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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
327/364

ダヌアの空に145 / ドンキ編6

…ンンンンーーーーーーーーーーーーーーーー…


…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


砂まみれの銀の艦体が傾斜する。

〔ロベルト•キー/男 32歳 /エネルギー解析•総務〕


第2太陽の朝日を浴びて。


肥大した悪夢のような。


….キィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


アルマダイエンジンが唸りを上げる。


空の彼方には不気味な渦。


100もの空の渦潮うずしお


亜空間から更なる災厄を呼び寄せる。


前より肥大してないか…?汗


…..ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


急激な旋回で放り出されそうだ。


見渡す限りの荒地に。


『…シ..メ…オン…と…スード..ラ..以外…酷い…もん..だね….こりゃ…こりゃ...』


ゾーグ平原の同じ景色が延々と繰り返す。


無数の結晶山を伴いながら。


どこまでもどこまで彼方まで。


そして、奴は聳え立つ。


『…ちゃ….ん…と…報告….し…ろ…ルイ…ヤ…』


『….ほ…ゎ…〜..〜…い…』


10kmも離れているのに。


砂を煙のように纏いながら。


エネリウムの反重力作用が土砂を噴き上げている。


…ドウゥウーーーン…


….ドゥゥゥーーーーーーー…


重々しい音。


巨大な鉄球を地面に打ちつけたような轟き。


怪物の体内の爆音。


『…急げ…時間..が…無い…照射…準..備の…出来..た…ラ..ムダ..から…』


『…だけ..ど….すっげぇ…振動…だね..ボル…ちゃん….』


『….あら?..そ..う…呼ぶ..と…可愛い…わ..ね…あたし…みた..い?…』


『…ドリ.…ちゃん…は..どこ..い…ん…の?…』


『…..G57…ジー..ン…と..こよ…ピッ…ク…7と20…が..いけ…るわ…』


『…う..うひょ..ー…73…km…離れ..てる…』


『….チッ..あの..双子….』


だが、あの300mの化け物の中身は空洞だ。


何も存在しない。


にも関わらずあの莫大な質量。


論理で説明がつかない。


『….近い…の..は…サビ..ア…ノ…ーア…だ..が…奴は…もう..かな…り…石..化し…ち..まっ…てる…』


ボルボーレ。


奴は停止してる。


ジーンの方角に向いたまま。


不気味だ…。汗


『…..グリ…ン….聞..こ..える…か?….そっ…ち..はどう…だ…何な..ら…俺..様….の…』


『….あぁ..バル..バロ…イ…そっち..行っ..た…頼むぜ…サタ..ディ…』


『…いぃ..っ!?汗…』


『…8と…15..が…ファラー….と..エフ…ライ..ム…に…照射..を…初め..てるよ…..3….4割..って…とこかな….の…怪..我…の…具合….じ..ゃ….』


