『お手伝い終了』
忙しく机を回る店員さん達、まぁ、俺もそのうちの一人なんだが。時折、身体を触ろうとする手や、ナンパっぽいお誘いを華麗に回避しつつ、踊るように店内を回って行く。ちなみにだが、触ろうとした奴とナンパしようとした奴は、いい笑顔をしたプレイヤーにドナドナされていった。
「スノウお姉ちゃ~ん!」
「ん?」
聞き覚えのある声に、入り口のほうを見ると、ヘイルとスリート姉さん、それに、白銀の鎧を着こんだ、銀髪碧眼の美人さんが一緒にいた。
「どうしたの?」
「スノウちゃんが働いてるって、掲示板に情報がのってたから。」
「掲示板に? なんで?」
「ええーと、お姉ちゃんは気にしなくていいよ。多分そのうち分かるし。」
ヘイルが視線をそらして誤魔化す。うーん、掲示板を見れば分かると思うんだけど、めんどくさいからいいか。
二人については分かったので、今度は美人さんのほうを見ると、こちらを見るとは思わなかったのか、目を泳がせ始めた。どうしたんだろ?
「ほら、ルキエちゃん。」
「あ、あぁ。ほ、本日はお日柄もよきゅっ!」
「?」
「は、はじめまして、わ、私はルキエだ、よ、宜しく。」
「ん。スノウ、宜しく。」
ヘイルと、スリート姉さんの知り合いのようだったので、握手をするべく手を差し出すと、恐る恐る握った。この人、本当にどうしたんだろ? 握手を終えると、ルキエさんが、「柔らかかった」とか、「実物は可愛いすぎる」とか、ぶつぶつ呟いたが何のことかな?
三人を開いている席に案内し、注文を受ける。ヘイルは紅茶とショートケーキ、スリート姉さんはアイスコーヒーブラックとチーズケーキ、ルキエさんはアップルティーとアップルパイ、林檎が好きなのかな? 後で、林檎味のポーションをあげよう。
「うーん、スノウお姉ちゃん可愛いんだけど、なんか複雑。」
「そうかしら? 私はいいと思うけど?」
「スリートお姉ちゃんも、麻痺してきてるね。」
「ぶはっ!」
「ルキエちゃん!?」
「ルキエさん大丈夫!? 凄い鼻血!」
「だ、大丈夫だ。こんなところで死ぬわけにはいかない。たとえ、後ろ指指されても、スノウ様のアップルパイを食べてみせる!」
「別に、お姉ちゃんが作るわけじゃないとおもうけど……………」
なんだか、楽しそうだ。俺と同じフロア店員さんに手をだそうとした男を引きずりながら、ヘイル達を見て少し羨ましく思う。ああいう、友達と一緒っていいな~と思う。
暫くして、ヘイル達の注文の品が出来たようなので、運ぶ。
「お待たせしました…………大丈夫?」
ダバダバと鼻血を流しているルキエさんに尋ねる。この人なんで、鼻血垂れ流しているのに平然としてるんだ?
「だ、大丈夫でしゅ!」
「どう見ても、大丈夫じゃないよね。」
「ん。はい。」
「こ、これは?」
「使って。」
それぞれの注文の品を置きながら答える。俺が渡したのは、ハンカチだ。怪我をした時なんかの止血に使えるかな? と思い買っておいたんだが、今は鼻血を止めるために使ってもらおう。ん? というか、ポーション渡せばいいのか。アイテムボックスから、自作の林檎味ポーションを取りだし、渡す。
「お姉ちゃん、それ飲むようのポーションじゃん。」
「今は、効果は下がるけどかけるタイプが一般的なのよ。」
そうなのか、今度作り方を調べよう。
「いえ! せっかくもらったのだ、私は飲む!」
ルキエさんが、ぐいっと、ポーションを飲む。暫くすると、その表情がキツイものから、すこし驚いた表情に変わり、全部飲み終えた後、呆然として呟く。
「美味しい。」
「「えっ!?」」
「特製、林檎味ポーション。」
ピースで答える。ヘイルとスリート姉さんからは、「売って!」と頼まれ、ルキエさんは「特製? つまり手作り…………ぶはっ!」と、また鼻血を流していた。
少々のトラブルもありつつ、お店は営業していき、そして、閉店した。
◇
「皆な、お疲れ~。」
「「「「「「お疲れ様です!」」」」」」
「いや~、今日は繁盛、繁盛、大繁盛! これも、スノウちゃん効果かな~。」
別に、そんな事はないと思うが。役にたてたようなので、良かった、良かった。お店も無事営業出来たし、俺は働いた報酬を結構貰えたし、ホクホクだ。「また、お願いね~。」と言う皆なに、了承して、宿に戻った。そして、ログアウトした。