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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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アスカ計画

アスカプロジェクトは、イグルー 族の少女から始まった。


名前はアスカ。


今から1万3000年前にケラムで見つかった少女のミイラの名前だ。


絶滅したイグルー族は、更なる太古、13億年前に存在していたアスカ人の末裔なのだという。


アルマ元素測定器によって、少女アスカは、アスカ人が滅亡する少し前に生きていたことが判明した。


また、アスカが見つかった時期に、水晶製のディスクが、滅亡した古代国家ベクセンのアマザで見つかった。


そして、そのアマザのディスクは、長い時を経て、今から6000年前に大帝国アマルによりほぼ解析された。


ディスクの内容は、次のようなものだった。


二番目の月の住人だったアスカ人〔※1〕は、ある日突然、外宇宙からやって来た、ソムナー〔※2〕に襲撃された。


〔※1:ハクア前史の天人=アマト〕


〔※2:ハクア前史の宙人=ソラト〕


神に近い力を持っていたというアスカ人だが、火の7日間で、簡単にソムナーに滅ぼされた。


アスカ人は、ソムナーに、月とともに惑星トリスタンに撃墜させられた。


祖国を失い、多くの仲間を失い、辛うじて生き残ることが許された僅かなアスカ人は、なおも迫ってくるソムナーの陰に怯えながら、エイジン大陸に散って行ったという。


ソムナーのアスカ人に対する虐殺は、一方的かつ執拗そして熾烈に、延々と続いた。


かつて、ソムナーは、130億年前、太陽が一つしかない恒星系の第三惑星アクシスに住んでいた。


ソムナーは、私たちと同じく二足歩行のとても弱い生き物だったいう。


そして、ソムナーは、もはや人間の形態はしていないという。


少女アスカが亡くなってから、13万年以上の時が経っているにも関わらず、その胸には、爆発的な生命エネルギーを生み出す虫が宿っていたという。


そのエネルギー規模は、大型エネルギー炉12基分、一つの地方小都市の実に15年分のエネルギー量に相当する。


当時アスカが、巨大化し、巨大な兵として敵軍ソムナーと戦った映像が、そのクリスタルディスクには収められていた。


アスカは、当時のどのケラム生物よりも大きく(体長14m)、強かった。


このディスクに収まっていたアスカの映像は、当時のこの星の人々に途轍もなく大きな衝撃を与えた。


そして、既に戦禍にあった、エイジンとローデシアの二つの大陸の国々は生き残るために、少女のミイラを奪い合った。


勝ち取ったアマルは、少女のミイラを解剖し研究した。しかし、当時の科学では解明できないことがあまりにも多すぎ、少女のミイラは氷結保存され、永い永い眠りについた。少女の胸の虫、現在の千年虫の祖先である虫とともに。


少女の謎が解明されるまで、各国がおびただしい量の実験を行い、不作の実験結果は全て、広大な野生ケラム地帯に捨てられた。


長い歴史の中、アマル帝国に保管されていた、氷漬けの少女は失われた。


盗賊によるものなのか、他国の諜報によるものなのかは分からない。


ある日、氷漬けの少女アスカは長い時を経て、ハクアで見つかった。中断していた研究は再開された。アスカプロジェクトとして。


その研究の代償として亡国ハクアは、大帝国アマルの逆鱗に触れ滅亡した。


ハクアのその研究は、末裔達により脈々と引き継がれていった。


アトラが、アマル帝国との独立戦争に際し、兵曹を使い圧倒的勝利を収めたことは史実として新しい。


その後、スーパーシナプスフレーム スサノオに操られていた全てのアスカプロジェクトの兵曹は、444番目のプロジェクトから人と融合されることとなった。意志を持たないため、ケラムの生き物を越えられなかったからだ。


明確な思考と強い意志を持つ生物、つまり人間だけが、兵器の核となり得た。


兵曹は人工受精と同時に、イザナミに管理された濃度の高いアルマダイ溶液の中で、最も強いトロンノース形の虫とともに、様々な生物の変異のきっかけになる刺激を緻密な計画の元与えられ培養されるようになった。


アスカプロジェクトは、666番目の成功以降、毎年国家予算の実に71%をつぎ込んでいるにも拘らず、培養胚すら完成させることができなかった。


科学者の大きな粛清が行われた直後の999番目のプロジェクトでは、投獄されていた異端の科学者2人が召喚された。ニシノとブラバーチだ。彼等は、新しく開発に成功した第一培養胚ではなく、プロトλ911胚の第三培養体を使用した。


プロトλ911胚は、666番目のプロジェクトで、アダムゼロとジェニファーを生み出した禁断の培養胚だった。アダムゼロは暴走し、アトラは国土の17%と国民の20%を失った。


アスカプロジェクトの999番目の2人の赤ん坊は、マウロとザネーサと名付けられた。


生まれた子は、再び、アダムとジェニファーと名付けられるはずだった。この名前は、その培養胚の危うい性質を開発者が忘れないようにするためのものだからだ。しかし、不思議なことに、生まれた子は二人とも男の子だった。そこで、急遽、使われなかった培養胚の名前である、陰極星の子はマウロ、陽極星の子はザネーサーと名付けられた。


2体の預けられた、初期の生体兵器開発所は、ケラムに接した、広大な動物保護地区キリノアの中に作られた。


陽極星のザネーサーは良く笑い、陰極星のマウロは全く笑わず、話もしない子だった。


2体が生まれ8ヶ月経ったころ、事件は起こった。


開発所ではマウロの世話をしていた、ナース、医者、研究者など携わった全ての人間が、無惨に身体を引きちぎられ、焼け爛れて死に絶えていた。


更にそれは、エスカレートし、マウロが1歳になったころ、陰極の施設は半径10kmに於いて、人も動物もみな死に絶え、生き物は生存することはできなくなった。そして、その規模はますますエスカレートした。


陽極の施設は、太陽光変換施設の近くにあった。ザネーサは、無意識の内に施設を破壊した。ザネーサが睡眠時に発する、粒子パルスは、都市用の巨大高圧炉にも干渉を与え、アトラは国家的な危機も想定し始めた。


アトラは、アスカプロジェクトでの計画予定値を遥かに上回って成長するザネーサを消さざるを得なくなった。


ある日アトラは軍の最高精鋭兵曹1000体を送り込みザネーサーの抹殺を図った。


陽極の施設は、大爆発を起こした。


四方4000mの施設は消滅し 小石一つ残らないほど。


そして、施設の後には笑い転げよろこぶ子供だけが残された。


ザネーサは、片腕を無くした。


しかし、その抹殺計画の大爆発ですら、その子供の腕しか奪うことができなかった。


すでに2体の軍事兵曹はともに世界最強に迫る力を持ち始めた。


ブラバーチは、僅か3歳の子供2人を相手に、アトラ全軍による総攻撃を提案した。


その時のアトラ北軍の総統であるジェニファー(当時唯一のクシイバ)と、開発者の熱意により、辛うじてマウロは救われた。


しかし、ザネーサーは、当時世界で最強の兵曹であるジェニファーによって抹殺されることとなった。

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