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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ハイドラの狂人18

この浮き島のインフェルノ地帯とヒルマ殿の間には、タンジアのロコウに似た山がある。


未開のジャングルの北東に。


山の名前はジェィゴク。


このジェィゴク山にはハイドラの守護者ハイドゥクの所在 セクハンニ神殿がある。


ジェィゴクの第一ジーナンにはワドル•セクハンニという名の門前町がある。


白い街ワドル•セクハンニには17万人の人が生活をしている。


そこからは数100キロ先にあるヒルマ殿が本物の蓮の花に見える。


セクハンニ神殿は第一ジーナンと第二ジーナンにまたがり存在している。


大半の地層が岩であるジェィゴクをくり抜いて出来ている。


数キロ四方の大きな神殿にもかかわらず、小さな彫刻から巨大な柱まで全て人間の力で彫られている。


ジェィゴクの岩の最も硬い部分が柱として使われている。


常に、ジェィゴクからの湧き水が神殿を流れ、ジェィゴクと同じように樹木や植物は逞しく硬い岩に根を張っている。


ハイドラ軍の兵士達に護られ行進している。


先頭に4人の宮司、続いて神官が行列を先導する。


続いて、デフィン、モルフィン、トラフィン、サンザ、そして私が続く。


隊列の両脇は僧兵達が固めている。


シャトルやエルカーの類いは、神殿のあるジーナンに入ることは出来ない。


セクハンニまでの道のりは、病のある私や子供達には険しく厳しい。


特に子供達には。


私は今回は双子達の世話役として同行している。


私は途中サンザを抱いて歩いた。


僧兵や神官達はサンザもトラフィンも抱いてやらない。


自分の仕事以外のことをするなとデフィンに強く言われているからだ。


逆らえば死ぬことになる。


「うぁーわぅーあ。」


サンザが声を出す。


私の汗でサンザもびしょ濡れだ。


トラフィンは全身で息をしている。


可哀想だが私はサンザで手一杯だ。


私はかつて片手で山をも動かすことができた。


ネスクの毒はここまで体力を奪うものなのだ。


自分が壊れて行くことほどやり切れない事は無い。


デフィンは私がサンザを抱き上げたことに恐らく気づいている。


が、見て見ぬ振りだ。


恐らくあの男の考えは、双子達をどのような状況でも環境でも自ら対応できるように育てたいのだ。


自然淘汰に常に勝つ。


それがあの男の考え方。


そして、世話役の私にもそれを求めている。


もし、私が遅れ倒れでもしたらトラフィン達にこの私の巨体を担がせるだろう。


凄いが厄介な人だ。


トラフィンが転んだ。


しかし隊列は止まらない。


僧兵に踏まれてしまう。


私はトラフィンを待った。


トラフィンは立ち上がれない。


無理もない。


トラフィンは昨日40度の熱を出した。


困った。


私自身もこの外環道の傾斜と距離で限界だ。


情けないがここまで弱ってしまった。


「止まられるな!。登庁が遅れる!。」


「急がれい!。」


僧兵達が言う。


お前たちはこの状況が分からないのか?。


トラフィンを置いてなど、一歩たりとも動かぬ。


ふざけるな。


しかし、困った。


私も脚が震えて来た。


「おい。何をしている!。」


前を歩いていたはずのモルフィンが戻って来た。


助かった。


「お前たち。来い。」


モルフィンがトラフィンそして私の腕の中のサンザに言う。


こ、これは...またデフィン様と揉める。


「も、モルフィン様...デフィン様のご指示が。」


「良い。オルテガ。父様を待たせる訳にはいかぬ。」


「ハハッ!。」


それは口実。


モルフィンは父ハイドゥクを待たせることなど何とも思っていない。


この人も困った人だ。


が、優しい。


見るに見かねたのだ。


「オルテガ。サンザをおろせ。歩みが遅い。まずは己のことをこなせ。」


きつい言い方だが本心ではない。


ただ我らを案じてのこと。


モルフィンは軽々と2人を抱き上げた。


怪力のモルフィンにとっては、双子たちは空気のような物。


「水を持て!。」


「し、しかし...デフィン様が水も何も与えてはならぬと。」


僧兵達は言う。


「私にも水を飲ませるなと、兄が言ったのか?。」


モルフィンは僧兵を睨みつけた。


僧兵は飛び上がって答えた。


「い、いえ、め、め、滅相もございません。」


モルフィンは不条理に対しては手厳しい。


しかし、僧兵にしてみればただ任務に忠実なだけだ。


それ以外のことをすればデフィンに殺されてしまうかもしれない。


僧兵に怒るのは筋違いだ。


このようなことでモルフィンは敵を作ってしまう。


僧兵はゴード笹でできた水筒をモルフィンに渡した。


モルフィンはぐったりとしたトラフィンに水を飲むように促した。


「...登庁までは飲まないようにと。デフィン兄様が...。」


「飲め!...。飲まぬと死ぬぞ。」


そう言うとトラフィンの口に水筒を当て飲ませた。


トラフィンは喉が渇ききっていたらしく喉を鳴らして飲んだ。


「行くぞ?。」


そう言うとモルフィンは双子を抱えたまま歩き出した。


