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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ララ14

サビオちゃん。


ずっとうなされている。


熱もないし、身体のどこに外傷も病気も見当たらない。


シンジュールのような寄生虫症でもない。


うなされて目を覚まさない。


最後にクロカゲが出たとされるのは今から1300年前。


巨大国家デューンの遥か西。


アクロバロンという国。


人々は、みなただの神話だと思い込まされているけど、実は、映像も記録もしっかりと残っている。


とてもおぞましい。


その時もイーモーランは現れなかった。


人々は食われ、街や自然は腐敗した。


人間の作る兵器は全く効かなかった。


原子力やプラズマ兵器、ミサイル、レーザー、機関砲、ガス...。


当時の医療記録には、生き残った人々も、何の病気も脳波の異常も無いまま、点滴を受け続け、老衰で死ぬまで目を覚まさなかったと書かれている。


でも、この子はそうはならない。


きっと。


私は見てしまった。


あの美少女の正体を。


ララの本当の姿を。


アンティカの出現では遅かった。


ララは、恐らくどこかの国の軍事兵曹。


しかも、強力な炉を持っている。


でも、炉の形式が今まで見たものと違う。


サビオちゃんは、軍事兵曹ララの炉の力で、得体の知れないクロカゲの影響から護られた。


巨大化したララは、クロカゲよりも大きく強かった。


辛うじて女の面影を残していた。


でも、巨大な兵曹になったララは、その人格を残してはいなかった。


アンティカに負けず劣らず残虐で凶暴だった。


逃げ惑うクロカゲを噛み砕き、引き裂いた。


そして、身体に纏う光で焼き尽くした。


ララに掴まれたクロカゲは、激しい光に焼かれ沸騰し、蒸発した。


粉々に千切られ弾き飛ばされた。


ララは、崖の上から怯えて見ている私に気づいた。


私はララに殺されるかもしれない。


でも、私はララに殺されるならそれでも構わない。


ララは、蛮族に操られる軍事兵曹である前にララだから。


ララは、蛮族の中にあって唯一、支配と闘った。


支配から逃れようとした。


私の中には蛮族の兵曹に対する憎しみよりも前に、ララへの愛が芽生えてしまった。


ララへの愛が育ってしまった。


もちろん、私は女になど興味は無い。


性的な魅力もこれっぽっちも感じない。


でも、ララを愛してしまった。


自分の子のように父親として。


あら?。母親かしら。笑


クロカゲは、この星の生き物ではないという。


いや、私に言わせれば、この星の生き物だって誰かに作られたもの。


クロカゲや、戦闘神、悪神...。


この星の科学では解明できないだけで、ある種の技術や知識を元に作られている。


そもそも、この宇宙の質量の7%の物質しか、私たちは知らないじゃない?。


この古からの言い伝えの生き物も、全てはこの星を作った神よりも、高度な技術を持った生命体による技術によって生まれた。


私は、今のハイドゥクに挑み敗れて死んだ当時のアンティカの解剖に立ち会った。


シーアナンジンの解剖にも。


あれは高度な機械だ。


私達人間の身体と同じように。


その証拠に、私達だってアンドロイドや兵曹、クローン人間を作るではないか。


ハイドラの人々は、原始的でも自らを革新し続ける。そしてその環境や自然との調和はするが、支配されることはない。


アトラ人や、アマル人の文明は高度だ。


だけど、自然ばかりか誰かの作ったルールに支配され、従うことしか知らない。


そして、侵略や殺戮を繰り返す。


自分達の意思ではない何かに操られ。


人間家畜は寧ろあいつらの方だ。


あの劣等民族達の。


あ!?体温が上がる...


見て!?


体温が...35度丁度しかなかった体温が...。


心拍数が上がってる。


凄い汗。


あっ!。


動いた。


見て!。


目が動いたわ。


起きようとしている。


この子はもう大丈夫。


良かった。


本当に...。


----------------------------------


エルタンカーは高度200m辺りに静止している。


エルタンカーから下がった4本のワイヤーはコンテナの一つを巻き上げられないでいる。


「ベッカムさんから連絡だよ〜。ルビキョウさーん。」


「あ、あぁ。はいはい。ルビキョウです。はいはい。すいませんね。」


『...ちょっとー、これ重すぎてモーターで巻き上がんないよー!。何が入ってんの!。全く。1000トン以上あるじゃない。 。...』


「え!?。そんなに!?。ですか...。」


『...一旦高度下げるよ!?。ラチあかねぇ。 。...』


「いやいや!。それはダメです!。民家が吹き飛んじゃいますよ!。」


『...じゃ、どうすんの!怒。 ...』


「そのまま浮上して...。」


『...ばーか言ってんじゃないよーー!。それこそ危ないでしょうがー!。上空で揺れてワイヤー切れたらどうすんのー!。それこそ民家壊れるでしょーーが!。人死ぬでしょーーがぁ! ...』


