12.お父様の本気!?
俺は動けない状態であった。アリアが俺を守ってくれてそんでこのままでは絶体絶命のピンチに襲われていた俺はもう駄目だ、終わりだと思った。
しかし、そんな俺達を守って駆けつけてくれたのは──────。
「間に合って良かった。」
父、ガレスが助けに来てくれたのだ。その姿を見た俺はちょっぴりだけ嬉しかった。そのたくましい後ろ姿に引かれる俺は乙女心を盗まれた感じ、つまりドキッとした。
「お、お父様!」
一声をあげる。何て格好いいんだ。
「おらよ!」
「グォォォン!」
ミノタウロスを蹴飛ばし俺のところに近付いてくる父。その顔は少し穏やかな笑みと心配した表情をしていた。
「悪いな。もっと早く来れていればこんな大怪我をせずに済んだのに。」
「.......」
俺は父の声を聞いて黙ってしまう。安心したのか力が抜けたのか父の姿をじっと見ていた。それに気付いたのか父は。
「ほら泣くなよ。何時も前向きなお前が台無しだ。」
そっと支えられる。俺の頭に手を置きトントンと優しく撫でてくる。ああ。何で俺、泣いてるんだ。涙が止まらない。
先程、俺は死を覚悟した。でも実際は死にたくなかった。折角貰った命をこんなところで失いたくなかった。それと最愛の親友が失うことを想像したら怖かった。力が抜け精神が乙女になる俺。
「お父様.....わだじ、怖かったよぉ~!!」
涙を踏ん張って堪えていたのにとうとう本格的に鳴き始めた。それを見て父も「良くここまで頑張ったな」と褒めてくれた。
「......直ぐに終わらせてやるから待ってられるか?」
「う...ん。」
父は再びミノタウロスの方に視線を向ける。その顔は怒りが混み上がっている感じあった。
「俺の娘に好き勝手に虐めてくれたな。それをもう終わりだ!」
父は自分の愛用している武器を取り出す。その剣は騎士団時代に使用していた武器、正確には魔道具だ。名称はレーヴァティン。その剣は美しくそして青色に輝きを放っている。これが蒼の騎士団と呼ばれた由来。
「行くぞ!クソ牛野郎。」
剣を構えミノタウロスに突進する。その走る速さは人間を超えており俺でも姿が見えないぐらい。ガレスってこんなに速かったか?昔よりそれは成長しているかも知れないけど見ない内に力付けたな。
「よえーな。はっ!これでもB級クラスの魔獣かよ。笑わせるな。」
「グオグオーン!」
更に相手を威嚇させ逆に隙を明けさせる作戦。ミノタウロスは怒りで理性が待たれていないのか剣を色んな方向に振り回している。これもガレスの狙いの一つ。相手はたかがモンスターごとき。威嚇させると逆に危険度が増すが相手の隙を狙うことが可能になる。やっぱり凄いや、ガレス。
「ソフィア!大丈夫?」
突然名前を呼ばれ誰かと思ったが声を聞く限り母だ。母も駆け付けてくれたのか。母は俺の酷い姿を見てそっと青ざめていた。隣にはリアーナも居て此方に来てくれる。
「大丈夫ですか.....ってその姿では大丈夫とは言えませんね。」
「リアーナ。」
体を動かすことが出来ない俺を担いで安全な場所に避難してくれた。勿論その場所にはアリアとシュンも居る。皆は俺の怪我を見て心配してくれる。特にアリアは泣きながら手を握ってくれた。その姿を見て少しだけホッとした。
良かった。アリアちゃんが怪我をせずに済んで......泣かないで。ゴメンね心配かけて。無茶しちゃって。
怪我で上手く会話が出来ないけどアリアには想いが伝わったのかニコリと表情を変える。
「ソフィア.....。」
「お....かあ....さま。ごめんなさい.....無茶して。」
母は俺に近付いて名前を言ってくる。その顔に罪悪感を残りの力上手く伝える。実は致命傷を食らっている。それを心配されないために皆に隠している。
今だって出血大量で止まらない。これはもしかして助からない可能性だってある。母は俺の頬に手を置き優しくしてくれる。
「........」
呼吸がキツくなってきた。遂には一言も喋ることが出来なくなった。少し疲れたな。もうこのまま目を閉じて楽になりたい気持ちで一杯。でもそうしたら皆が悲しむ。
そんな未来嫌だ。嫌だよ。俺、ソフィアとしてまだ生きたいよぉー!
そう感じた瞬間。何故か体の痛みが収まっていく。そしてぼやけていた視界も少しずつ戻っていく。更には先程までの出血が嘘みたいに止まる。
驚くことはまだまだあった。リアーナの手から光を放っているのだ。その光は緑色で綺麗で美しい。リアーナもしかして。
「私がお嬢様を治す。」
「リアーナ。貴女.....。」
母も驚愕していた。それもわかる。だってリアーナは魔法が使えないはず。それは本人も認めていた。なのに今、この瞬間魔法を使用している。
「隠してて申し訳ありません。ですがこの力については後程で説明します。」
「わかったわ。」
母も了承し俺の安否を見届けてくれた。それに色んな事があって疲れたのか俺は意識を失った。
*(ガレス視点)
「やっぱりこの程度か。」
俺はミノタウロスと戦っている。と言っても本気を出して挑んでいるのでこの牛野郎は雑魚。それより俺の娘をたっぷり痛め付けた事がムカついた。
ソフィアは俺が駆け付けた時には既に手遅れの状態だった。致命傷をおって心配させたくなかったのかわざわざ本人からは言わなかった。俺が気付いてないと思ったか?
