表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/49

14.失われた魔法


この孤児院の調査を始めてから二日経った。この二日間で何も可笑しな事は無かって至って正常であった。職員の方も怪しそうな動きをしていなかった。このまま何事も無く任務が終れば良いのだが、そうにもいかない。もしくは俺と言う存在が居るからこそ動かない可能性がある。と今、俺は二日前に出逢った少女、リアーナの相手をしている。


「で、貴方はどう感じるんですか。」


「どうと言われてもな。良くわかんねぇ。」


何故、このような会話をしているのかと言うとリアーナだけには俺のここに来た目的を話した。本当は話すつもりは無かったが勘が良かったのか気付かれてしまった。


「まあそれよりお前の方はどうなんだよ。何かわかったか?」


逆に聞いてみた。子ども相手にこのような話は難しいだろうけど自信満々な彼女の表情を見て意見を聞いてみたくなる。


「それ小さな子どもに聞くことですか!?馬鹿なの?」


「何故かムカつく....。」


少女に馬鹿呼ばわりされてしまった。流石にイラつくが我慢している。子ども相手に怒るのは大人として恥だ。


「わたしの見た感じですとやはりガレスが言う通りの職員に犯人がいると思いますよ。」


リアーナは確証したような表情や態度をする。リアーナ曰く、俺がここに来る前にある不可解な事を見たと証言する。それは夜中、彼女がトイレに行こうとした時、人影を見たらしい。その人影は二つあり一つは大きな人影。もう一つは小さな人影。単純に大人と子ども。彼女は犯人に見つかる可能性があり退いたようだが多分それで間違いないだろう。それじゃあ誰が.....。


「その犯人を探すのが貴方の仕事でしょ。」


「確かにそうだけど今日は夜中に張り込みをするか。」


今夜、張り込みしてどうにか犯人を探す作戦を考える。ミーナさんは今日、出掛けるとか言い居ない。一人でどうやって探そうか?と思ったがリアーナは何かを言い始める。


「今日はわたしも手伝ってあげる......別にあんたの為じゃないから。あくまであの子達の為だから。」


口調は生意気で変わらないが何処か恥ずかしそうに言う彼女。やはりこの娘は良い子じゃん。本当、素直になれない奴め。俺は微笑ましく思い彼女を見ていた。


「な、何よ。」


俺の視線を気付いたのか顔を隠す。頬を若干赤い。


「嫌、何でも。ただ、ありがとうな。でも危なくなったら俺が守ってやる。」


そうしてリアーナの頭に手をのせて撫で回す。


「もう、何なんだよ。やめてくれよぉ~髪がボサボサになる。」


そう言われ俺は撫でるのは辞める。悪いことをしてしまったかな。彼女も一様女の子だ。髪を綺麗に整えているのを欠かさずしていると思う。でも出逢った当初から彼女の髪はちょっと乱れていることを気にしていた。この際、何かしよう。


「すまん!その代わり俺が綺麗にしてやる。お前、あんまりお洒落とか得意じゃないだろう?」


「う.....」


反応的に見るとそうらしい。可愛い奴め。俺は少し道具を買ってくるから待っとけと言い買いにいくことにした。こう見えて俺はそう言うのは得意な方だ。あいつには「お前のそのギャップに似合わねぇ~」と言われたことがある。流石に傷ついてそれからはそのような事をしていなかった。でもこの機会だ。あの娘には素材が良い。可愛くなって貰おうじゃないか。買い物を終わらせて直ぐ様彼女のところへ行く。


「遅い。いつまで待たせばいいの!」


「悪い悪い。ほら色々と買ってきたから。」


遅くなった俺に盛大に怒られてしまった。どんだけ楽しみに待ってたんだよ。本当に可愛い奴め。それから彼女の髪を櫛で梳かした。触った感触的にはあまりサラサラとした感じでは無かった。それほどまでここに来る前は酷い生活をしていたのだろうか。


