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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
267/364

ダヌアの空に104


...ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


大地が上下する。


ゴムの板のように。


超重量級戦車をカエルみたいに跳ね上げる。


...ズドドドーーーーーーーーーーーーーーーン...


砂嵐が噴き上がる。


白い犬神ゾアーグはしゃがんだまま歩く。


ただただ巨大な真っ白な獣。


ビルをも跨ぐ天空の化け物。


隙間から見上げる空。


いつもより高く、どんよりと曇っている。


巨大な尻尾が飛行機雲のようにうねる。


白は賢くは無い。


...ブウゥヲオオオオォォォォォォーーーーーーーーゥゥ...


闇雲に両腕を振り回している。


...ブウゥゥゥゥヲオオオオォォォォーーーーーーーーーーゥゥゥゥッッッッ...


イブラデ達の悲鳴が聞こえる。


怖すぎる...。


火口包囲陣に護られてたって。


こんなビルみたいに太い腕...。


高い空から振り下ろされて来る。


鉄の塊みたいに。


見えないから当てずっぽう。


圧倒的な質量。


擦っただけで霧になって飛び散ってしまう。


こんなに振り回されたら。


風圧だけで吹き飛ばされてしまう。


どんな生き物でも。


ふと意識を戻し、目を開ける。


ここは50km離れたジャミー84のコックピット。


怪物マシン、人型戦車の中。


ダンバーでコックピットに吊るされている。


暗闇に色鮮やかなコンパネの光。


メインシールドには砂煙と青と白の小人。


彼方の。


微かなアフロダイエンジンのアイドリングが伝わる。


そしてパンダイアログ。


鉄の箱が優しく握り返してくれる。


温かいおばあさんの手のように。


トヨコ様の明るい笑顔が脳裏に浮かぶ。


淡く、でも、はっきりと。


私はやって行ける。


通用する。


生まれて初めて。


人のためになれる。


ぽっちゃりのノロマな女が。


熱意と一生懸命だけが取り柄の。


そして...。


...


..


...ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


また歩く。


白い犬神ゾアーグ


しゃがんだまま。


ラムダ18(エイティーン)は小さなライター。


ジャミーは小人。


仲間たち。


必死でイブラデを救おうとしてる。


タンパーを食べようと暴れる白い犬神ゾアーグ


この貪欲。


意地汚さ。


これでも神...?。


神を名乗れるの?。


!汗


まずい!。


〈...サクラ!。ゾアーグが!。汗...〉


ゾアーグが火口包囲陣のエネルギーを吸収しようとしている?。


どうやって...?。汗


この集まった莫大なアルマダイ。


奴らのものになってしまったら...。


1400億カルーデラ。


とんでもないエネルギーの塊。


山脈を一つ消滅させるほどの...。


でも、エネリウムとアルマダイは水と油...。


え!。汗


ゾアーグに能力がある。


特殊な...。


水を油に変える力。


ゾアーグはこれを使って...。


ひっ...!。汗


それだけじゃない!。


更に....。


あぁ...。


ぁぁぁぁ....。


と、トヨコ様!。汗


〈...その通りじゃ。い、いかん!。サクラ!。動きはじめたぞ!。一刻の猶予も無い!。...〉


まずタンパーを逃さないと!。汗。


特殊なエネルギーを持っている。


オパとはまた別の。


〈...そうじゃ!。サクラ!。その通りじゃ!。あれは必ずやハイドラの明日を背負う!。...〉


タンパーはイブラデの中では最も霊能力が強い。


なのに全く交信できない。


ダメだ。


拉致が開かない。


パスタップに頼るしか。


「ラムダ13!。汗。応答願います!。こちらJ114サクラ!。J114サクラ•マイ!。」


『..............』


汗。


ダメだ。


「応答して!。汗」


トヨコ様!。


〈...呼びかけるのじゃ!。...〉


「ラムダ13!。ラムダ13!。応答してください。」


〈...こっちを!。こっちを向いておくれ!。タンパー。...〉


....ゴーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


あぁぁ...。


は、始まってしまった...。汗


火口包囲陣のエネルギーが巻き上げられている。


迂闊だった...。


青いゾアーグに巻き取られて行く。


綿菓子みたいに。


イブラデ達の尊厳を、命を、剥ぎ取って行く。


青い光がもの凄い勢いで。


稲光が走る。


台風の雲のように。


『...艦..長!。火口...包囲陣..エ.ネ...ルギ..急激に低下。急.激...に..低...下!...』


『...移動...し..てい...ます。アル...マ.ダイ...が。アル..マダイが。...』


『...どこへ...だ?。阻止しろ!。何としてでも!。...』


『...ゾア...ーグ...への..攻撃を...強め..る。...』


『...こ..れ!。タ..イド...ゲージ...見て..く..ださい!。巻き..取ら...れて..います。青..い...ゾア...ーグ..です。凄い..勢いだ!。...』


〈...情けない...。肉体の無いワシにはどうすることも出来ん。...〉


「タンパーを逃して!。ラムダ13!。」


『...え?...サ..ク..ラ!?。何...で!?。...』


サムサさんが...。


〈...このバカ犬を操るなど造作も無いに...。...〉


『...お..い!。汗...サ.ク...ラ!。な...何..や..ってんだ...!汗。...』


「タンパー逃げて!。タンパーに伝えて!。今すぐ逃げて!。白いゾアーグは復活する。反撃はやめて直ぐに逃げて!。白いゾアーグが復活する!。」


〈...なぜタンパーに伝わらん...おかしい。これほどまでに呼びかけておるに。...〉


『...こち.ら...ラ..ム..ダ13...ヘザー。管..轄...が..違う。ど..うや...って.ダイ...レク..トコー..ドを入手した..?。貴..チーム....のメイ..ンターフ...はラムダ18..。...』


『...13..戦略...のガレ..スだ。反.撃..をやめ..る?。誰だ..てめぇ!。ふ...ざけた..こと.抜かす...な!。相手...はゾア...ーグ..だ!。ゾ...アーグな..んだぞ!。タ..ンパーが..抜け.....たら.シエ..ルも.マセナも...殺されてしまう!。...』