そんなこんなで何故俺は娘が危険な状態なのに安心しているのか。まあリアーナがいれば助かるから。視線を皆がいる場所に少し見る。これが終わったら言及してくるだろう。まあこの際、何れは話そうと思ってた事だ。
「やっぱよえー。」
ミノタウロスの体力はもうじきつきそうである。止めを指すか。剣に魔力を注入させる。注入させ放出させる至ってシンプルなもの。決して強いと言うわけでもない。
このレーヴァティンは本来俺が扱って良い代物ではない。本当はあいつと相性が合うんだけどな。
「じゃあ最後まで雑魚だったが墜ちろぉ!」
真っ二つにぶったぎり粒子状に消滅するミノタウロス。悪いな。来世では人間として産まれてきたら仲良くしよう。一様俺には魔獣にも意志があると信じてる。だから少しだけ残酷に感じてしまうんだよな。本当にこのスキルは面倒だ。
「さてと、彼方の方に行きますか。」
皆がティアがソフィアがその友達が居るところに俺は向かった。
*(ソフィア視点)
俺は惨めだ。誰かを助けてやることが出来ない。何時も何時もドジを踏んでしまう。そのせいで何人救えなかったのか。悔やんで仕方ない。
それもすべて俺が弱いからだ。だから俺は強くなった。強くなれたんだ。なのに守ることは出来なかった。強くなれれば誰かを救えるとか思ってた馬鹿が結局は救えずに後悔し続ける。
俺が人生で誰かを救えたのはあの時しかない。それでも嬉しかった。ソフィアになってからも誰かを救えたらなと言う気持ちは少しながら持っていた。
でも俺は闘うことから逃げている。その心の甘さが俺の弱さなのかも知れない。
多分これからも闘うことを拒んでいく人生が続くだろう。それが今にとっての幸せなんだから───────。
「....言うこと?」
誰かの声が聴こえる。
「そう────だ。」
段々と聞き取れてきた。俺の名前を呼ばれている。
「ソフィア────伝えるの?」
はいはい。会話に気になるから起きますよ。目を開ける。そこには母と父が。そして見慣れた場所。自分の部屋だった。
ベッドで寝かされていた俺は窓から見る日射しで朝なんだと感じた。
「うう、何話してるの?お母様、お父様。」
目覚めで良く脳が働かないのかそれとも痛みが少し残っているのか頭を抑えながら二人には言う。それを見て二人は。
「ソフィア起きたのか?」
「ソフィア.....」
二人とも驚いているのか呆然と俺を見ている。何々?顔に何かついてる?
「ソフィア!」
母に抱きつかれた。今すぐにでも泣きそうな表情をして。あっ!まずい。この時、俺の脳内選択肢が出る。
1.強く抱き締められ人生終わる
2.抱き締められ息が出来なく人生終わる
3.抱き締められたがその後解放されるが人生終わる
嫌々、全部救いようがない。それに三番は意味がわからん。何で抱き締められて解放されたのに人生終わるの。その方が可笑しいって。
「ティア。その抱きつくのは良いがお前の馬鹿力は危ないから止めとけ。」
「うー!ガレスくんのケチぃ~。」
どうやら父が止めてくれた。それと何だろう。こんな二人を見たのは始めてだ。何故か楽しそうで自然とほっこりする。これが夫婦って奴ね。羨ましいわ。
「ほらガレスくんがいちゃついてくるからソフィアが笑ってるじゃない。」
「ティアこそ俺に甘えたいそうな顔してたぞ。」
「そ、それは......そうだけど。って何言ってるの私。」
「ははっ。やはりわかりやすいなティアは。」
「も~う!ガレスくんのばかばかばか!」
娘の前で盛大にいちゃついている二人。俺は何を見せられているのでしょうか。俺の知ってる二人は仲が悪そうな雰囲気しか知らない。
「本当にお父様とお母様って仲良いんだね。」
俺の発言により二人はようやく我に返る。娘に見られたのか恥ずかしくなり顔を赤らめている二人。本当に幸せなんだから。
「あ、そうそう。ソフィアに話したいことがある。」
父が急に真剣な態度に変える。話とはやはりリアーナのことだろう。父とリアーナにどんな関係があるのかどうして魔法が使えないはずの彼女があんな力を使えるのか。どうして今まで隠していたのか。気になることが沢山あった。
読んでくれてありがとうございます。良かったらブックマーク登録宜しくお願いします!評価、感想、アドバイスなど気軽に。