「髪、凄く痛んでるな。」


「やっぱり。この機会に短くしょうかな。」


短くか。今の彼女の髪は腰に掛かるぐらい。だが痛んでいて一度切った方が良さそうに見える。その為一様ハサミは買ってある。


「俺が切ってやろうか?」


「え?あんたって髪切れるの?」


何故か驚かれた。失礼ですが俺は以前、そう言う仕事もしたことがある。勿論、上手だとか言われたことがあってスカウトされそうになったのを思い出す。それも何年も前の話だ。正直、今上手く出来るかわからないので止しとこうか。と思うが


「良いよ。あんたになら切っても。」


「良いのか?」


彼女は照れた表情でそう呟く。一様、職員の人に確認を取ると「全然オッケーです!」と許可を貰えた。早速、ハサミと鏡を持ち出し切る準備に入る。緊張するなあ~。失敗したらリアーナにも悪いし慎重にしていこう。


「もうこの姿とはおさらばなんだぞ。よーく見とけよ。」


今の彼女は美しい。でもやはり髪は大事にしてもらいたいしこれを切っ掛けにお洒落もしてもらいたい。その気持ちを持ち俺は切り始める。盛大に長い髪をバサッと切り金色の髪が床に落ちる。取り敢えず彼女のオーダー的には肩に掛かるぐらいにしてほしいとの事。とにかくそれから切り続け完成した。


「どうだ?こんな感じだけど。」


「ほあ~。」


彼女は驚いている。始めて短くかしてから自分が自分では無いみたいな様子。そして喜んでいる。俺も頑張った甲斐があるな。今の彼女は美しい。


「あ、ありがとう.....。」


またまた俺の視線を気付いたのか照れながらお礼を言うリアーナ。こいつの扱い、少し慣れたわ。それからも買ってきた服装に着替えさせるように言い着替え前より可愛くなった。俺とリアーナの距離も段々と柔らかくなりつつあった。


───夜中


遂に夜中になったので俺たちは動く。他の子ども達はもう就寝している時間。起こさないようにこっそりと抜け出す。そしてリアーナのところに行こうとしたが肝心な本人が居ないのである。何処へ行ったのだろうと探すが見つからない。


「何処行ったんだ?」


俺はその時、考えたくない事を思ってしまう。リアーナはもしかして犯人に連れていかれたかも知れない事。考えたくもない。想像もしたくない。そのような気持ちで一杯になってしまう。


「クソぉ!何処に行ってしまったんだ。」


必死に探している俺。でも全然見つからない。このまま一夜が終わってしまうのだろうか。リアーナも犯人も見つけることが出来ずに。そう思った時、あることを思い出す。


あれはミーナさんが言っていた「この孤児院には隠し部屋があって私も立ち入った事は無いのですけど確かそのような部屋に続く階段を見たことがあります。」と。


取り敢えずそこに行ってみよう。行ってみると確かに隠し部屋へと続く階段が開いていた。そうなるとついさっきまでここに入ったと思われる。俺は急いで階段を降りていく。


「でも孤児院にこんな地下があるとは。」


孤児院の地下は昔、何らかの遺跡があったような感じがする。下に降りるほど暗い。


ん?何か聴こえる。聴こえてきたのは男の声だ。何か怒鳴っているように聴こえる。少しペースを上げて急ぐことにした。ようやくたどり着いてこっそりと様子を伺う。そこにはグリムのおっさんが居た。良く良く見るとリアーナの姿も。