「そうですか...。どうしましようかね...。困ったな..。」


『...どっか着陸先探して!。セメティームハイドラの中に。そんでそこまで運んで。陸用車で 。...』


「着陸先ですか...。着陸先ねぇ...。えーっと。」


『...ちょっとー、高校のグランドとか、競技場とか、手配できるでしょーーが! 。...』


「す、砂埃が...。」


『...土じゃない所あるでしょう!。芝生とかコンクリとか! 。...』


「あそっか...でも芝生痛めると...。」


『...その辺は上手くやっから!。手配だけ頼むよ!。全く 。...』


「はい。分かりました。...ちぇっ。偉そうに..。オルセー!。市長さんの番号何番だっけ?。」


『...えっ?。うるせぇ? 。...』


「え?。市長!?。ちょっと待ってください。」


「パンタ!。コンクリか芝の校庭探して!。」


「人工芝なら、セメティーム第3中の校庭が近いじゃん。ルビキョウさん。デカイし。防災訓練の時に良く母艦が着陸してる。」


「あれ、何か校庭に敷かなかったっけ?。」


「まんま、そのまんま。どっちにしても、祭りのたんびに張り替えるでしょあそこ。」


「ルビキョウさーん。市長繋がりましたよー。課長に任せるってー!。」


『...何やってんのーー!。もう。すぐ近くに張り替え芝のでっけぇグラウンド見えてるよーっ! 。...』


「うっさいオヤジだなぁったく..。」


『...あー?。何か言ったかぁ? 。...』


「い、いや、何も。」


『...じゃ着陸するぞーぃ 。...』


「待って待って!。アナウンスと警報音鳴らすから!。オルセー!。第3中!。警報!。アナウンスして!。エルタンカーが着陸するって!。オルセー!。オルセー!。」


『...何!?。うるせーって! 。...』


「オルセーって言ったんだよ!。このタコオヤジ!。」


「あぁ、言っちゃった...。」


『...んだとぉーー!。誰がイケメンだっ!。ふざけんなっ!。照れるじゃねぇかっ! 。...』


「んなこと、言ってねぇよ...。」


パンタは、陸用車に頭を突っ込み、何やらまさぐっていた。


〈... ピンポンパンポーン 第3中に誰かいたらおっきいタンカーが着陸するんで注意してくださいーーっ 。ピンポンパンポーン ...〉


...ウーーーーーーーーーーーーーーーー...


...ウーーーーーーーーーー...


(なんじゃ、あのアナウンスは...)


パンタとオルセーは、車の天板に付いている幅の広い脚立を外し、脚立をコンテナに立て掛けた。


「キャリアじゃなかったのか...。」


オルセーは脚立に付いているボタンを押した。


...ガチャン...ウィーン...


...ガチャン...ウィーン...


...ガチャン...ウィーン...


脚立は自動でどこまでも伸びていく。


「随分と伸びるなぁ...。」


野次馬の誰がが見上げながら言う。


「高いところの仕事多いですからね。」


ルビキョウが答える。


「じゃ、荷物開けるよーー!。」


パンタは身体に似合わずすばしこく脚立を登る。


横向きになったコンテナの蓋の金具にタラントスのツタを縛った。


黒山の人だかりが、広場の周りにできている。


「おーいっ!。前にいる人ーー!。もう少し下がってーー。」


パンタは言う。


オルセーは、素早くタラントスのツタの端を陸用車にくくりつけた。


「下がれ下がれ!。危ない!。」


オルセーが野次馬に言う。


オルセーに押され、野次馬は下がった。


「いっせーのせっ!。」


...バウーーーーーーーーーーーーーーン...


...キュル...キュル...キュル...キュル...


陸用車のタイヤが鳴る。


「もういっちょ!。」


「いっせーのせっ!。」


...バウーーーーーーーーーーーーーーン...


...キュル...キュル...キュル...キュル...


...ブウーーーーーーーーン...


...ドターン...


コンテナの金属製の蓋が空く。


というより、地面に倒れた。


土煙が舞い上がる。


「うわっ。ペッペッ。」


「うわぁぁぁ。す、す、すげぇ数だな...。これ...。どうしよう。」


オルセーが言う。


「どれ、どれ、あーあー!。こぉりや、どうやってこの数の荷物詰めたんだ!?。」


...ビュウゥーーーーーーーー...


突風が吹き荒れる。


...ドゥン...ドゥン...ドゥン...


...ドゥン...ドゥン...ドゥン...


