ララ6
...ピーーィーー...
スサが指笛を吹いた。
セレッタ(27番目の)ジーナンと、セクトル(25番目)ジーナンの間の山を、大きな綿毛に繋がれたゴンドラが浮かんでいる。
コヌタと言われる、シントワート(綿毛虫)を繋いだ空の乗り物だ。
シントワート(綿毛虫)は、飛行虫ギリムなどと同じく、揚力を操る羽根や綿毛を持っている。
綿毛やこの羽根の、飛行微生物ビルムスの配置や構造は、エルカーから巨大航空要塞に至る、全ての航空機材の反重力板の原型となっている。
「ん。来ぬな...。」
「おかしいですね...。こんなに飛んでいるのに...。」
...ピーーィーー...
...ピーーィーー...
シントワート(綿毛虫)は、球状の虫で、全身に反重力羽毛が生えている。
ギリムのような推進力が無いため、ゆっくりとしか移動はできない。
しかし、羽根の総面積が大きいため揚力はとても強い。
アミ族は、太古よりシントワート(綿毛虫)を使い山の間を行き来していた。
外環道の無い太古から。
コヌタは、一つのゴンドラにそれぞれ4匹のシントワート(綿毛虫)を繋いでいる。
「ダメじゃなこれは。チコの奴に苦情を言わねばならん。急ぐ時にコヌタに乗れぬのでは意味がない。カルラや。通信機を持ってきておくれ。」
「困りましたね。通信機どこだったかしら...。」
カルラは、城に走って行った。
...ブォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...バタバタバタバタバタバタバタ...
飛行艇がセクトルの上空を旋回してゆっくり降りて来る。
前掛け姿のカルラが小走りで戻って来た。
手に通信機を持って。
「あ!。フライヤーだ!。」
メルテが指を指す。
推進力を油を燃やして得る、年代物の飛行艇...。
カルラはフライヤーを眺めている。
「おや。なぜ飛行艇が...。」
そう言いながらスサに通信機を渡した。
スサは目を細め手の平大の通信機のパネルを睨んでいる。
「父様!。チコさんみたい!。」
ネフィが言う。
....
...
「ん?。チコ?。どこじゃ。」
スサは上空を見回す。
「フライヤーー!。」
メルテはフライヤーに向かって走り出した。
「メルテ!。あんまり近くな。危ないぞ。」
サビオが追いかけメルテを抱き上げた。
「下ろしてっ!。」
メルテは足をバタバタさせている。
こうなるとメルテは効かない。
スサもカルラも大慌てで走り出した。
「メルテ。乗り物は危ないのよ!。前もそうだったでしょ。」
メルテは益々暴れる。
何とか降りようと必死でもがく。
サビオも必死だ。
ララが駆け寄った。
ララがザビオの肩に手を置き、目配せをする。
そして、メルテの前にしゃがみ、両手を広げてメルテを呼んだ。
サビオはほっとして、メルテを下ろした。
メルテがララに飛びつく。
ララがメルテの頭を撫でながら、顔を見ている。
何かを伝えたいのだろう。
そしてメルテの手を引き、フライヤーの方へ歩いて行った。
「二人とも気をつけなさい!。」
スサが叫ぶ。
古い飛行艇。
男が降りて来る。
フライヤーのウイングをバタンと下ろし、ヘルメットを脱ぎながら。
「すいません。大剛様...。あれっ!?。お嬢さん。坊や。危ないよっ!。」
男はララとメルテに言った。
ララは飛行艇から離れて一回しゃがみ、メルテの頭を撫でながら、フライヤーのジェット射出口を指差した。
ララは微笑んでメルテを見てる。
メルテは頷いた。
ララはメルテを抱っこして立ち上がった。
そして、抱っこしながらメルテの言うようにフライヤーを見せてやった。
スサもカルラも安心したようだ。
思い出したように、スサが言う。
歩いて来る男に。
...ザッ...ザッ...ザッ..,
「おーい!。チコ!。コヌタはどうしたんじゃ。コヌタを呼んだのじゃ。何でフライヤーで来た...?。」
「申し訳ない。シントワート(綿毛虫)がどうしても言うことを聞かないんです。」
