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20.二足歩行で猛ダッシュ

 暗黒街にある金融会社。小奇麗にしてはいるが、いかにも安っぽく、そしてやや老朽化したそのオフィス内で、シロアキが呑気そうに新聞を眺めていた。

 充分に大金を稼いだはずなのに、何故か彼らにはそこから引っ越すつもりがないようなのだ。

 「いよいよ、戦争が始まるか。まぁ、多分、この状態なら人間側が勝つだろう。大丈夫だな」

 誰に言うともなくシロアキは独り言にしては少しばかり大きな声でそう言った。彼の周囲には、アカハルとクロナツとフユがそれぞれバラバラに寛いでいて、そう言った彼をチラリと一瞥したが、誰もその言葉には反応をしなかった。

 無視。

 “自分でその戦争の原因をつくったんじゃん…”という批判がその沈黙に込められているかどうかは分からない。ところが、それから少しばかり遅いテンポで、こんな言葉が突然オフィス内に響いたのだった。

 「あれだけの事をしておいて、無事で済まそうなんてのは、少しばかり虫がよすぎるんじゃないのか?」

 そして、オフィスのドアが開く。

 そこに姿を現したのは、なんと勇者パーティの一人、賢者スネイルだった。全員が視線を集中させる。シロアキが表情を歪ませた。その視線を意に介せず、そのままオフィスに入って来たスネイルは、無表情のまま堂々と進んだ。どうやらシロアキを目指しているようだ。

 ところが、その途中でその侵入者に敏感に反応したクロナツが、彼の前に立ちはだかったのだった。

 「無礼な客だな。ちゃんとアポ取れよ。うちのオフィスに勝手に入って来るんじゃねぇ!」

 それを見て「やめろ、クロナツ!」とシロアキが叫ぶ。しかし、クロナツは止まらなかった。

 火の魔法で両腕を熱しつつ、スネイルに掴みかかる。それを見て、スネイルは「ほお」と呟くと少しも臆せず、掴みかかろうとした腕を逆に掴む。

 それにクロナツは“にやり”と笑った。しかし、その一瞬後には、その表情から戸惑いを漂わせていた。

 “こいつ…… 力が異様に強くないか?”

 心の中でそう呟く。そしてその後で直ぐに、スネイルは口を開いた。まるで彼の心中を読み取っているかのように。

 「ああ、そうだ。オレは魔法の方が得意って言われているが、身体能力も高い。街のゴロツキの力自慢程度には負けないよ」

 そして、そのまま力で圧し、クロナツの事をしゃがみ込ませた。

 「お兄ちゃん!」

 そうフユが叫ぶ。

 クロナツは歯軋りをして、スネイルの事を睨みつけた。屈しようって者の顔じゃない。その彼をスネイルは更に圧し潰していく。

 “確かに馬鹿力だが、なんかおかしい……”

 そこでまたスネイルは口を開いた。

 「ああ、そうだ。オレの力は強いが、それだけじゃない。お前からも力を奪っているんだよ。だから、お前は難なくオレにねじ伏せられているんだ。オレは魔物の巣に乗り込んで行って魔王の所まで辿り着いた勇者パーティの一人だぞ? これくらいできなくちゃ、生き残れない。街で強いくらいで粋がっているヤツじゃ相手にもならないよ」

 やはりまるで心を読んでいるかのようだった。

 しかし、それほどの力の差を見せつけられてもなおクロナツは屈しなかった。敵意のこもった視線でスネイルを睨みつけている。それを見てスネイルは軽くため息を漏らす。そして、「フンッ!」とそう言った。