第43装甲歩兵隊がアルマダイの供給作戦を開始した。


『….3割….で..十分….だ…ろ..う…』


遂に。


地上の兵曹達とアギュラー•ラムダの接続を指示している。


ラムダは12機集まっている。


稀な光景。


43部隊以外にも300人の装甲歩兵達が一体ずつ兵曹の状況を調べている。


防御翼を呼び戻す方法が見つかったのかもしれない…。


『…ベーター…ブブ…そ…そ…そろ…そろ.こっち...頼む…バル…バロ..イ..が..来そ..う…だ…汗…』


『…何と…か..して…くれ..るん…じゃ…な..い…の..か…よ..?…サ…タデ..ィ…笑…』


『…ピケ…が..行って..くれ…そ..う…だぜ…』


『…えぇ!…な..な..何で!?汗…』


『….ビ..ー..ル..ス….ラムダ..18…チャー…ジ89%…放..電翼….展開…中..ポルシ..ト…に..行ける…わ….』


ジーンは戻って来てしまった。


深傷を負ったまま。


結晶山の麓にもたれかかったままだ。


傷もエネルギーも回復しないままここに。


宝石のような4つの目は壊れた蛍光灯のように光を失っている。


ボルボーレは、あの恐怖の間穴線を呼吸と同時に放射してる。


もし命中すれば消し飛ぶ。


航空隊や装甲歩兵ばかりかジーンですら。


大地ですら。


…..バババ…ドドドドド…


「うわっ」


砂嵐がラムダに襲いかかる。


奴が空に噴き上げた土砂。


彼方で。


『…伏…せ..て…!…風..だ.ぉ…』


『…レイ..ヤ..だから..防..風…体制…って….言..うの…ー..っ…』


『…あ….そ.か..w…』


あの絶望と恐怖の象徴に隙や猶予は存在しない。


何かを感じ取っている。


恐らく…。


間も無くエメドラド様の法力が消える。


800年に渡りハイドラを守り続けた大神官の。


トルカカを守っていた法力。


ボルボーレから隠していた妖力。


飛び出して来た傷だらけの兵曹イブラデを。


幼い正義感だけで。


もしトルカカが喰われたら全てが終わる。


空のあの100の亜空間が開いてしまう。


そしたら…。


もしそんなことになったら…。


何もかも終わる。


最悪の絶望が来る。


この地上に。


何とか阻止しなくては。


この場を切り抜けなければ。


エマ….。

〔エマ•スチュワート/女性 40歳(没年)/副艦長 機内コントロール 〕


見守っていてくれよ。


写真のエマは静かに微笑んでる。


後ろからみんなを見守ってくれている。


前と変わらず。


戦闘が終わりコックピットを離れる時に、みんなエマに声をかける。


階下に降りる時。


前と変わらず..。


ジャイロは寂しそうだ。

〔ジャイロ•ゲーレン/男 38歳/ラムダ13艦長〕


俺もだ。


寂しいよ。エマ。


….ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ラムダ13は大きく旋回している。


トルカカとジーンを見守るように。


命懸けで。


戦略装甲艦(アギュラー•ラムダ)がここまで戦線に出張ることはない。


攻撃翼の戦力はもう底をつきかけている。


…ドドド…ドドドド..ドドド….ドドド..ドドド…ドドドドドドドドド…ドドドドド…


え?。汗


推進器の音?。


集音器が拾っている。


近づいて来る?。


「はっ!?えっ?..汗…艦長!オリファント3来ます!」


えぇ?。


ラムダ4は何やってる?あの音はまずい…汗。


「オリファント…?なぜだ?汗」


爆音は怪物を刺激する。


…ドドド…ドドドド..ドドド….ドドド..ドドド…ドドドドドドドドド…ドドドドド…


『…ラム..13…こち…エル….el35…目….到..達まで…1200..セカンド…指示…乞う..繰り返…こちら…エルフ …35..目標….達まで12..0セ…ンド….ラムダ1…指示を乞う…』


「私としたことが…何で気づかなかったのかしら…はっ!汗。アルハリドがいない…どこにも…」

〔リタ•ヘイワッド /女性 38歳/第2レーダー〕


あり得ない。


怪物を刺激してしまう。


「バカな…..追い返せ!ヘザー」


「でも、トルカカのピックアップが…」

〔ヘザー•ワトソン / 女性24歳/ 通信•暗号解析〕


「トルカカの拾い上げは本艦で行う。あの音では無理だ。」


本艦で?汗


マジ?汗


「り…了解。汗」


「ロベルト。トルカカの計測お願い。」


あぁ、今やってる。


「了解だリタ」


青い革のシート越しにリタが振り返る。


黒い綺麗な肌。


真っ白な歯と白目。


綺麗に編み上げられた黒髪。


「ラウル。光学迷彩を展開。ステルスモード。本艦はこれよりトルカカを回収する。」


「了解」

〔ラウル•レン/男 23歳 /戦略解析•作戦補佐〕


気休めだ。


ゾーグの生き物には光学迷彩など効かない。


「…こちらラムダ13。トルカカの回収は本艦が行う。貴艦は既存の任務に戻れ。繰り返すこちらラムダ13。トルカカの回収は本艦が行う。貴艦は既存の任務に戻れ..」


…ドゥゥゥーーーーーーーーーーーーン….


