『雪月花集合!』
やっと帰って来れました
仙人連邦から、再びナガサキに帰って来たのだが…………
「きゅきゅ!」
「!!!」
「ままー!」
「主様!」
皆飛び付いて来たので、なんとか受け止める。柊もかと思ったが、一度呼び出したとはいえ、結構長い時間離れてたから、寂しくなってたのかな?
二匹と二人に遅れて、ロンレンさんが苦笑しながらやって来た。
「やっぱり来たか、竜胆がやけに外を確認しに行くからまさかとは思ったんだがな」
「るーるー」
竜胆の野生の勘ですか、あ、スキルのほうじゃなくて、で、当の本人は嬉しそうに俺に頬擦りしてきてる。
柊は、抱きついた後に慌てて離れて、それからはグルグル俺の周りを周り始めた。
「なんだか、主様の気配がより強くなった気がします」
「そう?」
「はい!」
「まま、強いー!」
「きゅ!」
「!!!」
うーん。仙人として覚醒したからかな? それよりも、挨拶を済ませて出発しよう。なるたけ早めに帰りたい。なんというかね、あの〈ツェントゥル〉が懐かしいのだ。
転移門を使って戻るつもりなので、帰りは一瞬だ。
“夢月館”の人達に別れの挨拶をする。
「スノウちゃん、また来てねー!」
「寂しくなるなー」
「怪我には気をつけるんだよ!」
「病気にもです!」
「日々精進、忘れんなー」
「また会いましょー」
「ん。ありがと」
皆、名残惜しそうに別れの挨拶をしてくる。一人一人に感謝の言葉を伝える。そして、ユキミさんの番になった。
目尻に涙を浮かべたユキミさんが、微笑みながら頭を撫でてくる。
「また来てねスノウ。今度は、お友達も連れてね」
「ん。絶対来る」
ユキミさんと指切りをする。また来よう。この人達に会いに、必ず。
「さよなら」
「きゅきゅ!」
「!!!」
「お世話になりました」
「またねー!」
皆に見送られながら、俺は転移門をくぐる。少しの浮遊感の後、懐かしいヨーロッパ風の建物が目に入る。
転移門の周りには、さまざまな衣装や種族のプレイヤーがいた。懐かしいな、まるで、初めてログインした時の気持ちになる。
目立たないうちに、興味深げに辺りを見回す柊と竜胆を連れて、急いでギルドホームに向かう。路地裏を高速で駆け抜けて、一陣の風のようにギルドホームの扉をくぐる。
「クノ、ライラ、ただいま!」
「きゅ!」
「!!!」
声をかけてみたが、どうやら二人共出掛けているようだ。仕方ないので、椅子に座って柊と竜胆に色々と説明する。二人には、俺の故郷に帰るとだけ、簡潔に伝えていたので、詳しく説明しないとな。
とりあえず、ここでクノとライラという友達と暮らしていることや、姉と妹がいること、ここには変な奴もいるので注意することなど、色々聞かせる。
「分かりました!」
「うにゅ?」
柊は真剣な表情でしっかり聞いていたのだが、竜胆は物珍しそうにホームの中を見渡していて、よく聞いていなかったようだ。
柊が、かいつまんで簡単に竜胆に説明しているのを微笑ましく見ながら、お知らせ設定を切りっぱなしなのを思いだし、慌てて元に戻す。
あーあー、たくさんメールが来てるよ、だいたいが、今どこにいるのかというメールなので、流し読みしていく。そんな中で、闘技大会イベントがあったことを知った。ガックシ、知っていたらダッシュで戻ったのに………
まぁ、過ぎたことは仕方ない。また似たようなイベントやるだろうし、その時に暴れよう。
メールを読んでいくなかで、気になることがいくつか、それは、《七星会》と呼ばれる現最強 (らしい)ギルドや、最近多く出没しているPK達が、俺を狙ってるそうなのだ。まぁ、《七星会》のほうは、PKじゃないので単純に戦ってみたいってだけだろうが、PKは何故に狙うんだ? 一応有名プレイヤーだからか?
ま、考えても仕方ないか、来たら【仙術】の実験台になってもらおう。
と、ここでホームの扉が開いたので、立ち上がる。
「スノウ!」
「スノウちゃん!」
「クノ! ライラ!」
久しぶりに会う二人とハイタッチ。その後、俺のことを話したり、クノやライラのことを聞いたりしたのだが、長くなるので全て省きました。
「ラ、ライラちゃんがゴースト……」
「ハーフゴーストだってば! スノウは覚醒だっけ? さらに無茶苦茶に磨きがかかったようね」
「クノとライラも大概」
物理攻撃無効とか、人嫌いの生き物に懐かれるとか、二人共何やってんの。ちなみに、人嫌いの生き物ことすあま(相変わらずクノのネーミングセンスは分からん)は、竜胆に捕まってモフモフされている。いいな竜胆、気持ち良さそうだ。
竜胆と柊は二人を気にいったようだ。ネーヴェとシャルーは、久しぶりのフクロと大福と一緒に遊んでいる。
「さてと、こうしてまた集まったわけだけど、これからどうする?」
「うーん。久しぶりに三人でフィールド行こっか」
「賛成」
という訳で、三人でフィールドに出ることに。他の皆には、ホームで留守番しててもらう。実力を知るには、三人だけのほうがいい。
という訳で、先ずは肩慣らしに周囲の四体のボスを回ることにしたが………やってみるとあら不思議。俺とライラは瞬殺出来るし、クノもソロで問題なく倒せるレベルまでいっていた。
「よし! 王都の先行きましょ、王都の先」
「だね」
「準備運動にもならない」
ここまで強くなっていると、道中の敵にはさほど苦労しないので、転移門を使わず歩いて行くことにした。
あ、そういえばスリート姉さんやヘイルとかに、戻ってきたこと伝えてないや、ま、いっか後でも。
道中出てくるモンスターを蹴散らしつつ、王都に向かって一直線に走っていたのだが、そんな俺達の前にたくさんのプレイヤーが立ちはだかった。その数、なんと20人はいる。
「よぉ、こんな所で女子三人なんて、危険だぜ?」
「そうそう、PKに狙われちゃうかもよ?」
「ギャハハハハハ!!!」
「最も、我々がそのPKだけどね」
おっと、どうやらPKのようだが、今の俺達にとっては実力を試す丁度いい敵にしか見えない。クノもライラも、臆することなく、それどころか、どこかわくわくしているようだ。
「丁度いいわね」
「援護は任せて」
「やっちゃおう」
さて、PK諸君、俺達を狙ったことを後悔させてやろう。




