『ゴーレム二回目と、魔法剣士』
「装備よし、ポーションよし、体力よし、魔力よし、スタミナよし! 二人共、準備はいい?」
「はい! いつでも行けます。」
「おーけー。」
現在俺達三人は、装備を新調した勢いそのままに、東の町〈オステ〉に続く街道にいた。事の発端は、俺が〈オステ〉に行った事を話した事だ、そしたらライラが、「じゃあ、私とクノも行けるように、協力して!」と言ってきたので、オーケーした。ゴーレムはそこまで強くないからね。
「私とクノが魔法で右足を攻撃するから、スノウは左足をお願い。」
「任せて。」
「それじゃ、突撃ー!」
三人揃ってイベントフィールドに入る。すると、前と同じようなアナウンスがきて、ゴーレムが出現する。
「ゴォォォォォォ!」
「出たわね『ウィンドカッター』!」
「『エンチャント━マジックアタック』『エンチャント━ディフェンス』」
作戦どうりに、左の足に向かう。【魔力刃】スキルを使った鉄扇を一閃する。鉄扇のほうも、新調した方がいいな。ゴーレムが振るう腕を回避しつつ、左足関節に攻撃を加えていく。
「『ウィンドカッター』!」
「『光の矢』!」
ライラとクノの魔法も、着実に関節にダメージを与えていく。そして、ついにヒビが入ったので、『火球』の符を5枚張り付けて………
「『火球』!」
「ゴガァァァァァァ!」
「スノウナイス!」
「『光の槍』!」
ゴーレムが膝をつき、核が出てきた。んでんで、核にクノの魔法が当たり、武器を剣に変えたライラと一緒に核を攻撃して、破壊する。
《“狂石のゴーレム”を特殊討伐した事により、討伐に参加したプレイヤー全員に、〈鉛色の魔核〉が与えられます。》
《“狂石のゴーレム”を倒したことにより、東の町〈オステ〉に入れるようになりました。》
アナウンスが流れ、ゴーレムを倒せた事が分かる。ちなみに、前回来たときは確認するのを忘れていたが、“狂石のゴーレム”の通常ドロップは、“ゴーレム石”と“鉄鉱石”だ。ライラが一番ドロップ品について、喜んでいた。
「それじゃ、〈オステ〉に入りましょ。」
「うん!」
「おー。」
本日二度目の〈オステ〉に入る。およ? プレイヤーがちらほらいるな。まぁ、ゴーレムもそこまで強くないしな。
三人揃って町中を歩く。
「鍛冶屋が多いみたいね。」
「そうだね。鉱石がたくさん採れるのかな?」
「たぶん。」
たわいもない話をしつつ、町中を歩いて行く。途中、美味しそうな焼き鳥が売ってたので、買って食べたり。武器屋に入って、値段に絶句したり。色々歩いているうちに……………
「「「迷った。」」」
何処ですか、ここ? なんか、路地裏に迷いこんだ。薄暗いし、さっさと出たほうがいいな。もと来た道を戻ろうと振り返ると、囲まれていた。ニヤニヤ笑う男が五人ほど…………
「こんな所に女の子三人なんて、無用心だよ?」
「そうそう。俺らみたいなのに、襲われちゃうよ?」
「まぁ、悪いようにはしないからさぁ。」
「一緒に行こうか?」
行くわけないだろ、バカかこいつらは。
「誰があんた達みたいなのに! 『ファイアーボール』!」
ライラが男達の足元に、『ファイアーボール』を撃ち込み威嚇する。さらに、剣を抜いて構えて。
「怪我したくなかったら、さっさと立ち去りなさい!」
「おい! こいつ魔法剣士だぞ! 逃げろ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
魔法剣士って、ライラは目指してるだけでまだなってないぞ。まぁ、撃退出来たからいいか。
「私まだ魔法剣士じゃないんだけど?」
「ほぉ。まだなのか。」
後ろから声がしたので、振り向くと白い髭が立派な爺さんが立っていた。この爺さんそうとうできるな。
「え? あ、はい。いつかなりたいとは思ってますけど………」
「ふむ。なら、ワシが教えてやろうかの。」
「え!? いいんですか?」
「うむ。これも何かの縁じゃし、暇じゃからの。そっちの白髪の娘も、剣ではないが鉄扇でも出来る技術もある。教えてやろう。もう一人は………」
「私はいいです。でも、見てていいですか?」
「うむ。大丈夫じゃ。では、ワシの家に行こうかの。」
「「「はい!」」」
思わぬところで、ライラの目的の魔法剣士の指南をしてくれる人が見つかった。たまには迷うのもいいな。
路地裏をあっちへこっちへ歩いて行く爺さんについていき、暫くすると、爺さんが一つの扉の前で立ち止まった。
「ここじゃ。」
扉の中は、道場のような造りになっていた。
「始める前に、ワシの名前はフロウじゃ。」
「ライラです!」
「クノです。」
「スノウ。」
「ふむふむ。して、ライラにスノウ【魔力刃】スキルは習得しておるかの?」
「はい!」「ん。」
「ふむふむ。では、魔術スキルは習得しておるかの?」
「はい! 【火魔術】と【風魔術】を習得しています。」
「ない。」
「スノウは持っていないか……………では、何か術系統のスキルを持っておるかの?」
「ん。【符術】」
「【符術】…………か。すまんが、魔術なら教えられるが、【符術】は専門外での。知り合いへの紹介状を書いてやろう。ここからは遠いが、〈ヤマト〉におる。行った際には、教えてもらえ。」
「ん。ありがと。」
フロウ爺さんから、紹介状を貰いアイテムボックスに仕舞う。にしても、日本ぽい国があるみたいだな。
「うむ。では、始めようかの。先ずは、【魔力刃】を発動させてみよ。」
「はい!」
「よしよし、では、続いてその魔力を“無属性”から別の属性にするのじゃ。お主は、【火魔術】と【風魔術】を習得しておるから、“火”か、“風”に出来るぞ。
大切なのは、イメージじゃ、火が燃えるイメージ。風がそよぐイメージ。分かるかの?」
「はい!」
ライラが持つ【魔力刃】を発動させた剣先に、明るい火が灯る。それがだんだん広がっていき、剣全体を火が包みこんだ。
「ふむ。筋がいいの。もう【属性剣】を習得したじゃろ。後は、【魔力操作】と【魔法剣】の習得じゃ。」
「はい!」
後で聞いたが、【属性剣】は剣に属性を付与するスキル。【魔力操作】は、【魔力刃】や【属性剣】の発動補助、そして、その二つを使用する際の魔力消費軽減。【魔法剣】は、剣に魔法を宿す事で強力な技が使えるスキルらしい。
魔法剣士に向いていたらしいライラは、【魔力操作】も【魔法剣】も直ぐに習得していた。
「ふむ。上出来じゃな。今からお主は、見習い魔法剣士じゃ。鍛練を怠るでないぞ。」
「はい!」
ライラの魔法剣士訓練も終わり、時間もいい感じだったので、宿屋でログアウトした。
次回は掲示板回です。
明日から、日曜にも2話投稿を始めます。