…ゴゴゴゴ…


大型冷蔵庫のように艦体が揺れる。


光学迷彩が発動した。


大地や空が歪む。


まるで陽炎のように。


『…エル…フ..el35…了..解.. エル…フ..el35…了..解..』


「行動計画を策定します。ナイジェルさん。座標を。」


「も、もう、で、出てるよ」

〔ナイジェル•マンデラ/男 28歳/第1レーダー〕


….ドゥゥゥン…ドゥゥゥーーン…ドドドド…ドゥゥゥーーーーーーン…ドゥゥゥン…ドドドドド…


ボルボーレが亜空間に頭をぶつける。


間穴線の放射間隔も短くなった。


「右旋回 フタマルまで。」

〔クレランス•シモンズ/男 45歳/第一操舵手 (エースパイロット)〕


….ググググググググ…


押しつぶされるようなGだ。


「了解。右急旋回 フタマル…ねぇ!まだ?」

〔イーシャス•エルピーダー/女性 24歳 /第二操舵手〕


イーシャスの張りのある声。


最近は声も太くなって来た。


質量計測器。


目まぐるしく数値が回転している。


空中に緑の光で表示される3つの計測器。


来い、来い…。


良し出た!。


「トルカカの質量、37389kg。…2年でかなり重くなってる。」


ん?。


イーシャスの視線が厳しい。


俺、何か言ったか?。汗


「この後直進降下。」


クレランスが淡々と指示を出す。


「直進降下…..。キャリー浮力比!ロベルト!早く!」


ん。


あぁ今やってる。


同時には出来ない。


「100対68。あと19。換算 61800kg/f」


….ガンッ…ガン…ガン…ガゴッ…ガンッ…


イーシャスが左手のレバーを次々に押し上げて行く。


待機中のスラスターのレバーを。


6つのインジケータが青から黄色に変わる。


今のラムダの最大総浮力が計算されるはずだ。


「サブスラスターオール2から7。点火準……..だ..ダメだわ。汗。重すぎる。」


「ガレス!荷を落とせ。」


腕組みをしていたジャイロが、食い気味に指示を出す。


「え?あ…?あ…!?」

〔ガレス•オクトーバー/男 37歳 /攻撃•戦略担当〕


不意打ち食らって焦ってる。


極道ピンクハチマキが。


「艦長。ササーン。粒子線射程圏内まであと790秒。加速させますか?」


「606km/h。限界を超えてるわ…」


『…ブ….プ…ブ…ねぇ…13で..アルマ…ダイ…照射…ブ….プ…できない..かしら…』


「外電よ。ナイジェルさん。パスタップdyu479。古い暗号通信で入って来た…..え…と..これは..え?..ドリスからだわ..」


「おぉ、か、か、艦長、ドッ、ドド、ドリスデンからだよ。」


…ドゥゥゥーーーーーーーーーーーーン…


…ドドドドドゥゥゥーーーーーーン…


パスタップ(アルマダイ変化暗号通信)が途切れる。


ボルボーレが体内で爆音をさせる度。


『…ブ….あたしよ..ジャイロ…ラムダ…9の..照射前に…ジーンが…ユーフォウムしてしまって……13で照射できる..かしら?…ブ….プ….アルマダイをジーンに…』


