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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ララ12


「キヨタさん。オヤジ殿。サビオを頼む。ハルよ。皆を護ってくれ。ワシがララを必ず連れて帰る。」


トラフィンはキヨタにサビオを抱き渡した。


スサもカルラもサビオを覗き込む。


ネフィもメルテも。


「頼むぞ。トラ。ララは、ワシらの大切な大切な家族じゃ。」


トラフィンは、スサを見て言う。


「親父殿。任せておけ。必ず連れて帰る。ララには夜光花の花畑でも見せてくるわい。はっはっはっ!。」


そう言うとトラフィンは、ララを追い外環道に出た。


ネフィも、メルテもララの去った外環道から目を離さない。


メルテはカルラに抱きついて泣いた。


静かに。


ネフィはルビキョウに促されても動こうとはしない。


「あなた。ララに今日のことは、聞くのをやめましょう。」


「ララが語りたくなければ、聞くまい。過去も、名前も...。何もかも。」


「メルテが言うように、ララが何者でもララはララ。ララはワシらの大切な家族じゃ。」


「そうですよ。ララはララですもの。」


「母様。ララ姐様は帰ってくる?。」


「帰って来てくれますよ。きっと。」


「本当に?。」


「えぇ。ララが私達を捨てるものですか。」


「トラを信じて、ワシらは待つとしよう。」


「クロカゲの毒が少し進行しているみたい。寝言を言わなくなった。一旦診療所に寄って頂戴。あの大きな機械がいるのよ。クロカゲの送り込んだ波長を解析して、素粒子に書かれているプログラムを書き換えないといけない。」


「分かった。まず、キヨタ殿の診療所に寄るとしよう。カルラ。ワシが行くか?。母さんが行くか?。」


「私が行きたい。でも、何かが必要な時に、私では...。」


「そうね。大剛様、来て頂戴。」


「どうか、どうか、サビオをお願いします。」


「そうした方が良いですね。子供達にもどちらか着いていて頂いた方が。必要なら私も診療所に着いて行きますよ。」


「母様...私ここで待っていても良い?。」


「僕も...。」


「ダメです!。聞いていなかったんですか?。」


「でも...。」


「ララが、こんな所であなた達に待っていて欲しいと思うの?。」


「首を横に振る。でも、その後ニコってして、ギュッてしてくれる。」


「ダメじゃ!。気持ちは分かるが。」


「それよりも、お家を温かくして、みんなでララちゃんのために美味しいご飯を作って待ってましょう。みんなが元気で楽しい方がララちゃんも嬉しいわ。きっと。また、お歌も歌ってくれてるかも。」


「そう。そうだよね?。」


ネフィが言う。


「分かった...。」


メルテも頷いた。


オルセーが、ルビキョウに耳打ちをする。


「大剛様。」


「忘れていましたが、実は荷物がございまして。」


「そうですね。預かって頂いているのでしたね...。」


カルラは言った。


「実は、トラフィン殿のお持ちになっていた荷物が、大き過ぎてどうにもならず、困っております。一門の方どなたかで、動かせる方は、いらっしゃいませんか?。」


「ん。それではワシが...。皆はしばらく祈日参りで故郷に帰っておるので。」


「登山列車の停車場の前の広場に置いてあるのですが、意外と重く、クレーンでは持ち上がらないのです。」


「ふむ。トラフィンは何でそんな荷物を...。」


「何でも、リューイの一件で、漁師達にいろいろ礼の品を貰ったらしいのです。アンティカは断り切れなかったと。米やら、干物やら、何でも祈り日が終わったら、大母様が大変になられるとかで...一回も行かなくて済むようにと。」


「それにしても、クレーンで持ち上がらない量とは...。」


「えぇ。いつもは大勢で10回は市場に行くのですよ。」


ルビキョウの乗っていたのと同じ形の陸用車から色白のぽっちゃりの男が、降りて来る。


「オルセー。やっぱ動かない。あれ。」


「大剛様。この男も一緒に働いているパンタです。」


「パンタ?。」


メルテは言った。


「メルテ!パンタさんでしょ?。」


「ルビキョウさん。クレーンじゃ無理だから大型のフライヤーで持ち上げようかと思うんだけど。」


「クレーンで上がらないようじゃ、フライヤーじゃもっと無理だろう。」


「やっぱ無理かな?。半分の大きさだったら行けると思うんだけど。」


「いやぁ、どうかな。わざわざフーフーから持って来なきゃならない。」


「じゃ、どうする?しばらくそのままにしとく?。」


「いやぁ、生物なまものもあるし、獣達が入って来ても困るからねぇ。」


「百人組に登板車を借りますかな...。」


「あぁそうですね。それなら何とか。」


オルセーが言う。


「ただ、誰が荷台に載せるかっていう問題が...。」


と、パンタ。


「ううん。そうだなぁ...。」


...バタバタバタバタ...


