『稲荷山にて“終” 』
◇
■ツバキ視点■
「スミマセン。失敗シマシタ」
「くそ! あの女ぁ」
「ここは、一度引くべきでは?」
スノウさん達を襲った三人が、それぞれ喋る。女が目の前の人物達に告げるが、その人物達は首を振った。
「ならん! 我々がどれだけ苦労したことか……」
「それに、あの女が何か勘づき始めた」
「左様。完全に疑われる前に、事を進めなければならぬ!」
“あの女”って、私のことかしら? 完全に疑うどころか、もう証拠まで持っているのだけれど
さてと、イチカとミズキを狙った奴らと、三老師の関係はハッキリしたし、いけるわね。それにしても、3日以内に次の手を打つとは思ってたけど、この調子だと直ぐにでも動きそうね。
三老師の部下のほうは、サクラとキクノがやってくれるだろうし、私はこっちをなんとかしましょうかね。
「とにかく! 奴らがあそこから出てきたら、直ぐに捕らえて儀式の場所まで行くぞ!」
「あらあら、楽しそうですね。私も混ぜていただけますか?」
『っ!?』
六人が一斉に此方を見る。
「ツバキ……貴様、何故ここに……」
三老師の一人が、驚愕の表情を浮かべた。無理もないでしょうね。予想していたより、ずっと早く私が気づいたのだから。
「ふふふ。姫巫女の一人として、巫女に手を出そうとするのは許せないわ。貴方達にはここで消えてもらいます。けれど、先ほど言っていた儀式の場所を教えていただけるのでしたら、一生牢屋暮らしで勘弁してあげますよ?」
最後の慈悲を与える。まぁ、どうせ聞かないでしょうけど。
「………一人でノコノコと出て来て何を強気なことを! やれ!」
「ハイ。食ラエ!」
不思議な話し方をしていた謎の人物が、靄のようなもので私を拘束する。
ふむふむ。魔力の外部流出を防ぐみたいね。これでは、符は使えない。
「悪いが。ストレス解消させてもらうぜ!」
大男が、金棒を振り下ろしてくる。
でも、私には届かない。
符を使えなくされるのは、予想していた。だから、もう既に使っている。
大男と私の間に、一つの影が滑り込んできた。そして
「なっ!?」
一瞬で大男が両断され、絶命した。大男が死んだことで、彼らにも私を守るように現れた式が見えているだろう。
侍と同じ格好をし、顔を紙で出来た面で隠した、大太刀を持った人物。
「神よ。この地を血で汚すことを、お許しください。羅門」
「『銀の刃・絶』」
横に振るわれた大太刀。
ただ一度振るわれただけで、木が、草が、そして残った五人が両断された。
「『炎界』」
靄が消えたので、符で死体を焼き払う。多分だけれど、これで大丈夫でしょう。
全て終わったと安心した私は、隣に佇む人物に話しかける。
「来てくれてありがとう」
「気にするな。それと、カゲツを誉めてやれ」
「勿論。ありがとうね、カゲツ」
羅門の影の中にいるであろうカゲツを誉める。
「俺はそろそろ行くぞ。あの二人が来たら面倒だ」
「少しは仲良くしたら?」
「それは、あの二人がまずすべきことだと思うが?」
「それはそうだけど、ね」
私は、羅門に笑いかける。
「………はぁ。とにもかくにも、もう行く。また何かあったら呼んでくれ」
「えぇ、その時は宜しくね」
帰っていく羅門を見ながら、私はやっと終わったのだと実感出来た。
◇
「ほらスノウ! こっちも食べなさい。こっちも!」
「いいえ! スノウが食べるのはこっちです!」
はいはいはい。どっちも食べるから。喧嘩しない。どう、どう、どう。
帰って来てすぐ、何故か宴会になりました。まぁ、めでたいことだからいいか。
ちなみに、本来ならイチカはサクラさん達側と、ミズキはキクノさん達側と宴会をするハズなのだが、ツバキさんの
「スノウさんも修行が終わったんだし、三人共目出度いんだから、皆で宴会しましょ」
これに一番乗ったのが、サクラさんとキクノさんだったという………よっぽどツバキさんと一緒が良かったのだな。
目の前で俺と同じ状況になっているツバキさんと、苦笑しあう。
「ふふふ。あぁそうだ、スノウさんはこれからどうするの?」
「ん。戻る」
クノとライラに久し振りに会いたいし、ネーヴェやシャルーだってフクロや大福に会いたいだろう。柊と竜胆も紹介しなきゃいけないし……
戻ることはもう決定済みなのだが、イチカとミズキは何故か引き留めようとする。
「もう! 巫女なんだからここにいればいいじゃない!」
「そうですわ! 一緒にお話とかお風呂とか」
お風呂は勘弁してください。
「はいはい。スノウさんを困らせてはいけませんよ? それに、二度と来ないわけじゃないでしょう?」
「ん。友達連れてまた来る」
「ふふ。それは楽しみですね」
クノとライラも気に入るハズだ。
沢山の巫女さん達に囲まれながら、俺は遠くにいる仲間達のことを思い浮かべた。
掲示板回やって、〈ヤマト〉の最後の話です。




