表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
321/364

謀略26 / ルタール編8

投げてよこした。


ハフスブルグの将校が何かを。


左手の指で自分の唇を制し。


ふわりと落ちた。


その糸の束….。


髪の毛の束…。


白髪の混ざったブロンドの。


かなりの量、長く切り取られた。


ハッ!….汗


「貴様次第だ。」


あ….ぁあ….。汗


シンディ…。


妻の髪だ。汗


間違い無い。


「安心しろ娘にはまだ触れてもいない。確かエリサと言ったか?笑」


き….貴様…..。


貴様!怒


「ルタール!貴様あああぁぁ….」


….ガンッ….ボゴッ….ドゴッ…


…お..ぉ…


激痛が身体を走る。


ルタールの白い手袋からも血が滲んでいる。


「ハッ…ハアッ…ハッ…この..この私が…温情を..温情をかけて..ハッ…ハアッ…やるのだ…有り難く思え。」


「…貴…き…様….」


「ほお?これは貴様のせいだ。この大惨事は。笑。貴様1人の過失によってだ。罪悪感も無く随分と元気なことだ。このウジ虫野郎!」


….ガンッ….ボゴッ….ドゴッ…


「北アトラは、いや世界中の人間達は全てを失ったのだ。貴様の愚かさ故、身の程知らずさ故。私は貴様に罰を与えた。折檻も含めて。身体で分からせてやるのも飼い主の務め」


「貴….きさ…き….貴様…」


「まだ分からんのか?マバナカタールは火の海になる。ジェニファーの名において。市民は全てはバカ女の仕業だったと思い込む。過去の全てが。笑」


「き…貴..様…ぁ….……」


激痛が全身を駆け巡る。


激しい電撃のように。


ルタールがまた指で自分の唇を押さえ私を黙らせる。


「貴様が従うなら、バカ女の名誉と残りの親衛隊の命も救ってやる。但しゴーストサイファーを教えろ。全個体のだ。バカ女は生かしておかぬがなな。奴は粉々に分割し、ギニア大渓谷の火山に捨ててやる。この星で最も業火である悪神アジャイロの火山にな。笑」


抹消などさせない。


息子達の人格を。


貴様などに託す訳がない。


北アトラの極秘情報を。


「ふん。逆らえば、北アトラは更に大規模な地震と津波を受ける。マバナカタールは跡形もなく消えるだろう。思考は必要ない。貴様のような下等動物の思考など。ただ我々に従いさえすれば良いのだ。貴様は。」


この男がシー様の名誉など守る訳がない。


汚名を全てシー様に被せるだろう。


世界のネットワークは全て軍産複合体の傘下。


ハフスブルグ家、ルクセンブルグ家、スタインバーグ家…。


歴史から真実が消える。


自分達の犯した卑劣な罪を全てシー様や他の守護神達に擦りつけるだろう。


奴らの常套手段だ。


ここでシー様が負ければ全てが終わる。


均衡は崩れる。


ハイカーとウルスラ。


デュランダル•レビン。


ハイドラのアンティカ達。


そして、ハイドゥク。


全ての秩序は崩壊して行くだろう。


ドミノ倒しのように。


…父上…今です….


!?


「デニス!お前か…..?」


….?


…..幻聴だ……もはや…。


…父上…


まただ!?。


最愛のデニスは目前で死んでいる。


肉塊となって。


…父上….


「どうやら殴り過ぎたようだ。笑。古いおもちゃを壊してしまったか?笑。私としたことが。この老ぼ….」


…ッツ….


….ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン…


….ガシャアァーン….


….パリィィーーーーーン…


……



「…..な…汗」


破片が降り注ぎ、爆炎が上がる。


….


「何だ…これは…….」


…..


「何だ!どうした!汗」


何と…。


シー様を吊り上げている兵曹が。


ハプスブルグの兵曹が。


「一体どうなっている?!汗」


ルタールが慌てている。


これは幻覚か?。


….ピーーーーーーーーーーーー…


….ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン…


….ガシャアァーン….


….パリィィーーーーーン…


コントロールキューブ撃ち抜く。


ハプスブルグの兵曹が。


粒子砲で別のコントロールキューブを。


大雷神インドラ大風神エンリルの制御を行なっているコントロールキューブだ。


いつの間に再稼働をさせていたのか…汗。


ルタールは2体を奪い返そうとしていた。汗


油断をしていた。汗


しかし….。


これは…また…幻覚?。


「お….おい!コントロールルームは!貸せ!」


「ハッ」


ルタールが将校から端末を奪い取る。


「一体どうなっている?汗。」


『…第1….2…コン….ロー….やら…ま……た…全て….機能…停止…』


端末から音が漏れる。


「何だと!?」


ルタールが慌てている。


「別の奴にジェニファーを渡せ!直ぐにだ!今すぐ!」


「ハッ!渡すと言いますと…」


「渡せと言ったら…」


…ガコッ…


ルタールがジニリウムの鉄骨で将校を殴る。


かなり上の立場の者。


頭から血が噴き出している。


将校は動かなくなった。


…ドゴッ…


….ガゴッ….