「どういうことじゃ?。」
「どうしてもセクトルに近寄りたがらないんです。」
「いつも来てくれておるではないか...。」
「どうしたのでしょう。時折、セクトルにだけ行かないんです。あの山に何かいるのでしょうか...。」
「山に?。何がおると言うのじゃ?。バングリズリーやクローチをシントワートが恐れるなどと聞いたことはないが?。」
「確かに...。そうですよねぇ。さっあれで下までお送りします。お乗りください。」
いつの間にかサビオとネフィも立っている。
メルテを抱っこしてフライヤーの近くに立っているララの両側に。
「本物の兄弟ですね。」
「あぁ。あの子らもララもみんな嬉しそうじゃ。」
「ララは本当に良いお姉さんね。」
「無理をしとらんと良いが。」
「良く見ていてあげましょう。」
ネフィはララの着物の袖を掴んだ。
カルラとスサは顔を見合わせて笑った。
「...あ...。それでは、道案内がいりますね?。ちょっと片付けて来ますわ。」
カルラは思い出したようにいった。
「確かに...。私はゴンドラに乗りませんからな。」
チコは頭をかいた。
カルラは、城へ戻ろうとした。
「あ、いやカルラ、子供達に行かせよう。」
「あら?。笑。そうですか?。」
「サビオ。ネフィ。ついて行ってあげなさい。」
スサは言った。
「え?。いいの...。」
「僕は?。」
ララはメルテを下ろした。
メルテはスサの方へ走って来た。
「僕もララちゃんと行って良い?。」
「ダメじゃ。フライヤーのエンジンに突進して行くような奴は。それに、メルテはいつもララにワガママばかり言うではないか。今日はララががのんびりする日じゃ。ダメじゃ!。...さ、ララ、乗りなさい。」
メルテは、真っ赤になって頰っぺたを膨らせていた。
「何じゃ。シントワートみたいじゃ。」
カルラは、スサを突っついた。
スサはしまったという顔をした。
メルテは、全力で城へ走って行った。
「あなた...気をつけてくださいよ。また、ご飯を食べないって言い出しますよ...あの子。」
「いいんじゃ。放っておきなさい。信用してもらえるよう普段から心がけぬのが悪い。意地悪で言っておるのではない。」
「それは、そうですけど...。まだメルテは幼いですから。」
「いや、歳は関係ない。」
「ほほほ。また、長期戦になりますね。また、あなたの方が参るんじゃないですか?笑。」
スサはカルラの話を遮るように叫んだ。
「サビオ。ネフィ。ユナタイまで送るだけじゃぞ?。道案内したらちゃんと戻ってくるのじゃぞ。」
「なーんだぁ...つまんねぇ。」
ララは微笑みながら、サビオとネフィの肩を優しく抱いていた。
「サビオ。修行が嫌なら、辞めても良いのじゃぞ。漁師でも、商人でも、先生でも、医者でも。好きな者になれと言うてるではないか。ネフィ。おまえもじゃ。ワシが頼んどる訳ではない。」
「何で私もなのよ?。」
「辞めないよ!。兄様みたいに強くなりたいんだ!。」
「なら、もう少し身を入れてやらんと 。中途半端にやるなら辞めてもらうぞ?。」
ララはサビオの背中をそっと押した。
サビオは、ララの方を向き頷いた。
「皆がおまえは、トラフィン兄様みたいになれる訳がないって...絶対に、おまえ達みたいな小さな痩せっぽち無理だって。村の友達も。ここのみんなも。」
ネフィもうつむいた。
ララはサビオとネフィの頭をそっと抱きしめてやった。
「そうか、そうじゃったか。ん。そうじゃったのか...。」
二人はララに抱きしめられてうなだれた。
「...うわっ。やっちゃったーー...。」
遠くでキヨタの声が聞こえる。
鍋を持ってこけている。
...。
...。
「何をやっとるのじゃ。全く。」
少しの沈黙の後スサは口を開いた。
「おまえ達は、トラフィンが昔、村の皆に何と呼ばれていたか知っておるか?。」
「アンティカ?。」
「ハイドゥクの後継者? 。」
「笑。いや、それは今の話じゃ。」
「何て呼ばれてたの?。」
「弱虫トラフィン。でくのぼう。泣き虫トラフィンじゃ。」