「無理だ。本艦はトルカカの回収でいっぱいいっぱいだ。」


『…ブ….トルカカ…回収….る…の?…え?…ラム…で..トル…カを?…』


「ここの指揮はどうするんです?」


「14に引き継いでいるわ。その後14指揮でボルボーレの陽動に入る」


「し、し、ししし照射には、ほ、ほ、他のラムダが、ひ、必要だよ」


「リタさん。14の他には…」


「23が火口付近に。イブラデの連隊を先導しているわ。」


「こっちに呼べるか?ナイジェル」


「え….と…ま、待って…汗..あ…あぁ…ば、ば、バルバロイに、か、囲まれてる。汗。防衛はファラールと、あ、あ、アルガード2機だけ、装甲歩兵隊長の、ぶ、ブルースが、隊を、指揮し、てる…」


『…..ブ….ブブ…もし..間穴線が..当たった….らジーンはお終いよ…ジーン無しでは..後…ないわ…何..代案を…』


「バルバロイ対策ならティゲルの方が良いぜ?こっちのティゲルを2機向かわせりゃ良い」


「良いだろう…交代だ。ラウル。ブルースに連絡。」


『…急いで..ボルボー…レ…が…動き..出す前…』


「ま、ままま、待って、作戦中かも、へ、下手に、う、動かさない方が…す、す、凄い数だ..き、キリークがいる。へ、へ、へ、下手したら、い、イブラデが、ぜぜ全部食われちまう」