ひっ...。汗


で、でも...。


危険の度合いが違う。


意味が違う...。


そうだ!。


あの白い女兵曹...。


無数のバルバロイを次々と倒して行く。


物理的な力なら、アンティカ級。


そうブリュイエール。


ブリュイエール!。


助けて。


あなたの力が必要。


〈...おまえは誰?。心に直接話しかけてくるなんて。それにわたくしに指図をするなんて。...〉


私はサクラ。


サクラ•マイ...。


〈...サクラ•マイ?。聞いたことがない。わたくしの心を覗くとは。無礼な女。...〉


お願い...。


あなたがイリーナ族ノーナの王女なのは知ってる。


〈...それをなぜ?。ノーナの王女である事は誰にも話していない。低級な霊能者なら許しはしない。...〉


今ハイドラはピンチに。


タンパーが殺されてしまうかもしれない。


〈...何ですって!?。あの子は明日のハイドラを背負う新しい兵曹。サビアノーアと同じく。...〉


〈...ブリュイエール。ワシじゃ。トヨコじゃ。...〉


〈...トヨコ?。......なぜトヨコが...死んだはずです............〉


ブリュイエールはプライドの高い兵曹。


〈...肉体のワシは死んだ。確かに。しかし死しても49日間、死者は現世に留まるのじゃ。...〉


気高い王女はタンパーのために、仲間のために、敵に背を見せることを受け入れた。


ブリュイエールと言う防波堤が消えたら、バルバロイが雪崩込んで来る。


火口包囲陣の防御は、オパのルー(砦)だけ。


オパたった1人の。


他のイブラデ達は予想以上に疲弊してる。


口を聴けないほど。


ここを凌がなくては...。


状況はかなり悪い。


イブラデは壊滅してしまう。


このままでは。


私が凌がなくては。


「ラムダ13!。ブリュイエールがそちらへ行く。ダンパーに逃がして!。ぞ...ゾアーグ達はタンパーを欲してる!。更なる災厄を呼び込むために!。」


『...更..なる...災厄..だ!?。意.味不...明な...こと抜.かし...てん...じゃね.ぇ!。...』


『...サ...サク....ラ!。大..丈夫か?...』


「タンパーの力。ヒモンの力は青と白には無いエネルギー!。大変なことになる!。」


『...ヤマ...ト!。サ..クラの...パス..タップ...を切れ!。あい..つおか...しい...。13に..直接...アク..セス...させ..るな。...』


「切らないで!。お願い伝えて!。ねぇ!。間に合わない!。助けたいの!。」


『...離れ...ても..迷惑...か.け..やが....って!。大..人..しく...し.てろ!。こ...の..厄介.者!...』


『...ちょ..待っ..て!。切ら..ないで!。サク...ラちゃん..の話...聞いて!。...』


『...艦.長。ユー..イ少...尉。ユ.ーイ...ピ..アル.ティか..らで...す。...』


『...ユーイ...少..尉が?。...』


〈...ラムダ13。私はブリュイエール。ガレス。サクラの言うことは本当です。トヨコもいます。わたくしが援護に入ります。タンパーを外郭まで逃がしなさい。...〉


『...艦...長!。こ、今..度はブ..リュ.イエー...ルだぜ!。ト...ヨコ様..がいる.と言っ...てる。...』


『...ト..ヨコ...様は..もう...亡く..なって....いる。ブリュ...イエ..ール...まで..。...』


『...う.わあ...ああ..ああ。...』


『...耳.が、耳..が.ぁ。...』


『...キャ...ァァ..ァァァ..ーーーーーー。...』


!?


一体...。


....BOBOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


ひっ。


犬神ゾアーグの咆哮。


50kmも離れてるのに。


な、何かが始まる...。


胸騒ぎがする。


〈...タンパー!。タンパー!。逃げて!。...〉


なぜタンパーにだけ届かない...。



はっ!。汗


青い犬神ゾアーグカーサを持ち変えた。


腕を胸の前に。


ゆっくりと


十字に組んで行く。


...ゴガーーーーーーーーーーーーーーン...


砂塵がモクモクと噴き上がる。


カーサを地面に叩きつけた。


遅れて音が届く。


「ひっ...汗。」


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


来た....。


〈...まずいぞ、サクラ!。阻止せねば。...〉


白ゾアーグの動きが止まった。


時間を止めたみたいに。


空中で静止してる。


いったいどうすれば...。


...ドドドドドドドドドドドド...