「え?。酷い」
「兄様が?。」
「そうじゃ。優しい子たちでな、いつも馬鹿にされていじめられておった。」
「サンザ兄様がいらっしゃったんだよね。」
「サンザ兄様...。トラフィン兄様の双子の弟。」
「そうじゃ。サビオよ。ネフィよ。おまえ達が初めて見た時のトラフィンと、今のトラフィンが同じに見えるか?。」
「兄様は凄くお強くなられた...。あ!。」
「そうじゃ。トラフィンが特別であるとすれば、熱心でひたむきなこと。そして、アンティカにまで上り詰めたのじゃ。おまえ達も自分を信じてひたむきに頑張りなさい。トラフィンのように。シーアナンジン(1000年虫)に選ばれる立派な心と身体を作りなさい。」
「はい。」
「うん。帰って来てちゃんとやるよ。」
ララは一緒に話を聞き終えると、チコとスサに頭を下げ、城の方に走って行った。
そして、メルテを連れて戻って来た。
チコは、雰囲気を察して、ゆっくりとフライヤーの方へ歩いて行く。
サビオとネフィも、ララ達から離れ、チコに着いて行った。
ララはスサの前でメルテを抱き上げ、メルテに頭を下げさせ、自分も頭を下げた。
「...ララ。」
ララはまた頭を下げた。スサにお願いをしている。
メルテは、手で涙を拭って下を向いていた。
...バリッ...バリッ...バリ...バリ...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
フライヤーのエンジンが始動する。
反重力板が起動し、辺りの土が舞い上がり始める。
サビオとネフィは、顔を背け腕で顔を覆った。
「メルテを連れて行きたいのね?。ララちゃん。」
「...。」
「あなた。」
カルラはスサに言った。
ララはメルテの頭をなで、背中をさすりメルテを地面に下ろした。
そしてそっと頭を下げさせた。
「お願ーいします!。」
メルテ少しふくれたままでお辞儀をする。
「まぁ、良いじゃろう...。ララをおくったら帰って来なさい。良いな。」
スサはメルテの顔を見ながら言った。
メルテはまだ少しふくれている。
「はい...!。」
直ぐに顔を背け、ララに抱きついた。
「早く!。」
サビオが呼ぶ。
フライヤーのウイングは上がり、透明のハッチが開く。
「土が入っちゃう!。早く!。」
ネフィも叫んだ。
メルテを抱いたララは最初に乗り、続いてネフィが乗り、サビオが乗った。
サビオも、ネフィも、ララも、スサとカルラに手を振る。
メルテもララに手を持たれ振る。
カルラは、子供達に手を振り返した。
..ウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィンウィン...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
重力板の起動音が高まる。
フライヤーは、土を巻き上げゆっくりと浮上し始める。
カルラは白髪の混じった、髪を抑えた。
大切そうに花を手で抑えた。
地上から30m位の高さで、フライヤーは油で動く推進器を噴射した。
フライヤーは、ゆっくりと加速し始める。
「ララは全部受け止める気じゃ。」
「あまり無理をさせないようにしないと。」
「愛の深い子じゃな...。」
「優しい子...。」
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「いつもは、ミマタ大樹の辺りにコヌタを着けて貰っています。」
ネフィが言う。
「あぁ知ってますよ。笑。ミマタ大樹の辺りは、この大きさのフライヤーは入れないんですよ。」
チコは、優しく微笑みながら言う。
メルテは、ララの膝の上で寝ている。
「イーハーボか、ロルロルか、フーフーが近いけど。」
「そんなに、遠くになっちゃうんですか?。」
サビオが言った。
「悪いね。フライヤーは、着陸場じゃないと降りられないからね。魚市場ならイーハーボの方が近いけど?。」
