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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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赤碧の帝王8

青い空の彼方に輝く、太陽にも似た三つの眩い光の塊から、太い三本の閃光の柱が吐き出された。


無数の声にもならない呻きが渦巻く。


誰もが、血の気のない生き物のように、啞然とし、茫然と立ち尽くす。


「...。」


「...。」


三つの太い迫撃放射の閃光は、現人神あらひとがみの第一神殿の直前で、見えない巨大な壁に阻まれた。


その光の洪水は、激しく重く強く荒れ狂い激突した。


そして、光の柱はそのまま、三つの方向に向きを変えた。


「おぉぉ...。」


「な、なにごと...。」


「奇跡じゃ...。」


光の洪水は止まらない。


「神が迫撃をお弾きになられた...。」


「なぜ、赤碧は、神を撃たれた...。」


「何という日じゃ...なぜこうまで大事が起きる...。」


「身が持たぬ...これでは...。」


「おお...神よ!。」


バタバタと、貴族達は倒れて行く。


常識を覆す出来事の連続に、失神して倒れる者が後を絶たない。


光の巨大な柱は、それぞれ何回も四角い蛇のように折れ曲がり、方角を変えて遠ざかって行った。


メルエン•ラ•カーの前の大気が大きく歪んだ。


迫撃放射の反射を終え、少しずつその巨大な三つの歪みは光を放ち始める。


メルエン•ラ•カーの直前の1つは、ヒステリアと同じ赤いの光を、前神帝マーの巨大な古墳の前の歪みは、パイロメニアと同じく黄色い光を、メルエン•ラ•カー南の外れには、スキゾフェニアと同じ青い光を放っている。


『...ご覧ください!。迫撃反射艦が現れました!。迫撃反射艦が!。...』


国営放送のアナウンサーは、声が枯れるほど叫んでいる。


地面が揺れ、メンファーの東の彼方でキノコ雲が立ち上がった。


続いて、西の彼方。アドリア海の方角。火柱とキノコ雲が。


そして、ヒステリアから放たれた最も太い光の柱は、メルエン•ラ•カーの上空の何かに激突し続けている。


迫撃反射艦のそれとは明らかに違い、それは黒煙や様々な色の炎を噴き出し、光はあらゆる方向に拡散している。


爆発は広域に広がっていった。


...


...


...ッ...


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


途轍も無く大きな爆発が...。


爆煙の中から艦隊が現れた。


黒煙の中から航空戦艦、航空駆逐艦、航空飛行母艦。


迫撃放射から微かにそれ消滅せずに済んだ。


「おぉぉ...。」


「ステルス艦じゃ。一体どこの...。」


「神より高き場所を飛来するとは...。」


「あの至近距離で直撃を受けて尚、残存するとは...。」


「一体、どうなっておるのじゃ...。」


「見よ。あの印を、消えたザンジバル軍の旗艦サイレーンにおじゃる。」


「何と...赤碧殿に復讐に来たか?!。」


もうもうと黒煙を上げながら、船団は姿を現した。


空から莫大な量の水がバケツをひっくり返したように地上に降り注ぐ。


艦隊であったはずのそれらは、反射迫撃砲の威力に水分以外残さず消滅した。


残存している艦も、既に、装甲の大半を喪失。


先頭の旗艦は、船体の大半を。


航空母艦は、左舷反重力板を多数喪失し大きく傾いている。


しかし、エネルギーシールドが辛うじて機能しているため、存在を許されている。


「セイレーンが...。見る方も無いわ...。」


「なぜザンジバルが...。」


辺りの気温が急に真夏のように上がり、ヒステリアは、再び眩く光りを増し始めた。


「また、撃つ様子におじゃる!。」


「もう、耐え切れん...何ということ。」


ヒステリアは、ザンジバル軍艦にゆっくりと船首を向け始めた。


「今度は、直接じゃ...。」


「もう、良いではないか...。」


「普通の砲では、残骸が降るのじゃろう...。しかし、あな恐ろしき...。」


『...アドリア海に向かった赤碧軍2番艦の反射迫撃砲は、アドリア海シンドラー海域での激しい爆発を引き起こしています。爆発は未だに止みません。トランプさん、これは一体何が爆発しているのでしょうか?。何らかの海底資源への直撃との予想が広がっていますが...』


『...この規模は、単なる海底資源とは考えにくいです。天然のアルマダイがここまでの大爆発を継続することはあり得ません。やはり巨大な精製炉、あるいは...』


ヒステリアが急激に大きな回転音を地上に轟かせ始める。


イナトナの大木は揺れ、エンダル石の綺麗に敷かれた道は、大嵐の海のように畝る。


「おおぉ...!。」


「おおぉぉ。」


『...トランプさん、あるいは、何でしょうか...』


『...いや、一介の評論家が、申し上げられるような事柄ではないので...』


『...この大爆発に起因し、巨大な地震、更には津波が発生する可能性があります。沿岸ブロックシールドが暫定的に展開される模様です。ブッシュさん。ブッシュさんはどのように...』


「見よ。サイレーンが回頭する。」


「逃げるつもりじゃ。」


サイレーンは、メインスラスターを点火した。


巨大なメインスラスターの内2基は黒煙を噴いている。


半減した反重力板で何とか揚力を確保している巨大戦艦は、残った一基のスラスターで必死に逃げようとしている。


サイレーンは、ヒステリアの目前で大きく回頭している。


ヒステリアの炉の回転音と、サイレーンのスラスターの音で、地上は何も聞こえない。


爆風が吹き荒れている。


『...アトラのゴンドアナ級航空要塞がかなりの数確認されていたため、アトラ軍の海底戦略基地ではないかとの有識者の意見もあります。...』


『...モウさん。東方の山岳地帯の爆発ですが。シーバウスの拠点を直撃した模様です。映像をご覧ください。ソル1267号からの映像です。アメンの解析によると、この迫撃放射は、シーバウスレジスタンスの秘密基地を壊滅状態にしたとの予測です。...』


