赤碧の帝王9
幅50km、長さ300kmに渡る、巨大な道を、黒い軍団が進んで行く。
真っ白い道は、少し傾きかけた2つの太陽の光を浴び、真白く輝いている。
様々な色のアルマタイトの粒子を含むエンダル石の凹凸は、日の光を色とりどりの光に変えて様々な方向に反射する。
エンダル石はアルマタイトを含む大理石。
その成形されたその石は1メートル四方で、2等市民の平均生涯年収1200万ゼルダを遥かに上回る。
様々な緑の葉をつけた白い巨木イナトナの並木、エメラルドの巨大縁石、色とりどりの龍車と、その日除け。
華やかに、そして秩序正しく並んでいる。
空の、赤金色に、金色に、碧金色に輝く三つの巨大戦艦は、その巨大な鏡のような船腹に、広大な花畑のような神帝の道を空高く映し出している。
ここにいるアマル帝国の首都メンファーの住人は、一国の人口よりも多い。
人々は、神帝の道を進んでくる大軍団を見て、口々に歓声を上げ始めた。
貴族達の至高の映像ポットから映し出される、国営放送の解説者達は興奮は最高潮だ。
『...ご覧ください。遂に世界最強の兵曹軍団。赤碧帝の18使徒が入場します。...』
『...おぉぉぉ...』
『...あぁ。大いなる歴史の担い手。カーの偉大なる右腕達よ...』
『...帝!。お久しゅうございます!。わ、わ、私は、私めは、一時たりと帝への忠誠を忘れたことはございません...』
立体映像は、更に、ヒートアップする解説者達を映し出している。
誰もが皆立ち上がり拍手をしている。
その場にいると錯覚し、公私混同をする者もいる。
泣き崩れる者もいるほどだ。
大袈裟で下らない。
中身も無い。
『...ご覧ください。赤碧帝の兵曹軍が...。ついに、ついに、我らが神、神帝の正大門に近づきます。...』
正大門に近いこの場所では、1区画に一つの龍車、1人の貴族がいる。
大きな区画に、より一層大きく派手で豪華な龍車。
付き人は、一つの区画に数千はいる。
ここにいるのは、第一神殿に入ることが許されない、男爵や子爵達だ。
誰もが、一国の領地を持ち、ローデシア大陸の他のどの国よりも豊かだ。
「さすれば、我が赤碧。あれなる事を起こし、なほ、この人の気。いかが?。我が妃よ?。」
ますます何を言っているか分からない。
「神はお慈悲なるや。わらわは本に心憂きなるや。」
「ほほほほ。我が妃は、真に心優き美如なりけむ。笑」
『...な、何故でしょう...。何と19の使徒がいる!。...ご覧ください!な、な、何と、筆頭が...筆頭の使徒が...シムキャスト(兵曹用戦車)を降りて歩いています。!いや!違います!全使徒が全使徒が、シムキャストを降り、胸に右の拳を!な、な、何で、泣、なんで、な、何で、泣...』
『...な、な、何と...最強の戦士達が...我らに共鳴の意を、シムキャストを降りてまで...涙』
先頭を歩く兵士は、艶のある深い褐色の肌をした、横にも縦にも巨大な兵曹だ。
無駄な脂肪など全く無い。
真紅に輝くの戦闘服から見えるその肩は、せり出したその腹は、戦闘服の上からもそれが分かるほど、恐ろしいまでに隆起した筋肉の塊だ。
身体に似合わず、長い太い巨大な脚で、神帝の道をゆっくりと歩いている。
両方の耳には、サラウバルの大宝石デリジンの大きな耳飾りをつけている。三つのアルマタイト鉱石、ヒモン、シカム、メロウを併せ持つ、デリジン。
ローレライとは逆結晶だ。この希少な鉱石は、三つのアルマタイト鉱石の1000万倍のエネルギーを持つ。
トルメキアの先住民族ズールの民族衣装である、白いゆったりしたアマルシルクの袴をはき、黄金の先の尖ったシューズ履いている。
つま先が尖って巻いた兵士の戦闘用シューズは眩い光を放っている。
頭髪は無く、明るい栗毛色の眉と、まつ毛。
ペルシャンブルーの美しい瞳を持っている。
穏やかで大きく澄んだ人懐こそうな瞳からは、この男が恐怖の大帝王だとは誰も考えない。
『...見よ!。あれを!。先頭は、赤碧帝様だ!...』
『...な、なんだとっ!?...』
解説者達が大声で叫ぶ。
先ほどまでの惨事が嘘のように、貴族達は歓声を上げている。
虹色の閃光が炸裂したような歓喜の嵐。
「見よ!。戦車を降り歩いておじゃる!。」
「何とありがたき。共鳴の意を我らと!。我らと!。泣」
「傷した、我らと共にあると!。共鳴していると!。泣」
「今日の全ての事は我らがため!。心を鬼にされたのじゃ。涙」
「龍車が蘇っていく!。見よ!。」
「見よ!あのお顔を。我らと共に苦しんでおられる。泣」
「我らの龍車が蘇っていく!。」
「赤碧帝ーーっ!。」
「見よ。道が輝いておる!。」
「おぉぉ、奇跡!奇跡じゃ。」
