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『仙雪:修行やってます』






やって来ました修行の日!


修行用の胴着に着替えさせられた俺は、テンシンさんと一緒に切り立った崖を見上げていた。


これが本当の断崖絶壁ってね。



「これを登ればいいの?」


「うむ。そうじゃ」



クックック。笑いが出そうだぜぇ


こんな崖、【風之主】を使えば楽々駆け上がることが出来る。修行にならないんじゃないかな? テンシンさんを、あっと驚かせそうだ。



「あ、スキルの使用を禁止するこの腕輪を着けてもらうぞ」


「………だよね」



そんなうまい話があるわけないですよね……


そそくさと腕輪を着けて、崖に足を掛ける。どのくらいかかるか分からないけど、とにかくやりますか。



「爺さん。そんなひょろい女が新しい弟子か?」



振り替えると、むすっとした顔をした、明らかに不機嫌な顔をした青年がいた。


首から翼生えてるし、天人なのかな? それにしてもひょろいと言うのは酷いな、痩せていると言ってほしい。それと、俺は男だ!



「テンジ。何か文句でもあるのかの?」


「………いや。ただ、そんなひょろいのじゃ修行には耐えられないから、もっと見込みのある奴にしたほうがいい」



それだけ言うと、さっさと帰って行った。なんだ? もしかしてあれだけ言うために来たのか? 暇人じゃん。



「……すまんのう。アイツの推薦した奴を鍛えるハズだったんじゃが、お主のほうが気に入っての……って、話聞いてないな」



うん。別段どうでもいい。直接的な邪魔をしてこないのなら、関わるだけ時間の無駄ってもんですよ。


テンシンさんの話をスルーして、もくもくと登っていく。


それにしても、どのくらいの高さなんだ? こりゃ、普通に登ってたら一日以上かかりそうな気がするな。



「よし」



なんとか足をかけられる足場に片足をかけて、ゲームだからこその能力を利用して、垂直飛び。



「おぉ!」



跳んだ先で足を無理やり引っ掻けて、再び崖に張り付く。再び同じように足場を見つけて、垂直飛びで一気にどんどん登っていく。


暫く無心でそうしていると、下が見えなくなるぐらい高くまで登ってきていた。だというのに、頂上は未だに見えない。


まったく、なんなんだよこの崖ぇ



「ほっほっほっほ。随分早かったのぅ」


「もう夕方だけどね」


「いやいや、3日以上かかるのが普通じゃから、一日もかからずに登りきったのは凄いぞ」



平均3日かかるって、夜どうすんだよそれ。聞いてみたところ、そのまま黙々と登る奴、壁に張り付いて寝る奴、色々いるらしい。


……そっちのほうが凄い気がするんだが


さて、修行はまだまだ続くよ。



「さて、お次は自然を感じる修行じゃ」


「………」


「仙人とは、自然を感じとり、自然と一体となり、自然を操って戦う。自然と密接な関係にあるのじゃ」


「………」


「この修行は殆ど動かんのが基本じゃが、全ての修行の中で最も重要と言っても過言ではない」


「………」


「よいか? 自然を感じるのじゃ、自然を感じとれたとき、お主は仙人に近づく!」


「………」


「何か質問とかあるかの?」


「………どのくらいこうしてればいいの?」


「そりゃお前さん。自然を感じ取れるようになるまでじゃ」



………マジか。それまでずっとこのままだと? まぁ、別に虫とかいないって事前に聞いたけど、女性もこれやるの?




…………




あ、やるんですか、そうですか


でも、だからといって頭から下を地面に埋めるのはどうかと俺は思うんだけど?


「頑張るんじゃぞ」と最後に言ったテンシンさんは、俺を放置したまま何処かへ言ってしまった。埋めっぱなしで行くんですか、そうですか。



「うーん」



自然を感じるの………ねぇ。以外と冷たくて気持ちいいってぐらいしか感想ないんだけど、これ何日ぐらいこうしてれば感じられるようになるんだろ?


平均何日か聞いとくべきだったな。


暫く土に埋もれていたら、だんだん眠くなってきた。



あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


駄目だ。限界。無理、なんかじっとしていられない。何かが俺を呼んでいるッ!!


土から飛び出した俺は、心の思うままに全力疾走した。









































「…………はっ!」



あれ? 何処だここ? なんか知らんが、目の前が一面雲海になっている所に来た。心地よい風が吹いてきている。



「………ッ!」



と思ったら、ビュウ! と強い風が吹いてきた。



そよ風



空っ風



つむじ風



色々な風が俺の身体を、俺の心を、俺の魂を、揺らして、飛ばして、次々と変えていく。


悪い気分じゃない。というか、とてもいい気分だ。なんでここに来なかったのだろう?


ここなら無心になれる気がする。



何か………何か………なんだろう?



身体の内側から沸き上がってくるこの感覚は、いったいなんだろう?


悪い感じはしない。このまま、沸き上がってくるままに力の限り、こう━━━



「なにやっとんじゃ!!」


「痛っ!」



テンシンさんに頭を叩かれた。


あ、そういや修行の途中だった。



「まさかこの重要な修行をほっぽりだすとわのう。しかし、なんでまたここに」


「………風が気持ちいいから?」


「………はぁ。とにかく戻って修行の続きじゃ」


「はーい」



それにしても、何か掴めそうだったんだが………


ま、いっか。





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