとね。」
俺がアリアをずっと見ていたことに気づいて不思議そうにしていたので一応、何でもないと説明する。
「もうすぐだね。」
アリアは楽しみにしていた。今まで見てきた中で一番期待に触れている彼女の様子。俺は微笑ましくなる。
アリアはこの時が来るまで否認日々ひたすらに努力し練習していた。上達が他の人と違って早くやはり才能は凄いなと感じた。と言ってもその間、俺はなにもしていなかったんだけどね。
剣術とこの身体とマッチング出来てからはあえて練習をせずアリアの面倒を見ていた。
たまに「ソフィアちゃんも練習しょうよ!」と言ってきたが断った。練習が面倒になった訳ではなくただ面倒になっただけ。あれ?結局変わらないのでは。
今日もそんな感じの平和な日々だった。
それから時間が経ち夜中になって父が一言語りだす。
「ソフィア、お前はアストレア家の人間だ。だからこそ学園ではビシッとしないといけないぞ。」
父は張り切った声で俺に言ってくる。いつもと少し違う。そうか。俺は一応あのアストレア家の人間だ。
アストレア家は世界中に有名な家柄。その家柄の娘が俺。
確かにな。わかるけど俺は自由に暮らしたいので父には悪いけど嘘をつこう。
「わかってますよ。」
「そうか。わかっているなら良い。」
ふぅ~。一息ついて落ち着かせる俺。嘘をつくのはもの苦しいが仕方がない。
近くにいる母が穏やかな様子で。
「ソフィア、私は貴女の夢を応援しています。でも無礼のないように。私は貴女がいつか有名になって帰ってきたら嬉しいわ。」
いきなり飛びっ切りな事を言ってきた。ごめんなさいお母様。私はソフィアは貴女の期待を裏切るかもしれません。
嫌、確実に裏切ります。プレッシャーというものが俺に降りかかる。
実は学院に入るのは暇潰しの為です!とか言ったら殺されそう。特にティアに。想像してみるが考えるだけでおぞましくなる。
「ま、まあ大丈夫です。わ、私は期待にガンバリマスヨ。」
自信がなく片言になってしまった。でもまあ少しだけ頑張ってみるかな。
この楽しい一時がいつまでも続いて欲しかった。そんなのは長く続くはずもない。結局、皆から期待を裏切り家族からも見棄てられる未来が訪れるのはまだその先の話になる。
*
それからは何事も無く一週間を過ぎていった。今日はこの街を旅立つ日。直ぐ側には馬車が置かれており準備も整っている。中には何人かの街の人達が集まっている。
それらは皆、俺に関わりがある人達だ。武器屋のおじさん、酒場のお姉さん、シュン君にその両親、アリアの両親とその他色々と。
こんだけの人が俺たちの健闘を見届けてくれているのだ。つい俺は嬉しくなった。アリアなんて泣いてた。そうだよな。アリアも両親に会えなくなるんだ。
俺とアリアと次いでに二人だけでは危ないのでてっきりリアーナが着いてくるのかな?と思ったが。
「あの~どちら様ですか?」
俺は一人の髭をはやしたダンディーな男?に声をかける。本当に誰ですか?
「おっとすまん。俺はクレイグと言う者だ。次いでに言うとアストレア家本家からの要請によりソフィアお嬢を護衛することになりました。宜しくお願いします。」
丁寧に自己紹介するクレイグと言う男。アストレア家本家からの護衛の人だそうだ。強そうな体格、後、筋肉が。
「格好いい~♪」
キラキラと目を輝かせて彼の筋肉を見る。腹筋がバキッと上腕二頭筋が良い。憧れるぅぅ~ん。(ぶっ壊れ状態です)
何故、俺がこの状態になっているのか説明しよう。俺は筋肉が好きなのだ。一般的にはそう言う人を筋肉フェチとも呼ぶ。後、ダンディータイプな顔付き。はぁ~良いな。
生前は私もこんな筋肉が欲しかったなぁ。後、ダンディな男になりたかった。
生前の姿はまあ自分で言うのもなんだが、イケメンではあった。片目は眼帯をしており皆からは威喝と思われていたけど容姿は爽やか系の男でした。
「ねぇソフィアちゃん。大丈夫?」
「はぁ!」
自分の世界に入ってた俺だかアリアの一言で目が覚めた。その後、アリアに聞いてみたが乙女の顔をしてたと言われ顔が赤く染めてしまった。
だめだめ、筋肉フェチ兼ダンディ好きだと知られたら小馬鹿にされる。自分の性欲を抑える。
「頼んだぞクレイグ。」
「承知しております。ガレス様の頼みであれば何としても守ります。」
遠くの場所で何か会話しているガレスとクレイグ。こんなに仲が良いのか。あの二人は。
「それではそろそろ出発しましょう。お嬢、アリア様。」
此方側に駆け足で戻ってきた。何でだろう。何かモヤモヤする点がひとつあった。それは。
「ねぇクレイグ。敬語は出来るだけしなくて良いよ。私としては堅苦しいからちょっと嫌かな?」
何か年上に敬語は可笑しいなと思い指摘した。後は半分ぐらいは仲良くなりたいからです。
「お嬢がそこまで言うのなら仕方があり───無いな。」
「うん、よろしい。それよりお嬢もやめてくれたら嬉しいかな?」
お嬢って何か恥ずかしい。端から見たら変な感じがする。やめるようにと忠告するが。
「お嬢はお嬢だから、かえることは出来ない。すまんな。」
無理でした。俺も諦めて認めることにした。
「お父様、お母様、リアーナ。皆、また逢いましょう!」
そうお別れの言葉を残し馬車に乗り出発する。家族は手をふって見届けてくれた。これが旅立ちと言うものですか。
懐かしい感じがする。昔もこう歓迎され旅立った思い出がある。これから俺の新しい生活が始まりを迎える。
期待にわくわくを感じるアリアを見て今の人生が楽しく感じた瞬間だった。
「ねぇクレイグ。セイクリッド魔法学院って何処にある学院なの。」
何故、こんなことを聞くのか。俺は行き先をよく知らない。セイクリッド魔法学院とはどのような所なのか。
「ああ。彼処は確かアルカディア大陸の中心都市王都の隣にある街。ガルシア都にある。そこでは学院生に特化された街らしいと聞くが。」
詳しい情報が聞けた。実は父から何も教えられなかった。ただ手続きをしてくれただけでその他の詳細は説明してくれなかったのだ。本当、何処か抜けてるところがあいつの嫌なところだよ。
「ありがとう。」
「お嬢は幼いわりに大人ぽいな。良く家族に言われなかったか?」
クレイグの発言は久しぶりに聞くものだった。大人ぽいのじゃなくて中身が貴方と変わらない中年のおっさんなんです。
決してその秘密は誰にも言えない。俺は少し苦笑いする。
「まあそれは育ちの良いからかな。でもお嬢、アリア様。一つだけ忠告しておきたいことがあるので良く聞いてくれ。」
先程の柔らかい表情から一変し堅い真剣な顔付きになるクレイグ。それを見て俺達は引き締めて彼の忠告を聞く態度を取る。
「君たちが行くセイクリッド魔法学院は厳しいところだ。それはとてつもなく。中には挫折して中退したものもいる。二人とも無理はしないでくれ。」
この忠告の意味がこの時は良くわかりませんでした。多分アリアもボケッとしていたのでわかってない様子。
でもわかることは一つ。俺たちが想像している学院とは全然違うという事。
特に俺の甘い考えの持ち主には厳しいところだと。それを気付くのは学院入学の時に知る。
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これで幼少期編は終了となります。次回からは学院編開始です。