「やみくもに苦しめても強くなどならぬわ。浅はかな。」


デフィンのことを非難しているのか...。


最近デフィンもモルフィンも自らの考えが絶対と考えている節がある。


モルフィンは特に。


我が主君相手にも引くことが無い。


一度意見が食い違うと大変なことになる。


二大アンティカと最強のハイドゥク。


一見、今のハイドラは史上最も安泰だ。


しかし、常に危機をはらんでいる。


ようやく、セクハンニの正大門にたどり着いた。


モルフィンはトラフィンとサンザを下ろした。


不思議なことにデフィンが全く気づいていない。


モルフィンはデフィンのことを良く知っている。


久しぶりにデフィンは凄く満足そうだ。


昔の2人を見ているようだ。


抜け目の無いデフィンもモルフィンには良く騙される。


昔からだ。


あの頃の二人に戻ってくれたら。


大神官のジェー•ディーが正体門まで迎えに来た。


ジェー•ディーは巨人族タントの小人症の男だ。


セクハンニの大神官はわが国ハイドラの三大神官の1人。


この男を見くびってはいけない。


この男は大神官にもかかわらず冗談が大好きだ。


普段は下ネタしか話さないらしい。


私達はジェー•ディーに導かれセクハンニ神殿の中に入った。


誕生の間を通った。


全て石でできているこの部屋は天井が高い。


数十メートルの高さ。


白い石が敷かれている。


エンダル石だ。


ハイドラのエンダル石は世界で最も美しいとされる。


13万年前に建てられたセクハンニが今でもこうして当時のまま残っている。


光の間を通り過ぎる。


天井は無く格子状の岩の隙間から第一太陽グラディアの光が差し込む。


太陽の動きによってその隙間から射す光、 そして大鏡で反射された光が戦闘神ナジマの姿をかたどる。


この仕組みも太古に作られた。


毎日、グラディアが登り沈むまで、戦闘神ナジマの1億3000万年にもわたるといわれる生涯が、薄暗い光の間の中心に、立体的な光の映像となり映し出される。


そして、その光は部屋全体を照らし、ハイドラの大地を模し美しく装飾された壁や、エンダル石の床を引き立たせる。


1年1218日の間同じナジマの姿はない。


セクハンニのナジマの光姿は本当だったのだ。


ナジマの神々しい姿に見惚れてしまう。


しかし、ゆっくり見ることは許されない。


観光ではないのだから。


この神殿の中には、限られた者しか入れない。


日中は、太陽の光はハイドゥクの現れる謁見の間に射し込む。


ナジマに力を与えられたハイドゥクということを表現している。


セクハンニ神殿は規模こそ小さいが、世界的には、アマル帝国のメルエン•ラ•カー神殿と肩を並べる格式の高い神殿だ。


謁見の間に私達は入った。


草の絨毯でそれぞれの座る場所が決められている。


名前は忘れたがこの草は柔らかく良い匂いがする。


金と赤の刺繍が施されている。


この絨毯は座椅子のように座りやすい。


ジェー•ディーが2人の副神官を引き連れ入ってきた。


我々に、そして、ハイドゥクの座る玉座に祈りを行っている。


玉座は巨大だ。


民家より遥かに大きい。


本当にこんなに大きな戦士がいるのだろうか...。


私も直にハイドゥクを見たことがない。


お声を影から聞くのみだ。


我が主君でありながら。


しかし、時折ハイドゥクは私に直接話しかける。


まるで神からの啓示のように。


ジェー•ディーが祈りを続ける。


時折、杖の先の水晶が光る。


しかし、まるでショーや見世物には見えない。


本当の奇跡を見ているようだ。


ジェー•ディーが下ネタばかりを言うおじさんには見えない。


小人症の男が、威厳があり過ぎて怖い。


...ブゥーーーーーーーーーーーーーーーン...


...ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


アブが飛ぶような音か電流が流れるような音。


サンザは!?。


トラフィンはまた床に寝そべりサンザに亀を触らせている。


注意しなくては...。


しかし、動いて話して良いものかこの厳かな空気...。


どうしたものか...、。


...ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...ブゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


音が激しくなる。


爆発でも起きるのではないか?。


...ピシッ...


...ピシ...ピシッ...


小さなスパークが...


...ピシィッ...


...ピシッ...ピシッ...


火の粉が、スパークが、まるで妖精のようにジェー•ディーの祈りに合わせて踊っている。


ローレライ?。


こ、これはローレライか?。


こ、怖い。


恐怖を感じる。


子供達は?。


笑っている...!。


こ、この、この状況であの子達はまだ寝そべって笑っている。


な、何と言うことだ。


...チカッ...チカチカ...チカッ...チカ...チカチカ...チカ...


まるで稲妻だ...。

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