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『稲荷山にて“神”』






「さっきはよくもやってくれたなぁ、おい」



いや、そっちが何かしようとしたんだからやったんじゃん。自業自得じゃん? 逆恨みとかないわー


さてと、何を言ってもどうせ無駄そうだし、ここをどうにかするか考えますか。


後ろにも気をつけなきゃいけないから、なんとか奴の向こう側に移動して、壁を作って逃げようそうしよう。



「覚悟しろよぉ? そっちの二人以外は殺しても問題ないみたいだからなぁ」



残念ながら、死にません。死に戻りするだけで、死にはしません。ま、向こうはそんなこと知らないかもだけれどね。


とにもかくにも、サクッとやっちゃおう。



「おらぁ!」


「危ない」


「ちぃ! さっきからちょこまかと……!」



実は、さっきから攻撃され続けている。まぁ、相手は俺より遅いから、簡単に回避できる。というわけで、思ったよりも上手くいきそうだ。


手で指示を出しつつ、時折目の前の大男を挑発して、此方に意識を集中させる。



「くそがっ! この野郎!」



野郎じゃない。今は女だ………自分で言ってて、なんか悲しくなってくる。



「スノウ!」


「スノウさん!」


「なっ!?」



よしよし。大男が俺を攻撃している間に、二人が向こう側に移動していた。



「『爆炎』!」


「『爆炎』!」



二人の『爆炎』が大男にヒットし、大男の意識が二人に移る。


まったく。この状況で一人だけに意識を向け戦い、その上別の人から攻撃されたらそっちに意識を移すとは、ド素人だな。


飛び上がって、肩にアイテムボックスから取り出した刀を当てて、峰に乗っかるようにして、滑って向こう側に回避。そして、その時に地面に符を四つほど投げて張っておく。



「このクソアマど「『竜巻』」



大男の言葉を遮るように、『竜巻』を発動させる。


狭い洞窟の中を暴風が吹き荒れ、嵐の壁を作り出す。



「ちょ! ほんとどういう威力してるのよ!」


「先ほどの時も思いましたが、非常識ですわね」



酷いな。苦情ならアネスまで頼む。



「クソ!」


「無駄」



自分で言うのもなんだが、これ絶対人が突破出来るものじゃないし、打ち消すのもかなり難しいと思うしね。


とにもかくにも、これであの大男と後から来る二人はこの通路を使えない。反対側の通路から来るとしても、それなりに時間がかかるハズ。


つまり………



「行こう」


「うん。水神ヒュール様の所まで行けば、安心だしね」


「えぇ、急ぎましょう」



満場一致。駆け足で、水神の湖を目指す。


道中現れたモンスターは基本的には無視し、道すがら『竜巻』の符を設置して、奴らが通りかかったら発動させて足止めする。


そんなこんなで着きました。



「ふぅ。やっと着いた」


「えぇ」



なんだ? 二人は張り合ってたハズだけれども、仲良くなったのかな?



「お疲れ」


「スノウさん。ここまでありがとうございます。お陰で、無事たどり着けました」


「スノウでいい」


「え?」


「スノウ」


「………スノウ、ありがとう」


「ん」



ミズキは、なんか固いと思ってたんだよな。さて、イチカのほうは?



「ありがと、スノウ」



そっぽを向いて、頬を赤く染めながら告げるイチカ。ツンデレですね、分かります。


二人を見送ろうと思ったのだが、どうやら俺も行かなきゃいけないようです。



「? スノウ、もう大丈夫だけど?」


「えぇ、それにスノウはこれ以上先には……」



心配そうな二人に大丈夫と告げて、先に進んで行く。


暫く進むと、なんの音も聞こえず、水面が全く揺れていない湖が見えて来た。周囲には、深い霧が立ち込めていて、何処となく神秘的な雰囲気がする。


そしてその湖の上、青く波うつ美しい髪に、澄んだアイスブルーの瞳。その表情はピクリとも動かず、まるで人形のようだが、とても美しい。そして、うっすらと光っている。


隣の二人が涙を流しそうなほど喜んでいる所を見ると、おそらく水神ヒュールなのだろう。



「私の下に来た二人の巫女よ。そなた達を心から歓迎する。よくぞここまで━━━」


「スノウーーー!!!」



水神ヒュールの神々しいありがたいであろう言葉をぶったぎって、アネスが俺に抱きついて頬擦りをしてきた。


ぽかんとした表情で此方を見ている二人。


そして、ジト目になったヒュール。



「………アネス。台無しなんだがどうしてくれる?」


「だってヒュール固すぎるんだもん!」


「“だもん”じゃない。これは神聖な儀式でもあるんだ、君が奔放でこういうのは苦手なのは分かるが、せめて邪魔はしないでくれ」


「分かった! じゃあ、あっちでスノウといるね!」



妥協点を見つけたらしいアネスが、俺を連れて邪魔にならない所に連れて行った。


アネスに連れて行かれた場所で、アネスに料理を出しつつ、儀式を見るとも無しに見る。


暫くしたら、儀式は終わったのか二人がやって来た。



「………スノウ。色々と説明してもらいましょうか?」


「えぇ、私も色々聞きたいですわ」



ニッコリ笑った二人に、今回のことを洗いざらい話す。



「成る程。そういうことでしたの」


「風神アネス様の寵愛………通りで『竜巻』が凄い威力になるハズ」



俺が出したケーキを食べながら、二人はため息を吐いた。自分達が頑張って頂く寵愛を、俺が殆どなんの苦労もなく貰ったことについてかな?


と言われても、アネスは寵愛を与えやすいから気にしないほうがいいぞ。ちなみに、神様二人は……



「ほぅ。なかなかうまいな」


「うーん。いい気分!」



酒を飲みながら語らっています。なんというか、それでいいのか神



「こっちは心配していたことが全部片付いたんだ、酒盛りぐらいしたくなるさ」


「そうそう! という訳で、もう一本!」



瓶ごと飲むアネスに、ほどほどにしてほしいと頼む。それにしても、全部片付いたってどういうことだ?






次回で“神巫女編”は終わりです

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