「赤碧様ぁ!。」
「アブドーラ様!。」
「大帝王よ!。」
「我らが神カーの守護者よ...泣。」
「アブドーラ帝!。」
アブドーラは、穏やかに微笑んでいる。
まるで若い女性が有名人に熱狂するように、感動のあまりバタバタと貴族達は倒れ始めた。
尊大で、傲慢であるはずの貴族達が、まるで田舎の純粋な子供のように、大手を振って、赤碧に近寄って行く。
数万の兵曹達は、行進よりも寧ろ、倒れる貴族達を介抱した。
赤碧帝アブドーラの200mほど後ろを、紫色の髪をした幼い少女が歩いて来る。
巨大な戦車を降りて。
歳は6〜7歳。綺麗に整った美しい顔。
雪のように白く透き通るような肌にピンク色の唇。
透きとおったアドリア海のような深い青色の目をしている。
後ろには、四体の巨大な兵曹が追従している。
群衆からはどよめきが起きた。
「あの小さき娘は?。」
「何故、赤碧様のお後を歩いておる?。」
「あの幼子が、使徒の筆頭...?。」
「ま、まさか...。」
『...ご覧ください。赤碧帝の後を、筆頭使徒のリューイが歩いています。』
「あぁぁ...。」
「何と...。」
「あの幼子が...あの幼子がリューイ。バイキールの守護神の末裔。」
「おぉぉ...神よ。」
「最凶で最強の使徒...赤碧様の右腕。あんな、あんな可愛い娘が...。」
「赤碧様ですら、命のやり取りをされたという。」
「そのようなことが...。見よ!まるで天使のようではないか。」
「まさか...。」
「後ろを見よ。リューイ様の四天星が。」
幼く美しい少女の後ろには、四体の巨大な兵曹が並んで従っている。
『...リューイの四天星 ハデス、イオ、イクシデン、クロノスです...。並んでリューイの後ろに従っています。リューイを護っています!。リューイと共に赤碧帝に制圧され家臣となりました。...』
「見よ、ハデス様を。海皇様を。」
「なんたる巨大さ。」
『...ご覧ください。巨人ハデスは、オリハルコンの巨刀を持っています。ハデスは、最終兵曹で180mに達すると言われています。かつては、海の蛮神と言われたハデス。その威厳、黄金の豊かな髭、黄金の王冠はかつて海皇であった時代と変わりません。』
「イオ様じゃ、何ともお美しい。」
『...雷神イオです。闇の女神とも言われるイオ。黄金に縁取られた、水色、赤の戦闘服は目も眩むばかりです!。空にそびえる黄金の冠、チュニアを被っています。腕には雷神の杖トライデントが、...』
「全身が稲光りのようじゃ...何とも、神々しい。」
『...イクシデンです。白の騎士、イクシデン。男とは思えない美しさです。白金色の巨大刀。三種の魔器 ドラコアルテメディアを担いでいます。三種の神器と対極をなす強力な武器です。』
「あな、恐ろしや、クロノスじゃ。」
『...魔導師クロノスです。薄汚れたベールで顔も見えません。冥界の杖を持っています。クロノスは、恐らく老人でしょう。いずれにせよ、巨大な兵曹達。皆、バイキールの神リューイのしもべたちです。』
褐色に、銀の髪の兵曹が後に続き歩いて来た。立派で風格のある兵曹だ。
キリッとした眉、眼光は若いながら凄まじかった。
『...デスパイネです。赤碧様の直属の使徒としては最高位。二つの迫撃放射を備えた新時代の兵曹です。軍事国家アトラのジェニファー、ザネーサ、アダムに対抗しうる我が国で最初の兵曹です。デュオニソス、ファルサ、アモン、ダイダレスを従えての入場です。アモンは大槍、ダイダレスは大鉈の名手です。ファルサは魔器バッカスの遣い手です。いずれも迫撃放射を備えています。』
地面が揺れ、大きな兵曹が歩いて来た。エンダル石は、その重みに耐えかねひび割れ、巻き上がった。
「おぉぉ...見よ...何じゃあれは...鬼の如き恐ろしき。」
「ハデスに迫る兵曹...。まるで鬼...。凄まじき筋肉じゃ。」
重く大きな足音が響く。
真っ黒い身体に極限まで隆起した金属の筋肉。
目は赤く血走り、正に鬼だ。
一際重い高圧炉の回転音を轟かせている。
分厚く真っ黒なジニリウムの鎧が、まるで紙切れのようにたわんでいる。
『...ザビルです。赤碧帝の次期片腕とも言われる、ザビルです。光軍討伐では、尖兵隊として乗り込みたった一人で、一万の主力兵曹を倒したという...』
ザビルは、共鳴の意を表さないばかりか、鋭い眼光で群衆を睨みつける。
『...女兵曹カチャルニック、デューダス、ダルゾット、が続きます。...』
『...続いては...続いて...そ、そんな...そんなバカな...こ、子供です!。こ、子供が18使徒の最終隊列、ルーファス、ギレン、キール、ワダン、アギラを率いています!』