 すると、それまでスネイルを睨みつけていたクロナツは、その場にドサリと倒れてしまう。

 「お兄ちゃんに、何をしたんです?」

 フユが不安そうにそんな声を出す。その彼女を軽く一瞥するとスネイルは「安心しろ。面倒臭そうだったから、気を失わせただけだよ」とそう答えた。

 それから彼は、シロアキに向かって歩いて行く。抵抗しても無駄だ。その堂々とした歩みはまるでそう言っているかのようだった。シロアキが悪あがきをするように言う。

 「ボクらは、何も法を犯しちゃいないぜ? まさか、大臣ともあろう人間が、無実の罪の人間に暴力を振るうのか?」

 それを聞くと、スネイルはいかにも馬鹿にした口調でこう言った。

 「法を犯していない? はっ! それはどうだかな。上手く隠しているだけだろう? それに、権力者を甘く見るなよ。仮にお前らが本当に何の罪を犯していなくても、いくらでもやりようはあるんだよ」

 それを聞いても、シロアキは弱気な姿勢は見せない。こけおどしかもしれないが、不敵な表情を見せつけている。目的も意味も違っているが、クロナツにとてもよく似た態度だ。とても彼ららしい。

 「それで、何の用だ?

 まさか、ただそれだけを言いに来た訳じゃないだろう? 潰す気なら何も言わずに潰せば良い。大臣自ら乗り込んで来るんだ、何か目的があるはずだ」

 スネイルは少し笑うと言う。

 「話が早いな。その通りだよ。見逃して欲しかったら協力しろ」

 「協力?」

 「そうだ。お前らに特殊な情報収集能力がある事は分かっているんだよ。そうじゃなかったら、魔王と直接交渉して契約を交わすなんて不可能だし、監視を始めてからもお前らは不可解な行動を見せている。一体、どうやってあんなに早く、オレらが“闇の木”を利用すると知った?」

 忘れている人も多いかもだけど、スネイルは彼らが魔王と取引を始めてから、ずっとここを監視していたのだ。

 それを聞くと「チッ」とシロアキは舌打ちをした。そして、「やっぱり、バレてるか」とそう呟きながらアカハルを見た。フユも同じ様に、アカハルを見る。

 スネイルは不可解そうな表情をしばらく浮かべていたが、やがてその視線の意味を何となく察したのか、こう呟いた。

 「まさか、こいつにそんな事ができるのか?」

 シロアキはやる気のなさそうな感じで、こう答えた。

 「その、まさかだよ。そいつに頼めば、大体の情報は拾って来てくれる。何が知りたいんだ?」

 「魔王の居場所だよ」

 「殺すのか?」

 「いや、殺さない。侵攻を止めるように説得するんだ。殺す方が、もしかしたら簡単かもしれないが、そうしたら魔物共が無秩序に暴れ出すんだそうだ。厄介な事に」

 それを聞くと、シロアキは肩を竦めてアカハルを見やる。

 「……だそうだ、アカハル。協力してやってくれ」

 それを受けると、アカハルはおどおどとした態度でこう言う。

 「あの…… 僕の能力は、そんなに便利なものじゃなくて、情報を広範囲からデタラメに拾って来るだけなんですが」

 スネイルはそれを聞くとこう返す。

 「それで充分だ。蓋然的に当たりを引いて来れれば、その情報だけで、魔王の大体の居場所なら掴めるだろう。頼む。やってくれ」

 「はあ」

 それにアカハルは“なんか、この人、シロアキと同じ様な事を言うな”と心の中で呟いた。それから「これ、とても疲れるんですが……」と言いかけて口を閉じる。ここでそんな事を言ったら、下手すれば殴られかねない。それから彼は諦めたのか、シロアキの傍にまで来るとその身体に触れた。

 「なんだ?」とスネイル。

 「彼の能力は、誰かに触れないと発動できないんです。触れ合った事のある者を辿っていって拡散したそれから情報を集めるんで」

 フユがそう説明した。

 やがて、アカハルは目を閉じる。タッチ・カスケード・リーディングを始めたのだ。シロアキが触れた事のある魔物の気配。その先にある者達から情報を集めていく。

 「これで、情報を集められるのか?」

 スネイルがそう質問をすると、フユは「はい」とそう答えた。すると、それにスネイルは「はっ 世の中には、まだまだ未知の凄い能力があるもんだな。原理が知りたい」などと言う。

