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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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赤碧の帝王6

リバベリアから続々と、そして、整然と、紅色と碧色の分厚い津波が真っ白なエンダル石の大地に流れ出る。


赤碧軍だ。


神帝の道を流れる、赤と青の隊列は、メルエン•ラ•カーまで延々と続く。


リバベリアの巨大なゲートから、絶え間なく噴き出して来る。


リバベリアは、かつての、スカル•ヤク•マー デルナーハ•ザンジバルによって建築が始められた。


東方18州の首都 テーバイで。


デルナーハは、エルマーよりも古いスカルヤクマーだ。


神帝カーの祖父にあたる神帝マーによって爵位を与えられた。


デルナーハは、マーの時代に、永年、脅威であった、東方23国を制圧し、初代スカル•ヤク•マーとなった。


飛行戦艦の技術に長け、有史以来、空の覇者であった東方23国を滅ぼした。


デルナーハは、マーがそらに帰り、神帝カーが即位する前の喪期に、神帝マーの記念碑として、世界最大の建造物リバベリアの建築を開始した。


10年でそれはカーの第一神殿であるメルエン•ラ•カーを上回る大きさになった。


カーは激怒したが、アマル統治に不可欠な、祖父達の神話を護るため、簡単には手出しが出来ない。


そして、祖父の威光を傘に、神である自分にも意見し、益々傍若無人に振る舞うデルナーハを、カーは苦々しく思っていた。


ザンジバルのアマル光軍は、リバベリア建築のため、年々、軍事費を削減し、アマル5軍の中で最も規模が小さくなって行った。


東方の強豪を倒した今、アマル光軍には、国外に敵はない。


また、銀帝軍、白帝軍が拮抗している限り、そして、アマル大帝国の統治に歴代神帝の威光が不可欠な限り、国内にも敵はいない。


カーは光軍の戦力が弱まった頃合いを見て、デルナーハ•ザンジバルに変わり、新たなスカル•ヤク•マーとして エルマー•ザフィーラを筆頭にすげ替えた。


デルナーハは、抵抗することも無くこれを受け入れた。


これは、デルナーハにとって寧ろ好都合だった。


ザンジバルの光軍が、リバベリアのために、軍事力を急激に落としたことで、神帝カーの危機感は一時的に薄れた。


リバベリアの建築は、その後50年続き、ますます巨大に、豪華になっていった。そして、外観の変わらないそれの建築は、いつまでも終わらなかった。


ある日、赤碧は、カーにリバベリアが邀撃航空基地だと伝えた。


カーは、取り合わなかった。


それから5年。神帝マーの還宙祭の日、ザンジバルの式典での演説と同時に、リバベリアは空に浮き上がった。


世界中は震撼した。


やはり、世界最大の建築物とされていたそれは、神帝マーの記念碑という名目を隠れ蓑に密かに建造されていた、最大の邀撃航空基地だったのだ。


そして、リバベリアは、ほぼ完成を迎えていた。


その後、デルナーハ•ザンジバルは、神帝カーに対し、神帝マーの記念碑建造の費用として、神帝直属領の一部 アルマダイ鉱脈の豊富なヌビス•ア•ナイルの割譲を要求した。


カーは激怒した。


カーは、ザフィーラと、ノアロークに、ザンジバル討伐命令を出した。


しかし、ザフィーラもノアロークも動かなかった。


リバベリアが存在する今、もはや動くことができなかった。


神帝血統において、最大最強と言われた、カーにとってもリバベリア擁するアマル光軍は、もはやどうすることもできないほど強大だ。


カーの帝国は、歴代最大最強でありながら、滅亡の危機に瀕した。


ところが、誰も予想しなかったことに、赤碧は、唯一、神帝カーの討伐命令を受け、アマル東部への侵攻を開始した。


そして、赤碧は、光軍の領土ベルシンベルにおいて、ザンジバルを破った。


弱小なはずの赤碧軍が、アマル光軍に、ほぼ無傷で勝利したこと。


これは、リバベリアの存在以上に世界中を震撼させた。


赤碧は、リバベリアがまだ戦闘には使用できないことを情報戦で見抜いていた。


ザンジバルは、リバベリア完成のためのアルマダイ鉱脈、資金が不足し、未だ未完成のリバベリアを見せて、交渉に望まざるを得なかった。


そして、赤碧空軍が、最新鋭の航空艦隊を擁していたことが理由として大きい。


赤碧軍 ヒステリア、パイロメニア、スキゾフェニアの三隻は、戦艦と航空母艦を兼ねた新しい概念の戦闘艦だ。更に、射程の長い迫撃粒子砲を備えている。


長距離砲を持たないザンジバル軍の航空戦闘艦は、ベルシンベル戦の序盤で、赤碧軍最新鋭艦の長距離砲の格好の標的となり壊滅した。


ベルシンベル空戦以降、空の主役は、航空母艦ではなく、戦艦、航空母艦、長距離砲撃艦の機能を兼ねるハイブリッド艦船が主役になる。


このベルシンベルの闘いに勝利したことにより、赤碧は、全世界にその力を見せつけた。


そして、赤碧は、光軍の領土、東方21州、豊富なアルマダイ鉱脈、アマル光軍の残存戦力、リバベリアを完全に掌握した。


つまり、アルマ東部、アルマ南部を統べる、アマル帝国最大の宰国となったのだ。


この時から、赤碧アブドーラは、自らを赤碧帝と名乗るようになる。

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