「ロコウの麓に行きたいから、フーフーが良いかな?。」
「ロルロルの方が近いよ?兄様。」
「いや、ロルロルは木や建物があるから、トラフィン兄様が見つけにくいよ。」
「あぁ、アンティカ様をお探しですか。一回ぐるっと回ってから近い場所に下ろしてあげましょう。」
「え。いいんですか?。ありがとう!。」
フライヤーには、ググッとGがかかり、旋回して方向を変えた。
ララは、寝ているメルテの首がハッチにぶつからないように、そっと頭を支えてやっている。
「帰りはどうするんです?。」
「帰りは、セメタムから登ります。セメタムまではコヌタで。」
「そうですか...最近は、物騒なことが起きてるから、セメタムの山道には入らないようにね。近道だけど。」
「はい。分かってます。」
フライヤーは、もう一度方向を変えロコウに沿って飛んだ。
500m下にロコウの麓の森林が見える。
フライヤーの風で木々が揺れている。
「あ、あれ、そうじゃない?。」
ネフィが言った。
振動が上空まで伝わって来る。
「サビオさん。当たりです。フーフーが1番近い。」
チコが言った。
「ん。あ!。兄様だ!。」
サビオの声でメルテは目を開けた。
が、眠いらしく、ララの腕を抱きしめてまた眠った。
「マジトゥアンティカ様が...。凄いなぁ...凄い迫力だ。まるで山のようだ。あれは何を...岩を掲げておいでか?。あのお方がいれば、もうアマルなど怖くはない。」
サビオも、ネフィも、そしてララも誇らしそうだ。
にこにこして、チコの言葉を聞いている。
木がまばらになるにつれ、トラフィンの身体も露わになる。
フライヤーの高度も下がり、トラフィンの発する音や足音が、フライヤーを揺さぶる。
「あんなに小さかったお子が。しかし、凄いな。あなた方の兄様は。本当に。」
チコも興奮が収まらなくなっている。
フライヤーは旋回しながら降下しはじめた。
ララはハッチごしに、揺れている木々の方を見ている。
フライヤーは、森林を過ぎ舗装された平野に出る。
〔...牽引ビームを発射します...〕
コックピットから音声が流れる。
「おっと、間違えた...」
チコは、つぶやいた。
「ちょっとごめんなさいよ!。」
チコがそういうと、フライヤーは急旋回を始めた。
強いGがフライヤーにかかり、後ろで備品がフライヤーにぶつかる音がする。
「うわー。」
「きゃー。」
サビオとネフィは叫んだ。
メルテは目を覚ました。
「うぇーん。」
びっくりしたメルテは泣き出した。
「うるさい!。だから待ってればいいのに!。」
ネフィはメルテに言った。
サビオもメルテに言った。
「おまえララ姐に甘えてばかりいるんじゃないぞ!。」
ララは笑いながらメルテの頭を抱きしめてやった。
「ララ姐様の前だと本当に赤ちゃんになるのね!。メルテは!。」
ネフィは、メルテを睨んだ。
「着きますよ。着陸します。ベルトしめて下さい。」
チコが言った。
〔オートパイロットです。区画B-23に移動します。〕
...ドッウウン...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
フライヤーは、平野の外れの四角い一角の上空で逆噴射を始める。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
空中で停止した反動で、みんな身体を前に押しやられる。
...ピーーー...ピーーー...ピーーー...ピーー...
フライヤーから音が鳴る。
コントロールパネルが赤く点滅し、ゆっくりとフライヤーは降下しはじめる。
...ガタン...
「はい、お疲れさん。笑」
チコは、笑って言った。
-----------------------------------
...ドーーーーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーーーーーン...
...ドン...ドーーーーーーーーーーーーーン...
