ダヌアの空に158 / ドンキ編19
結晶山の合間。赤土の洞窟…。
….ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
ゼノアルマグナが低く唸り声を上げる。
「繋がったぞ!ラムダが浮上した。映像見てくれ!ほら!」
第2レーダーのグリンが叫ぶ。
「おぉ?やったな」
グリンがパスタップ•モニターを修復した。
「修理上手」
「やりおるわい」
「装甲騎兵だよ!あれ!」
双子がはしゃぐ。
レイヤとルイヤ。
「ドンキさんだよ!やっぱり!」
そうだ。あの姿は….。
間違いない。
パスタップ•モニターの淡い光が洞窟を照らす。
装甲騎兵の情報を表示する。
まるで昔のオリンピックの映像のように。
シムウォーカー アページ装甲騎兵隊 第152部隊 ファイヤーフォックス分隊…。
カルロス•ソウイチ•ドンキホーテ。
奴は、第7師団ばかりか、ハイドラ軍、いや、ハイドラ全土に名が知れ渡っている。
何度も主要メディアに取り上げられた。
あり得ない天然ボケやドジが、ヒドゥイーンに幸運をもたらしたり、ハイドラを救ったり…。
しかも、あのとぼけた外見と言うか、あの間合い。
誰でも笑ってしまう。
だが、流石に今は緊迫している…。
さすがのドンキですら。
灼熱のゾーグの大地。
この一瞬を、誰もが固唾を飲み見守っている。
俺たちと同じくパスタップを通して。
『…第43..装甲..歩兵..隊…聞こえ…るか?…第43…装…甲..歩兵…』
「ピケからだ。第19装甲歩兵隊を見つけたらしい…」
「無事だったんだ?。じゃあ他の隊も俺たちと同じに…」
「あぁ。恐らく」
「よ、良かった…」
「ミライ。対応頼む。」
「承知しました。」
ドンキはたった1人で佇んでいる。
巨大な怪物を目前に。
「や…ややっ!?汗。メット外してるぜ!あいつ!」
サタディが、モジャモジャの髪を振り乱し、振り返る。
そんなはずはない。
奴のゴツく毛深い腕がドンキを指し示す。
「…こちら…第43..装甲..歩兵..隊…こ..ちら…第43..装甲..歩兵..隊…ピケ…さん?..ミラ…イです…ご…無..事で…何..より..です…」
ん!。
本当だ…。汗
ベーターは憮然と言い放つ。
「信じられん。とっくに装甲も耐熱温度は超えてるはずだ。」
ベーターは、我が装甲歩兵隊のエース。
…ゴガン…ガン…パラパラ..パラ….
「うわっ。岩が崩れて来たぉ?」
「うわっ。振動がデカくなってきたやん?。持つの?。これ。」
「グリンさん。これって熱いけど平気?」
「おい!岩盤に触るな!黒焦げになるぞ!」
「ほわーぃ」
「外が500度もあるんだ。冷え過ぎなくらいだ。」
「500度?マジ?肉焼けちゃうじゃん?」
「何言ってんの?炭になっちゃうよ」
「あーた達うっさいのよ?安眠妨害よ!」
ドリスデンは大分体調が戻ったようだ。
「永眠の?」
「いや冬眠だろ?」
「何ですって?怒」
ドリスが双子の背後に…。
いつの間に?汗。
「うわっ…巨体再び…」
「ドリスさんいつの間に…」
「巨大なオジオバ現る!」
「特大のトドくじら現る!」
「おだまり!この紅白饅頭。」
「誰が饅頭や!」
「どこが紅白や!」
うるさい奴らだ…。
「おい。何て言ってる?」
「いや、まだ奴は喋ってねぇ。」
「でも、一体どうやって!?」
「分からねぇ」
「三聖獣の力だ。きっと。」
「あいつが。ワハ!ワハハハ!ブサイクが?あり得ねぇ。ワハハハ…ハ…は….汗」
ベーターがサタディを睨みつける。
「いや。ビールスの言う通りかもしれない」
サタディの全身から汗が吹き出している。
「確かに。じゃないと説明がつかねぇ。」
「あり得るわ。」
「パワー感じる。今のあいつ俺より強い。」
ブブが来た。こいつが会話に参加するのは珍しい。
「えぇ!?汗。おまえより!?」
サタディの汗はますます激しくなる。
《….ワ…こ……ソ….》
ん!?ドンキが…。
「おい!ドンキが何か叫んでるぞ!」
「こっ、こりゃあ、重大なメッセージに違いねぇ!」
「ボリューム上げらんないの?」
「何かボルボーレに叫んでる!」
「壊れてるのか?」
「スピーカーの接触が…」
「誰かのパスタップに繋ぐとか?」
「それが、こいつの発信機、パスタップスリーので…」
「古っ」
「このつまみだろ?」
《….ャ……ヮ……ワ..》
「おぃー。サタディ…」
「あわゎ…」
「余計聞こえなくなっちゃった….」
「映像見えなくなっちゃった…」
「おまえ…」
「あぁ…ぁ…俺の8時間が…泣」
「おい。グリン泣くな」
「ワハハ!汗。ワハハハハ!ワハハハハハハ….汗」
「貴様…まさか、笑って誤魔化す気じゃないだろうな?」
「あ、いや、ベーターさん、そんなそんな、ワハハハハハハ…..は…汗」
はっ!?汗。
ドリスが拳を振り上げた…汗。
まずい…。
「お、おい!ど、ドリス!早まるな!」
ベーターがサタディを庇う。
「ヒィィ…」
….ガンッ!…
《….やぁ…やぁ…我こそは〜!ハイドラ首長国連邦〜〜!ハイドラ陸軍 第7師団〜!第52装甲騎兵団〜!装甲騎兵陸士長〜!字はソウイチ!名はドンキホーテと申すものなり〜〜!腕覚えの怪物ボルボーレよ〜〜!我と手合わせを願うー!いざ尋常に勝負!勝負〜〜!…》
「え…?汗」
「うっっわ!やかまし!」
「うっっわ!鼓膜破れる!」
「な、直った!?」
「殺されるかと思った…泣」
「おぉ…お…汗」
「大したこと言って無いわね…」
「バカの一つ覚えだったな…」
「…やっぱり俺の8時間が…泣」