 それからしばらくが経った。やはり、それなりに時間がかかるらしい。まだアカハルは目を瞑っていた。一度触れさえすれば後はもう誰かの身体に触れる必要はないらしく、シロアキはアカハルから離れると呑気にお茶なんかを飲み始めた。さっきまではあんなに青ざめていたのに、図太い。フユは気を失っている兄の介抱をしていた。

 不意にアカハルが目を開けた。

 「分かりましたよ、魔王の居場所が。大雑把にですけどね」

 そして、そんな事を言う。それを聞くとスネイルは表情を明るくする。

 「よし! それを教えろ。もちろん、できるだけ詳しくだ!」

 

 王城に戻ると、直ぐにスネイルは緊急招集をかけた。もっとも、彼が緊急招集をかけるまでもなく、皆は既に会議室で待機していたのだけど。

 「魔王の居場所が分かったぞ」

 そう言うと、スネイルは机の上に地図を広げた。勇者領と魔王領の国境付近が描かれている。そこにはたくさんの印がされてあった。

 大きな扇形。

 その印は全体でそんな形を描いていた。

 「これ、魔王達の兵士達を表しているの? もしかして」

 キャサリンが尋ねるとスネイルは頷いた。

 「そうだ」

 それは軍の陣形としてはよく観られるものだった。だけど、ちょっとばかり違和感が。キャサリンが言う。

 「なんか、これ、スッカスカな印象なんだけど? こんなんじゃ、個別撃破されたらどうするのよ?」

 そう。距離のスケールが通常のそれとは大きくかけ離れていたのだった。スネイルが淡々と説明する。

 「ああ、その通りだ。信じられない話だが、これは斥候からの報告とも一致するから恐らくは正しい。予想に過ぎないが、魔王は軍を組織するなんて初めてだから、戦争のノウハウなんてまるでないのじゃないか?

 広範囲に広げた方が、人間社会を様々な場所から一度に攻撃できて都合が良いとか考えたのかもしれないぞ」

 それを聞くとゴウが腕組みした。

 「そんな事を聞くと、普通に戦争がしたくなってきたな。余裕で勝てそうではないか。説得なんかせんでも」

 ティナがそれを否定する。

 「軍人らしい意見をどうもありがとう。でも却下よ。犠牲者はできる限り少ない方が良いんだから」

 続けて、彼女はこう質問した。

 「それで、魔王の居場所は何処?」

 スネイルはそれを受けると、その広過ぎる扇型の陣形のちょうど根元を示した。

 「あ、やっぱり、一番奥……」

 スネイルはそれに頷く。

 「だな。そんなに甘くない。ただ、このスッカスカの陣形を見る限り、説得に向かうのは不可能じゃない。各ユニットの間を縫って、魔王がいる場所を目指せばいいんだ」

 キャサリンがそれにこう返す。

 「でも、その為にはかなりの長距離を猛スピードで移動しなくちゃ駄目よ? 流石にワタシ達でもそんなのは不可能でしょう」

 しかし、それを聞くと、キークがこんな事を言うのだった。

 「よし。なら、自動車を使おうよ。あれなら、目一杯にスピードを出せば、なんとかなるって」

 「いやいやいや」と、それに一同がツッコミを入れた。

 「道路も何もない場所じゃ、自動車は使えないでしょ!」

 と、ティナ。それからこう続ける。

 「車が二足歩行で走れでもするんなら別だけどね」

 ところが、それを聞くなり、全員がハッとなってアレを思い出したのだった。未だに信じられないあの怪異を。

 そして、頭を抱えながら、

 「できるのがいたな。そう言えば」

 と、スネイルがそう言う。それを合図に全員が勇者キークを見る。彼は不思議そうにその視線を受け止めて「ん?」と首を傾げた。

 どうやら分かっていないらしい。

 