規則的に地面が振動する。
まるで、ボーリングの為の鋼鉄を打ち込むように。
ララ達は、ハイドラに良くある透明な筒状の機動エレベーターに乗っている。
機動エレベーターは、アフロダイ高圧炉による電気で動いている。
ハイドラの都市が、自然と超ハイテクが混雑しているのは、ハイドラが今はなき超文明国家ハクアと密接な交流を持っていたからだ。
4人の乗っている、対面で座れる機動エレベーターのシャトルは、国境を越えアマルやデューンそして、ケラムの中心部まで繋がっている。
この10年間はアマルとの国境は封鎖されている。
前衛的な形のシャトルに、4人はふさわしくない様にも感じる。
シャトルの窓から、化け物を掲げた巨人が見える。
化け物の倍の大きさになっている。
とても大きい。
巨人はシャトルとは斜めに歩いている。
それでもほぼシャトルと同じ速度だ。
「凄い!。兄様だ!。」
「トラフィン兄様!。」
「兄様ーー!。」
サビオも、ネフィも、メルテも、シャトルの窓を叩いてトラフィンに気付かせようとした。
トラフィンは全く気づかない。
もちろんトラフィンからは、こちらは分からない。
ララも立ち上がり子供たちと一緒にトラフィンを見た。
巨人化したトラフィンの顔は、黄色い鋼鉄の石仏のように無表情だ。
目は二つだが、黄色い光を灯している。
トラフィンはシャトルに200mほどの距離に近づき、向きはシャトルの進行方向と並行になった。
トラフィンの速度は、シャトルを一気に上回った。
トラフィンは全くシャトルに興味を示さず黙々と追い抜いて行く。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
トラフィンの身体からは、タービンの回転音が響いて来る。
シャトルのドームと、シャトル自体のボディで隔たれているにもかかわらず。
「兄様ーー凄ーーい!。」
メルテが叫んだ。
「あれ見ろ!。兄様の持ち上げているのは、魚だ!。」
「本当だ!大きい...。でも兄様が凄く大きい。」
...トルルルルル...
静かな低周波のような音が鳴る。
シャトルは急に減速し初めた。
そして...。
停止した。
「どうしたの?。」
「聞いててごらん。」
サビオは言った。
【緊急停止、緊急停止。マジトゥアンティカが横断します。安全確保のため、当シャトルは暫く停止致します。】
「兄様がシャトルを止めた...。」
ララ達のシャトルを含め3台のシャトルが停止した。
縦縞で半透明のシャッターが、ドーム形のシャトルの通路を塞いぐ。
【車外に出ないで下さい!。車外に出ないで下さい!。】
2つ前のシャトルの客は、笑いながらシャトルに戻った。
【停止位置を調整します。】
3台のシャトルは下がりはじめた。
と、同時にドームが急角度にせり上がりはじめる。
カーブの先に見えるドームの先端は、まるで巨大な蚕のように、両側で空に向かい反り返った。
トラフィンは、スピードを緩めることなく、再びドームに接近し、巨大魚を掲げたまま一気に蚕のような、ドームの切れ目を横切った。
トラフィンは大きい。
高層ビル並みに大きい。
「兄様はあれの倍、いやもっと、天高く大きくなられるんだ。」
「えーーー!。すっごーーい。」
メルテが歓声を上げる。
再びトラフィンは、反対側の森林に潜っていった。
森が深くなっている。
...トルルルルルルルルルルル...
ドームはゆっくりとつながった。
発車を知らせる通知音が鳴っている。
穏やかな音だ。
シャトルは、一台ずつ間隔を開け走り出した。
シャトルのドームも森林にはいった。100m下には鹿の群れが移動をしている。
森林を抜けると、辺りは一気に何百年もタイムスリップしたような景色になる。
「タンジアって未来都市みたいだ...。フライヤーで来て良かった!。」
サビオが高揚して言う。
「ほんとだね。だんだんと都会になっていく。」
ネフィは答えた。
ララは、メルテを膝に乗せシャトルから見える景色に見入っている。
【フーフー。間も無くフーフー。】
ホームが少しずつ近づいて来た。