『...シーバウス。我が神に逆らい、国民2億人が生き埋めとなった、逆賊国家の末裔。ついに...』


『...モウさん。シーバウスは、膨大な数のミサイルをメンファーに向けていた模様です。アマル軍の永年の懸念、シーバウスの拠点は、なぜ今、赤碧軍が殲滅し得たのでしょう。...』


『...シーバウスも、ザンジバル残党も、アメンにも解読できない特殊なステルス技術を使用していたと言われています。一部では、軍事国家アトラが裏で糸を引いているとの声もあります...』


『...アトラと推定する理由、それに、なぜ赤碧軍が永年の念願を果たすことができたのでしょうか?...』


『...アトラの艦隊は、我が赤壁軍のように、死角の無い長距離砲はありません。しかしながら、アトラはファザスフォーメーションシールドを持っています。ファザスは、アメンでも解析できないステルスである上に、光学的にも存在を消してしまうという恐ろしい技術です。そうですね?。トランプさん。この分野はトランプ氏の管轄ですので...』


『...ファザス2(ツー)と言われる技術は、粒子砲撃も反射します。ほぼヒステリアと同等の防御攻撃レベルです。しかし、最新のファザス3になると、ほぼ元の砲撃の16倍のエネルギー規模の反射を行います。ヒステリアですらファザス3の反撃を受ければ甚大なダメージを受けかねません。赤碧帝の軍は、ここ数年作戦の成功率が格段にたかまっている。何らかの巨大なシナプスフレームを獲得したとしか思えません。...』


『...シナプスフレームですか...。アメンのような...。私はデューンのシシィドールのような戦術予報士を獲得したものと考えています。...』


『...シシィドール。そうそうそのような人財がいるものでしょうか...。...』


『...さておき...今回の、ザンジバルの残党はファザス1です。ザンジバルもシーバウスも、アトラから技術提供を受けたのは第三次ガルゴア戦争の時点と考えられるからです。ハエさえ逃さないアメンの監視から逃れる技術。アトラ独自の技術です。これが、アトラが裏で操っていると考える明白な根拠です。...』


『...なるほど...。ご覧ください。パイロメニアの駆逐艦5隻が、サイレーンを追走しています。恐らく、アドリア海上にて再び追撃をするものと思われます。しかし、大変な事態になるところでした。アメンを目を逃れここまで危機が迫っていたとは...』


「見よ、赤碧様の軍におじゃる。」


「あな、恐ろしや...。」


『...おっと、ご覧ください。赤碧帝のアマル東南連合軍の入場です。当時元帥だったザンジバルの変よりらはや7年経つわけですが...トランプさん。...』


『...当初予想されたクーデターなどは、一切起こりませんでした。寧ろ、ザンジバルが治めていたころより、東軍は秩序があります。兵士が生き生きとしているように見受けられます。これは、一重に赤碧帝の統治力の賜物と言えるでしょうか。...』


『...赤碧帝に逆らえる気概のある者などそうそうはおりますまい。ねぇトランプさん。...』


『...ブッシュさん、それはいささか殿に失礼ではないですか。殿の御人徳ですよ。分かったようなことを...』


『...モウさんは、かつて、赤碧軍にて装甲騎兵の名組長として采配を振るわれたそうですが。組長ですと、1000近い兵を率いる形になりますが。...』


『...いや、12000です!。...』


『...あ、失礼致しました。12000以上の指揮官から見て、士気は当時と比べて上がっていますか?...』


『...士気が上がってるとは、以前から殿の軍は士気は高い!...』


『...こちら、第三条です。ご覧ください、赤碧軍、アンドロイド達が、残骸を掃除しています。行進を外れ、皆さんのパラソルを探しています!。装甲歩兵が指揮を執っています。次々と残骸を片付け、倒れた竜車を起こしています。ほぼ、群衆と同じ数です。皆さん!。ご覧ください!。新しいアンドロイドが群衆を助けています。かつて、こんな微笑ましい空気があったでしょうか?...』


『...あれは、最新の戦闘アンドロイド、GM11サラバスターです。サラバスターが更に、他の上級から低級アンドロイドをコントロールしています。...』


『...ということは、デスマ社の最新鋭アンドロイドが、ここで初お目見えということですか?...』


『...そうなりますな。笑...』


『...なるほど...』


『...ふん!。怒...』


『...ご覧ください、赤碧軍、兵曹団入場します!。もの凄い数です。...』


『...アンドロイド隊は、皆さんのサポートが終わった段階で、恐らく隊列の最後尾につくのでしょう。...』


「おおぉぉ、すまんの。余の被り物探して来てくれたか?。アンドロイドには、悪き印象しか無かったが、赤碧軍の者は別じゃな。」


「おぉ、お前たちは、そのようなこともできるのか...。」


「凄い力でおじゃるな?。どのようにそなた1人で、この大きな竜車を起こした?。」


「良く、気がつくぞぇ。わらわの召使いよりもじゃ。何たること。」


「これ、おまえ達。兵隊さん達はお仕事中じゃ、ワガママを言うでない。」


『...ご、ご覧ください!。つ、ついに、赤碧帝の18使徒が、18使徒が入場します!...』

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