『当たらなければいいのだ』
モンスターと初戦闘。
「ふふん♪ ふん♪ ふふーん♪」
鼻歌交じりに、進んでいく。そうそう。あれから、スキルを一つ取った。【鑑定】スキルだ。必須スキルと言われたので、取っておいた。んでんで、【鑑定】スキルを使って装備を鑑定してみました。
〈初期の鉄扇〉
ダメージ補正:F
斬撃補正:F
打撃補正:F
魔力制御補正:F
耐久値:∞
≪武器能力≫
【不壊】【譲渡不可】【所持者固定『スノウ』】
〈天女の着物(封印)〉
ダメージ軽減補正:D-
斬撃耐性:F+
打撃耐性:D-
魔法耐性:D+
耐久値:1000/1000
≪防具能力≫
【風耐性:小】【光耐性:小】【魔力消費軽減:小】
【譲渡不可】【所持者固定『スノウ』】
〈見習い巫女装束〉
ダメージ軽減補正:F+
斬撃耐性:F
打撃耐性:F
魔法耐性:F+
耐久値:∞
≪防具能力≫
【不壊】【譲渡不可】【所持者固定『スノウ』】
初期防具強くないっすか? みんなこんなもの? でも、見習い巫女装束は、普通の初期防具な感じだし。種族補正かなんかですかねぇ。いつか天女がいるところに行きたいな。
そんな事を思っているうちに、目的地の東門に着いた。
「異界の冒険者の方ですか?」
「ん。」
「東の草原には、モンスターがいますので、気をつけてくださいね。」
「分かった。」
門番の人から忠告を受けつつ、東の草原に出る。頬を撫でる風は現実と変わらない。そして、揺れる草もそのまま、鼻腔をくすぐるのは大自然の香りだ。
「凄い。」
まさしく現実そのものだ。見渡すと、幾人かのプレイヤーが、ソロだったりパーティーを組んだりして、モンスターと戦っている。よし! 俺も行くか。
と、思ったところで、ポーションを買うのを忘れた事を思い出した。だがしかし、祖父が言っていた。「当たらなければ、どうという事はない!」という事で、行きますか。
攻撃手段は、鉄扇。『火球』の符。『風刃』の符。以上だ、あ、『治癒』の符があった、ポーションいらずだな、今はだけど。
暫く歩くと、現実より少し大きい兎が現れた。【鑑定】してみるか。ふむふむ。名前しか分からんな、肉食兎か、たしかに牙が生えてるな。
「ギュイ!」
「ていっ!」
「ギュボッ!」
飛びかかってきたところを、鉄扇で弾き飛ばし、地面に落ちて転がっているところを狙って。符を使う事にする。符の使い方だが、符を投げて術の名前を言うと、符を起点に術が発動するのだ。という訳で、腰のホルダーから符を一枚取り出して、投げる。
「『火球』!」
放った符から、火の玉が飛んでいき、肉食兎に当たった。そして、肉食兎は消えて、ドロップアイテムが落ちた。毛皮と肉か。肉は後で焼こう。
暫くの間兎狩りをする。兎が一匹、兎が二匹………なんか、心が痛くなってきたな。痛っ!
「ん?」
「ギュオォォォォ!」
「黒い?」
背中に痛みが走ったと思ったら、いつの間にか黒い兎が後ろにいた。接近に気づかないとは、俺もまだまだだな。とりあえず倒そう。
「しっ!」
「ギュボッ!」
「『風刃』!」
「ギュオォォォォ!」
符術は避けられたか、だがしかし、その程度では、俺の鉄扇からは逃げられない。
「ふんっ!」
「ギョブホッ。」
もう一撃鉄扇を食らわすと、光になって消えて毛皮を出した、黒い毛皮だけど。それにデカイ。とりあえず、収納しとこう。
「もの足りない。」
兎じゃだめだ、熊ぐらいじゃないと。という事で、森に行きまーす。草原を、向かってくる兎を弾き飛ばしつつ、森に向かう。そして、躊躇わずに森の中へ。
「ターゲットは、熊!」
いるかは知らんが、おそらくいるだろう。とりあえず、適当に進む。向こうから来てくれるかもしれないしな。
「ん?」
なんか声が聞こえるな、気になるので、声が聞こえる方に歩いて行く。誰かな? 誰かな? 熊かな? 猪かな? 猪鍋食べたい。
昔祖父が狩ってきて、祖母が鍋に変えた猪。美味かったな。熊と関係ない事を考えてしまった。いや、熊じゃなくて声か。
「ちょっと! 来ないでよ!」
「そ、そうですよ!」
「へっへっへ。大人しく、てめぇらが手にいれたアイテムを寄越せば、いいんだよ。」
「そうだぜぇ。へっへっへ。」
「誰が渡すもんですか! 『ファイアーボール』!」
見たところ、十人ほどの男達に二人の女の子が、アイテムを渡すよう迫られているようだ。女の子の一人が『ファイアーボール』を撃つが、避けられていた。そして、踵を返して逃げる女の子二人。しかし、一人が木の根に躓いた。
「きゃっ!」
「へっへっへ。大人しくしてたらいいのによ、死んで学びな!」
男が剣を振り上げたので、符を投げる。
「『火球』!」
「へぼっ!」
「え?」
「クノ!」
魔法を使っていた女の子が、もう一人の方を助け起こし、再び走り出す。ついでに、男達も走り出す。後、俺も行く。
「くそっ! さっきのはなんだよ!」
「コレの事? 『火球』!」
「なっ!?」
男達の前に躍り出て、符を五枚程投げる。火球で男達の視界を防げたので、さっさと女の子達に追い付く。
「誰!」
「話は後。」
女の子二人と、森を抜け出て草原に逃げ込む。さて、迎撃の準備をしますか。草に隠れるように、陣を書き込む。ちなみに、防御を下げる効果をつけた。陣の効果は、俺に敵対してるモノ一体につき、一回効果を与えるというものだ。
「あの、何してるんですか?」
「そうよ! 早く逃げなきゃ!」
「迎撃準備。」
続いて、十枚程符を陣の中に置く、後は待つだけだ。
「追い付いたぞ! バカめ逃げずに戦うきか?」
「ほんとだな、やっちまえ!」
陣に入ったな。紫色の光が陣の中に満ちる。
「な、なんだ!?」
「魔法か!?」
「『水泡』」
「うわぁぁぁぁ!?」
「どうなってんだ!?」
符を起点に、男達が泡に包まれ動きが縛られる。さぁーて、死んで学びな。
「『火球』『風刃』!」
二種類の符を投げて、術を発動させる。幾つもの火の玉と風の刃が飛んでいき、男達を消し飛ばした。よしよし、悪は滅ぶべし。
「凄い!」
「βテスターなの?」
「違う。」
とりあえず、男達に追われてた理由を聞こうかな?