「渡せぇ!無能が!」


ルタールが屍の頭を殴り続ける。


こいつは人を虫ほどにも思っていない。


「おい!あのクソから別の兵曹を使ってジェニファーを取り上げろ!手遅れになら….」


ルタールが端末に怒鳴り散らす。


何だ?。


どうした。


奴が怒鳴るのを止めた。


…ガン….


端末がアスファルトに落ちる。


奴はシー様の方を見ている。


呆然と….。


あっ!汗


….ヒュウゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥーーーーーー…


シー様のブロンドの髪が逆立った。汗


青く強い光を伴って。


放電毛…。


チェレンコフ放射。


ジェネシスがこんなに強力に発動しているのに…。


シー様は他の兵曹のような放電翼を持っていない。


シー様は頭髪から余剰なプラズマ、電気、熱を放出する。


黄金のような眩いブロンドから。


「ば…..ば….ば…バカな!」


ルタールが慌てている。


シー様の目は青く光っている。


シー様は目を見開いている。


あれは紛れもなくアルマダイの光。


シー様は生きておられる。


シー様が生きておられる!。


シー様が復活された!。


….ドタドタドタドタドタドタドタドタ…

….ドタドタドタドタドタドタドタドタ…

….ドタドタドタドタドタドタドタドタ…


ハプスブルグの兵士達が走って来る。


長い距離を。


軍服を着た中距離ランナーのように。


滑稽だ。


ここは広過ぎる。


「…ルタール..様!…ルタール様ぁ!バラクターが!バラクターが!」


先頭の指揮官らしき男が叫んでいる。


あの太った身体では苦しかろう。


汗だくで全身で息をしながら。


疾走はまだまだ続く。


1000mの全力疾走。


ご苦労なことだ。


「何ごとだ!これは!」


「ば…ハァ..ハァ…バラクターがぁ….ハッ…ハァ….は…反乱を….ハァん乱を…お…おこ….起こしましたぁ…..!ハァ…ひぃ…じ….GM10が!…は…反乱を!…フゥ…汗」


「何!?何が起きた!?」


「わ…わ….ヒィ….ハァ…わ…分かり…ません…い…一部の…ハァ…ハァ…バラクター…ハァ…我が軍…兵曹…研究員と無差別に…ヒィィ…こ…攻撃を…ハジ…始めました」


「愚か者!まともな機体で即時反撃…」


「す….既に…ハァ…ハァ…反撃しておりますが…ですが……ぐぇっ…」


….ガゴッ…


ルタールが指揮官の顔をジニリウムの柱で殴りつける。


「私が話している。貴様如きがなぜ遮る?」


指揮官の顔はジニリウムの柱で陥没した。


即死だ。


他の兵達が唖然としている。


知らなかったのか?。


こいつはこう言う奴だ。


ルタールはこう言う奴だ。


サイコパスだ。


どんなに綺麗な身なりをして、品のある話し方をしても。


一見穏やかで優しい紳士であったとしても。


知性が溢れて理想を話すリーダーだとしても。


実態はサディストであり殺人鬼だ。


人を虫ほどにも思わない暴君だ。


….ピーーーーーーーーーーーーーーー…

….ピーーーーーーーーーーーーーーー…

….ピーーーーーーーーーーーーーーー…

….ピーーーーーーーーーーーーーーー…

…ドン…

….ドーーーーン…

….ドーーーーン…


階上でバラクターの放つレーザーが赤い蜘蛛の巣のように光る。


複雑な模様の電飾のように。


バラクター同士で熾烈な戦いをしている。


あれは紛れもなくシー様のお力。


シー様を串刺しにしている兵曹、バラクター。


青く目が光っている者達。


シー様に操られている。


力が漲る。


痛みが消えて行く。


そうだ。


私の、いや、我々の命運は尽きていない。


あの方が生きておられる。


我らの守護神は健在だ。


心の拠り所があるだけで、人は強く生きられる。


シー様をお助けせねば。


だが絶望的なこの鉄の棺桶。


何とかせねば。


アルマダイが無ければビクとも動かない。


どうすれば。


…父上…


デニス!。


おまえの声が聞こえる!。


…ガチャ….


…..ピーーーーーーーーーーー…


電気系統が戻った!?。


なぜ。


もう当にバックアップは無くなっている。


アームが勝手に動く。


勝手に….。


上がったり、下がったり。


壊れているのか?。


違う。


この機体は何かを私に…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