 「無茶ですよ! 自動車で道路も何もない荒れ地を走るなんて! 岩とか灌木とかがたくさんあるんでしょう?」

 

 国営の最新型軍用自動車が並ぶ車庫の中。そんな整備工の声がコダマしていた。その中を、構わずに勇者パーティの一行は進んでいる。乾いた表情でティナがそれにこう返す。

 「そうね、無茶ね、分かっているわ」

 なんか、魂が漏れ出しそうな感じ。

 一方、キークは妙に嬉しそうにしていて、「いやぁ、車の運転の練習をしていた甲斐があったなぁ」なんて言っている。

 「へぇ、キーク、あれを、練習してたんだ。どういう神経なのかしら?」

 と、それにキャサリン。ちょっとばかり納得いかない感じで。頬を引きつらせている。無理もない。

 「みんな、そろそろ諦めろ。もう覚悟を決めるしかないだろう」

 そう言ったのはスネイルだったが、彼も顔は青ざめている。

 「他の手段はないのかしら?」とティナ。

 「ないでしょうね」とキャサリン。

 「俺はちょっとドキドキしているが」と言ったのはゴウだった。彼だけ嬉しそう。なんでか、瞳を輝かせているし。

 やがて、彼らの目の前に大きめの車が見えてきた。軍事用に開発された自動車。まだ試作段階だが、かなり丈夫で、そして一般の車よりもかなり速く走れる。もっとも、勇者の運転にそれが意味あるのかどうかは分からないけども。

 「保証はまったくしませんからね、勇者様達!」

 構わず進む彼らに向けて、また整備工が警告を発した。そんな事は彼らだって百も承知だったのだけど。なにしろ、これから彼らは、車どうこうといったレベルを遥かに超えた、まったく保証がない試みをしようとしているのだから。

 助手席には地図を持ったスネイルが乗って、残りの三人は後部座席に乗った。そうして車に皆が乗り込み終えるタイミングで、まるで道連れを探すようにしてティナが言う。

 「そういえば、“闇の森の魔女”は何処に行ったのよ? あいつだって、かなり強力な戦力になるでしょう? 来た方が良くない?」

 キャサリンが応える。

 「ああ、あの女は時間稼ぎをするって言って国境付近に向かったわよ」

 「時間稼ぎ? 魔王軍の? 流石に、あいつ一人じゃどうにもならないでしょうよ。一国の軍隊相手なのよ?」

 「それが、そうでもないから行ったのよ」

 「どうして?」

 それを聞くと、軽くため息をついてキャサリンは答えた。

 「忘れたの? あいつは“闇の木々”を操る“闇の森の魔女”よ。そして、ワタシ達が最近になってたくさん国中に植えていたのは、一体、何?」

 「闇の木…… って、もしかして!」

 「その通りよ。やられたわ。あいつは国中に植えた“闇の木”の全てを操れる。多分、“闇の獣”だってたくさん生み出せるのでしょうね。間違いなく、現時点で最強の魔法使いよ。大規模な軍隊の足止めだって可能」

 「うわっ! 最悪…… もしあいつが敵になったら魔王以上に厄介ね」

 その会話を聞き終えると、キークが言った。運転準備をしながら、

 「そんなに心配いらないのじゃない?」

 それにティナは呆れた声を出す。

 「また、あんたは…… 何の根拠があって言っているのよ?」

 「でも、セルフリッジさんなんかはその件で“アンナさんに悪い事をした”って言って、なんだか悲しそうにしていたよ?」

 「悪い事? なんでよ?」

 「さぁ?」

 そこでスネイルが二人の会話を止めた。

 「お喋りはそこまでだ。時間がない。さっさと出発するぞ。オイ、勇者。やってくれ」

 それに勇者キークは「おっけ」と軽く返す。そして車のエンジンをかけた。回転音が聞こえる。ここまでは、普通の車のように思える。キャサリンが言った。

 「もし、これで速く動けなかったら問題よね」

 ティナが返す。

 「速かったら、速かったで問題よ!」

 そして、次のタイミングで例の怪異が起こったのだった。車体がググッと持ち上がって直立する。後部座席に座っているティナ達は仰向けにになり、運転席部分が直角に曲がってまるで顔のようになる。そして、走り出す構えを取った。その光景にさっきまで勇者達にさんざん警告をしていた整備士は目を丸くする。