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


不自然な体勢から。


立ち上がる。


まるで高層タワーのような身体。


同じように腕を十字に組む。


青いゾアーグと..。


!汗


火口包囲陣のエネルギー。


もう半分以上奪われている...。汗


「オパ!。オパーーっ!。陣を!。陣を閉じて!。陣を回転させて!。」


陣を閉じなくては!。


回転させる力はイブラデ達には無い。


それは分かってる。


でも、そこを何とか。


みんな食われてしまう。


あの意地汚い神に。


いや、神を名乗る妖怪に。


陣を取り返す。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


『...な、何だ...この...地.鳴り!。...』


『...ぎ...逆..流し...てる!。今..度は...いっ..たい...。エネル...ギー..が戻っ..て来る。火口..包囲...陣に戻って来る。...』


『...おい!。タ..イド...メー...ター!。...』


『...は、はい..!。よ...46%?。汗。も..も..戻ってる。...』


『...強い力が.働い...てる。途方も..ない。紛れ..もなく..3大神..官のお力。...』


『...まさ...か.エメ..ドラド...様..が?。汗...』


〈...そうじゃ。3大神官の1人がおる。ワシの後継者が。笑...〉


〈...さ..ァ.ク...ら..ァ...〉


〈...し、しまった!。い、いかん。汗。見抜きおった!。汗。犬神ゾアーグがサクラに気づいてしもた。...〉


〈...さ..ァ.ク...ら..ァ...〉


〈...サクラ。気をつけんしゃい!。絶対目を開けてはいけん。...〉


〈...さ..ァ.ク...ら..ァ?...〉


〈...サクラ!。目を開けてはいけんぞ!。絶対に!...〉


〈...さ..ァ.ク...ら..ァァァ...〉


「誰?。」


〈...ダメじゃ!。サクラ!。耳を貸しては!。そいつはクイナではない!。ゾアーグじゃ!。おまえの兄のエネルギーを模写しておる!。...〉


〈...さ..ァ.ク...ら..ァ...〉


〈...いけん!。いけんぞ!。サクラ!。それはクイナではない!。...〉


〈...さ...ッ.ァ.クら...ァァ..ァ.ァ...ッ...〉


クイナ兄ちゃん!。


お願い。


力を貸して。


〈...目を開けてはいかん!。サクラ!。それはクイナではない!。あぁ!。...〉


!?


ひっ...。汗


ぞ、ゾアーグ...。


「キャァァアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー。」


〈...サクラアアアアァァァ!...〉


...ボォゴォォッ...


...ドボボボォォォォッ...


...ブゥヲォォゴォッ...


〈...い、いかん..白いのが....〉


『...う.わ。何...だ.あ..れ。目...が..復..活.....し.て行..く...。...』


〈...いかん...神眼が開いて行く。サクラや!。サクラ!。しっかりおし!。...〉


『...ぞ、ぞ、ゾ.アー..グ。白。し、白。む、胸の複...眼が....か...か..回..復し...て行く。...』


〈... この大平原ゾーグでの災厄は全てこやつの仕業。神々がこの星の生き物を作る時、犬神ゾアーグ達 悪神は掟を破り、ケラムやゾーグに化け物を創り出した。獣が虫の複眼を持つのも、心の拠り所を真似るのも。...〉


『...また..エネ...ル.ギー...が...。エ..ネル...ギー...が巻..き取...られて..て行く。...』


『...一体...どう..なっ...てる?...』


...メリメリメリメリメリメリメリメリメリ...


〈...サクラ!サクラ!目を!目を覚ましておくれ...〉


...ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ...


〈...起きておくれ!。サクラ!おまえさんだけが頼りじゃ!...〉


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


『...く、首が復活して行く!。ゾアーグのクビが!。...』


〈...サクラ!。サクラ!。サクラ!。...〉


はっ!。汗


私、一体...。


気を失ってた?。汗


頭が割れるように痛い...。


しまった...。


ゾアーグの首が!。汗。


肩の上を起き上がって行く。


砂浜のモアイ像をロープで引き起こすみたいに。


トヨコ様!。汗


〈...サクラ!。タンパーが!...〉


え!?。汗


ハッ!。汗


し、し、しまった!。


まだ逃げてないの!?。汗


攻撃はもう全く当たっていない。


透過し貫通してしまう。


「逃げてーーー!。タンパー逃げてぇぇーーーーっ!。」


私の声はタンパーには直接届かない。


何故なの!。


ブリュイエールの声は...。


え?...。


〈...逃げるのです!。タンパー!。...〉


あぁぁ...。


白いゾアーグが力を取り戻した。


完全に。


神の力を...。


「逃げて!。タンパー!。」


『...タ..ンパ.ー!。こ..ちら.エ..マ!。ny454..まで..後退...せよ!。タン...パー!。...』


『...タ...ン..パー!。タ..ンパ..ー!。応答...しろ!。...』


『...J114...が..正.しか..った。...』


『...タ..ンパー...ーーーー.ー!。逃..げろーー..ーーー!...』


タンパーは攻撃を諦めた。


やっと。


逃げて!。


茫然と見てる。


ポイント66666で。


なぜ攻撃が当たらなくなったのかと。


〈...タンパーは呪いにかかっておるのじゃ。ゾアーグの術に。それでワシらの声が聞こえん。...〉


!!


