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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
291/364

ダヌアの空に128 / 装甲歩兵43小隊編1


...パシィッ...パシッ...パシッ....


夕闇に閃光が走る。


彼方で魔獣ボルボーレが発光している。


ここから 北北西 約50km。


目の前でフラッシュを焚かれているようだ。


俺たちは、魔獣ボルボーレ影響下から逃れた。


情報収集どころか、壊滅してしまうからだ。


装甲歩兵大隊 G6は、結晶山 h162 の麓に展開してる。


この500m級の山の裾野に。


ここが今の野営地。


2000人がこの数km圏内に広がる。


7日振りの休息日。


数100の青い光のドーム。


身を寄せて佇む。


暮なずむ平原に青い光の海。


ファザスフォーメーションシールド。


ブルーシールと呼ばれる。


シカム波のエネルギーシールド。


俺たちのブルーシールには300人。


本大隊では一番要で大きなファザス。


メインビレッジだ。


ビレッジは他に3箇所。


相互に1.5kmの距離。


ビレッジ同士は、カリギュラのネットワークで繋がってる。


周りに中〜小クラスのセトルが集まる。


セトルは10〜50人前後。


タントのように大きな兵士は、部族ごとに分かれる。


結晶山 h144の中腹に、アルガードが8輌、10式が10輌、ファラールが23輌。


そして、レオパード7(セブン)とピーカー4機が待機している。


レオパード7の60mの巨体は、頂上にのしかかり、こちらに目を光らせている。


まるで巨大な地蜘蛛のように。


幸い、今は、キリークも、バルバロイもいない。


大型機材を脅かす小型のモンスター達も。


...あぁ...


...おぉ...


サビアノーアは魔獣ボルボーレに激突した。


地面に叩きつけられて、原型を留めていない。


華奢だが70mの巨体はとんでもない重さ。


それが、ゴム人形のように。


ボールのように、空高く弾き飛ばされた。


悲惨過ぎる...。


霧散しなかっただけついてる。汗


おぉ...


しかし、なぜトルカカまで...。


唸り声しか出ない。


あぁ...ぁ...


強者つわもの達が。


...ぉ....お。


強気なベーターでさえ。


ベーターは、代々続く戦士としてエリートの家系。


幼い頃から、格上と言われる敵を倒し続けて来た戦闘の天才。


シャガール人だ。


征天大剛ルソンに見染められら兵曹になるべく育てられたが、ベーターはそれをやめ軍を選んだ。


誰もが言う。


大闘技に入れば、マジゥを超えるアンティカになっていただろうと。


この43小隊は怪物の集まり。


だが上には上がいる。


例えば、バンガルーロ。


奴は素手でウィンテルンを倒す。


間も無く2つの日は沈み、夜のとばりが落ちる。


...チカッ...チカ...チカ....


静寂の中、再び、閃光が走り、轟音が轟く。


そして細かい振動。


雨のない雷雨だ。


風は涼しい。


さっき迄の灼熱が嘘のように。


寝返りを打つ兵士達の焦りが伝わる。


今は休むのが仕事だ。


「いいなぁ。寝られて」


次はいつ休めるか分からない。


「もう少しの辛抱だ。小一時間で終わる。」


疲れ過ぎて眠れない。


8時間後に大隊は動き始める。


時間は正味あと5時間。


....カチカチ...チカチカ....


カリギュラ エクステンド77が呟く。


我々の頭脳。


77は、ジグルス8とラムダ24の演算装置や、レーダーを借りている。


お陰で、情報を完全に把握できる。


そしてモニター群。


このバカ広い光のテントで、唯一敷居で仕切られている場所。


3重のブルーシールで囲まれている。


「おーい!。43の奴ら!そろそろ装着してくれ!装甲機!」


入り口で誰かが叫ぶ。


顔が見えない。


簡易シャワーロボ、いや、トイレロボの陰で。


〈静かにしろって〉


グリンが身振りも加えて制する。


グリンは28歳。


小柄だが鍛え抜かれている。


セクハンニ神殿の僧侶。


拳法の師範だった。


頭はつるつるだ。


この小隊の中では1番まともだ。


クールで美人な嫁さんがいる。


元特殊部隊の。


...チッ...うっせぇなぁ...


...折角寝たのによ...


「あと何分で離脱?」


俺の43小隊は一足先に離脱する。


大明王 ジーンの復活を手助けするために。


「後10分くらい?。」


「じゃ急がなきゃ。ねぇ。隊長。ドリスさん起こします?」


「あぁ。そうだな。」


...バチィッ...


「おっ...」


焦りとは無縁の奴らもいる。


...バババ.........ンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンン...


