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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
55/364

ベグレブ強化場1

...ピーピーピー...


警告音が鳴り響く。


機体が真っ黒なコーティングで覆われていく。


まるでチョコレートフォンデュみたいだ。


翼や突起が格納され、飛行が不安定になる。


「揺れる。酔いそう..。」


「賢い...。自分でモード変えた。」


「見て。これ。」


「ワイナ語わかんない。」


「このランプ。この子。フェイクシグナル出してる。ほら。これで逃げられているんじゃない?。私たち。治安警察から。」


「あ、本当だ。こんなに演算してる。70000...。だって。1時間にかな?。」


「いや、秒だよ。」


「えぇ...それは凄い...。」


無数のエルカーが、あらゆる階層で飛んでいる。


「しかし、もの凄い数。」


カラフルなメタリックな紙吹雪が、空中に舞っているようだ。


「トレーダージャンクションだからね。一日に70億台すれ違うらしいよ。」


「エルカーの反射と影で目がチカチカする。」


秩序正しく乱れ飛んでいる。


トレーダージャンクションは、各国の幹線空路が交差する広域な空間だ。


すっぽりと大都市が入る大きさ。


管制衛星も無数に浮いている。


この休憩で銀色の管制衛星は、高度な人工知能や制御システムを搭載している。


アトラの攻撃衛星スタトゥをベースに作られているそうだ。


「それより、ここどうやって合流すんの?。ねぇ。」


「牽引ビーム来ない?。」


「ほら。全然ここ光らない。」


「まさかの手動?。」


「こんな数のエルカー飛んでるのに?。」


「ほら。」


「ホント。」


「手動は絶対無理。」


「取り敢えずどこかに合流しないと...。」


「空域の行き先が分からないの怖いけど。」


「確かに...。」


「ここは?。」


「あ!。ちょっと待った...。パネル光ってる。ほら。真っ直ぐ行ったら良いみたい。この辺りじゃ1番大きい幹線空域。片側22車線。」


「ホントだ。」


...ドーーーン...


...ググググ...


...ドルンドルンシューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


フライヤーは滑らかに進む。


「これ、普通のエルカーよりデカいから車線はみ出すよ。」


「もう思いっきりはみ出してる。」


「あれは?。」


「エルタンカー用だ。多分。みんな2車線使ってる。空きが来たら入ろ。」


「来たよ!。入るよ?。」


「ステルス解除。」


「ナイス。」


「牽引ビーム来た!。」


フライヤーが一気に加速する。


「820階層もある。笑。」


「グレードは20だね。」


「遅いと目立つから、R16くらいかな?。」


「これじゃない?。」


「ホントだ。」


〔...低速層R16を選択しています。...〕


「道路の標識見て。」


『...アトラスラインへようこそ。本幹線空路では、アトラ国セカンドスーパーシナプスフレーム イザナギが制御しています。外部オートパイロットをオンにしてください。イザナギがあなたのマシンの性能を検知し...』


「えーと、アトラスライン...?」


〔...速度調整 R3にアップグレードします。...〕


「R3だって。13段階ぶっちぎり!。すげえ。高速レーンだ。」


「目立つかも...。」


「そんなに早いように見えないのにね。これ。」


「一応、軍用だから。」


〔...速度調整 貴艇をR1にアップグレードします。...〕


「えぇぇ。どんだけ凄いの。これ。流石にやばいかも。」


〔...速度調整 貴艇をRSにアップグレードします。...〕


「あ、RS?。」


「ぱ、ぱ、パネルが!。」


「ちょっ、ちょっ、な、な、何で点滅してんの?。これ。」


「落ち着いて。」


...ドーン...


フライヤーが振動する。


「あれ?ハンドルが...。」


「何だこれ。どうなってんだこれ!。」


「うわあぁ、折れ曲がるー...。」


シートが変形する。


ハンドルやコントロールパネルが反転する。


代わりに、操舵桿や、多くの計器のついたコントロールパネルが反転して出る。


...ドーン...