腹の出たオヤジが走って来る。


頭に捻った手ぬぐいを巻いている。


魚屋か八百屋のオヤジと言った風態だ。


「おい!。ちょっとそこの官吏!。あっちの駅前広場のっ!。何とかしろ!循環バス入れねぇじゃねーか!。」


「あぁ...。すいませんね。あれはアンティカのお荷物なので...。」


「げっ。アンティカかい?。あんたテレビ見てる?。タンジア中大騒ぎだぜ?。アンティカがクロカゲみな殺しにしたって。」


「おいおい。みな殺しなんて人聞きの悪い言い方すんなよ。こちらの皆さんアンティカのご親族だぜ?。」


パンタが言う。


「えっ!?。そうなのかい?。なるほど。タンジア中のみんな大騒ぎだぜ?。リューイは討取るわ、クロカゲはみな殺しにするわ。とんでもない勇者だぜ。笑。」


男は腹を叩き大笑いをしている。


前歯が無い。


剃り上げた頭が丁度おにぎりのようだ。


「おい!。」


「あ、いや良い意味でな。うん。良い意味だ。ところで...何なんだいあの荷物。」


「アンティカが、親孝行のために買いだめした、門下生の食材やら何やらが、クロカゲの騒動で置き去りになって困ってるんだよ。」


「あぁ、そんなことかい。」


男はがっかりしたような素振りだ。


「おいおい、他人事だと思って。」


「いやいや。俺が人肌脱いでやるぜ。」


オヤジは腹を叩きながら言う。


「あんた、デカイクレーンでも持ってるのかい?。」


「クレーン?何だそんなチンケなものぁ持ってねぇよ。エルタンカーさ。」


「エルタンカーですか!。それは都合が良い!。」


ルビキョウは急に話に加わった。


「あれ、何だこのヒゲのおっさん。」


「おっさんとは何だ。俺の上司だ。」


「へぇー。この人が...。俺のタンカー下のセンヌジーナンに置いてっから、ちょっと待っててくれな。あぁ、燃料代は持ってくれよ。」


「おいおい、燃料代って...しっかりしてるなぁー。大した量じゃねぇのに。笑。」


男は走り出した。


「おーい、荷物のデカさ、確認しなくて良いのかーーー!?。」


オルセーは行った。男は親指を立てた。


「いくらエルタンカーでも、半端な出力のじゃ、持ち上がらないぜ。あれ。せっかちだなぁ。」


---------------------------------


「こ、これは...。」


スサは駅前の公園に佇む、巨大な荷物にたじろぐ。


リューイとほぼ同じ大きさ。


「何という大きさ...。」


荷物はコンテナに詰められ、乾燥させ、水で戻したタラントスを拠った強靭なロープで縛られている。


「よくもまあ、こんなデカい荷物を持って来たぜ。改めて見たら、やっぱり普通のエルタンカーじゃ無理だわ。こりゃ。」


パンタは言う。


「で、さっきのオヤジ、本当にエルタンカー持って来んのかな?。随分時間かかってるけど。」


オルセーが言う。


「一体どこまで...。あれ?。名前も聞かなかった!。本当に来るのか?。」


「あのおっさん、何かエルタンカーなんか操縦できる感じじゃ無かったぜ。そういえば。」


...ドドツドドッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


エンジン音が近づいて来る。


陸車が広場のコーナーから入ってきた。


「あれ?。登板車じゃないか...あのオヤジ...。」


「はははは!。とんだ食わせ者だぜ!。」


「これじゃ無理だろ?。」


パンタは苦笑いをしている。


登板車は、外環道を登るためだけに作られた、特殊な車両だ。


スピードは100kmも出ない。


普通の陸用車よりやや大きい。


良く荷物の運搬に使用し、連結器で数十台連結して走ることが多い。


その黄色い塗装の登板車は、平地での移動では音もうるさくぎこちないが、外環道に入ると路面と特殊な形をした車輪が馴染み、滑らかにゆったりと進む。


フロントガラスの横のフックが外れ、カーキ色のホロを開く。


ルビキョウだ。


「誰が食わせ者だ?。失礼な。スサさん。いや大剛様。」


「いや、スサで構わんよ。」


「これで、一足先に、皆さんをお連れしますよ。サビオ君が心配です。」


「あぁ、良かった。これでこの荷物持ってく気かと思った。」


オルセーが言った。


「そんなはずはないだろ。怒」


「申し訳ないですな。ルビキョウ殿。」


「タンジア1のお医者様にもう診て貰えているのは大きいですね。私も娘のおたふく風邪の時は本当に良くして頂いて。」


...ゴーーーーーーーーーーーーーーー...


...ゴーーーーーーーーーーーーーーー...


ガラスが鳴り小石が飛び地面が揺れる。


...ドゥン...ドゥン...ドドゥン...ドゥン...ドゥン...


...ドゥン...ドゥン...ドドゥン...ドゥン...ドゥン...


地面が大きく振動している。


アフロダイ エンジンの音だ。しかも大きい。


「おっと!。」


「な、なんだ?!。」


「あ!。あれを見ろ!。」


オルセーが南の空を指差す。


巨大なエルタンカーがゆっくりと広場の上空に迫って来る。


「な、何じゃありゃ!。」


「ほ、ほ、本当に持ってきた...。あれ、大型タンカーじゃねぇかっ...。」


「ほ、ほぇ〜〜!。で、でっけぇーー!。」


エルタンカーは、広場上空に差し掛かりホバリングを始める。


爆音が響き爆風が吹き荒れた。


...バボボボ...バボボホ...バボボホ...


...バボボボ...バボボホ...バボボホ...


...バボボボ...バボボホ...バボボホ...


間近に聞くエンジン音はまるで爆発音だ。


「お、お、おいっ!。高度上げて貰えっ!。これじゃ街が壊れるっ!。」


「つ、通信機。と、あっ!。連絡先聞いてない!。」


「あっ!。そうだった!。」


「こんなバカデカイの持って来るとは思わなかった!。」


「これ、本当にあのおっさんか!?。これ空母クラスのデカさだぞ!。これ、超級操舵手の資格いるぞ!。」


「超級ーーっ?。おのおっさんが?。どう見ても近所の魚屋のオヤジだったろ!。」


爆音と爆風の中、パンタ達はお互い怒鳴って会話をしている。


大型エルタンカーは、ゆっくりと自ら高度を上げ始めた。それに伴い爆風と爆音は少しずつ和らいで行く。

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