まさか...。


〈...迂闊じゃった...。汗。ワシとしたことが。今頃気づくとは..。...〉


解かなくては!。


その呪い。


...ブウゥゥゥゥヲオオオオォォォォーーーーーーーーーーゥゥゥゥッッッッ...


白いゾアーグの手が降って来る。


雲みたいな手。


巨大な手。


タンパー目掛けて。


「逃げてタンパー!。タンパー!。タンパー!。」


...バウウゥゥゥゥン...


ぶつかった!。


...バリバリバリバリ...


タンパーの甲殻が砕けて行く。


...バババババババババ...


真紅の宝飾のような甲殻が


飛び散って行く。


タンパーは既に鮮やかな色を持っている。


もう少しでラキティカに変体する。


そうなれば、簡単に食べることなんか出来ない。


ゾアーグですら。


この重い手。


ぶつかっただけで、イブラデでは大きなダメージを受ける。


...ブシャァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーー...


赤い体液が噴き上がる。


タンパーは血だらけ。


あの美しい甲殻がボロボロに。


ゾアーグに握り潰されて行く。


『...指が..復.活し...てる..ぞ!。...』


流石に神。


不死身。


「タンパー!。タンパー!。逃げて!。今なら間に合う!。しっかり!。タンパー!」


持ち上げられて行く。


白の手の中に。


白の手に握り締められて。


〈...うわ...〉


タンパーが気づいた!。


〈...サクラ!。呪いを破ったぞ!。...〉


ダンパーが目を覚ました。


〈...うぅ。い、痛ぇ。攻撃しろって言ったのあんたじゃねぇか。泣。痛ぇ。これじゃもう俺ダメだ。食われる。こいつに食われる。泣...〉


目を覚ました!。


...グゥォォォーーーーー...


〈...私は言っていない。...〉


〈...じゃ何?。さっきの。泣...〉


犬神ゾアーグの仕業...。


大丈夫。


まだ、今なら逃げられる。


白なら。


白なら私の方が上。


助けてあげる。


逃がしてあげる。


私が。


死なせるものですか!。


見ていなさいゾアーグ!。


私が相手よ!。


!汗


まずい!。


...ズドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...ズドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


しまった!。汗


青が!。


〈..青が気づいたぞよ!。タンパーに!。サクラ!。...〉


青い犬神ゾアーグが突進して来る。


目を、一つ目を血走らせてる。


....バキ..バキ...バキン..バギ...


白がダンパーを握りしめる。


タンパーの甲殻が砕け散る。


青に渡したくないんだ。


でも、タンパーはあんたなんかのものじゃない。


〈...ぎゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!。...〉


「タンパー!。タンパーーーー!。」


〈...し、死にたくない。泣...〉


タンパーはもはやボロボロ。


満身創痍。


でも...。


死なせるものですか!。


させるものか!。


私が何とかする。


この命に変えても。


開きなさい!。


その汚らしい手を!。


タンパーを離せ!。


白い犬神ゾアーグがダンパーを口に持って行く。


頭からかじる気だ。


させない!。


タンパーは身を捩ってる。


必死に。


逃げようとしてる。


手足をバタつかせて。


うっ...!。


クッ!。


...クワァッ...


