『三人で行くゲーム』
「私はライラ。魔法剣士を目指してるわ。」
「クノです。僧侶になりたいと思っています。」
「スノウ。見習い巫女やってる。」
先ずは、自己紹介と言う事で、二人の名前を教えて貰った。『ファイアーボール』を使っていた、赤髪ポニーテールに、赤目の女の子がライラ。もう一人の、背中にかかる程度の空色の髪に、銀色の瞳の女の子がクノだ。
「見習い巫女って、就職者!?」
「就職者?」
「職業についてる人の事を、そう呼んでるんです。」
「成る程。」
そんな呼び方があるんだな、そして、そんな呼び方があるって事は、もう何人か就職した奴がいるのか。
「見習い巫女って、どんな職業なの?」
「ライラちゃん! そういうのって、秘密なんじゃ? 気になりますけど………」
「後衛支援職。」
「そのわりには、ソロで、バリバリ戦闘してたけど?」
ライラの問いに視線を逸らす。そんな事言ったって、戦いたいんだもん。
「それより、なんで追われてたの?」
「コレを狙われたの。」
そう言ってライラがアイテムボックスから取り出したのは、白い大きな毛皮だった。
「兎も簡単に倒せるようになって、森に出てくる森狼を狩ってたんだけど、白いのが出てきてね。あ、普通は灰色なんだけど。」
「苦労して倒したら、レアな毛皮を落としたんです。それで、掲示板で調べたらレア個体っていう、普通より強くて、レアな素材を落とす敵だったみたいなんです。」
「それで、喜んでたらあいつらに聞かれて、アイテム寄越せってしつこくて、本当助かったわ。」
ふむふむ。そんな敵がいるのか。ん? もしかして、あの黒い兎もそうかな? 気になったので、二人に黒い兎の毛皮を見てもらう。
「コレもそう?」
「へぇー。スノウも持ってたんだ。」
「運がいいですね。」
この後話しあって、一緒に町に戻る事にした。その過程で兎相手に鉄扇を使ったら、二人に、「近接でも戦えるんだ!?」と、驚かれた。大人しく支援職やったほうがいいかな?
「着いたわね。」
「はぁー。一時はどうなるかと思いました。」
「帰還。」
戻って来たはいいが、町の中が騒がしいというか、沢山のプレイヤーを連れた変な奴らが此方へ向かって来ていた。どうやら、草原に出るようなので、脇に退くことにする。ちなみに、先頭にはなんだかキラキラと光を放ちそうな、金髪のイケメンがいた。誰だアイツ。
「攻略組筆頭の、アーサーとその仲間達ね。」
「なんだか、キラキラした人達ですね。」
「微妙。」
久しぶりに、見ただけで面倒くさそうな奴だと思ってしまった。ああいう奴は、自分が一番だと思ってるんだろう。つまり、話が通じない面倒くさい奴のハズだ。
「ああいうのって、好きじゃないわ。」
「同感。」
「でも、カッコいいですよ?」
「カッコよければいいってものじゃないでしょ? それに、クノは現実で好きな人いるじゃない。」
「そ、そうだけど、今は関係ないよぉ………」
ふむふむ。恋する乙女というモノか。いいね、いいね、青春してるねー。恋と言うと嫌な思い出しかない。初めて告白されたのは中1の時で、学年一と呼ばれた男子からだった。あの時の事は、今でも彼のトラウマになってるだろう。俺はなんども男から告白されたので、慣れた。今でも寒気が走るけど。
「そういえば、この後どうする?」
「薬草採取。」
「なんで、さっき取って来なかったのよ。」
「今、気付いた。」
「じゃあ、一緒に行きましょう! その前に、フレンド登録です!」
手早く二人とフレンド登録する。フレンド登録すれば、メールやボイスチャットが、フレンドの間で出来るらしい。このゲーム初めてのフレンドですよ! 嬉しいですよ!
という事で、薬草採取のために、草原というか、森の中に入る。なんでも、森の中のほうが沢山手に入るらしい。
「あった。」
薬草を一つ千切ってみる。低品質になった。あれかな? 根っこごと取らなきゃいけないのかな? そんな時はスコップ! と、言いたいとこだけど、今はないので【自然操作】を使ってみる。
「出来た。」
「どんなスキル使ったのよ。」
「綺麗に根っこまで取れてますね。」
【自然操作】を使って、薬草の周囲の土を取り除いてみた。すると、薬草が丸々一つ取れた。それも、最高品質になった。という訳で、【自然操作】を使って薬草や、毒草を沢山集める。
「スノウは調薬もやるの?」
「ん。まだやってないけど。」
「ポーションって苦いんですよね。青汁を2倍ぐらいにした苦さなんですよ。」
「なんとかしてみる。」
何事も挑戦だ。苦いなら、甘くしたりも出来るだろう。
「もし、本当に出来たら頂戴ね。」
「了解。」
その後森を練り歩いて、採取や時折出てくるモンスターを倒す。途中、木苺を見つけたので採取しておく。ポーション木苺味作れるかな? 後は林檎味とか…………
「グォォォォォォ!」
「「「え?」」」
なんか、熊が出てきた、黒くて大きい熊だ。昔、祖父が狩ってきた熊より大きいな、まぁ、ゲームだし負けても死に戻りするだけだから、大丈夫だろう。と、言う訳で
「バトル!」
「何言ってんのよ! こいつは、今分かってるモンスターの中で、一番強い奴よ!」
「そうです!」
「援護宜しく。」
「「ちょっと!」」
二人が文句言ってるが、勝てない相手ではないだろう。熊に向かって駆け出し、先ずは、『火球』の符を五枚程投げつけ、発動させる。全弾命中! よぉーし、接近戦だ!
「あぁーもう! やるわよクノ。『ファイアーボール』!」
「うん! 『エンチャント━アタック』『エンチャント━ディフェンス』!」
後方から『ファイアーボール』が飛んできて熊に当たり、俺の身体が赤と青の光に包まれる。
「グォォォォォォ!」
「ふっ!」
「グォッ!」
開いた鉄扇で、身体を切りつける。うん。通らない訳じゃないみたいだ。熊の爪、というか、腕が迫ってきたのでステップで避ける。回る事も忘れずに、ちょっとした動作が【舞い】スキルに繋がるのだ。
「スノウちゃん、踊ってるみたいです。」
「というか、早くなってない? 攻撃もさっきより効いてるし……」
ふっふっふ。【舞い】スキルの効果は、ある特定の動作を続けて行うと、“踊り”と認識されて、能力が上昇するのだ。今は、攻撃力と俊敏性を上げていく。
熊からの攻撃を避けつつ、閉じた鉄扇での打撃。開いた鉄扇での斬撃を行う。他にも、符を使ったりもする。それと、クノのエンチャントによる強化と、ライラの魔法による援護で、着実にダメージを与えていく。そして………
「せいっ!」
「グ、グォ………」
「やった!」
「やりました!」
「勝利。」
無事勝てました、これが一番強いなら、乱獲してもいいかな?
「にしても、ノーダメージで勝てるとはね。スキルレベルもかなり上がったし。」
「熊の毛皮もゲット出来ましたしね。」
うんうん。いい事ずくめだな、また今度、熊狩りに来るかな。
熊は本来、戦闘系スキルをレベル5ぐらいにして、5人ぐらいで倒せるレベルです。