野次馬からどよめきが起きる。


セメティーム第3中学校の校庭に大型エルタンカーが、降下し始める。


ここからは500m離れている。


「で、でかい...。汗」


「あれ、ユナタイで見たぜ!。ユナタイにいつも来る一番デカイタンカーじゃねぇか?。」


「ほんとだ!第五埠頭にいつも止まってるやつだ!。あーんなデケェの呼んだんだ。笑」


「あれ、ハノイから来てんだぜ!?。ハノイの一番デッケェタンカーだよ!。有名なやつ!。」


「えぇっ!。アークなんちゃらってやつか!?。ま、まさかっ!?。」


『...はいー。着陸するよーーっ!。伏せてねーー 。...』


「おぉおぉ!あかんあかん!。」


〈... ピンポンパンポーン はいー。みんな伏せてーーっ!。 ピンポンパンポーン ...〉


...ドゥン...ドゥン...ドゥン...


...ドゥン...ドゥン...ドゥン...


...ビュウゥーーーーーーーーーーーーーー...


...ビュウゥーーーーーーーー...


...ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ...


暴風が吹き荒れる。


「うわー!。」


「ぎゃあ!。」


「ここもかよ!。」


多くの野次馬が風の勢いで転んだ。


「おいっ!。ぽっちゃりっ!。そんなアナウンスあるかっ!。」


「どこに風が吹くのか言えよっ!。」


〈... ピンポンパンポーン うるせーまにあわなかったんだよ!。文句言うな野次馬がっ!。 ピンポンパンポーン ...〉


『...アーククルーゼ着陸完了! 。...』


〈... ピンポンパンポーン そんな洒落た名前だったのか...。タコオヤジには似合わないけど。 ピンポンパンポーン ...〉


「おいっ!。ぽっちゃりっ!。うるせーぞっ。!マイクロフォン切れっ!。」


〈... ピンポンパンポーン...なんだ?。マイクロフォンって?。 ピンポンパンポーン ...〉


「マイクだよっ。マイクっ!。やかましくてかなわねぇ!。」


〈... ピンポンパンポーン ぁ?マイクのことかい。なら、そう言えよ。 ピンポンパンポーン ...〉


「ふざけんな、このタコ!。」


〈... ピンポンパンポーン うるせー、タコはテメェだろ!このタコオヤジがっ! 。 ピンポンパンポーン ...〉


「...だーれがっ、タコオヤジだぁっ!。テメェらっ!...。」


ルビキョウの通信機から、ベッカムの大声が漏れる。


〈... ピンポンパンポーン う、うわっ、ヤベェ!。ピンポンパンポーン ...〉


「...そんなに言われたら照れるじゃねぇかっれ照...。」


「えっ!?。な、なんで?。」


「おい!。官吏の人達っ!。ハノイの伝説の船乗りの名前がタコ•アルキメデスって言うんだぜ!。ハノイの方言では、タコって超絶イケメンの意味だぜ!。覚えとけっ!。俺はハノイ出身だっ!。」


野次馬はどっと湧いた。


「おぉぉ...これは...。この人数では1日でも終わらない。」


「ただ、バスが入れないんですよね...。」


「バス何かいいじゃねぇか!。置かせてやれよ!。」


「っていうか、手伝えばいいじゃない!。」


「そうだそうだ!。みんなも野次馬なだけじゃヒドゥイーンとして恥ずかしいぜ!。」


「えぇっと、ざっと200人はいるわね!。みんなで運んじゃいましょうよ!?。」


「おぉっ、姉さんっ!。かっこいい!。やろうやろう!。親切の押し売りだっ!。」


「何だそりゃ?。」


「そぉーりゃあーー!。」


200人近い住民がコンテナに雪崩れ込んで行く。


「ううわっ、ちょちょっと...。」


オルセーは、動揺している。


「キドーさんには、いつも化け物や獣から護ってくれてる。おおーいっ!。みんなーー!。ご恩返しだっ!。タンジアのキドー一族に恩返しだっ!。」


「おら、おかん呼んでくら!。」


「俺も、家族呼んでくる。」


「ルビキョウさんっ!何ぼーっとしてんの!指揮とらなきゃ!。」


オルセーが言った。


人数は千人以上に膨れ上がり、次々とコンテナの荷物は運びだされる。


セメティーム第3中へのバス通りに運ばれていく。


静かな駅前の広場が、祭りのような活気になった。


〈... ピンポンパンポーン 皆さんありがとうございます。二個目のコンテナに突入しますっ。ピンポンパンポーン ...〉


「うっせーぞ!。ぽっちゃりっ!。真面目にやれっ!。」


「そうだ、そうだーーっ!。ふざけてんのはお前だけだぞーっ」

〈... ピンポンパンポーン 真面目にやってるよっ!失礼なっ!。電源入れると鳴っちまうんだよっこのピンポンはっ!。 ピンポンパンポーン ...〉


荷物はどんどん運ばれて行く。

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