連載になるかもしれない、ネタ。11
あいもかわらず、連載になるかもしれない、ネタ。の第11弾。
キャラの使い回し。
元ネタの小説は、他サイト様でございます。
至近距離から向けられた、殺意のこもった剣先。
ぐるりと囲むように、悪意をもって向けられる槍。
「コレが、この国の総意で間違いはございませんか?」
それらに意識を向ける事無く、一段高い王座に座る国王に問う。
顔色悪く此方を伺う国王に、もはや決定権など有りはしないだろうが。
それでも、ソコに座る以上、最低限の仕事はしてもらう。
「いまさら確認が必要か?」
しかし、求めていた答えは、求めていた人間以外からもたらされた。
「念のため、ですわ。王太子殿下が謀反を企てている可能性を潰したかったのです」
首筋に剣先を突きつける男に、そう、はんなりと笑う。
男が一歩でも踏み出せば、剣先は私の喉に突き刺さるだろう。
それでも、私に危機感は無い。
「無礼な・・・っ」
カッと一瞬で怒気を膨れさせた男の腕に、力がはいる。
ブレた剣先が、私の喉を傷つける、瞬間。
キィイン、と金属同士が触れ合わさったような甲高い音を立てて、男の剣が弾かれた。
「なっ?!」
「ありがとう」
後ろから抱きしめられ、左右を守られ、正面には大きな背中。
一瞬のうちに現れ、私を守るように周囲を固めた男たちの姿に、剣を弾かれた男の驚愕の声が響く。
周囲を囲んでいた者たちも反応できず、場に静寂が訪れる。
「わたくしと敵対する道を選ばれますのね」
残念ですわ、と。
四人に守られたまま、声だけを響かせて。
「今この時より、この国の守護は解除いたします」
最後通告を、する。
ざわりと揺れる周囲を無視して、守護に回していた魔力の流れを停止させた。
「アシュラローレ、早く守護をっ」
悲鳴のようにあげられた国王の声に、はんなりと微笑む。
「あら、新しい聖女様にお願いしてはいかがですか?」
わたくしは、偽者らしいので、と。
数人の見目麗しい若者に守られるように立つ、この騒動の根源である少女にチラリと視線を向けて。
いまだ呆然とする王太子殿下に、再度視線を合わせた。
「確認いたしましたでしょう? コレが、この国の総意ですか、と」
敵対する道を選んだのはソチラだと、周囲の声一切を切り捨てて。
いっそう顔色を悪くする国王も無視して。
もはやこの場に用は無いと、四人を連れて退場しようと一歩を踏み出す。
「まちなさいっ 聖獣は聖女である私のモノよっ」
だから置いていけ、と醜くがなり立てる少女。
自分こそが真の聖女だと声高に宣言し、今の聖女は偽者であると言い募り、この場を設けさせた根源。
王太子はじめ、有力者の令息たちの前でのみ『奇跡』を起こしてみせた、マガイモノ。
「何を勘違いされているかは存じませんが」
事実、私を守るこの四人は、聖獣と呼ばれる存在であるが。
「聖獣が聖女の所有であるかのような発言をする貴女が聖女などと、誰も認めませんわ」
聖獣とは、聖女の付属物では無い。
聖女とは、自分勝手に名乗れるものではない。
聖女と呼ばれる条件は。
聖獣が守る条件は。
「まずは、この国の守護を完成させてはいかがです?」
そうすれば、少なくとも聖女とは呼んでもらえますわよ、と。
少女が求めているであろう聖獣に守られながら、告げる。
「聖獣がいなければ出来るはずないでしょう?!」
だから早くおいて行け、と。
常の淑やかさの欠片も無い必死さで、自称聖女は喚き立てる。
会話の通じないこの少女を、どうするべきか、と一瞬思案する。
が。
「カ、カチュア。早く聖獣様方に謝罪を!!」
がたがたと恐怖に身体を震わせ顔を引き攣らせ、必死の形相で少女に詰め寄る王太子によってその必要はなくなった。
何事かと視線を向ければ、王太子はじめ、自称聖女の取り巻きである令息たちが四人を見て顔色を無くしていて。
まぁ、この反応が正しい反応であるな、と聖獣である四人を見る。