《…うひひ…間も無くドラド殿….霊力が…..秘匿の霊力….終わる…ドラド殿…今…深い眠り…落ちられた…うひひひ…》


「あ?」


ロスターが大きな目を見開く。

〔ロスター•ロレスター/男 39歳 /戦略解析•作戦補佐 〕


「やべぇじゃん。汗」


まるで赤ん坊のような顔のゴツい黒人の大男が。


「おい。セクハンニのおやじ。5分でいい。トルカカを隠してくれよ」


「ロスター!言い方!」


何と言う非礼な…。


《…うひひ…ワシ…エメド殿…秘匿は…出….ない…残念…がら….うひ…ひひ…》


「あ?出来ないんかよ!?汗」


《…耐え…て…おく…れ…ドラド…目覚め…..らジーン…復活..させる…》


「え?ジーンを?どうやって?汗…」


「ダメだわ。大尉が納得しない。」


「トルカカを吊り下げる浮力、足りるか?。」


「ダメよ。まだまだ足りないわ!あと30000はカットしないと」


「アームの耐久力は?」


「本艦の浮力68004。アーム耐荷重が51000…。余裕でイケるはずだが…?」


「上がんないわ…汗」


クレランスも首を傾げてる。


何でだ?。


「ラウル。サブは?」


「両脚αβとサブ込みです。」


「何でだよ?荷重には余裕がある」


「アームβ展開」


クレランスが指示を出す。


「アームβ展開!」


…..ググググググ…


…ゴゴゴゴゴゴ…


艦が急激に傾く。


全体重が左肩にかかる。


「くっ….汗」


「うぅっ」


「賽は振られたわ…。」


イーシャスは正面に向き直った。


「急制動」


「…急制動」


…ガスウッ…ガン…ゴン…


積荷が投下され始めた。


「ガレス!Eもだ。何やってる!Eコンテナだ!食糧もだ!」


諦めろ。艦長命令だ。


「泣いてんのか?」


「あん?怒」


….ググググゥゥゥ…


ラムダ13が激しく揺れる。


「ロスター。F、Gも落とせ!早く食糧を落とせ!」


「おまえだろうがロスター。」


「早く落とせ!早くしろ!」


「エマが笑ってるぞ。笑」


「は?おまえをな」


…ガスウッ…ガン…ゴン…


「総員ライフガードの固定。イーシャス。緩衝ゲル用意」


「了解。緩衝ゲル用意。」


「ほらよ。落とした。全部落とした。全部だ。」


「う…う、動き始めた…ボ、ボ、ボ…ボルボーレが…汗」


「急げ。クレランス。トルカカを喰われたら終わりだ」


…バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ…


…ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


え!汗


「…お、お、お、オリファントが、ももも、戻って来たぞ。汗」


「な….なんで来た…?!汗。」


「引き返して!オリファント3!オリファント3!応答してっ!….」


「通じてない?」


「まずいぞ…。」


「応答しないわ。通じてるのに…汗」


「今はトルカカに集中しろ!アーム展開!」


….グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーー…


反応してる。


ボルボーレが咆哮を上げる。


まずい…。


「..うぅ…」


…クッ…


全員が歯を食いしばっている。


とんでもない爆音。


「な..何ちゅうどデカい声。汗」


ジャイロ推進機の音を嫌がってる。


…..グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…


鼓膜が破れそうだ…。


ボルボーレの間穴から煙が…。汗


!?汗


…パシュッ…


「うぅ…汗」


眩しい…。


ランダムに発せられるピンク色の光。


「撃ちやがった…間穴線だ…間穴線を撃ちやがった!ボルボーレが!」


付近の航空隊が辛うじて躱わして行く。


空に無数に点在しているティゲルやオリファントが。


エネリウム線は強力。


近くを通過しただけでも計器がやられる。


….ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


衝撃が胃を直撃する。


何かに当たった。汗


間穴線が。


「ひっ…汗」


「お..ぉ…」


艦が激しく揺れる。


絶叫マシンのように。


この衝撃にアギュラーラムダはいつまで耐えられるのか。


「お、お、オリファント、ちち、沈黙」


あ….?ぁ..。汗


空中に爆炎が上がっている。


花弁のように破片が落下する。


「撃墜されたわ…汗。オリファントが…」


リタの呆然とした声。


狙っているのか…?汗


信じ難いが奴は標的を外したことが無い。


「アームα展開!ロベルト!」


全身からランダムに発せられるエネリウム線は。


「おい!よそ見をするな!集中しろ!アームα展開!」


….キィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


アルマダイエンジンが唸りを上げる。


….ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


「ロベルト!」


はっ…汗


….ドーーン…


レバーにアームが反応する。


「しっかりしろ!墜とされたいのか!」


….ウィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン…


アームが展開して行く。


「ラウル!βサブ!」


「了解!」


…ドーーン…


…ウィィィィーーーーーー…


「た、た、た、た、大変だ。こ、こ、こ、これ見て。と、と、トルカカがトルカカが、ま、ま、丸見えだ。」


ナイジェルがメインモニターに3D配置図を展開する。


トルカカと本艦がレーダーにはっきりと映っている。


髭のように細い本艦のレーダーまで。


とうとうドラド様の霊力が切れた…汗


「14が航路を外れた..汗。着陸するわ。汗」


『…ラム…r…14 不時....開始….座..標 78,..8,112、…間穴線…干渉を…受けた….復旧..予定….追っ…報告…る…こちら…ムダrm14 不時着…開…する…座78,98,112…間穴線..干渉を…..た…復旧予…は追っ….報告..する…』


陽動が無くなった。


本艦は何の援護も無いままトルカカを回収する。


音速の怪物の目の前で。


「えぇ…汗」


「何…?汗」


….ドウウゥゥン…ドゥゥゥン…ドゥドドドド….ドウウゥゥン…ドゥゥゥン…ドゥドドドド…


ボルボーレが亜空間に頭をぶつける。


興奮している。


ボルボーレが。


….ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ラムダの生体アルマダイスラスターが唸りを上げる。


目下10m ラムダが垂直急降下を始めた。


地上が迫って来る。


透明なエレベーターのように。


トルカカの姿が近づいてくる。


大きくなってくる。


地面に倒れ込んだ幼い兵曹。


透明化したラムダのジニリウムの床から。


…ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド….