〈...サクラ!。目を見ちゃいけん!。目が見えんくなる!。それだけではない!。目を入り口として心を破壊される!。おまえさんこそ粉々にされてしまう!。死んでしまう!。...〉


でも、目を逸らしては勝てない!。


それは逃げるだけ。


かわしてるだけ。


勝ちたいなら立ち向かうしかない。


救いたいなら見るしかない。


眼力で。


霊能力で。


神の神通力に。


この唯一の取り柄。


唯一できるたった一つの事で。


あの子を救いたい。


あの子の家族を救いたい。


無事に帰してあげたい。


拙いこの私の取り柄で。


ナジマ様。


トヨコ様。


私に力を貸して。


力を貸してください。


〈...分かったよ。サクラ。泣...〉


『...ヤ..マト!。見..ろ..!。ゾ..アー.グが...また..固まっ..た...ぞ。今度..は.いったい...』


〈...でもな。無茶はしてはいけんよ。ハイドラにはおまえさんが必要じゃで。...〉


タンパーの悲鳴が聞こえる。


〈...死にたくない...。...〉


助けるわ。


絶対に。


絶対に!。


絶対に逸らさない。


絶対に諦めない。


この子のお母さんや兄弟のために。


負けられない。


苦しい...。


だけど。


痛い...。


目が。


耳が。


でも。


骨が軋んでいる。


それでも。


皮膚が焼けるように。


全ての感覚が熱い。


焼けるように。


そしてこの恐怖。


無になる恐怖。


自分が壊れて行く恐怖。


こんな苦しみ始めて。


神に逆らう愚かな人間。


神からすればただの虫けら。


ただのゴミ。


でも。


だけど。


それでも。


負けない。


絶対に諦めない。


私は絶対に負けない。


兄ちゃん達!。


見てて!。


私の勇姿を!。


最初で最後の...。


〈...!?。汗。い、いけん!。サクラ!。死ぬ気か?。汗...〉


豚まんじゅうで私を護って...。


何の取り柄もないぼっちな女の。


「こっちを見なさい!。犬神ゾアーグ!。おまえじゃない!。青い方よ!。」


...クワァッ...


「ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァ!」


〈...サクラァァァァ!。サクラちゃあぁぁん!...〉


目から血が吹き出る。


真っ赤な血。


気が遠くなる。


でも、平気。


負けない!。


負けるものですか!。


〈...俺もうダメかも...。母さん...。...〉


「大丈夫!。諦めないで!。私が着いてる!。タンパー!。」


..クッ...


血の匂い。


戦闘服に落ちている。


壊れた水道みたいに。


ボタボタと。


私の身体。


もって。


タンパーを救う時まで。


青が手強い...。


青いゾアーグが横取する。


...バギィ...ボキィ...バキン...


タンパーの骨が砕ける。


〈...ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァ...〉


思い切り。


あぁぁ...。


何とかしなくては。


〈...分かったよ。サクラ。...〉


ダンパーが引きちぎれて行く。


何とかしなくては。


〈...ジンガー来い!。...〉


青いゾアーグの方が格が上。


〈...ジンガー来い!。来るのじゃ!。...〉


何とかしなくては。


【...お..い?...】


また、白いゾアーグが奪い返そうとする。


...ゴキゴキガキィ..ギュウゥゥ...


何とか...。


【...ジ..ン..ガー..が!。ト..ヨコ..様の..ジン..ガーが!...】


甲殻と骨の砕ける音。


食欲の権化。


それでも神かよ?。


おまえ達。


【...こち.ら..ラ..ムダ...24。ト..ヨコ..様のジ..ンガー。スラ...スタ.ーが..最大...噴..射。係..留線..が持ち..ませ..ん。あ.ぁぁ...。ゴン..ド.ラ.が...開いて..行く..。じ、ジ..ン.ガー...に..引.きず..られる...。この...まま..じゃ.他の..機に...激突する。...】


ダンパーが引きちぎられて行く。


〈...母さん。...〉


まるで干し魚みたいに...。


...バリバリバリバリバリバリ...