「見て!。変形を始めた。」


「見ろ。飛行速度600を超えた!。」


「これ、普通の飛行艇じゃない...。汗。」


「見て。これ何て書いてあるの?。」


「なんだこれ!?。」


「うわっ!。ム、ム、ムスタファだ!。これムスタファ!。」


「えぇぇ!?これハイドラの最新鋭の攻撃艇...ってこと?。」


「ノリエガさんは、何でこんな凄いの貸してくれたんだろ。」


「あり得ないだろ。汗。」


「アパッチに見つかったら攻撃されるぞ。」


「安心しろ。ムスタファの方が全然強い。」


「そうじゃないだろ。そう言う問題じゃ...」


...ドーン...


フライヤーは振動し、更に加速する。


〔...特設レーン解放...〕


「見ろ!1240!お、音速超えた!。」


「うおーー!。」


「キャーー!。」


「うわーーー!。」


とてつもなく激しいGがかかる。


『xxxxxxxx。xxxxxxxxx。xxxx、xxxxx。』


ランプが点滅し、ワイナ語の警報が鳴る。


「何て書いてある?!。何て書いてある!?何て書いてある!?。」


「ヤバイ!。うわーーーうわーーー。うわーーー。」


「落ち着いて。」


「1600ど、ど、ど。マッハだ。」


「捕まる。これ完全に捕まる!。」


「うわーーーうわーーー。」


「流石に、このスピードは...」


『xxxxxxxx。xxxxxxxxx。xxxx、xxxxx。』


「わ、ワイナ語で言われても...泣。2100。死ぬ、死ぬ、死ぬー。うわーーーうわーーー。これ、マッハだ...マッハ!マッハ!。」


...コーーーーーーーー...


「あれ?何このボタン?。」


『...サルーア語に変換されました。目的地 まで、あと15分。...』


コントロールパネルの文字盤が読めるように...。


〔...特設レーン閉鎖。RSへ降下します...〕


『...最も近い離脱ポイント ベグレブ ビクイーンに向かいます。300まで減速します。...』


〔...緊急制動レーンを解放します。あなたの操舵への信頼度は13減点されます。更にR3へ降下します...〕


...ドーン...


...ドンドーン...


ムスタファは元の形に戻り始めた。


「ムスタファが...。」


〔...一般空域に降下します。...〕


「怖かったぁ...。」


『...離脱ポイントベグレブ ビクイーンまで350メートル。120まで減速します。...』


〔...R8へ降下します 離脱ポイント ビクイーンまで300...〕


「いつの間にか4000キロも移動してる...。」


『ビクイーンまで250メートル。』


〔...ビクイーンまで250...〕


『ビクイーンまで200メートル。』


〔...ビクイーンまで200...〕


『ビクイーンまで150メートル。』


〔...ビクイーンまで150...〕


『ビクイーンまで100メートル。』


〔...ビクイーンまで100...〕


『ビクイーン。オートパイロットを終了します。』


〔...ビクイーン。 離脱シークエンスを開始...〕


〔...低速空域です。行き先を選択してください。...〕


「強化場へ。」


〔...判別不能...〕


「強化場へ。」


〔...判別不能...〕


フライヤーは再びステルスモードになる。


音声が消える。


自由航行空域に入っていく。


...フォーーーーーーーーー...


