ハッピーベル
<カラン♪>
あー、いたいた。
何があったの、兄貴。
こんなメール送って来て。
全て終わったって、どういうこと?
あ、マスター、モスコミュールお願い。
どうせ、マユと喧嘩でもしたんでしょ?
って、ちょっと、何で急に泣き出すの?
マスター、ごめん。
すぐに静かにするから、ね。
ええ!?
来てからずっと泣いてたの?
マスター、本当にごめんね。
兄貴!
迷惑でしょ!
静かにしてよ。
もう。んで、何あったの?
ん? 何? 聞こえないよ。
マユに嫌われた?
それって、兄貴が嫌われるようなことしたんじゃない?
ええぇぇぇ!!
プロポーズしたの!?
アタシらが高1の時からだから、9年? 10年?
まさか、妹の親友に手を出すとわね。
ま、両想いだったからいいんだけどね。
んで、なんでプロポーズして嫌われるわけ?
ほーーお。平日の昼間からデートですか。
いいご身分ですこと。
はいはい、たまたま休みだったのね。
たまたまね。
へー。
プロポーズの準備していったんだ。
うんうん。
何て言ってプロポーズしたの?
えー!?
なんだか在り来たりね。
で、結婚指輪渡したんでしょ。
どんなの?
え? 違うの?
はあ? 婚姻届?
普通は結婚指輪でしょう。
なんでズレてるかなぁ、兄貴は。
まあ、でも、婚姻届でもマユ喜んだんじゃない?
違った?
何? どういうこと?
はあ?
なんで婚姻届と離婚届を間違えるのよ!
バッカじゃないの!!
マユ、怒ったんじゃないの?
うーん。
それ、相当怒ってるわね。
マユがもの投げつけるなんて、
今まで見たことないよ。
間違ったんだって、話せば分かってくれるんじゃない?
電話は?
じゃあ、メールは送ってみた?
それじゃあ、ラインも・・・
だよね。そっか。
あ、マスターありがと。
ん? アタシの電話か。
マスター、分かってるって。
電話は外ででしょ?
<カラン♪>
マユからじゃん。
もしもし、今どこにいる?
え? アタシ?
いつものバーにいるよ。
兄貴も一緒。
今聞いたけどさ・・・
え? もしもし? もしもーし?
切れちゃった。
なんなの、もう。
<カラン♪>
マユからだった。
すぐ切れたけど、ここ来るって。
ちゃんと謝りなよ。
しっかり話せば分かってくれるって。
<カラン♪>
ん?
あ、マユ。早かったね。
え!? ちょ、ちょっと、その目・・・
ケンゴさん。
どういうつもりであの紙渡したかわからないけど、
私にも覚悟があります。
これ!
それ、もしかして、婚姻届?
私に言ってくれた言葉が本当なら、
ここに名前書いて!
マユ・・・
書くの? 書かないの?
ううん。私と一緒にいたいの? 居たくないの?
どっち!?
じゃあ、書いて。早く!
アタシのペン貸してあげる。使って。
<カリカリカリ・・・>
ハンコは後でいい。
ハルちゃん。保証人のとこ書いて。
うん。
<カリカリカリ・・・>
アタシもハンコないけど。
後でいいよ。
うん、書いたね。
うん。書いてある。うん、うん・・・
う、う、ぅ、うわ~~~~ん
ちょっと、マユ?
怖かったよう、怖かったよぅ。
書きたくないって言われたら、
別れるって言われたら、
私・・・私・・・ひぅ、うぅ
そっか。
すっと悩んでたんだね。
怖かったんだよね。
ここ来た時から、目腫らしてたもんね。
よしよし
ほら! 兄貴。
こうするのは兄貴の役目でしょ。
ケンゴさん、ごめんなさい。
ごめんなさい、うわーーーん!
うん・・・ひっぐ・・・
うん、うん!
ケンゴさんと結婚する!
うぅ、ひぅ、ひぃぅ
<パチパチパチ・・・>
あぁ、皆さんすみません、お騒がせして。
ほっ、よかったよかった。
あ、マスターごめんね、騒がしくして。
ふふ。ありがと、祝ってくれて。
あ~、それじゃ、祝杯で二人に何か作ってよ。
ウエディングベルか。
いいわね、それお願い。
アタシにつけといてね。
はあ、すごい幸せそう。
あーあ、いいな。
アタシも結婚したいな。