〈...母さん...。...〉


【...こちらセブン..切り..離せ...一旦..。ア..ン.カー..解..除だ..!。...】


何とかしなくちゃ。泣


何とか...。泣


〈...ギャアアアアァァァァァァ..................〉


タンパー....。


...。


【...解.除..し..まし..た。攻...撃..翼.方面...に..飛翔。ラ..ムダ..7。..リ..リアー..ノ..艦..長。..撃..ち落と...し..ま.す..か?。...】


...ゴン...ゴ..ゴ..ゴン...


引きちぎられる音。


...ガキィ...ゴキィ...


【...待..っ.て!。...こ..ち.ら...ラ..ム.ダ..13。..エ..マで.す。ジ...ン..ガー..は..そ..の.まま。ト...ヨ..コ様..が.こ..こに..い.らっ....し.ゃ...る。...】


かじられる音。


...バギィ...バキッ...


骨の砕ける音。


【....何..だ.っ..て...】


青いゾアーグが引きちぎったタンパーを頭からかじっている。


...ゴゴ..ガ.ガガ...ギィ...


白いゾアーグはタンパーの片足だけを食べている。


許さない。


絶対に許さない!。


「目を見ろ!。犬神ゾアーグ!。私の目を!。」


...


...バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーー...


『...ゾアーグの目が!。ゾアーグの目が潰れて行く。...』


腕を開け!。


開いた!。


...BOOOOOoooooOOOOOoooo...


ゾアーグの悲鳴...。


『ゾアーグの指が折れたぞ!。』


『...見ろ!。ゾアーグの手が開いた。指が逆に...折れたぞ。...』


...ドーーーーーーーーーーーン...


地面に落ちた。


食いちぎられたタンパーの右腕....。


いや!。


嫌よ!。


認めない!。


「おおらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!。」


〈...す、凄い...。こりゃたまげた...。青い方まで。...〉


『...青..ゾア.ーグ...の.目が..割れ..た!。ゾ...アー..グ達..が..止ま...っ.た...ぞ。...』


『...や..は...り、大...神..官...の.どち...ら.かが、どこか..に..いら...っ.しゃ...る。...』



...クッ...


青い犬神ゾアーグが笏を叩き下ろす。


...ゴガーーーーーーーーーーーーーーン...


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


...ゴガーーーーーーーーーーン...


...ゴガーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


犬神ゾアーグの妖力がのしかかる。


襲いかかって来る。


山脈のように。


私を押し潰そうとする。


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


バルバロイが火口包囲陣に雪崩込んで行く。


何とかしなくては...。


...ギィヤアアアアアアアアァァァーーーーーーーーーー... ドドドドドドドド...ギェアァァァァァァーーーーー...ギエエエェェアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーー..バスーーーーーン...グオオオォォォォォォーーーー..ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ゴゴゴオオオォォォーーー...ドドドドドドドド...グワァァァァァァァァァァ...ドドドドドドドド...ギェアァァァァァァーーーーー...ギエエエェェアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーー..バスーーーーーン...グオオオォォォォォォーーーー..ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ゴゴゴオオオォォォーーー...ドドドドドドドド...グワァァァァァァァァァァ...ドドドドドドドド...ギェアァァァァァァーーーーー...ギエエエェェアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーー..バスーーーーーン...グオオオォォォォォォーーーー..ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ゴゴゴオオオォォォーーー...ドドドドドドドド...グワァァァァァァァァァァ...ドドドドドドドド...ギェアァァァァァァーーーーー...ギエエエェェアアアアァァァァァァーーーーーーーーーーー..バスーーーーーン...グオオオォォォォォォーーーー..ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ゴゴゴオオオォォォーーー...ドドドドドドドド...グワァァァァァァァァァァ...


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


〈...ゾアーグが本気で恐れとる。この若き大神官を。...〉


...あぁぁ...


...あぁぁあ..


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


〈...強い恐怖を感じとる。彗星のように現れた陽の力。大いなる若き力。...〉


....BOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA...


〈...潰させてなるものか。ここからはこの婆さんが引き継ぐ。見ておれ。ワシの力。最後のこの力。...〉


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