隠す気の無い怒気を魔力にこめて放出するのは、少々行き過ぎている気もするが。
「そのような汚く醜い人間風情が我等を見るな」
不快をそのまま言葉にして、朱の聖獣は吐き捨てた。
ぶわりと膨れ上がる魔力は、怒気を通り越して殺気に変わり。
直接向けられた少女は、恐怖に引き攣り、身体の制御を手放した。
それは、少女の側に侍っていた王太子や令息たちにも言えることだが。
「我等のお姫様を侮辱したこの国に未来は無い」
一瞬にして場を支配した蒼の聖獣が、宣言する。
聖獣の言葉には、魔力がこもる。
魔力のこもった言葉は、言霊として現象を引き起こす。
それは、まるで魔法の詠唱のように。
世界の理を歪めてしまう。
「水害によって生き物は流され、永の日照りで作物は育たず、この地は荒野と化すだろう」
国は無くなり、ただ不毛の土地となる。
淡々と告げる白の聖獣。
この世界の理を管理する、聖獣と呼ばれる者たちが詠うこの国の未来。
覆される事の無い、決定されたモノ。
「アシュラローレ、どうか、どうか慈悲を・・・!」
この国の最高位の国王が、宰相が、将軍が、床に額を押し付けて願い出る。
聖獣にではなく、聖獣に『お姫様』と呼ばれ、守られる『私』にそう縋る。
「我が姫、シュラ。聞き届ける必要は無い」
そっと耳元で囁かれる、黒の聖獣の言葉に微笑んで。
「家へ帰りましょう」
この場に用は無いと、帰宅を促した。
聖獣によって治められているこの世界には、聖女と呼ばれる存在が居る。
聖女とは聖獣と心を通わせることが出来る存在であり、聖獣に魔力を渡すことで世界を守る存在であるとされている。
また、聖女はその膨大なる魔力で常人には扱うことの出来ない『奇跡』と呼ばれる魔術を使い、人々を守る存在である。
「結局、アレは何を望んでいたんだ?」
そもそも、アレは何だったんだ? と不快を隠さない黒。
「存在が安定していませんでしたね」
気持ちの悪い、と嫌悪感も露にする白。
「魅了持ちだったことは確かだな」
お姫様も気付いていたようだが、と言う朱。
「お姫様は喜劇だと言っていましたね」
滑稽で面白かったそうですよ、と言えば、放置していた理由はソレかと笑いが起こる。
「雨が降り出したな」
狂った女に唆された愚かな男が、愛しい少女を傷つけた。
腹立たしいその出来事から三日目の今日。
破滅の始まりを告げる雨が降り出したのを、寝室の窓から確認した朱が獰猛に笑う。
「お姫様の魔力を貰いませんでしたから、事象までに時間がかかりましたね」
隣で眠る愛しい少女の頬を撫で、その暖かさに安堵する。
「お姫様は相変わらず容赦が無い」
くつりと笑う黒に、
「同じ魂だけあって、在り方は変わりませんよ」
柔らかく笑う白。
聖獣と呼ばれる存在となった我等が一同に会した瞬間に溢れた、かつての記憶。
何よりも、自分自身よりも大切にしていた少女との、愛しい記憶。
全てを捨ててでもと望んだ、唯一の存在。
四人で大切に守り、愛した、たった一人の女。
溢れ、弾けたその記憶によって、我等は他への興味を一切失った。
かつてのように、たった一人に執着して、全てを捨てて探し求めた。
「愛しています、お姫様」
四人が揃っているこの世界に、唯一の少女も居る事は疑って居なかった。
愛しい少女が苦労をしないように、世界の守護は安定させた。
求め、彷徨い、幾年月過ぎたのか。
やっと見つけた、唯一の少女。
記憶の中にある通り、美しく、気高く、そして、何かを渇望していた愛しい存在。
膨大な魔力をその身に秘め、コミュニティの頂点に立っていた少女。
自らの才覚でのみ動き、片手間で刺激を作り出していた唯一の女。
かつてのように傍に侍るため、己の身さえ差し出して契約をした。
「私も、愛しているわ」
眠りから覚めた愛しい存在に、衝動に突き動かせるまま唇を合わせて。
『我等の全ては貴女のために』
かつてと同じように、唯一を誓った。