 「なに、これ?」

 そう呟く。

 「では、行ってきまーす!」

 そしてそれから、勇者がそう叫ぶと車は二足歩行で猛ダッシュをし始めたのだった。ガッシュ!ガッシュ!と大きな音を発しながら。

 「やっぱり、速かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そしてその二足歩行で猛ダッシュする車の姿は、そんなティナの絶叫と共に、あっという間に遥か遠くに行ってしまったのだった。

 車が消えていく姿を、先の整備士は茫然自失となって見送っていた。

 

 「やっぱり、速かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 ――と。

 そんなティナの絶叫がギリギリ届く国境付近の荒れ地。わずかばかりの灌木や岩石が転がるそのただっ広い場所で、“闇の森の魔女”アンナ・アンリは、遥か遠くからやって来る魔王の軍隊を見据えていた。

 「さて、勇者の坊や達は間に合うかしらね」

 なんて、独り言を言う。

 そこで彼女は背後から近付いて来る気配がある事に気が付いた。振り向いて驚く。そこにいたのが、彼女の最愛の人間、オリバー・セルフリッジだったからだ。

 「どうしたんですか、セルフリッジさん。こんな所に来て。危ないですよ?」

 セルフリッジは応える。

 「すいません。どうしても。あなたの事が心配で」

 するとアンナはこう返す。自信たっぷりに不遜な口調で。

 「ご心配には及びません。わたしは新しく手に入れたこの力を使いたくてウズウズしているんです。

 セルフリッジさん達が、国中に“闇の木”を植えてくれたお蔭で、今のわたしに敵はいませんよ」

 ところが、何故かそれを聞くと、彼はもう一度「すいません」とそう謝ったのだった。しかも悲しそうに。それに彼女はわずかに戸惑いの表情を浮かべる。

 「どうして、謝るのですか? わたしはあなた達を騙していたのですよ?」

 それにセルフリッジは首を横に振る。

 「違います。騙そうしているのは今です」

 それから彼は彼女の事をそっと抱きしめた。

 「お願いですから、僕の前では、そんな辛く悲しい嘘はつかないでください。あなたには今までだってこれと同じ事ができたはずです。それなのにやって来なかったのには、ちゃんと理由があるのでしょう?」

 その優しい言葉に、アンナは目を伏せる。「それは……」とそう呟いた。

 「強い力には大きな責任が伴います。そしてあなたは、それを無視できるような方ではない。つまり、僕はあなたに大きな責任を背負わせてしまったんだ。

 いいえ、そればかりではありません。強過ぎる力を持つ者を、人間は畏れ恐れ疎み、時には敵意さえ向けるものです。僕はあなたを危険な立場に立たせてしまった……

 すいません。考えが足りなかった。こんなつもりじゃ……」

 それを聞き終えると、アンナ・アンリは彼を抱きしめ返した。強く。

 「心配いりません。買い被りすぎですよ、セルフリッジさん。わたしはそこまで責任を負うつもりはありません。敵意を向けられたなら逃げて隠れますしね。だから、そんなに悲しまないでください。

 ……ただ、そうですね。それでもそんな風にわたしに悪いと思ってくれるのなら、どうか、お願いです。せめて、あなたが生きている間は、できる限りわたしと一緒にいてください」

 それを聞くと、セルフリッジは「はい」と返して、彼女の事を更に強く抱きしめた。

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