『何してるんだ。彼処で。』


少し耳を澄ませて聴く。


「ほら早く()()()を出しなさい。貴女にはそれだけの秘めた才能があるのです!」


「い、嫌。やめて。わたしは.....貴方の言いなりには.....ならない。」


「本当に生意気な小娘ですな。本当にムカつきます。早く出しなさい。失われた魔法(ロストマジック)を。」


『|失われた魔法?なんだそれ?』


会話を聴くなかで知らない単語が出てくる。ロストマジックとは何なのか?それよりグリムのおっさんの目的が何なのかリアーナを早く助けてやりたいがもう少し聴いてみよう。


「わたしは....そんなの知らない!」


「嘘はいけませんね。そもそも私の目的は異能の持ち主を使い世界を平和にするための───」


「それで.....何人の子が....貴方には殺されたと思うんですか?貴方の.....目的は、強大の力を手に入れる....目的でしょ。」


「何処まで私に手間を取らせば気がすむのですか!それでは儀式を始めましょう。」


「い、嫌、やめて!助けて。」


「そこまでだ!」


そろそろ腹が立って来たところ。だから俺は飛び出した。グリムの野郎は突然の来訪者に驚いている。リアーナは俺を見て少し安堵している。俺はムカついている。何にムカついてるかって?何もかもだ。


「リアーナを解放しろ!」


「おやおや、これは騎士殿。ここは関係者以外は立ち入ったら駄目ですよ。」


グリムは微笑みながら俺の方に視線を向ける。その顔はムカつく程、クズの顔だった。一つ忠告をする。


「無理に優しい人風にしなくて良いぞ。逆にウザイ。」


「お前、今なんつった?舐めてんのかぁ。」


本性を表したグリム。やっぱりそう来なくちゃな。戦闘態勢に入る俺。


「一分で片付けてやる。だからそれまで我慢できるか?」


「うん。」


素直に頷くリアーナ。武器を取りだし奴に先制攻撃を繰り出す。グリムの野郎は戦う事が出来ないのか逃げ回っている。


「どうした。掛かってきな。」


「私も舐められたものですね。良いでしょう。あれを使いますか。」


グリムは魔方陣をはり出す。その魔法は人と魔物が融合する禁じられた魔法。そんな物が使えるとは。自ら人間を辞める覚悟がある奴に対して発動できるらしくこいつは本当に人間を辞めるつもりだ。


「クソぉ。融合する前に止めてやる。」


剣を振りグリムの身体に攻撃を当てようとした。だが、バリアによって跳ね返される。手をくれによりグリムは魔物と化してしまう。三頭の獣(ケルベロス)に変化した。狂暴で暴れまわる。そしてリアーナの方に狙いを定めるケルベロス。


「危ない!」


リアーナの方に突撃し始めたケルベロスに俺は庇うようにとっさに守る。


「ぐあ!」


ケルベロスの牙に体を噛まれ血が溢れ出す。強く俺の身体を噛み離そうとしない。


「クソ...野郎。これでも食らえ。炎よ!」


火魔法『バーン』を使用してケルベロスを跡形もなく燃やす。百度の熱を持って火力を上げる。


「ガルルル(おのれぇぇ!)」


体を投げ飛ばされる。だがもう遅い。この炎は消すことも出来ない。だからこそお前は跡形もなく消え去る。お前の悪事はここでお仕舞いだ。


それから燃え続け跡形もなく消え去った。俺の体は血が流れ止まらない。盛大に噛み砕かれた跡がある。正直キツイ。遠く離れた彼女は心配そうに近づいてくる。


「だ、大丈夫?凄い怪我をしてるじゃない。」


「お前が....怪我を....しなくて良かった。」


彼女は涙目で俺を見てくる。やめろ。泣くなよ。お前のせいではない。俺は心配させないように微笑む。何とか生きているが手当てをしないと死んでしまう。そう思った瞬間、彼女の手から光が放たれる。その光を浴びていく内にみるみると出血が止まり貫通した腹も完全に回復して元通りに。


「なんだ....それは。」


「ごめんなさい。わたしは呪われた子なの。」


呪われた子?。彼女が涙目でそう呟く。そうか。そう言うことか。ようやくわかったことがある。彼女は家族が居た。でもこの謎の力で呪われた子どもと言われ両親に棄てられたところこの孤児院に拾われたのだと。そう捉える事が出来た。この時、俺は始めて失われた魔法(ロストマジック)の存在を知った。


読んでくれてありがとうございます。そろそろ幼少期編も終わり&リアーナとガレスの話も次回で次回で終わりです。


ブックマーク投稿お願いします。評価、感想、アドバイスなどありましたら是非宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