急減速のGがかかる。


…ガチャン…ドーン…


アームがトルカカを掴んで行く。


…ガチャン…ドーン…


…ガチャン…ドーン…


….キィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


スラスターがトルカカの銀色の身体に土を噴き上げる。


キリンより大きな金属のマネキン。


微かに地面側の右手が動いてる。


肩でゆっくりと呼吸をしてる。


苦しそうだ。


弱っている。


透明な床がトルカカの姿でいっぱいになる。


…キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


風が容赦なくトルカカに吹き付ける。


…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ….


所々甲殻が破損し、血が流れている。


左脚は脛から折れて外側を向いてしまってる。


痛いだろうに?。


可哀想に…泣。


ラムダの爆風は今のトルカカには致命的。


「サブアーム、ホールドに成功。接合率99%!イケます!上げて」


「スラスター点火スタンバイ」


「ぼ…ぼぼ..ボルボーレが…ボルボーレが!」


「何!?」


「あぁぁ….」


「活性化してる!。ボルボーレ動きます!」


奴の全身が虹色に激しく変色する。


ぷ、プリズムシールドだ…汗。


「ひっ。汗」


直立した化け物が激しく身体を揺らす。


「急げ!」


「メチャ反応してるわ。トルカカに」


「凄げぇ砂煙。でっけぇ掃除機みてぇ…」


「古いの使ってんのか?お前ん家」


「は?うるせぇ!」


!?汗


急げ…間に合わないぞ、このままでは。


「上げろ!何してる!上げろ!」


…キィィーーーーーーーーーーーーィィーーーーーーーーーーーー…


スラスターが悲鳴を上げている。


….ンンンンーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


!?汗


おかしい…。


…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ….


….ドーーーーーーーーーーーーーーン…


イーシャスが左手でレバーを持ち上げる。


一気に。


熟練のおっさんみたいに。


サブブースターを点火した?


…キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


アルマダイエンジンが今にも爆発しそうだ。


…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ….


限界値を超えている。汗



なぜ?


上がらない…?。


まさか….汗。


….ピーーー..ピーーーーー….ピーーーーーーーー


!?


何だ!?汗


「アームβからアラートが出てるわ!ラウル!」


「砂嵐で何も見えない!」


ん?汗


「違う!煙だ!」


「アームβ問題ない!稼働してる!負荷22,007。正常稼働してます!」


「そんな…ロベルト!ロベルトの方は!」


「アルマダイレーダーに移行するわ。」


「アームα正常稼働 荷重19,890。サブ…12,320…おかしい…何故だ。汗」


…キィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


エンジンの温度がレッドゾーンだ。


「イーシャスさん。アームこのままで。早くあげて!βが保たない」


…キィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


「…何故上がらないの?汗」


なぜだ!


なぜ上がらない!


「はっ!汗。制動はかかってない!ロベルト!質量計!」


え!?汗


クレランスが振り返る。


心臓が凍る。


まさか、俺がミスを…。


!?


え…?。汗


62315kg…。


ふ、増えてる…?。


倍以上に…?


そんな重さになるワケが…。


なぜ…汗。


トルカカの質量が…。


….キィィィィィィィィーーーーーー…ボボボボボボボボボボ…


「スラスター限界値よ!」


「ダメだ離脱する。艦長!」


「何だと…汗」


「このままだとスラスターが焼き切れる」


「ダメだ。何とかして上げるんだ!」


「トルカカの質量 が!62315kg!」


「何だって!?汗」


「は!?汗」


クルーが一斉にこっちを見る。


みんな瞳孔が開いている。


….ギギギギガガガガガガゴゴ…ゴ….


….ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン…


「キャアアアアアアーーーーーー!」


….バギィィィイイイーーーーーーーーーーー…


お….折れた!?汗


「ううわっ。汗」


「おいおいおい….汗」


み、右側のアーム…αのメインだ。汗


「折れた!アームαが!アームαが」


「まじか?汗」


αの方が折れた..。


….ガーーン…ゴローーン…


アームの先端が地面に叩きつけられる。


「トルに当たったわ!汗」


透明になった床面から。


「う?汗..ウソだろ…?汗」


「み、み、見て!ぼぼ、ボルボーレが、ここ、こっち向いた!」


「ボルボーレ回頭…40°-22.5'N,140°-05.9'E..目標..こっちだわ!やはりトルカカの座標。」


「動き出した…デカブツが…」


クレランスが放心状態だ。


「ぼ、ぼぼ、ボルボーレが!ぼぼぼ、ボルボーレが、く、来る!こここ、こっちへ…」


「…あぁ….汗」


「20秒いや、あと10秒でここに…」


「どうします?艦長」


「…離脱だ…全速離脱」


「全速離脱。メインスラスター最大点火」


「り…了解..。全速離脱。スラスター最大点火!」


「ティゲルTT16を呼べ。本艦は陽動に入る」


「は…はい。ティゲルを…」


「TT16にトルカカを運ばせる」


「まさか..攻撃用アームで?」


「トライセプス隊をここへ」


「最大点火!」


「最大点火!」


…ドーーーーーーーーーン…


…キィィィィイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


….ドドドドドドドドドドドドドドドド….


…キィィィィイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…


「ダメだわ!汗。アームが離れない!ロベルト!アームが!」


ひっ…汗


「漏れてる!アルマダイが漏れてる。圧が漏れてんぞ!」


「頭上げろ!メインスラスターで引きちぎる!」


「アームでヘッドが上がらないわ!汗」


「くっそ!」


クレランスが操舵桿を叩く。


「ガレス!粒子カノン展開!射撃用意!」


「…ダメだ。アームには当たらない。外さないと。降りて手でぶっ放すか?!」


「無理よ。いくらあなたでも」


「それしか無いだろ!」


「トルカカに当たったら!?汗。あの子は…」


「ちょっと待て。俺が外す。アーム。」


ロスターが来る。


俺のコンパネの前に。


「圧を一回切んな!かせ。ロベルト。おまえはサブの方を..」


あぁ。


「ぼぼ、ボルボーレ、せ、せ、接近!そ、速度550km」


大地が撓んでる。


「あ、あ、あと、あと、5秒で到達」


大海原の波のように。


….ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


ボルボーレが6足歩行に戻った。


地上50mの巨大な機関車が突撃して来る。


砂煙をいや土砂や岩を噴き上げながら。


….ガゴン…ドゴッ…


….ザザザザドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


土砂がラムダに降り注ぐ。


「来るぞ…」


あ…ぁ…。


….ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド….


「つ…潰される…汗」


「あ….あ….汗」


迫って来る…。


とんでもないスピードで。


デカい山が。


見上げる高さ。


重そうなリングのような口。


ラムダを一飲みにする。


ほぼ真上だ…。


「距離500」


「来るぞ…」


「キャアァァァーーーーーー」


「うわあああああああああああああ」


…ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド….


『…音に…聞..…近…ば…寄っ….て…目....も見…よ….や…やぁ…..我..そ…は..ハ..イ…..ラ…首…長…..』


…ドドドドドドドドドドドドドドドド….


「あぁっ!み、み、見ろ!ぼぼぼ、ボルボーレが!ぼ、ボルボーレが、て、て、停止する!」


ボルボーレが急激に停止する…。汗


「ボルボーレ減速」


横を見てる…。


土砂が飛んで来る。


慣性で。


….ザザザザドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドザザザザドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


「止まるぞ…」


何だ?。汗


「どうなってる..」


….ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


「…いったい….」


『….国連…〜〜…ハ….ドラ….陸…第7師….第..52装….甲..騎兵….装甲….兵陸….長…タ…ジ..ア…州…ハ..ナイ…ア♪…ボビ村….生…受け〜〜父….知ら…ーー…母も….らずーー….だ..がぁ〜….』

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