『雪姫VS辻斬り』
今年最後の投稿です。来年も宜しくお願いします
「やるなぁ、おい」
「………」
うーん。やっぱしあんまりダメージいってないな。どうやら援軍も期待出来そうに無いし………
何をどうやったか知らないが、この砦にPKが入り混んで色んな場所で戦っているらしい。何人か此方に向かって来ているけど、こいつ相当強いみたいだしな。
「んん? 邪魔者が来てるみたいだな」
辻斬りの男はそう呟くと、後方におもいっきり跳んだ。やべっ! 俺も地面を蹴り突撃するが、辻斬りの男は通路を曲がって此方に来ようとしたプレイヤーを、一太刀で斬り伏せた。
一緒にやって来ていた他のプレイヤー達は、突然の出来事に驚き固まっている。辻斬りの男がそれを見逃すハズなく、刀を振るう。
しかし、今度は間に合った。
「うわっ!?」
「え? 何がどうなって?」
「辻斬り!?」
辻斬りの男の猛攻を捌き、隙が出来た所を暴風を纏った蹴りを食らわせて吹き飛ばす。
「ここはいい!」
「え? あ、はい!」
「お願いします!」
「もっと強い人達呼んで来ます!」
俺が振り替えって叫ぶと、ビシッと敬礼して一目散に去って行った。よし。これでルキエさん辺りが来てくれたら楽なんだけど…………
スキルのレベルを上げる修行を行ったとはいえ、まだまだトップに立つ人達には勝てそうもない。知らないうちに、スリート姉さんが俺と同じ……いや、それ以上はあろうかという範囲攻撃を産み出している。
俺にあった強力な風属性と速度は、もう通じないかもしれない。それでも、【神仙解放】を行えば通じるようになるだろうが………
「ふぅ」
サボっていたせいか、俺一人ではトップと戦っても最後は負けるビジョンしか見えない。
「『龍衡穿』!」
ゾッとするような悪寒に従い、最高速度でその場から身を投げ出す。風が知らせる危機に従い、鉄扇を動かす。勿論、二つ共だ。
金属の衝突する甲高い音ともに、俺の体が吹き飛ばされる。さっきまでの力関係が逆になったな。それに、殆ど見えない。いやぁ、弱いな俺。
それでも、どこまでやれるか試そう。
「ハハハハ。俺は奇襲からの短期戦が得意だが、長期戦の方はもっと得意なんだよ」
体から赤いオーラを出した辻斬りの男が、そんなふざけた事を言い出した。強化系のスキルか? 発動条件がある気がするが、言葉から考えると戦闘時間に比例した強化か? 厄介だな
面倒くさいと思いながらも、今切っても問題ない手札を曝していくことにする。
「合わせ技、『旋風扇』!」
【仙術】と【鉄扇術】の合わせ技、『旋風扇』
右手の鉄扇に風を纏わせ、開いた状態にしたものを回転させながら投げる。風を切る音を出しながら、鉄扇が高速で飛んでいく。しかしまぁ、辻斬りの男には驚異にはならず、ひょいっと簡単に避けられてしまった。
まぁ、いいけどね。
「自分から手数減らしてどうするんだよ!」
上段に構えた刀が降り下ろされる。アーツを発動させていないようだが、速いし鋭い。しかし、直線的なので防御は容易だ。
両手を添えた鉄扇で受け止める。
男がニヤリと笑い、刀に力を込めて俺を押す。俺が避けなかったのに気づかないとは、まだまだだな。
「ぐぁぁぁっ!?」
男の力が弱まったので、鉄扇を刀に添えたまま回転させ、全体重を鉄扇にかけて刀を地面に突き付け、その時のベクトルを利用した蹴りを頬に叩き込む。
勿論、『嵐纏』は発動させてますよ。
男が横に吹っ飛んで体を壁に衝突させた。俺はというと、側転の要領で起き上がり、回転しながら戻って来た鉄扇をキャッチする。
辻斬りの男が怯んだ理由は、後ろから飛んで来た鉄扇に背中を斬られたからだ。
そう、この『旋風扇』は鉄扇を投げた後戻ってくる………いや、投げた後コントロールする事が出来るのだ。事前に竜巻の符を付けておけば、高速で自在に操ることの出来る小竜巻を生み出すことも可能である。
しかし、これの真骨頂はそこではない。
「くそっ! ブーメランかよ!」
「もっと厄介だよ? 『双・旋風扇』」
両方の鉄扇で『旋風扇』を発動させて真上に投げる。くるくると回転する鉄扇は、俺の肩辺りに留まってそのまま回転を続ける。
「闘法・六花」
「………んなのありかよ」
両手両足、そして二つの鉄扇。俺は今、6つの武器を持っているのと同じ。欠点もあるが、そこは俺の腕次第でカバー出来る。対人でどれだけ通用するか試すのにいい。
え? 相手を舐めてるだろうって? いやいやそんな事はない。俺が出せる全力を常に出している。ただ、一部のモンスターにしか使った事無いってだけだ。
「『颶風脚』!」
「ちぃ!」
飛び蹴りをかます。まぁ、ただの飛び蹴りじゃないんだけどね。ヒットしたら爆風を起こして相手をバラバラに吹き飛ばす技だ。
辻斬りはギリギリで避けると、俺に向かって刀を振るってくる。しかし、高速回転する鉄扇の一つが刀を弾き、逆にがら空きになった辻斬りに、裏拳を叩き込む。
「ぐほっ!?」
「『仙術・真空鎌鼬』」
辻斬りの男の周りが一瞬真空状態になり、そこに入り込もうとする空気が鎌鼬を巻き起こし、辻斬りを切り刻む。それにしても、こいつ体力多いな。普通の敵ならもうやられてもいいと思うんだけど………
あのオーラのせいなのかな? 防御力が上がっているのか、持続回復でもしていらのか………まぁ、攻撃してればそのうち倒れるだろう。
「こりゃ攻めるしかねぇな!」
辻斬りの男の攻撃が苛烈になる。どうやら、此方に攻撃させる隙を与えないつもりらしい。隙の無い連撃で攻められる。まぁ、鉄扇の方は死角を通って突撃するけどね。
此方は一本しかない刀の攻撃を捌いているが、相手の方は鉄扇の攻撃にまるで無防備だ。それに、俺はたまに風の刃を放っており、それも何度か直撃していた。
それにしても、時間をかけすぎかもしれないな。魔力量が心許ない。
「ちっ。手数じゃ無理だな」
「?」
「出し惜しみは無し。一気に決めさせてもらうわ、『絶空波』!」
辻斬りの男が刀から巨大な斬撃を放つ。このままでは吹き飛ばされてしまうので、斬撃を受け止めつつ空中を飛んで、勢いが弱まった所で斬撃を吹き飛ばして着地。
辻斬りの男はというと、刀を鞘に仕舞って居合の構えを取っていた。
物凄い嫌な予感がするんだけど!
「『双・旋風扇』!」
纏わせる風の量を先ほどより多くして、二つの鉄扇を放つ。男の体を切り裂かんと、鉄扇が飛んで行く。
「【羅刹魔刀】! 『瞬速抜刀』」
鉄扇が辻斬りの男を切り裂く瞬間、奴の準備は完了してしまった。
「『天断』!!!」
気がつくと、鉄扇が吹き飛ばされていた。
そして、俺の視界は赤く染まった。
『旋風扇』は多段ヒットします。現実だったら、空を回転しながら自由自在に飛ぶ、かなり鋭利な刃だけの丸ノコですね