『反撃の奥の手。手札を一つ切ろう』
皆さんお待たせ、スノウに戻るよ。
痛い。ギリギリで避けたが、右耳を持ってかれたし、右腕も一部そぎおとされた。ダメージもかなりいってる。やっぱり、【神仙解放】を使って一気に仕留めるほうが良かったか。
「避けるかよ、普通。だがまぁ、もう虫の息だな!」
「くっ!」
なんとか『旋風扇』で防御するが、押されぎみである。なんせ、向こうの強化がどんどん強くなってってるみたいだからな。符や【仙術】を使ってなんとか食らいつくが、このままではいずれ負ける。ポーションで回復しつつ、次の手を考えるが、もう【神仙解放】しか残っていない。
勝つためには、使うのがいい。しかし、【神仙解放】は本当に奥の手だからな。それも次からは、対処されやすくなってしまう。もっと後に取っときたいって思考から、もうダメなのかね。
「おらぁ!!!」
「………」
諦めるか? そんな思考すら出てきてしまった時━━━━
「主様!」
「なっ!?」
柊が現れて辻斬りの凶刃を受け止めた。ネーヴェ達と一緒にいたハズだけど、どうしてここに来たんだ? 辻斬りと数度斬り結んだ後、此方に後退してきた。
「どうしたの?」
「向こうは大丈夫なようなので、加勢に来ました! ぷれいやー? の方が知らせに来てくれたので、スリート様方は、ルキエ様の戦闘を見守っておられます」
「助かる」
しかし、見守るって事はルキエさんが負ける可能性もあるからか? 相当強い敵が来ているようである。しかし、柊が来てくれたのはありがたい。此方の手札なら、切っても問題ない。むしろ、向こうを困惑させて楽に倒せるだろう。
柊の情報は殆ど無いハズだし、これから切る手札は完全に未知だろうからな。
辻斬りを睨んでいた柊に声をかけ、左手を差し出す。すると、一度瞬きした後、嬉しそうに俺の手を取った。
「………何やってんだ? お手手繋いで仲良しごっこか?」
「………これで終わり。面白いもの、見せて上げる」
「面白いものだぁ?」
眉をひそめる辻斬りに、俺は不敵に笑いかける。俺が新たに編み出した、戦闘手段。風への耐性、無効化持ちのために編み出した、風ではない属性を得るための手段。
これを使えば強さも上がる。
「━━━見よ。『獣衣・鬼克』」
そうして始まる変化。その変化を真正面から見る辻斬りは、その表情をだんだんと驚愕へと変える。さぁ、変化は終わった。後は、あいつをこの屍桜で斬り捨てるだけだ。
俺は、着物を着ているとは思えない速度で肉薄すると、刀を振るう。
「くっ! なんだその姿は!」
「………」
答えると思ってるのか? そのまま勢いを止めずに刀を振るう。速度、威力共に先程までとは段違い。そして━━━
「『妖火・三光』」
「なんだそりゃ!?」
「『妖風・旋回』」
使うのは【妖刀術】特殊な追撃の効果も合間って、辻斬りをどんどん追い詰めていく。さて、もう決着をつけてしまおう。
「『天断』!」
「それはッ!」
刀系統のスキルの高威力技、使えるに決まってるだろう? 柊の持つスキルは、変異したやつだと思うけど。
ガードしたようだが、そのまま吹き飛び壁を破壊して、別の部屋に入って行った。誰かいるようだけど、感じからして同じPKみたいだ。というか、クノとライラもいるし……
獣衣を使ったライラが、音をさせずに側に来た。その能力、強くない? 暗殺者になれるよ。
「スノウも戦ってたのね」
「ん」
「感じからして柊を纏ってるみたいね。いいわよね、選り取りみどりで」
「……まぁ」
確かに全部で4つあるけども。連続使用には制限があるので、連続で切り替えて戦うなんて方法はとれないのだ。まぁ、他にデメリットは無いけどね。
まぁ、とにもかくにも敵を倒そうじゃないか。
「てめぇら………いったい……」
「どうなってんだよ!」
「教えるわけないでしょ」
「ん」
さぁ、サクッと終わらせようじゃないか。という訳で………
「『妖月・桜吹雪』!」
「んん?」
「全然ダメージはいらねぇじゃねぇか! は!」
ダメージ? そんなの二の次に決まってるだろ。本当の目的は目眩ましだ。ライラも俺の意図を組んでくれて、既に移動を始めている。それでは、【妖刀術】……というか、この武器に刻まれた技で、奴を仕留めるとしようか。
姿勢を低くして、辻斬り向けて突撃する。さぁ、もう終わらせよう。
「ちいっ! 『天断』!」
「『グラウンド・ブレイク』!」
PK二人の大技が炸裂して、視界を遮っていた桜吹雪を吹き飛ばした。しかし、もう意味は無い。俺もライラも、既に王手をかけた。
「『屍咲き』」
「『新月絶斬』」
俺の技とライラの技が、相手に同時に直撃した。俺の一撃は辻斬りの体を両断し、血飛沫がまるで花のようになっている。
ライラは、【霊体化】を使ったようで、振るった剣がそのまま相手の体を素通りした。
どちらも、相手の体力を完全に無くして、デスペナルティにした。これで、ここの戦いは終わりである。
俺とライラは、使っていたスキルを解除する。すると、柊とフクロが出てきた。
「お疲れ様。『ハイ・ヒール』」
「ありがと」
「いえいえ」
クノに回復してもらった。今回使ってみた結果、外傷は消えるようだが、HPはしっかり減ったままのようです。
「この奥の手、対人戦だとかなり有効ね」
「ライラのは反則」
「フクロちゃんの保有スキルが反則だよね」
「ホー♪」
「褒められてないわよ」
ライラが何時ものようにフクロを捏ねる。さて、此方は終わったけども、ルキエさん達の方がどうなったか分からない。少し心配なので、向かうとしよう。
スノウ達の使ったスキルの詳細は、また今度で。