レイヤとルイヤだ。


「ファザス落ちた。笑」


レイヤが、その長い両腕で天井を指差す。


この双子はまだ20。


疲れも知らない。


今時の若者は手脚が長い。


顔も小さくてまるで宇宙人みたいだ。


このゾーグで多感な時期を過ごした...。


いつもふざけているが、健気だ。


「え...?。汗。ヤバいじゃない。10分で直るかしら...」


ミライは2人の幼馴染。


普通の娘。


レイヤとルイヤの幼馴染。


装甲歩兵の4割を占める女性。


大半は女傑ばかりだ。


ミライは医療•看護隊に属している。


彼女のようにか弱く見える女性はまれだ。


そして、ミライのその見た目の儚さ故、大半の男は心を鷲掴みにされている。


「9、23、57停止。オーバーロードみたい」


青い光が動く隊員の影を地面に映す。


魔獣ボルボーレからこんなに離れてるのに...」


安全装置ブレーカーはどうした?」


「入ってますよん。」


「ホントに作動してたか確認しろ。それから、どっちか被害•影響範囲。報告!」


「ほゎ〜〜い」


計器の光がレイヤの整った顔を緑色に照らす。


チッ...舐めてんのか!。


...シュゥゥゥゥーーーー...


「4番ファザスだけ。消失は。他は大丈Vぶい!」


ルイヤがピースサインをカニのハサミのように動かす。


「ギャリーから取ってきといたよ。r-4」


レイヤもカニのハサミを真似する。


「気が利き過ぎでしょ。笑」


呑気なメガネ達だ...。


ん...汗。


ん!?。


「なに?4番!?」


ここだ...汗


俺らの所じゃないか。汗


....ンンンンーーーーーーーーーーー...


...バチィ....


....シュゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥ...


おぉ...


...zzzz.....Zzz...


ん?


バルバロイの咆哮が...。


「ドリスさん怪獣じゃん?」


あぁ..


「ホンマに...」


そろそろドリスを起こさねば。


..あぁ...


ぁぁ...


...zzz...ZZ...zz..


「おい。ミライ。ドリスを起こしてくれ」


...おい..シールドどしたぁ...


「起きてくれません。ずっと起こしてるんですけど」


...えぇ...


シールド落としたままでは行けない。


寝てる間に全員ウィンテルンに食われるとか、洒落にならん。


[ウィンテルン : 如来頭の鋼鉄のムカデ。5〜13m]


奴らは、美味しそうな飯が転がっていて、大喜びするだろうが。


人間が好物なのは、ケラムの化け物と同じだ。


....シュゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥ...


シールドが消えて行く。


...zzz...ZZ...zz..


ドリスは一向に起きる気配が無い。


「何とか起こしておいてくれ...」


夕焼けは美しい。


こんな場所でも。


空には一番星...。


悪くない。


「何とかって...。どうすれば...。腕組みしてないで隊長も手伝ってください!」


「23番再起動中。」


「4番復帰するよーーぅ。」


「予定通りに出られそうだな?」


グリンが俺の肩に手を置く。


グリンと俺は同期だ。


...チカッ...


...パシィィィ...


「うわぁぁ」


「何だ?汗」


「そろそろ機材装着した方が良い。俺たちも。」


『....気を...つけ..ろ!....魔獣ボルボーレ...が...また...サビ..アノ...ーア...に...激突.し...た...わざ...わざ...弾き....飛ば..し...やが...った!...さっ....きの...より...強い.....ぞ...』


くそ...汗


サビオは致命傷を負っている。


何てことを...。


こうしてはいられん。


「ブブもう準備しろ!いつまでモニター見てる!ドリス!。起きろ!まだ寝てるのか!」


...カタカタカタ..カタ..カタカタカタカタ...


モニターケースの上。


コーヒーカップが揺れる。


「デカそうだ。ドリスを起こそう。衝撃波が来る。」


グリンは用意が終わって、他の奴の面倒を見ている。


「あの...起こしてるんですけど。起きなくて。」


...ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ...


「またか.....」


...余震これ?汗...


...かなり大きい...


...サビオの?...


...ヒッ...


...ググ...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


まずい...。


「来るぞ!」


ファザスを復帰させなくては。


みんな吹き飛ばされて即死する。


装甲機から離脱している。


「ヤバい...汗」


「兄さん。シールドおなしゃっす。ジェネレーター通常運転に戻るよ。」


「オッケー。...よっ...戻した。5秒でつくよ。」


全く緊張感が無い。


この双子だけは...。


だがそれが助かる。


こういう状況では。


...ガゴン...


「グッジョブ。」


...ブブ...ブ..ブ...


「うぃっす。」


しかし、良く平然と喋れる。


満身創痍で飛び出してきたトルカカにも。


モニター2に映るぐちゃぐちゃに潰れたサビアノーアにも。


全く驚かない。


...ピーーーーーーー...カチ...ガガガ...


...シュゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーンンン...


シールドが復帰して行く。


...シャアァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


青い光が、夕焼けの空を一気に隠して行く。


...ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ...


「来たな...」


「き、来たぞ!」


...はにゃ?...


...あーん?...


....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ..


間一髪だった。汗


...ひっ...


...なんだ!...


ファザスの上を爆風が吹き荒れる。


...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


...うわぁぁ...


光のシールドが激しく揺れて、たわんでいる。


...おぉい...


...バスッ...


..ドンッ...


...ガラン...ガラーーン...


岩、砂、木片、あらゆるものがファザスに激突する。


.....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


...キャアァァァァァァ...


...ガシャン...パリィン...


地面が激しく揺れる。


....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....


...うわぁぁぁぁぁぁ....


...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


「あいつ石化が始る...」


ブブが呟く。


モニターのサビオを見てる。


振動で揺れるモニターを。


「ブブ!早くしろ!」


まだ座ってる。


ずっとチョコを食ってる。


ジニリュウム製のチェアがブブの巨体に撓む。


衝撃波も爆風も、まるで意識していない。


一見、色白のただの風船デブ。


いつも汗をかいている。


東洋系の無口な童顔。


性格は純粋な子供。


しかし...。


しかし、ブブは底知れない。


特殊部隊が全員束になって、ブブ1人に敵わなかった。


シールズ2276(訓練名)は有名な話だ。


奴の力の最たるもの。


鋭くリスクを感じとる。


野生の勘...いや、そんな生易しいものではない。


奴が怪物と言われる所以ゆえん


「ぐずぐずするな。ブブ。装甲機をつけろ。ティアガー(担当する兵)が最優先だ」


ビールスはブブからチョコを取り上げて捨てた。


ビールスが臆することはない。


ブブに対しても。


ビールスはルクスブルグ家の王女。


40越えにしてかなりの美女。


特殊部隊の中の特務隊。


全軍の0.000016%。


僅か32名の中の1人。


飛び切り優秀だったと言う。


筋金入り。


父親はあの海軍大臣。


冷徹で野心家。


『....こ...ちら...ラ..ム...ダ....9....。13(サーティーン)..ロ....ス..ター...ど...う...ぞ....』


ハイドラの装甲兵は足軽ではない。


他国とは違う。


『....ロ..ス.....タ..ー...だ...』


強靭なヒドゥイーンの中でも選りすぐりの屈強な者達。


『...サ..サー...ン..に...スプリ..ン...ヘラ...ー..の照射を...開始..す....る.』


そして、装甲機ガラントウォークが、力を極限まで増強する。


装甲機ガラントウォークを装着した我々は、ザバナやギガサニーにも対抗できるだろう。


自ら選んで大地に立つ。


己の力で戦況を切り開く。


それが、装甲歩兵魂だ。


俺もその1人。


『...どう...した....ラ...ムダ...9...応..答しろ...』


ブブがビールスを睨みつける。


「何か不満か?ブブ」


...ドスーーーーン...


...ひっ...


...おぉぉ...


『....ダメ..だ...補給...出来....な..い....ササーン.....の..残..存バ...イ.タルが....低...すぎ.....る..』


...ドスーーーーーーーン...


...ひぃぃ...


叩き起こされた、兵士達が震え上がる。


「あーた達。仲良くおし。うるさくて眠れやしないよ。」


紫色のモジャモジャの髪。


5mの巨体。


「寝てたじゃねぇか。笑」


グリンが笑う。


『...ササー..ンの...自然炉タービンが...回..らな...い...』


「起きたわ!起きました!」


「何よ?起きたら悪いの?」


ドリスデンが目を覚ました。


...ズズズ...ザァザァザァ...ガシャン...パリィン...


「おいおい!」


ドリスは口に手を当てながら、毛布代わりの10式(戦車)のカバーを引きずってる。


「あぁあぁ...倒すなよ。精密機器なんだから!」


中型のダンドア族でこのデカさは極めて珍しい。


奴は、ザザルス解放軍 特殊部隊の大将だった。


ドリスデンは人類として強すぎる。


だから化け物との戦いを好む。


奴も数々の伝説を持つ。


ドリスがいなければ、ブブはこれほど大人しくはない。


「ジーンの野郎。あんなデクの棒にやられやがって。」


ベーターが苛立ちを隠しきれない。


装甲を装着しながら。


「隊長全員準備オッケーです。」


「グリンさん。ブブがまだ。」


「あいつしょうがねぇなぁ」


「ピック。見てくれ。結晶山D33、ルートはnn615が良いと思う。」


ビールスはいつも冷静だ。


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