治安警察隊のスピーダーが、次々と上空を通り過ぎて行く。


「バレてる。あれそうだよ!。」


「ムスタファのフェイクシグナル、もう見破られてる。スサノオが今必死に検索してるはずだよ... 。」


「何で突然マッハで飛んだの...この子...。」


「逃げ切れないぞ...。流石に。」


「軍事機密があるから、アトラ軍が全力で来るかも。」


「ベグレブ一帯って、兵器開発工場だけど、低級アンドロイドばっかりだって、パパが言ってた。殆ど無人って。」


「山経由で行こう。」


「かなり起伏あるよ。」


「都市だとアパッチが出てくるよ。国会議事堂とかあるし。」


「都市よりベグレブの方が機密度低いのかも。」


「じゃ、決まりね。」


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


ムスタファは急旋回して向かう。


深い深い山の方角へ。


————————————————————————————————————————————————


ムスタファは山上を飛ぶ。


見渡す限り深い森だ。


少し手を伸ばせば触れそうだ。


「うっかり落ちたら大変だね。」


急な斜面は途切れなく続く。


3人の乗ったムスタファは、緑の深い急斜面に沿って上昇を続る。


「山、越えるよ。」


目の前に大きな湖が広がる。


深い山の頂きにあるこの湖は、ダム湖のようだ。


コンクリートの無機質な壁は、くゆり、いくつかの山の奥まで繋がっている。


...ブウゥン...ババババババババババ...スゥゥーーーーーーーーーーーー...


低速での急勾配すれすれの飛行を終えて、ムスタファのエンジンは大人しくなった。


「ねぇ。あれ見て。」


魚が泳いでいる。


優に100mは越える。


何頭も。


「ホントだ。何だあれ。鯨かな?。」


「何で山に鯨が?。」


「山鯨か!。」


「キノコの名前じゃないそれ。w」


「ヒレが横に向いてる。鯨じゃないぞ。」


...ブウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...スゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


今のエンジン音は、夏の新型エアコンのように大人しい。


3人の警戒心に配慮しているみたいに。


「あ。見て。人がいる!。」


ケイが指を指す。


「ホントだ。こんな山奥なのに。」


...ブウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...スゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


「うわ。結構いる。何で?。」


「うわぁぁ。やばい。こんなにいるの?。バレバレだよこれ。」


「どうしよ。」


大きなテントがいくつも張られてる。


グレーを基調にカラフルなライン。


青、緑、ピンク、黄色...。


ウェットスーツを着た人々が並んでいる。


「あんまり気にしてないみたい...。」


「何かのイベントかな?。」


「何で?。」


「ほら、ロゴ。テントにもスエットにも...。」


「ホントだ...。」


「のどかな感じ。」


「民間の人達だね?。」


フライヤーは人々の上空をゆっくりと旋回する。


「ホント。半ズボンの人もいるね。」


テントの中でモニターを見ながらパンをかじっている。


資料を配るTシャツの女の人達。


子供がこっちを指差している。


何人か見ているけど、あまり興味を持たれてはいない。


ダムの近くで、赤い帽子の男が、スピーカーで何か演説をしている。


大勢の人達に。


ダム湖を指差しながら。


「何してんのかしら。」


「鯨の調査?。水質調査?。」


ムスタファは、加速して、ダム湖に沿って飛ぶ。


「通報されたりして...」


「されるでしょ。」


「急ごう。」


「そうね。」


...ドルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル...キュィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


タクはがスロットを倒す。


「山だよ。気をつけて。」


「おkー...」


ムスタファは高度を一気に上げていく。


...ババババババババババババ....


...バウン...ボボボボボボボボボボボボボボボボボボ...


「ダム湖があんなに小さくなった。」


「こんなに高く...何か、怖い...。」


...ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


「シールドが。」


「自動で閉まるんだね?。」


「見ろよ。あれ鯨じゃないぞ。ウナギ?。」


「あ!ホント。あんな大きなウナギ...」


...シュゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ...


空気が締め出される。


「うわ。耳が...。」


「ほら、耳抜き、耳抜き。」


「でも、こっれ、性能凄いな...。もう高度800だよ?。」


「だってハイドラ軍の飛行艇だよ?。」


「でもさ、何か自家用のエルカーみたいに操縦が簡単。」


「そうなんだ?。」


「操縦変わる?。」


「いや、いい!。」


「笑。」


...ゴゴゴゴゴゴゴゴ...ババババババババ...


また、深い緑の急斜面に沿って、ムスタファは上昇する。


「うわっ!。」


ムスタファはまた山を越えた。


「凄い!。」


「広っ!。」


突然視界は開けた。

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